第3章 基準点の設置

3-1 モルタルは買い占められた

●便器の基準点

 前章のみかん山の基準点での話の続き、3センチほどの厚みで、巾10センチ、長さ1メートル
ほどの平材を二つ担ぎ、更にドライモルタルの袋、ペットボトルに入れた水を皆で手分けして担
いであがる。

 内心「あの水槽を埋めるとなると、とんでもない量のモルタルが必要になるぞ、ミキサー車が
いるのでは。」と思い、半分あきらめながら

 「モルタル何袋ぐらい、山に持って上がるん。」

 「袋半分くらいで、1袋はいらんぜ…。」

 「えっ、うそぉ」

 逆らうわけにもいかず、軽いのは結構なことと山にあがる。
山に到着すると。

 「ええものを見つけてきたんよ。」と嬉しげに、ごそごそと大きなエスロンパイプの曲がりの部
分を取り出した。
 直径15センチ程度の部品の開口部分を水槽
の上端部分に合わせ、水槽の端の内側部分
にドリルで2つ穴を開け、そこへさし筋として金
属棒を指して、エスロンパイプの中にモルタル
を入れ、基準点の砲金を固定してしまった。

 更に、平材を2つ、その水槽の開口部分に足
場を作るように渡し、「この上に乗ったら観測出
来る。」一人自慢げに渡部氏は言うのだが・・。

 「これ、検査に通るだろうか。」困惑の表情が皆の顔に。



●夕焼けと防波堤と基準点

 ここは景色の美しい場所だ。

 瀬戸内海に浮かぶ小島、連絡船そして夕焼けと申し分がない。
 小高い丘の分譲地は別荘地となっている。

 そんな砂浜の防波堤に2級基準点(2-3)を選点し、砲金を埋設しようとドリルで穴を開けてい
るといきなりボロッと欠けてしまった。

 砂浜の中に1メートルほどの高さで突き出た防波堤、延長10メートルほどの小さな構造物で
現在は機能していないようなのだが…。

 海岸の構造物とあり、コンクリートはもろくなっており、どうやらヒビも入っていたようだ。GPS
観測は本日から予定されている。このまま放置することも出来ない。

 基準点を設置する場所はここしか無い、大掛かりな補修を開始する。

 丁寧に、コンクリートのもろくなっている部分をすべて削り落とした後、鉄筋を3本さし筋をした
後、型枠を作り、モルタルで固めていく。

 GPS観測開始予定時間が迫り、気ばかりが焦る、ドライモルタル40キロ入り二袋が費やさ
れ、さらに新浜防波堤補修部隊の活動は続く。


 そして、2ヶ月後、4級基準点測量がこの地区で行われていた。初夏の夕焼けは素晴らしい。

 基準点班は、順調に観測を進め、本日最後の観測場所になる2−3へと進む。

 夏の長い日照時間といえども、夕方5時からの日没までの-時間との勝負となり、夕暮れの美
しい時間帯の肝心な場所に三脚が設置され、むさくるしい男たちがわいわいがやがやとあつ
かましく場所を占領してしまった。

 『新浜の美しい夕焼け』をみようと訪れた数々のアベックを撤退させてしまった。

 彼女と訪れた彼氏諸君ごめんなさい。誰もあなたの彼女に焼きもちをやいて邪魔をしたので
はないので許してください。



●モルタルは買い占められた

 2級基準点、3級基準点は選点の後、その選点場所はすべて移動することのないように、60
センチ以上のコンクリート杭を使用する。

 2、3級の基準点は、GPS測量で行うため上空の視界の良い場所ではあるが、交通の便は総
じて良くない場所である。

 コンクリート杭を固定するため、ドライモルタルとペットボトルに入れた水で固定していく。どう
も1箇所にモルタル40キロ、ペットボトル3本以上が必要である。


 そのうえ、畑の石積みを除き、コンクリート杭を入れることになった場所は、所有者に、きれ
いに補修しますので基準点を設置させてくださいとお願いしている。


 渡部企画、野本設計、十川土建の手により大量のドライモルタルが消費される。

 一体、どの程度使わなければならないのか…


 持参したドライモルタルは直ぐに無くなり、近くのホームセンターに購入に行く。

 ドライモルタルだけでは弱いため、付近にある石を探すが、畑ということもありなかなか丁度
いい大きさの石が見つからない。

 仕方なく横の水路の中の石を水の中に入りながら集める。

 暖かく気持ちのよい日なのだが、一緒に石ひろいをしている巨漢の日下さん、大汗を書きな
がら、石を集めている。

 思わず

 「日下さんを連れて行けば、山の上でも水は大丈夫じゃね。」

 「どうして。」と日下さん。

 「ちょっと、絞ったらすぐに水が出るから。ペットボトルは要んぜ」

 「・・。」

 追伸、すべての基準点の固定が終了したとき、ホ
ームセンターのドライモルタルの在庫は底をつき、
大きなトラックで在庫を補充した模様である。

 店長が始末書を書いたとしても我々の責任では
ない。


3-2 4級基準点の設置

●4級基準点の設置

 4級基準点の選点後、出来るだけコンクリート構造物にドリルで穴を開け、基準点と刻印され

 た座をつけてステンレス鋲を設置していった。

 構造物のない場所にはアスファルト舗装をコア抜きして、その後をドライモルタルで固めてい
った。 


 最初は手でたがねを使用してアスファルト舗装を除去していたのだが、どうにも時間がかか
ってしまい効率が悪い。

 コア抜きのドリルを西条の工藤さんが自前の基準点設置の為に購入していたので、それを
使用することとなった。

 ガソリン式の発電機に接続したドリルにコア抜きの刃先をつけて、どんどん作業を進めてい
く。先程とは比較にならない。あっけないほど早くコア抜きが出来る。

 事件はそこで起こった。

 率先してコア抜きを行っていただいた空飛ぶ調査士こと最年長のM先生(ここで氏名を明確
にすると支障があるので匿名にしました)、集水枡の横でコア抜きをやっていたところ、いきなり
スポッと勢いが弱まり、ドリルを引き抜くとなにやら円形の塩化ビニールが一緒についてくる。

 引き抜いた穴の中を見ると、なにやらドリル刃先以上の深さの穴が開いており、エスロンパイ
プが横たわっている。

   「やばい、水道管か・・」

   幸いなことに、何も起こらない。

   じっと見ると、集水桝に排水している個人のパイプのようである。

   M先生、慌てず、厚紙に紐を4箇所通して眼帯のような形のようなものを作っている。

   「出来た。」

    まず、その厚紙をパイプの位置まで下げ、紐の先端部分を穴の外に出し、重しをつけ
  て、途中で浮かすようにした後、基準点ごとモルタルで固定してしまった。

   「それ、固定できますか。」

   「1日あれば、大丈夫よ。」

   自らも、測量会社を経営するM先生、どうもこのようなことは日常茶飯事のようである。



高浜17条基準点作業に思う
     
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