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●三位一体
補助基準点作業でおもしろいものを見てしまった。
住宅の混みいった境界を観測するために、補助基準点を作りながら一筆地の境界も観測し
ているときのこと。
人ひとりがやっと入れる50センチ巾ほどの住宅の隙間。直線ではなく、2メートルほど進め
ば、右に左にと連続して曲がっており、全く視通がない。
しかし、その曲がり曲がりに境界点がある。
そんなところでも、補助基準点を設置しなければ境界を測ることは出来ない。
TSを据えてしまうと、人は全く行き来ができなくなる。
渡部氏と大野氏が協力しながら、それぞれ自分の方向にある三脚の石突を踏み込み、何と
か整準するが一体どのように観測をするつもりなのだろうか。
と突然、渡部氏が
「大野さん、そっちから0視準で観測を始めて」と大野さんに観測を促している。2方向で、機
械からみれば、ほぼ正反対の方向にある、大野さんが第1方向の観測を終了しても、第2方向
の観測をするためには、大野さんがTSを飛び越しでもしない限り、機械に触らないで移動する
ことは不可能である。
「こっちに廻して」と渡部氏が要求すると、大野氏が、第2方向に向かって反対の方向に接眼
レンズの方向を廻した。
渡部氏が、そのまま第2方向の正、反を観測し、大野氏に第1方向の反転を見るように機械
の接眼レンズの方向を向けた。
お互いが正対している方向を観測するようにして、二対回観測は終了した。
我々には、想像もつかない。お互いの技術を信頼しての行為である。
●ピンポールの使用方法
海岸の街特有の混み入った土地の補助基準点だけに、辺長は10メートル以下、下手をすれ
ば3メートルあるか無いかという状態。
4級基準点と相違して、反射板を使用して高さを統一して測るには距離があまりにも近すぎ
る。
そのため観測にはピンポールと三脚を使い、なるべく低い位置で原則10センチの位置の高さ
にあわせたミニプリズムを視準していく。
観測にあたっては、プリズムの中心(くもの巣)が、必ずTSの方向と正対するように注意深く
あわせ、観測を行った。
●人海戦術
今回基準点班は三班に分かれて作業をおこなっているが、厳密に言うと一班が時々三つに
分かれるといった表現の方が適切なのかもしれない。
厳しい現場であるため、常にお互いの目の届く場所で観測を行っている。
同一路線の基準点を観測する場合に機械高を変更する必要があれば、お互いに声をかけ
あって同一の高さに調節をする。
一番の理由は、障害物の多さである。単に機械高を変えることによって視通を確保できれば
問題ないし、また、迂回しても支障がないようであればよいのだが、迂回も高さを変えてもどう
しようもない場合は、人海戦術である。
4級基準点ではあまりなかったのだが、補助基準点では日常茶飯事。
機械で視準して、木の枝が邪魔をしていれば、
「その枝を下へ。」
「向こう側のやつを奥へ。」
「その草を押さえて。」
「植木鉢を除けて。」
その度に、一人また一人と視準を確保するために駆けつける。
いつのまにか観測手を残し全員が障害物を押さえにかかり、三班がひとつになる。
●人それぞれに
高浜3丁目の細部測量と一筆地測量を平行して進めている。
お互いの家の凹凸の部分が複雑に絡み合い、外からみただけではどちら側にどうなってい
るのか全くわからない。
海岸の大工さんは大変と感心するものの、そのような家の間でも境界はちゃんと存在してお
り観測しなければならない。
とりあえず、一筆地班が境界標識を入れてはくれているのだが、そのような場所は普通の体
格の人間では通ることも出来ない。
一筆の担当者も仕方なく、手を伸ばし、届く範囲で境界標識をなんとかボンドで貼り付けてい
る。
「この場所にも標識をいれないと駄目なのですれけど、入れなくて。」と申し訳なさそうにして
いる。
スリムな小野氏「このくらいやったら入れるけん。」と、20センチほどの隙間をドリルと鋲と境
界標識を持ってスルリと入る。
やがてドリルの音がして、境界標識を入れ終えた小野氏が、「今日は役に立ったので、来た
かいがあった。」と嬉しそうに言っている。
このやりとりを横の路地から建物越しに聞いていた。
小野氏は本会の役員ということもあり、業務が忙しく、思うように参加できず、「申し訳ない。」
と口癖のように言っていたが、本日はすっきりしたようである。
機械を揃え、能力(知識・技術)のある人間を揃える必要があるが、こうなるといろいろな体格
の人間も必要になる。
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