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●ペーパー測量士補 研修により、いろいろ本当の事を知ることが出来る。今回も私の知識がいかに曖昧であった か思い知る事になった。 測量士補の資格を持っているといっても、もう10年以上前に、学生時代の一夜づけの試験 勉強とほとんとど同じ要領で受験し、幸いに合格してしまえば、今まで覚えた知識もほとんど 頭の中からこぼれ落ちてしまったペーパー測量士補である。 更に土地家屋調査士試験に合格してしまうと、今までの反動とばかり何も勉強をせず、不動 産登記法も、測量についても、仕事の流れに身を任せてしまい。勉強なんかせず、生半可に 自分の都合の良いように勝手に解釈し、土地家屋調査士には、本格的な測量なんて必要無い さ、そんな大袈裟な測量なんか関係ない、どうせ調査士は重箱の隅をつつく測量さと、なにか 別な世界の事のように思っていた。 だが最近、本屋で測量士補関係の受験テキストを読んだらまるっきり分からない。これは大 変だ。本当に自分勝手に解釈して誤った測量をしているのではないのだろうか。そう言えば思 い当たる事がある。測量会社の測量士が私の事務所に来て、資料を下さいと言って来られる のだが、その時、ちらっと測量の技術的な話をされ、私が曖昧に相づちを打つと、にやにやと されて帰って行く。「ああっ。あれは、こいつ、何にも知らないんだな」と馬鹿にされていたので はないのだろうか。背筋を冷たいものが走る。 そんな時、ちょっとしたきっかけから基準点測量の研修会に参加する事になり、うろ覚えの知 識がどんどん砕け散っていく事になる。 ●基準点の種類 まず、私は最近よく耳にする基準点についての種類がどうもピンと来ない。私の地区は既 に、国土調査が完了しているため、三等三角点や四等三角点それに図根三角点、図根多角 点については、日頃親しんでいるのだが、1級基準点、2級基準点、3級基準点、4級基準点と 説明されても、なかなか解らない。国土調査地区の私に理解しやすいように、漠然と1級基準 点は四等三角点、2級基準点は図根三角点、4級基準点は図根多角点という風に理解した。 だが、全然性質は別物という事である。基準点は建設省作業規程に基づき作業されており、 基準が厳しいようである。 更に、勉強不足のため知らなかったのだが、1、2、3等三角点は基本測量、4等三角点は 国土調査法により基本測量を基に作られ基準点測量と呼ぶのだそうである。 ちょっと、脱線。隣りの研修生との無駄話。そのためか4等三角点については、国土地理院 もあまり熱心ではなく、官庁が道路工事等で除去するときなど、地理院に聞き合わしても「飛ば してもいいですよ。」といった返事がある事が多いという。 ●温度・気圧の補正 地球の丸さ。我々の測量には一番関係が無いと思っていた事柄である。調査士にとって、境 界を確定しそこに杭を入れ現地を安定し、その杭を測った面積が商取り引きの基になる。従っ て、面積や辺長について地球の丸さなんて考える必要はない。我々の測量については、その 場所で、実際に測定できる面積であり、辺長が必要なんだ、だから平面と考えてもいいさ、漠 然と考えていた。しかし、どの程度から地球の丸さが影響をあたえるのかも知らなかった、い や、知りたくなかった。 一度、真冬に一筆地を測った時に日が暮れ途中で観測を中止し、翌日、追加測量をした時 に確認のため同一点を測ったところ距離が1センチ近くおかしかった事があった、器械点、後 視点そして測点とも金属鋲を設置し、障害物も無く見通しも良く特に測点は器械点からも金属 鋲そのものが見えるという好条件でしかも30メートル程の距離での事である。したがって、光 波測距儀もプリズムも問題なく、金属鋲にもきっちりとプリズムも据えていた。その証拠に角度 はぴったり一致する。 天候は翌日の方が2、3度暖かかったがそれほどの相違はない。何故だろうと考えると、前 日は寒くて工事の人夫さんが丁度私の3〜4メートル横で焚き火をしていた。その測点は丁度 焚き火の横を通して距離を測る状態になっており、「ああ、焚き火のせいだ。温度が距離に影 響を与えるのか。」温度と距離について、たった1日で実感してしまった。 この事から真冬と、真夏で同一地点で単純に距離の測定を行うと、当然異なる事になる。だ から、どのような温度の時に距離を観測しても温度による補正をしておけば、同一の距離を得 る事が出来る。 ちなみに温度が高くなるほど距離を少な目に表示する事になるそうである。なんでも10度の 温度変化があると、測定距離は1キロについて約1センチ変化し、10mmHgの気圧変化があ ると1キロについて約4mmの割合で変化するそうである。これらは、光波測距儀の中に、現在 の気温、気圧を入力するだけで簡単に解決する。ボタン操作を嫌がらずこまめに入力する事。 ●投影補正 更に、一番我々がピンと来ない事。地球の丸さについて考える時、地球の中心から遠くなる ほど、地球の中心から同心円を描く時、中心の角が同一の角度であれば、遠くなるほど、その 角度を満足する距離は長くなると言う事である。 したがって、標準的な地球の形、半径6370キロの球面(準拠楕円体)を考えて、その表面上 の位置での距離を考えなさいという事になる。 当然実際の距離を測るには、器械点の位置と視準点の位置の高さ(標高)がある。まず、こ れら二つの標高を平均し、平均標高での水平観測距離を出し、その後準拠楕円体面上での 距離に直し、縮尺係数をかける事により平面直角座標面上の距離を得るという順序になる。 一度講義を聞くと、その時は解ったような気になるのが、この投影補正と縮尺補正の関係で ある。縮尺係数については、掛けたり、割ったり、「ええっと、今度は掛けるのか、割るのか な。」となり、頭の中で混乱する事おびただしい。 間違ってもいい、「いっその事、冷蔵庫の冷凍してある状態が平面直角座標である。」と乱暴 に考えた。 保存する時は、生の状態の曲面座標を冷凍するので氷(縮尺係数)を掛けて冷やす。そし て、保存したものを、使用する時(偏心補正の計算する時)は冷凍してあるものを解凍するため に、乱暴だが氷(縮尺係数)を割って生の状態にして使用すると勝手に考えた。理論的に物事 が考えれなくなっている中年男の脳細胞にとって、こういう比喩でもしないと覚えきれない。 ●どこを見るの 観測の実際について、意外な事に、ミラーの中心で観測してはならないという。「うそだろう」。 私はピンポールとピンポールプリズムでトラバース測量をする時、必ずプリズムの中心で観測 していた。 光波測距儀の望遠鏡で視準点のプリズムを覗き、方向をまっすぐかどうか確認して観測して いた。「ミラーの中心が駄目なら、じゃあ、どこを見るの」。我々がトラバース測量をする場合、 50メートル程度であればプリズムのクモの巣のような、プリズムの線が解り、中心が解りやす いのに何故駄目なのか、さっぱり解らない。 隣の測量に詳しい人に「ピンポールプリズムでは駄目なの。」聞くと「全く駄目という訳ではあ りませんが、プリズムの中心が本当に、測点の中心なのか解らないでしょう。だから、反射板 のマークを視準すれば良いんです。私はピンポールプリズム用の反射板を付けて使用してい ます。」 本論の講義では、「ただし、水平角観測の時と、鉛直角観測では反射板の視準するマークの 位置が違います。」との説明がある。 ヘアーで挟んで視準する事になるのだが、正で視準位置と反での望遠鏡の画面での視準位 置を同一にしなければならない。との説明の前に私はヘアーではさむことなどしたことがない、 近くであれば、必ず望遠鏡の中心の+印の位置で観測し、距離も水平角も一回で観測してし まっていた。 更に、遠方のポールを視準する時は、二本線のヘアーで挟まず、一本線の方のヘアーで重 ねる様にして、ポールを消す様にして観測していた。当然、ポールが鮮明に見えず、多少ぼや けている様な時は、ヘアーからはみ出し、どの部分が本体の中央か判断しがたいが、おそら く、このあたりだろうと推読していた。まさに自己流の塊である。 本来の観測については図のとおり ![]() ![]() ●順 番 観測の順番について、斜距離、鉛直角、水平角の観測とあるのだが、一体どのような順番で やればよいのか、皆目解らない。 私のトラバース測量のやり方は、先程の要領でピンポールを使用し、ピンホールプリズムの 中心を視準し、水平角も距離もその場所で一気に観測していた。そのため、たまに2対回観測 の真似事をした時でも、1対回目の水平角の正位の観測の時に斜距離を2回観測し、反位の 時に同じく、水平角と同時に斜距離を2回観測していた。 今回も自己流で観測を行っても、結果さえ出れば良いだろう、だが念のため聞いてみよう。 「距離の観測と角度の観測全部いっぺんにやってもいい。」「いえ、駄目です。観測の条件を全 部同一にして、観測しなければなりませんから、距離は距離、水平角は水平角、鉛直角は鉛 直角で観測して下さい。」うわっ、面倒くさいなぁ。だが、「先程言ったように、距離、水平角、鉛 直角と総て見る場所が違いますから、別々に観測しないと、かえって面倒臭いですよ。」と怒ら る。 後の観測で感じたのだが、やはり別々に観測して、同一条件でやると、観測のリズムも良くな り、制限にも入りやすく、時間的にもほとんど同一である事が分かった。やはり、自己流に流さ れず、基本に忠実である事が一番のようである。 ●三脚の据え方 機械の高さとは、測点の標石の頭の高さからの高さであり、地表面からの高さではない。ま た、機械の高さを示す位置についは、機械の横についている器械高マークの位置である事を 教わる。 機械の高さを同じにすれば、高さの偏心を考え無くても良いので1.4メートルとして、各々コン ペックスで高さを測りながら、三脚を据えていくが、単純に三脚をたてるだけであれば、日頃鍛 えた技をみろとばかり簡単にすえれるのだが、そこは機械の高さを1.4メートルにしなければな らず全員悪戦苦闘している。ほんのちょっとした事で、すぐ高さが変わり、測点の位置から外 れてしまう。 やっと、出来たと思い、機械を上に乗せると、ねじを使用して、外から見ても明らかに、機械 が傾いてしまっている様にみえる据え付け方になったり。三脚がえらく、いびつな形の三角形に なっていたりする。 それでも、何とか、準備完了。 さあ観測だ、年だけ食っている私が最初に観測する事になった。早速水平角から観測する事 になるのだが、自分の使用しているメーカーのものでないため、ねじの場所や締め付けかたが 相違して、なかなかスムーズに観測が出来ない。やっと観測を終了したが、どうも観測値がば らばらである。「あれっ、おかしいな。器械が悪いのかな。」 自分の腕の悪さを棚に揚げて、助教の方に、「どうも、器械が悪いんじゃない」と厚顔無知に 聞くと。「あのう、この器械ちゃんと据え付けされていますか。どうも、気泡管の気泡は合ってい るかもしれませんが、見た目にも器械がいびつになっていますよ。」更に、「三脚、良く踏み込ま れていますか。」 「ええっ、そんな事関係するの」 そういえば、明らかに光波測距儀のねじが三っつとも高さが違う。更に、人の器械の為、私 の肥満体を気にして、軽く踏み込んだ程度であった。 日頃の自分の仕事ぶりが出てしまう。反省。 なお、最近の光波測距儀には傾きを自動で補正するようになっており、その傾きを表示する 様にもなっている。一度自分が据え付けた器械がどの程度傾いているか知っておいても良い のではないだろうか。案外自分が思っているよりも傾いているものである。 ●着脱式とシフト式 今回は5角形のトラバース測量であるため、いきなり5測点総てに三脚を据えて、着脱式の 反射板と光波測距儀の頭だけを据え付け変えての観測となった。 これであると、求心については、一度求心しておくと、その後は、据え付け変えるだけで、時 間を取らず簡単に観測が出来る。 全員が協力して観測するためにはやはり着脱式であった方が良い。光波測距儀や反射盤の 上盤だけを取り外し、そのまま取り替えるだけでどんどん観測する事が出来、時間の節約にな る。 私の機械は残念ながらシフト式である。 開業当初に、業者に「土地家屋調査士さんは、20秒読みで充分ですよ。求心するにしたって シフト式の方が簡単ですよ。それに10秒読みだと20万以上高くなりますよ。」と言われ、いわ れるままに買い、いろいろな付属品も増え、光波測距儀の買い変えにあたっても、10秒読み の器械にはしたのだが、附属品との絡みから、いまだにシフト式を使用している。 そのため最初から着脱式にしておけば良かったと残念に思ってい る。 しかし、「シフト式であっても、10秒読み以上の機械は2級経緯儀ですから、あなたの機械は 2級経緯儀ですよ。いい機械なんですから。どんどん使って下さい。」私としては、肩身が狭か ったのだが、少し安心する事が出来た。 しかし、今後の新人さんには、私のようにならない為にも、是非とも10秒読み以上の着脱式 の光波測距儀を薦めたいものである。最初からであればリースの料金の追加額も知れてい る。だが一度買ってしまうと、その差額だけの追金では器械を交換してくれないし、まず交換と いう事自体が無理であろう。 ●2対回 今回の基準点研修については、4級基準点の作業規定で研修を行っている。したがって水 平角は2対回、鉛直角は1対回、距離は斜距離を2セット2回の観測である旨の説明があっ た。我々調査士は2対回という事をしない、下手をすればトラバース測量であっても半対回で 観測してそのままにしている場合が多い。 正位の観測であれば、普段のとおりの観測で良いが、180度回転し反転した、反位の観測 である。最近の光波測距儀は反転しても、反対方向でも、デジタル表示されるため、読み取り 自体は簡単だが、ねじは総て、反対まわしになり、かつ、鉛直角の調整ねじの位置は完全に 反対側になる。 また、2対回目については、反転した位置での観測であり、270度からの水平角観測を始め る事になる。これは、最初の正位での1対回目の観測は0度輪郭、そして2対回目は90度輪 郭で開始するためであり、器械のもつ目盛りの誤差を違った位置の目盛りを使用する事によ って、誤差を消去するためであるとの説明がある。 この説明は分かるのだが、何故2対回目の最初が270度から始まるのかピンと来ない。 これは2対回目は反転した位置ではじまるため、90度の裏側の位置は180度を加えた角度 となり270度になるという事である。 3対回の場合は、180度を3で割った値の0度、60度、120度の輪郭で観測するが、それ ぞれの対回の最初に観測する角度は1対回目は正の位置、2対回目は反位そして3対回目は 正位となり、それぞれ観測を開始する角度は0度、240度、120度でそれぞれ開始する事に なるそうだ。 光波測距儀の上部固定ねじと下部固定ねじをそれぞれゆるめて角度を合わせて観測を開 始する。 だが、2対回観測を行った際慣れておらず、下部固定ねじをきっちり固定せずに、観測し、1 対回目の観測値と2対回目の観測値がとんでもない値となってしまった研修生もいたようであ る。 ●倍角差、観測差 水平角観測の2対回の観測が正しいかどうか、その制限として、同一方向への観測角の1対 回目の観測角の合計値(r+l)と2対回目の観測角の合計値の差を倍角差という。 更に、今度は1対回目の正位での観測値と反位での観測値の差(r−l)と2対回目の同じ差 の較差を観測差という。これが4級基準点では30秒と20秒の制限であるという。 だが、観測手も不慣れなら、手簿者もそれに輪をかけたような初心者であるため、観測手が 観測値を読み上げるにもかかわらず、その観測値を復唱しながら、マス目に数字を書き込む のに精一杯で、これらの制限の暗算が出来ない。それどころか、後視点の観測の値を差し引 いて、観測角を算出するにも、度、分、秒の感覚に慣れておらず、なかなか計算が出来ない様 である。2対回の観測が終了したにもかかわらず、手簿者は、今から倍角差、観測差の計算 にとりかかろうとしている。 電卓を使用したり、二人掛りでやっと計算、その挙げ句が制限内に入らず再測となり、時間 のかかる事。 ●鉛直角 鉛直角については、尚更である。1対回なんかした事が無い、トラバース測量を行う時でも、 面倒臭いと鉛直角を観測せず、いきなり水平距離を測距するのみとし、念のため、前視方向、 後視方向となった時に、距離をかならず両方向から観測して自分なりの勝手な判断で較差が 3mm以内ならOKとしていた。 従って、鉛直角の正反観測の1対回という事になると、水平角観測の時のように較差の制限 といったものがどうなのか、どういった点検の仕方をするのか解らない。 更にはその1対回観測の平均値の出し方さえ解らない。単純に考えれば正の角度と反の角 度を足せば360度になるはずだから、正の角度だけでもいいんじゃないの。と単純に思ってし まい、鉛直角の観測が無駄な様に思っていた。 そのため、両方向から、水平距離を観測し、その較差で良否を判断していた。 だが、実際に観測してみると、 正(r) 90度08分50秒 反(l)269度50分55秒 正+反(r+l)359度59分45秒 という、意外な結果になってしまう。水平角の観測ならば、ほとんど360度になるはずなのに と思いながら、私以外の観測者にあってもほとんど同一の結果であった。 この事実に驚くとともに、正、反の角度を加えた角度と360度との較差が制限になるのかと 思っていたが、点検のためにもう1方向の鉛直角を測り、その正、反の観測角の合計値同士 の較差が制限になるという。これを高度常数という。この言葉を今回の研修で始めて知った。 この高度定数の鉛直角の較差が30秒が制限であるという。 また、地球の丸さの誤差を消去するために、双方から、鉛直角を同時に観測し、その平均値 をとり、球差を消去する方法もあるらしい。どうも我々は地球規模の話になるとピンと来なくな る。 ●暗算 また、この鉛直角の平均値の出し方がどうも暗算には不向きな計算である。平均値を求める ために、2Z=r−l の計算そして、90±α=Z となりαの値を出して計算終了となるのだ が、これがなかなか暗算が出来ない。まだ水平角の計算であれば、何とか計算できるのだ が、この鉛直角だけは、はなから360度を加えないと計算出来ない。上記の例だと、 2Z=90度08分50秒−269度50分55秒 仕方なく、この結果に360度を加えて 2Z= 90度08分50秒−269度50分55秒+360度となり 2Z=180度17分55秒 Z= 90度08分57秒5となり四捨五入して90度08分58秒 さらに90±α=Zであるから α=−0度08分58秒となる この一連の計算を暗算でしなければならない。 そこでもたもたしていると、「鉛直角のr+lは簡単に計算出来るでしょう。この値が360度より 多ければrの鉛直角にその越えた角度の半分を減ずればいいし。逆に少なければ少ない角度 の半分をrの鉛直角に加えれば、Zの値は出るし。それが分かれば、αは90度よりも多けれ ば90度から越えた角度の分をマイナスの表示にすればよい。逆に90度より少なければ90度 より不足する角度をプラス表示すればいいんですよ。」と講師の怒鳴る声が聞こえる。 ここでの例だとr+l=359度59分45秒はすぐに暗算出来る。 更にこの角度が360度より15秒不足している。したがって15秒の半分の7.5秒を鉛直角 のrの角度90度08分50秒に加えると90度08分57秒5が分かり、秒以下を四捨五入した 後、90度との差を考え、天頂が0度であるから90度以上であれば下向きの方向になりマイナ ス表示となる。したがってα=−0度08分58秒を簡単に得る事が出来た。 ●距離 水平距離しか観測した事の無い私にとって、光波測距儀のボタン操作も水平距離を主体に 入力しているため、ボタン操作が面倒臭いという理由で、斜距離を測った事の無い私は、観測 する度に間違って水平距離を測距したのではないかと不安になり、光波測距儀を再々覗き込 む。 三脚を使用して反射板とミラーを使って観測なんか、ほとんどせず、ピンポールとピンポール プリズムしか使用した事のない私が感じた事は、2セットの距離の測定、つまり4回の距離測 定にかかわらず、距離のばらつきがほとんど無いという事。また、ピンポールの観測の場合、 傾きがどうしてもあり、更に同一の距離であっても異なる方向からの観測であれば、どうしても ばらつきがあり、同一のセットであっても2、3mmのばらつきを経験している私にとって、えらく 安心感を感じる。 ●求心望遠鏡 だが、この三脚を使用した測量にも思わぬ盲点があると言う。果たして求心がきっちりなされ ているかどうか。 基準点測量の研修にあたって、求心については垂球を使用しなさいという注意があった。し かしながら、日頃、早く器械を据え付けが出来る事を自慢している調査士に限って垂球を使用 した事がなく、求心望遠鏡で求心をしている。現場に行き、土建屋さんから「こんな難しいところ に、下げ振りも使わずに、よく器械をたてれるなぁ。私等だったら10分以上かかるぜ。」と言わ れ自慢げに光波測距儀をたてた経験は1度や2度ではないだろう。 「下げ振りを使った事なぞここ2、3年無いぞ」と言いながら、それでも講師が恐いため、皆、 下げ振りを使用して求心していく。 器械を設置。下げ振りと測点が一致したのを確認後、いつもの癖で、きっちり器械の求心が 出来ているかどうか求心望遠鏡を覗きこむ。「あれっ。ずれとるぜ。」なんと、0.5ミリ程度ずれ ている。今回の研修にあたっては、測量機器メーカーの協力で、器械の調整が完了したものを 使用させてもらっている。 0.5ミリ程度であれば、下げ振りと求心を目で確認しても分からない程度であるが、日頃調 整を行っていない、我々の器械であるとかなりのずれがあらわれる危険性があるそうだ。ある 調査士さんの器械は5ミリ程の相違があったそうである。 きっちりしたトラバース測量をしたにもかかわらず、思った様な精度が得られない場合。こん なところに原因があるのでは。皆さん一度、点検しておいてはいかが。 ●手 簿 手簿について、その記入についてはペンかボールペンという注意があるにもかかわらず、暗 算が出来ない。記載の仕方に自信が無いという理由から、ほとんどの方が鉛筆で記載。中に はこっそり、誤りを消しゴムで修正した方もいたようである。 講義の中で、必ずインクかボールペンでと言われ、誤りがある場合は必ず修正が分かるよう にして訂正する事と厳しく言われたが、やはりそこは土地家屋調査士である。地積測量図は公 開しているが、その資料等については公開した経験の無い者がほとんど。最初の野帳から、 お客さんに見せるという事があれば、手簿もきっちり整理して渡す必要がある。当然、基準点 測量であれば検査機関に提出して、検査を受けなれればならない。やはり、我々の測量は一 人よがりな測量なのだろうか。 また、手簿には、必ず始まりの時間と終わりの時間の記載が必要である。観測時間について も制限がある事をここで知る。後で助教の方に、「本には観測の時間についての制限は無かっ た様ですよ。」と聞くと「本には無いかも知れませんね。でもこれは測量の常識ですよ。やっぱり 適正な時間というものがありますよ。」 更に、手簿は当然手簿者が観測者の観測値を復唱しながら記載し、記載した値や計算値の チェックを行うが、必ず後で、それらについて全部観測者もチェックしなければならないそうで ある。二重、三重とも言える誤りの排除に感心をする。 私は、恥ずかしながら現在使用しているトランシット野帳さえ、その正式な記載方法を知ら ず、完全に自己流で記載している。当然、現場に何等かの事があれば、この野帳に記載して おき、後日のための参考にもしているのだが、果たして、私以外の人間がこの野帳をみたとき に同じ事が分かるだろうか。更に、長い月日が流れた時、私自身が理解出来るであろうか。 この手簿の整備された桝目をみながら、私は考えざるを得ない。 ●標 高 投影補正をするにあたって、平均標高を計算する必要がある。地球の半径6370キロを基 準として、その場所、つまり標高により実測距離が表す距離が異なるため、同一の距離にする ためには、観測点と視準点の標高を知り、その標高を2分の1する事により観測した状況の平 均標高が分かり、知り得た平均標高を準拠楕円体上の標高として、観測した距離は本当にい くらなのかを算出しなければならない。 当然、いきなり本当の標高が分かる訳ではなく、概算値である。与点の既知の標高から高度 角と距離で高低差を計算し、順次とりつけ点までの標高を計算する。この計算を行なう時に器 械高を一致させておくと計算が楽になるという説明もあった。 我々調査士にとって、高さという事はあまり気にした事が無いのが本当の処である。時々、 断面図に高さを入れてくれとか、特殊な仕事で標高を入れる事はあるが、私自身が光波測距 儀で高さをとって良いのだろうかと不安になり、光波測距儀とレベルをならべて、ピンポールと スタッフを交互に使用しての高さをとったりしている。 だが、この研修のおかげで、丁寧に高度角さえとれば充分利用出来る事がわかる。 ●器械の癖 観測を終了し、計算のために研修室に戻ると講師から、「全部観測は出来ましたか。」と労い の言葉の後、「現場できっちり点検が出来ずに、現場から帰り計算をしたら、どうも観測の値が おかしい。制限を越えている、本当は再測をしに現場に行かなければならないが、ものすごい 山の中なんかだともう一度行くの嫌だ。という事で観測の値を変えてしまう人がいたりします が、これは専門家が見るとすぐわかるんですよ。」 日頃、「このデータどうもおかしいな、較差の制限を越えてしまうぞ、どうも、この対回のここが おかしいな、この値だけ正常だったら、まともなのに。ええいっ、10秒ずつ、縮めてしまえ」と安 直に考えたりしている私にとって思わずドキッとするような言葉がある。 話によると、同一観測の対回の中で正位と反位の観測値は器械の癖で、どちらかの値が常 に大きくなる癖があるらしい。したがって、1対回目は正の値が、2対回目は反の値が大きくな る事は無いらしいのである。こんな事は始めて聞く話だ。自分自身の今までの観測で、そんな に規則的に観測値が変化した事は無い。現に今回の観測値をみてみても、全くバラバラであ る。 講師の言われる、「器械の癖」は、ある一定水準以上の人がきっちり器械を据えて観測した 場合におこる事であるらしい。したがって我々はその水準まで、遥かに及んでいない。調査士 もある一定の測量の分野の専門家であるためには、少なくても器械の癖が解る調査士になり たいものである。 ●座標計算 観測した結果により、一度開放トラバース測量の要領で実際の観測角を使用し、既知の方 向角から取り付けの方向角までを順次計算して行き既知の取り付け方向角との差を比較。当 然差が生じるが、我々のトラバース測量の閉合差とは全然異なる差である。5観測点で閉合誤 差が20秒程度であれば、今まではまあまあの精度だと自分では納得していたのだが、どうも その程度で満足していたのではいけないらしい。 今回は研修という事もあり、助教の方も黙っていてくれた様である。 制限内にあれば誤差の配布少なかろうが、多かろうが同じである。取り敢えず各観測点への 誤差の配布について、差を各観測点の数で割り、出て来た整数についてはそのまま、各測点 に配布し、残りの余りの数については適当に配布すれば良い、確か45度に近い値の処に配 布すれば良いというように本でよんでいたのだが、どうもこれは私が誤りを覚えていたようであ る。 正しくは以下のとおりらしい。 @誤差を観測数で割り、補正量(小数点以下)を出す。 A一番目の補正量はそのまま少数点第1位を四捨五入し、確定する。 B二番目以降の観測点については少数点以下の値を持った補正量とその観測点の順番を掛 けた値について四捨五入し、該当観測点までの補正数の総和を引くことにより、その観測点の 補正値が決定される。 これで、角度(方向角)が確定した。今度は距離である。 確定した、方向角と直角座標面上の距離を使用して、順次座標を計算していくと同様に既知 点である取り付け点との座標の差が生じる、これも角度と同様にX方向、Y方向に個別に補正 して近似座標が決定される。 ●電 卓 以上の経過を電卓で計算していくのだが、我々が電卓に期待している事は四則演算のみ で、詳しい機能、特にメモリー機能なんて全く使用した事がない。100近い機能を持った関数 電卓もその使い方が分からず、折角の多機能も違ったキーを押してしまい、その解除に悪戦 苦闘し邪魔になってしまっている。 取扱い説明書なんか、「もういらない。」と読まずにごみ箱に直行している。そのすざまじい技 術革新により、その機能を使用すれば誤りなく簡単に結果を出せるにも関らず、我々はそれを 単なる不精から放棄してしまっている、パソコンの測量ソフトに慣れてしまった調査士、「飽食 の調査士」なのかも知れない。現場で即、役に立つ電卓、これがあるにも関らず使用していな い我々。使用しないのか。出来ないのか。 率直に言うと私は現場で即座に電卓を使用出来ない。その機能については何とかわかる が、使用する公式、的確な判断が出来がたく、どうしても事務所に帰り、パソコンの画面をみて からでないと判断しかねる。 慎重と言えるかもしれない。しかし、我々は技術者であり、プロである。折角現場で対応する 事の出来る道具がありながら、その道具を使いこなせなくて真の技術者とは言えない。
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