何時の日か その2

(GPS観測の与点さがし)

● 登り道

 それから2日後の金曜日の午前9時、仲間が到着。

 W氏「最初に、偏心観測からやりましょうわい。」の一言。

 さあ、偏心要素の観測である。既に見えるものとして、後視点の四等三角点上松葉には反射
板を設置して登ってきた。


 本日の観測隊は三名である。前回私が山から降りてきた場所は丁度三叉路の場所であった
が、W氏地図を見ながら、

 「もっと、東に行ったら、登り道があるはずよ。」

 三叉路から400m車で東側の林道を走る。行き止まりであるが、丁度山仕事中のおじさん
がいる。

 「頂上に登りたいんですが、道知りませんか。」

 「ああっ、100mほど戻った場所にあったはずよ。」

 「どうも。」

 狭い行き止まりの空間で車を方向転換させながら100mほど戻ると、なにやら道らしきもの
がある。

 「これじゃね。」

 「そうだね。登ろうか。」




●緑の背景

 三脚を2脚、反射板、プリズム、光波測距儀を分担し、いつもの一名を除いては、あえぎあえ
ぎ登って来た。

 息を整え、偏心点の位置を決定するため、取りあえず本点の四等三角点田苗に三脚を据
え、その上に反射板を設置。前回登った時に大体の目安はついているが、今回は観測までし
なければならない。

 現場は丁度、30年以上たった桧林の中ではあるのだが、幸いな事に後視点の上松葉方向
は恐らく、5年くらい前に桧を伐採し、新たに植林をしている状態である。丁度人間の頭程度の
高さに植林した桧が成長している。

 だが、このあたりの山の特徴で、山頂部は比較的平坦なのだが、山裾へ向けてはかなりの
傾斜がある。

 何とか、傾斜と桧と上松葉の位置とを調整しながら、偏心点の位置を決める。偏心点は本点
から約15m程移動した場所に設置。持参のプラスチック杭を入れる。

 後はお決まりの伐採なのだが、さすがに桧の植林している場所とあって、桧の伐採は出来な
い、雑木やつるをきれいに切っていく。




●鮮明

 やがて、山頂に林道が出来上がる。さぁ観測だ。

 偏心点に光波測距儀を据え、既に本点に据えた反射板の高さと同一の高さに設置する。本
点は標石が20センチほど露出しており。反射板の高さは130センチである。

 設置完了、後視点の上松葉を観測、丁度四等三角点上松葉に立てた反射板は、横は団地
があるものの、その間には一級河川があり、その他は1キロ四方は田んぼばかりの為、田ん
ぼの真ん中に見える。時期は7月下旬。田んぼは緑の芝生の様に、きれいに手入れされてい
る。緑の中に、黄色と赤の木製三脚。黄色の縁取りのプリズム。そして白黒の反射板。本当に
浮き上がって見える。まさに写真撮影のために整えたような状態である。

 「うわーっ。すごい。きれいに見える。」思わず口に出す。それもそうだ肉眼でさえみえるのだ
から。そのうち偏心要素の水平角の2対回。鉛直角の1対回、そして本点との斜距離測定も観
測制限内にうまく収まり、観測を終了した、だがあまりにも後視点の上松葉の方向が良く見え
るので

 「上松葉までの距離とっておこうか。このくらいにみえるんだったら距離も観測出来るよ。」

 W氏笑いながら「そんなら、測ってみんけんよ。」

 「よっしゃ」と喜びながら、距離測定のボタンを押してみたのだが、一向に反応が無い。

 「あれっ。おかしいな。距離が取れん。」

 またまW氏、「そうやろう、1600m以上あるんよ。1素子では無理なんやない。」

 そうだった、ついつい鮮明に見えるもので、自分の光波測距儀の距離制限を忘れていた。頭
をかきながら、本点に光波測距儀を移動し、偏心点までの鉛直角を観測、正反の鉛直角を観
測し、終了した。




● 元きた道は

 後は、今度GPSの器材を運びあげる時のために、最短でしかも楽な道筋を探さなければな
らない。三人とも、ゆっくり注意しながら、山を降りていく。人夫さんを待たしていた場所までは 
道があるのだが、そこからははっきりした道が無い。

 ここから下った方が良いというのはわかるのだが、山の上から見て良く分かるのは、どうも松
茸を探す時だけのようだ。手入れされた桧林が続くが、地面はびっしりとしだが密性し、ちょつ
と桧林からはずれると、雑木といばらの密性地である。道がまったくわからない。

 今回の三人は、全員40代の中年組である。W氏は別格として(彼は、〇〇だから・・・。)。残
りのわれら二人は、年相応の体力を維持しているのである。まぁ、登りは放っていかれたが、
下りは膝が痛いのを我慢すればいいだけだからとついて行く。

 だが、それでも林道に降りた時は、最初にあがった道では無く。やっぱり三叉路に降りてきて
しまった。山の地形はわかりにくい。




● 現場まわり

 だが、今回の課題の一つが終了した。後は残り8点の三角点に登るだけである。

W氏「まだ、昼までに時間ありますね。近くの三角点にあがりましょう。」

「そうじゃね。車で行ける場所がいいね。僕が間違ってあがった方向の三等三角点にあがろう
か。」

 車でまたまた、がたがたで急カーブが連続する道を、車の下をがりがりと擦りながら登ってい
く。20分ほど登るとやっと、テレビの中継用のアンテナ塔が三本たっている山頂にたどりつい
た。

 三等三角点倉谷はテレビ塔から20mほど後ろの位置にある。丁度西側はテレビ塔の影に
隠れ、東側と南側は桧林で覆われていたが、北側の1方向だけ丁度120度ほど視界が開け
ており、その方向には平地を走る県道や民家がわかる。

 「本点では、ちょっと無理やね。偏心しようか。後視点になる三角点ここからみえますかね。」

「いや、僕が知っている三角点は見えないね。以前探しにあがった山は丁度真向かいに見える
山なんだけど。平坦すぎてどこにあるか結局わからなかったんだよ。もう一度探そうか。」

「いや、いいです。無理しなくてもいいです。これだったら方位標での偏心をしましょう。」

「ああ、方位標ね。」GPSの本では、方位標による偏心を行うとあったが、実際にやったことは
無い。どんな方法でやるのだろうか。偏心点と150m以上離れた任意の場所にGPSを設置
し、TSで角度を観測するとある。ただこれしか知識は無い。本番を楽しみにするだけである。

「取りあえず、偏心点を作っておきましょう。」本点から12、3m離れた場所の大きな岩にドリル
で穴をあけ、鋲を設置。取りあえず偏心点、本点に互いに器械を据え、斜距離および鉛直角を
観測しておく。これを先行しておけば、偏心要素を観測する本番には本点にはピンポールを立
てるだけで用が足り、器材が少なくてすむ。

 「後、本番の時は、この偏心点から見える場所に車で走って行ってGPSを設置して下さい。」

 一体、どのように本番で観測するのか見学したかったのだが、ここは地元で現場の地理を知
っている私が、方位標の役割をするのが当然。仕方なく

「はい。」




●パラボラアンテナ

 昼食の後、再び与点となる三角点へと向かう。

「以前から言われていた二等三角点にいきましょか。」

「はいよ。見晴らしはいいんだけれど果たして使えるかな。とにかく行ってみましょう。途中の道
筋に四等三角点 地蔵屋敷もあるから、案内しましょう。」


 またまた、車で林道を走る。途中まではアスファルトの舗装がある恵まれた場所である。その
 アスファルト舗装がまだされている場所で車を止める。

「この山にあるよ。距離にして100m程歩けば行けるから。傾斜は緩いから楽よ。」

 三人で登るが、やはり桧林の中、偏心も出来そうにない。

「駄目やね。次行きましょう」

 さっさとあきらめ、二等三角点西山田へと向かう。

 アスファルト舗装が終わり、がたがたの林道を1キロ程走ると、一面の茶畑になる。「こんな
山の頂上なのに」とびっくり、標高500mの場所、そこを過ぎると再びアスファルト舗装になる。
このあたりはNTTの敷地のようだ、300m程登ると、高さ30m程のパラボラアンテナの横に
到着。ちょっとそこから横に出ると今回観測予定の場所がすべて見える。

 パラボラアンテナの50m程横には10m程の高さの漁船用の無線のアンテナがたっている。
 二等三角点は、そこよりちょっと小高い桧林の中になる。漁船用のアンテナから約80m程
度、桧林の中に三角点は「三角点を大切にしましょう」という標柱の横にあった。

桧の高さは、5m程。周りをみると、最近国土地理院が使用したのであろうか、高測標のに使
用した丸太が数十本、束にして整理してある。

 「やった、使えるぜ。3m脚とポールを使用したら5メートル以上の高さになるから、桧林はつ
きぬけるよ。障害物は無いな。後はパラボラアンテナの影響だけやね。とにかくやってみろや。
ここ使えたら、大分新点の配置が楽になる。」




●やっぱり

 安心しながら、またまた別の三角点へ向かう、この近所という事で、前回大汗をかいてあがっ
た四等三角点 薬師谷に案内しようとしたが。

 「あっ、その三角点は登らんてもいいです。この配置では、あってもあまり意味がないから。」

「そうかな。」前回必死になって登ったのに、使えんのか。まあええわい、あの三角点登るのし
んどいから。

「それじゃ、二つ一挙に行ける場所にいくかな。」

 前回、新しい林道が抜けていた三等三角点和泉へと向かう、ここは山のほとんど頂上まで車
が登れる林道がついている。丁度駐車場のようになっている広場に車を止めると、今回観測
する現場が一望出来る。

 「使えたらいいね。なるべく三等三角点を使用したいね。」

「ここの三角点が使用出来たら楽でいいのにね。」

と言いながら、5、6分ほど登ると、頂上になり、そこに三等三角点和泉はあった。だが、いつも
のように桧林の中、財産区が管理する山だけあって立派な桧ばっかり。

「こりゃ切らしてもらわんと駄目だな。このままでは偏心も出来ませんね。」

「役場から言ってもらう。」

「際限が無いですよ。残念ですがあきらめましょう。」

仕方なく、車までおり、林道で続いている四等三角点挟間へと向かう。だがここも同様である。
残念。林道がいまだに新設むされている事は山を管理している地域という事になりなかなか上
空の視界の確保が難しい。

 これでは観測する地域の西側に位置する三角点は全滅である。




● 使える三角点

 W氏、地図に使用出来る三角点に印をつけている。

 使えるのは、パラポラアンテナの二等三角点 西山田、牧場の上の三等三角点 永長 3本
のテレビ塔の場所の三等三角点 倉谷 団地の横の四等三角点 上松葉そしてさっき偏心の
観測をした四等三角点 田苗か。

 あっても上空の視界や偏心が出来なくて使用出来ないのが、三等三角点 和泉。四等三角
点挟間。

 四等三角点 薬師谷は二等三角点の西山田と三等三角点の永長が使用出来るので位置的
な問題で使用しなくても良い三角点。

 「四等三角点の岩城、郷内、中川は亡失しているんでしたよね。」

「うん、郷内はこの間まであったんだけどね。岩城は道路の拡張工事で大分前からなくなって
いるね。中川の学校の新築工事でなくなっているね。」

「あと、四等三角点の清沢は標石が松の根っこで移動しているとこだったですね。これは使え
んな。そうすると今のとこ、使用出来る三角点は5点ですか。新点は20点ですね。」

「そうだよ。」




●あと一つ

 「西側の三角点があったらな。隣町の三角点わかりますか。」

「行ったことないからわからないけど。」

「行ってみましょう」

地図を頼りに、いきなり隣町の三角点を探しに行く。まずは三等三角点 若山。苦労して地形
を地図で判読しながら現地にいくと、そこは牧場の建物の中、既にそこに無く、道路の隅っこ
で、三角点は横になっていた。がっかり。2、3日前にも測量会社が尋ねてきたそうである。残
念だったろうなぁ。

 気を取り直して、近所の四等三角点 東へと向かう。ぐるぐると車が一台やっと通れる道を走
りながら、またまた地図を頼りに現地へ、現地へは車が通らぬ程度の道がついている事は地
図で解る。何とかその場所まで車でたどり着く。

 後はこの道をひたすら登るだけであるが、一度工作機械でがーっと押しただけの道のようで
あり、道の中に雑木、松、杉、ススキ、いろんなものが人間の背丈ほどに伸びており。厄介な
事。かえって道が無い方が楽なのだが、地形がわからない。とりあえず道の位置をたどった方
が良いようだ。体力的にはそう苦しくないのだが、このような状態は本当にいやにる。それでも
何とか到着。2mほどの雑木があり、近くに大きな木が3本ほどあるだけだ。

「使えるぜ。よかった。これで出来る。」

与点の踏査は終了した。

 そう言えば、今回の観測は2級基準点の観測だから新点20点だと、どうしても与点が5点以
上必要になる。しかも、観測地域が与点で囲まれる形でないとまずい。与点同士を結んだ線か
ら500m以上外に出てはいけない。と解説してあったなと、またまた後で思い出す。



基準点・GPS・お役所
     
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