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●新点への配慮 与点となる三角点が決定し、後は新点の選点にとりかかる。役場からとりあえず構造改善事 業の確定測量に使用したいという事であったが、この地域は4キロ四方がほとんど、平坦な田 になっている。民家はその外周にの山すそに広がっている。 田ばっかりだから、20点あったら数がありすぎるくらいになり、少しサービスして民家の方に も使用できるようにしようと選点計画をたてていた。 なるべく山すそに新点を作成し、三角点に上がらなくても後で測量出来るようにと配慮した。 町と交渉した時も、「すべておまかせします。実際は私達は使用しないと思います。測量会社に 使用させる事になると思います。高さは任意でやるから、使いません。」との事であった。 地形的にはほとんど障害物が無く。田園地帯のためため池も多く存在し、一段と見渡せる様 になっている。 「どうする。ため池の土手に選点する。」 「ため池は改修したら、全部なくなりますね。何時頃改修されますかね。」 「もうすでに、改修が終わっていると思うし、しばらく無いんじゃない」 「じゃあ、池土手は使いやすいから、ここにしますか。」 「後で町にも確認しておくよ。」 以上により、新点のうち7点が池土手に決定された。 後はW氏の指示により、全部の新点が決定。 ●遊び 実は、私も最初作成しなくてはと思ったのだが、作成の仕方の踏ん切りがつかない。仕方な く、事務の女の子に、「2万5千分の1の縮尺で1辺が大体500mの正三角形の組み合わせを 無意識に書いてくれる。」と頼んでしまった。事務の女の子がかってに作成した正三角形の固 まりの長方形を与点となる三等三角点 永長に固定し、あわせてみると、何ときれいに当ては まってしまった。 新点の数は約25点ほど、不思議な事に亡失している四等三角点の郷内と岩城は丁度ぴっ たりと位置が合致。「へぇーっ。面白いな。」と変な感心をしたのを思い出す。 私の場合は物事を理解していないから、完全に遊びの領域を出なかったが、おそらくW氏や 熟練した人は、こんな作業を頭の中で無意識に繰り返して新点の大体の位置を決定している のかも知れない。 ● 新点設置完了 ため池の土手については町の了解も取れ、県道のコンクリート擁壁に予定した新点について も、土木事務所の了解を取り付ける事が出来た。 池土手については、穴をあけ、直形12センチ、長さ60センチのコンクリート杭を根巻きし、 そのコンクリート杭に穴をあけ、80ミリの真鍮製の基準点鋲を設置。埋め戻した後。周りに既 製品のコンクリート基礎ブロックを置き、三角点の保護石ではないが、保護と、将来少しでも雑 草で場所がわからなくなる危険を排除した。 残りのコンクリート擁壁の場所については、ドリルで穴をあけ、基準点鋲を設置、20点すべ ての新点の設置が完了した。後は観測を待つだけである。 ●方位標 翌月、仲間の5人と遠来の島根からの4人で観測を開始しする。天候も良く。順調に観測は 進む。与点の三角点に登った際には、いろいろアクシデントもあったがそれでも何とか時間ど おり観測は進み。いよいよ最終セッションが始まる前の待機時間。 3本のテレビ塔が並ぶ三等三角点倉谷にW氏と私が集合する。 W氏はいまから三等三角点倉谷を使用した最終セッションの観測がある。私は最終セッショ ンの後、方位標の観測のため方位標の場所に移動しなければならない。 私も一度倉谷に登る。 W氏とどの場所に方位標となるGPSを立てるか、偏心点から下界を覗きながら相談する。 「あの、青い屋根の位置の横の道があたりがいいですね。わかりますか。」 「ああ、あの場所ね。大抵解るだろう。行ってみようわい。」 早速、車で方位標を立てる現場に向かう。だが、上から見るのと、現地とはぜんぜん雰囲気 が違う。 「ええっと、この辺たりだと思うんだけれど。山の上の偏心点と思われる場所を見上げるがぜ んぜん見えない。 無線で、「私の車みえますか。」 「まだ、見えません、そのあたりゆっくり走って見てください。」 「了解。」 そのあたりを、ゆっくりといろいろ走り回る。そうするうちに移動中の車から偏心点で観測中 のGPSと三脚が見えた。 「上から、こちら見えますか。」 「はい、見えます。そこからまっすぐ進んで、左に回った位置で観測準備をして下さい。」 少し道が膨らんだ場所に車を止め、観測準備を行う。 15時、最終セッションが終了。 いよいよ方位標の観測である。とりあえず三等三角点倉谷と、私の方位標の位置の2台でG PS観測を約1時間行う。 その後、偏心点で、こちらの方位標を後視点にして、三等三角点倉谷への水平角観測を行 っているのが、こちらからも肉眼で見て解る。 W氏に言わせると、方位標と偏心にすえたGPSで北の方向が解るので、結局後視点の三角 点をみたのと同じ事になるそうだ。 ● 追 加 これで新点20点、与点5点の11セッション、3日かがりの観測は終了した。だが、役場との 契約は25点である。W氏との話し合いで、「減額してもらったらいいが」という事になっていた ので、役場に交渉に行く。 役場の課長補佐に「25点で契約したんですが、20点では駄目ですか。」 「うん。契約しているけん。減額するのはもう駄目だから、後5点作ってもらった方がいいです ね。」 「わかりました。それじゃあ、後5点追加する事にします。ところで別にご希望は無いですか。そ れで5点以上になるのはかまいませんか。」 「数は25点以上あればかまいません。追加する場所については別に希望はありません、そち らに御任せします。」 こうなるとなかなかやりにくいが、この地域の一番地図がずれている場所に基準点を入れる 事にした。 とにかく2級基準点20点は作成してしまったし、与点の関係もありこれ以上ついか出来ない ので、2級基準点を与点とした3級基準点7点を作成する事にし。 観測前の予定で27点の配置を地図に記入して役場の課長補佐に渡していた。 ● 視通が無い。 役場建設課の課長補佐からの電話が事務所に 「今回の基準点なんですが、2点の視通が効かないと使えないというんですが。」役場から説明 に来てくれとの事。 「はぁーっ」なんで、こんな事をいわれるのかわからない。 とりあえず、役場に出向く。 ●結合が基本でしょう 「測量は結合が基本でしょう。」といきなり、係長が切り出す。「こことここの2点だったら視通が 効かないから使えないでしょう。まずどこが見えるのか図面を作って下さい。」 「あのう。建設省の公共測量作業規程では方向角の取り付けはしなくても良いようになってい ますが、それに他の点が見えると思いますよ。出来るだけ使用されるのも作業規程にのっとっ て使用してもらえば、基準点がたくさん出来るんですが。」 20年以上前の国土調査に携わった経験のある係長、 「うちらは、そんな測量ようせんですから、あなたが儲けるだけじゃないの。」 おまけに、最初構造改善事業の確定測量といった条件での発注であったにもかかわらず、 「これだったら、町中の道路の測量が出来ない」という始末。 これまでの基準点作成については課長補佐と話し合いが出来ており、この係長は話し合い に参加しておらず、今までのいきさつを全く知らない。 こちらが、ちゃんと回答しないといけないと建設省の公共測量作業規程を持参し説明したの が、どうも国土調査に携わり、それ相応の知識を持っていた係長のプライドをいたく傷つけたら しい。 どうせ、用地測量も測量会社に発注するのだから、「建設省の公共測量作業規程」で測量を しなさいと当たり前の条件をつければ良いと思うのだが、そこは知識なのか予算なのかわから ないが不足しているらしい。 ●場所がわからない 「別に、新点の視通が効くもの同士の図面は作成しましょう。」 まあ、これは仕方がないだろう。 係長「後、2万5千分の1の図面に位置を入れて、写真をつけているようですが、これじゃ位置 がわからんです。法務局の17条地図に位置を入れて下さい。」 あほか。思わず思ってしまう。ついに短気な私は口に出る。 「地元の役場の建設課なのですから、山の中ではなく平坦部なんですから、地図に大体の位 置と写真があれば解ると思うんですが」 新点はすべてコンクリート擁壁に設置するか池土手にコンクリート杭を入れて設置してある。 詳しい「点の記」を作れというのなら話もわかるが、法務局の17条地図に手入れしろと言う。 「法務局の17条地図には無理ですよ。」 それでは役場の地籍図に入れろと言う。何と傲慢な男だろう。 「入れてもよろしいですが、それだけの予算いただいてないんですけれど、追加でいたたけま すか。」 こちらも、それほどの手間ではないから、サービスしても良いのだが、先程からのやり取りで 大分頭にきている。サービスなんかしてやるものか。 それは、こちらが成果を出すのだから、成果品を受け取った側が自分の便利なように自分達 の内部でする事だろう。最初の交渉では成果品は座標の結果だけでいいという話できている んだ。それをほとんど終わりに来て、書類を整理している段階になってと完全に頭にきてしまっ た私である。 ●とどめ とどめに、その係長本当に基準点の事を知っているのかどうかわからないが 「測量会社は1点9万円でやる言うたぜ。」 このやろう。こちらも大体この基準点作成にあたってはどの程度の金額なのか知っている。 またまた、プッッンしてしまう。 「はい、その測量会社でやってもらったらいいですね。ただ、私達は研修という事で採算なし で、それよりやすい値段で行いましたが。本当にきっちりされるんだったら倍以上のお金がい ると思いますよ。そう言われる測量会社さんは内容的にも信用が出来ないんじゃないですか。 頼まれない方がいいと思いますよ」 ああ、散々な交渉だな。 あまり期待はしていなかったが、これほどとは。まあ、私の瞬間湯沸かし器的な性格と、あま り営業向きではない性格が災いしたのであろう。 ●反 省 やっと隣町の全域に2級基準点を設置し、将来の展望が開けたというのに、私の短気な性格 から、その芽を摘み取ってしまった。きっと自分の気持ちの中に基準点をやっているのだか ら、役場の職員よりは良く知っているんだというおごった気持があった事も間違いない。 仲間に悪いとの気持ちがしきりである。反省、深く反省する日々である。 ● 納 品 それより数日が経過し、基準点27点の観測もすべて終了した。 再び町との境界確認での立ち会い。丁度現場は基準点を設置した地域の中、境界確認は簡 単に終了。世間話も交えながら、今回の基準点の話になり、課長補佐と主事さんに「丁度、す ぐそこに基準点がありますから、見に行きますか。」この場所からは池土手の基準点とコンクリ ート擁壁に設置した基準点の両方が200m程度の位置にある。 この境界確認をおこなっている現場は、その基準点を使用しY型の路線を組んで測量し、復 元したものだ。 現地へ案内し、その両方について案内。丁度成果を納品後の検査にもなる。 「ああっ、良く分かりますね。」 「そうでしょう。それで結果もこの両方での距離の誤差も2ミリもありませんよ。」 「すごいですね。」 「だから、町も最初にこういう基準点を設置すれば、登記はもちろんですが、いろんな工事に使 用出来るし、正確だから心配なくなるんですよ。一つ事業としたら高いかもしれませんが、後全 部に使用できますから、後は測量会社に発注されてもいいですから、他の地域も是非やってい ただけませんか。」 課長補佐「・・・。他の場所でも。これと似たような方法で出来ますか。」 「はい、出来ます。それで今回の材料のあまりどうしましょう。」 「また頼むと思いますので、もっておいて下さい。」 課長補佐の社交辞令かもしれないが、前向きの言葉が聞けた。恐らく社交辞令だろうが。一 つ実績を作ったことたはけ事実であり。予算として計上された事にも希望が持てる。後何年か かるかもしれない、ひょっとして永久にこういう機会は無いかもしれない。だが、仲間達の町 で、まったく思いがけないところでこういった試みがされるかもしれない。 そして本日成果品を納品した。 ![]()
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