突風・倒れた

(GPSのアンテナが倒れた)


●しぶしぶ

それは、一連の過密スケジュールのために起ったのかも知れない。
 年度末が近づくと、いままで理由をつけて伸ばし伸ばしていた仕事もどうしてもやらざるを得な
くなる。
 町からの依頼があった町全域に2級基準点を5年計画で100点作製する計画(基準点を設置
後、現在未登記の町道拡幅分の分筆登記を同時に行なう)。この仕事はさすがに規模が大きく
て、なかなか仕事が手につかなかった
 取りあえず今年度は20点という計画だが、そのつもりで与点に登ってはみたももの、条件の
よい平地の場所の与点は亡失しており、他の山頂にある与点も視通の条件が悪く、大量の伐
採が必要。しかもかなりの距離を器械を背負いながら歩かなければならないという条件で、い
つものように一気に観測まで出来ずにいたが役場から矢の催促があり重い腰を上げなければ
ならなくなった。
 同時に測量会社を経営する兼業の調査士さんから、
「急いで基準点を観測してくれんやろか。町から基盤整備事業の確定測量が出たので、確測
基準点の設置をしてもらいたいんやけど。」と年末に電話があった。同一支部の調査士仲間で
ある。みんなに話すと「やってあげたらいいが。」との一言。
 いずれも年度末に仕事を完成させなければならない。
 とにかく何とかしなければならない。



●過密スケジュール

 GPSを仲間と購入以来、既に1年が経過しようとしている。月に2回のペースで、土日を使
い、GPSの観測や準備そして基準点測量を行い、その合間をぬって自分の仕事をしているよ
うな状態である。
 みんなのスケジュールを調整し、2月の最初の土曜日、日曜日を確保。だが二つの現場とも、
かなりの範囲の現場。町全域の方は、第1期分の基準点20点のうち既に10点程を作製して
おり、後10点の作製なのだが、現地の与点はかなり厳しい状況。伐採をしながらの観測で、
既に3点については観測しているが、まだ2点については伐採が済んでいない。伐採を行いな
がらの観測となると、全員が山に登り作業をする必要があり、その上り下りに必要な時間、伐
採の時間、器械の設置の時間でどうしても半日がかりとなり、いくらGPSが夜間観測が出来る
とはいえ山の上で日が暮れるのは恐怖ある。日の出から日の入りまでしか観測出来ない、従
って丸二日の日程が必要である。
 そしてもう一つ現場は、この現場から約2時間半の遠方にあり、これまた広い範囲の現場で
2級基準点4点。3級基準点10点を観測しなければならない。比較的与点には楽に登れ、し
かも近距離である事から、こちらは何とか1日で終了するかも知れない。
 GPS仲間は忙しく仕事をしている者ばっかりである。移動距離は長いが、全員の事務所から
すれば、総て南の方向であるため、国道56号線を南下するのみである。
「何回も行ったり来たりするより、一気にかたずけてしまおうや。」
「ほうじゃね。それのほうがええね。」
かくして話はまとまり土曜、日曜、月曜の連続三日間での観測が決定された。



● 集合

 まず最初は町から依頼のあった仕事の観測である。時間を有効に使う為、冬の夜明け時間
である早朝6時30分からの観測は当たり前。午前9時を経過する観測は避けたいため、どう
しても午前9時前に観測を終了させたい。当然のように午前7時前後の観測スタートとなってし
まい。その観測に間に合わせようと、前日みんなの仕事の終了してから集合出来る時間21時
にいつものように私の事所に集合。
 仕事とはいえこの時間の集合は、なんともわびしいものがある。家庭での粗大ごみとなってい
る私や宝さん、ついでにW氏も仕方がないが、新婚のOさんにはなんとも気の毒である。
とにかく21時には全員集合。夜道を40分程走り目的地の宿舎に集合する。
 だが、「そば屋の出前」ことY君がまだ来ていない。彼はこの仕事を引っ張ってきた張本人であ
る。私の事務所からの出掛けにY君の自宅兼事務所に電話を入れたが
「今、お風呂に入ってます。」の、奥さんの一言から疑惑がみんなに沸き上がる。
「Y君泊る気持ちなんかないぞよ。」
「身体きれいにして、他に行きよるんぜよ。」
「こっちに来るいうて、口実に使いよるんやろか。」
 日頃、全く信用のないY君。居ても居なくても悪口を言われる。素行だけは気をつけたいもの
である。それでも悪口を言い終り。ビールとつまみを頼み、少し良い気持ちになったころトレー
ニングウェアに身を包んだそば屋の出前はビールとつまみを持って現れた。これで何とか全員
集合。品行方正な町で居酒屋が無い。おかげで珍しくその日の内に床につく。



● 天気は

 翌朝、6時起床。6時30分に宿舎を出発。
 宿泊した夜、女将さんが「明日の朝食どうしましょうか。」即座にW氏「朝早いんで、いりませ
ん」のやりとりがあり、この後ずっとそのやり取りを聞く事になる。(たこ部屋に捕まってしまっ
た)。
「まず、与点に行きましょう。伐採せんといかんけん。」
 前日、結構お腹に詰め込んだのだが、前日の分は前日の分で、本日の食料にはありついて
いない。空腹に耐えながらも、だらだらと続く山道を登る。
「今日は道があるけん、楽なよ。」というW氏の言葉をそのまま受け取る人間はいない。最初か
ら、基準が違っているため、彼の言葉は2倍増し(2割り増しではないので念のため)で聞いてお
かなければならない。
 まあ、普通の調査士さんよりは大分山登りになじんで来たとはいえ、もともと鍛えかたが違う。
雪がちらつく中を登って行く、延々と続く山道。四十路を越えると腰に少しずつこたえ、もうしば
らく休もうかと思う頃、やっとなだらかな山道が途切れ、急傾斜地を登る。途端に1回、2回と休
息。それでも何とか10分ほど頑張ると頂上に到着。



●冬の竜巻

 やることはもう決まっている。全員手に釜、鋸を持って、用意をしている。この辺りはさすがに
慣れてきた。いや単に諦めているだけなのかもしれないが、GPS観測でもTSでの基準点作業
でもこの行為が無いとさびしく感じるのは私だけだろうか。
 もう、趣味のようになってしまっている輩もいる。嬉々として木に登り、枝を鋸で切り落として行
く、桧や杉のような植林している木は面倒でもばっさり切り倒す訳にはいかない。いつしか相撲
取りのようだった木も、ダイエットに成功。中には幹だけになった木も出現。
 上空はぽっかり開いたのだが、周りの木がまだ邪魔なため高さが必要と、高さが3メートルに
なる三脚、スカイレッグを据え付ける。その上に1メートルのポールを4本継ぎ、その上にアン
テナを載せ、合計7メートルの高さに設置。GPSの受信機を設置した場所から90度の角度に
なるようにトランシットを2台設置し、垂直になっているか確認する。ポールに紐を結わえ三方
向から引っ張っており、微調整はそれで行い垂直を保つ。
 7メートルの高さを標石かせアンテナのてっぺんまでトランシットで見ようとすると、かなり距離
が必要で、尚且つ、その視通の確保のため、またまた伐採になる。
 微調整もこちらを動かせば、あちらに傾くといった感じでなかなか難しい。それでも何回か繰り
返し、真っ直ぐになる。後は観測中風が吹かない事を祈るだけである。



● 観測開始

 与点の準備は完了。指令塔であるW氏を残し、他のGPS観測者は急ぎ山を降りる。急がな
ければ、本日の他のセッションの観測が危ない。兎に角急ぎ山を降り、今回のセッションの受
け持ち現場へと向かう。
 各自、地図を見ながら、受け持ちの現場へと向かう。ここは田舎町、どの地形も同じような風
景、道は非常にわかりにくい、平地の部分は丁度たこが脚をのばしてべったり休んでいるよう
な地形で、周りは総て高い山に囲まれており、一度道を間違うと、中心部に引き返さないと、他
の場所に移動出来ないような地形である。
 各自、「ここ、どこだっけ」と言いながら、必死の形相で住宅地図をコピーした案内図で動き回
る。よくこれで観測時間が遅れなかったものだと感心。



● 迎え

 今回の最初のセッションが開始される。各自不慣れな町の道順に戸惑いながらも、観測場所
に到着。観測開始の時間は設定されていない。準備が出来たものから電源を入れ、全員が揃
った時間から1時間10分程度の観測を行う。したがって遅れたものの責任は重い。なにせ後
4セッションも残っているのだ。
 何事も無く、下山して15分後には、全員設置完了。観測が開始される。
 30分もたった頃、話好きのY君、一人きりの沈黙に耐え切れず、トランシーバーで話し掛けか
ている。
「Wさん、生きとる。」
「おおっ。生きとるぞ。」
「何しょるぞな。一人でさびしかろ。」
「さびしいないぞ、今、まきを作りよるぞ。」
 大量の伐採を行ったため、山頂の三角点には雑木が大量に転がっている。それを鋸でまきに
する程度の大きさに切り。整理しているようである。
こんな会話があり、やがて1時間10分が経過。
「観測を終了します。迎えにきてや」と山からのお告げがある。
取り急ぎ、観測現場から山裾まで車で集合。山頂から受信機等を整理して降りてくるW氏の荷
物を運ぶために、またまた山に登っていく。今度はさすがに手ぶらだし、道も本日2回目で大
体覚えている事から、時間が短く感じる。
だらだらした登り道が終了した位置でW氏と合流。荷物を分担して下山。
後、2セッションは平地で観測を行う。まだ食事はさせてくれない。
 ついに、朝食も昼食もとらしてくれないようだ、大食漢の私としてはたまらず、(現場を離れる
事は許してくれないのだが)。だれも人通りが無い観測場所だったのだが、お店まで車で5分
程度の場所でもあり、観測中ではあったが車で買い出しに出かけ、食料の調達を行う。他の仲
間もこの食料を食べたから同罪である。W氏もこの食料をつい食べてしまった。赤信号みんな
で渡れば恐くない。



● 偏心点

 本日の最終セッションの第4セッション。今日最後にまたまた与点登りである。場所はお宮の
裏山で標高200m程の山。この与点は三角点は桧林の中にあり、本点での観測が難しく、ま
た通常の偏心も後視点の与点の視通の確保が難しいため、方位標による偏心をする事にな
っている。事前に偏心点の大体の位置を定め、山頂のそこから見える場所は大体解っている
のだが、まだ実際に設定していないので、山頂に上がった後、連絡を取り合って場所を確定す
る必要がある。そのため新居浜の宝さんを方位標の移動係として一人平地に残ってもらい。
後の全員での与点登りとなる。
 時間は既に14時30分を過ぎようとしている。神社の裏山の三角点、町道に車を止め、トラン
シット2台、三脚2台、スカイレッグ1脚、1メートル80の脚立1脚そしてGPSの受信機一式を
各々が背負い、手に釜と鋸を持ち伐採の準備をしながらの与点登りを開始する。いつものよう
に喘ぎ喘ぎ登っていく。それでも我慢する事30分、なんとか与点に到着。
 頂上は少しなだらかになっており、高さ8メートル程の植林された桧林の中。三角点の位置か
らは後視点となる三角点が見えず、通常の偏心観測は出来ない。
偏心点に予定している場所から本点への視通確保のため、またまた雑木を伐採。ついでに偏
心点から方位標までの視通も小枝を落とし、障害物のないように伐採をする。
 当然、障害物の比較的少ない偏心点(といっても、桧林の終わりの場所で半分ほど上空は開
いているが、半分は高さ6メートル程の桧がある)についても、上空の視界の確保のため、竜巻
は自動的に発生してしまった。
 そして、スカイレッグを据え付け、やっぱり高さ6メートルのアンテナ高を確保。



●方位標による偏心

 方位標担当の宝さん、やはり待つ身にとって時間は長く感じる。
 「そっちはどうなってますか。」という連絡が再々入って来て、じりじりしているのが解る。取りあ
えず、位置だけは決めて置く必要がある。
「宝さん、今いる位置から川沿いに、宿舎の方向にゆっくり車で走ってもらえますか。」
「了解。」
 偏心点からは肉眼でも宝さんの車が見え隠れしている。こちらから障害の無い状態で見え、し
かも上空が開け、交通の邪魔にならない場所を探さなければならない。
やがて、方位標を見る為に伐採した場所から、くっきり走る車を捕らえた。
「もう少し、ゆっくりお願いします。」
「はい、この程度ですか。」
「もう、ちょっと下がって下さい。ああっ、そこらです。周りの状況はどうですか。」
「周りは障害になるものは無いようです。」
「はい。隣の建物は大丈夫ですか。」
「15度に入りません、大丈夫です。」
「はい、そしたら、その位置に鋲を打って準備して下さい。」
「反射板を据え付けた方が良いですか。」
「いや、GPSのアンテナをはさみますから、GPSを設置して下さい。」
 こちらも、器械高を同様にして、本点にミラーそして偏心点に光波測距儀を据え、方位標を後
視点として偏心観測を行う。更に本点に光波測距儀、偏心点にミラーをそれぞれに入れ替え、
鉛直角を観測する。念のため、水平距離と比高もそれぞれにとって確認。間違いないようだ。
また、また急いで、最終セッションの観測のためW氏と応援のH氏に残し下山、それぞれの観
測現場に住宅地図を見ながら散らばって行く。



●ヘッドランプをつけて

 最終セッション終了。時間は18時を越えている。さすがに冬場、既に暗くなっている。車もヘッ
ドライトをつけて走行。
 頂上の二人の荷物運びを手伝う為に、急いで山を上がっていく。前回の夜間観測で活躍した
ヘッドランプを付け、山を登る。昼間登ったばっかりで、道らしいものがなんとなく解る。だがこ
れ以上暗くなっては、もうわからなくなる。とにかく急いで下山させなければ、いくら低い山とは
いえ、不気味な事この上もない。
 山道が途切れ、桧林を横切り、またまた山道があり、そこをしばらく行くと、今度は雑木林の
中を通り、またまた桧林へと出て、断崖絶壁があり、その横をしばらく進んで、桧林と雑木林の
中の足場の良い方を通り過ぎると、岩場が出現。それを乗り越えてやっと目指す桧林に到着。
ほとんど真っ暗。やっと二人の懐中電灯の光が見える。今、やっと器材をかたずけ終ったばか
りのようである。
 「お疲れさん。寒かったろう。」
 「すいません。よう冷えたい。」
 「いそいで降りよう。」
 急ぎ山を降りるのだが。先程の登りの反対の順序で降りていけば良いのだが、登りは道の形
が微妙に月明かりに反射して分かるのだが、山の下りになると、月明かりの反射もなく道の形
跡らしきものが全く解らなくなる。岩場まではすぐ分かっが、桧林と雑木の足場の良い場所を
選ぶ道になるとただ人の通った後だけの道である為、全然わからなくなった。
雑木の中をただ真っ直ぐ歩いていると、完全な行き止まりになった。
「これは違うぜ。」
「もうちょっと、行かんといけんのじゃない。」
「いいや。違うぜ」
とやっている所に、遅れて登ってきた若い二人の声と懐中電灯の灯かりが横で見えた。
「ああっ、こっちよ。」一安心。
やっぱり、山の夜道は恐い。
 ここで、彼らと合わなかったら、いきなり断崖絶壁の場所に出てしまって。転落。明日の新聞
紙面を賑やかしていたかもしれない。
やっと、本日は終了。おいしい晩御飯にありつける。
 だが、W氏、データの取り込みが終了するまでは、勘弁してくれない。完全におあずけ状態。
頭の中でご飯とビールに羽が生えている。
それから1時間後やっとデータの取り込みが終了。やっとご飯にありつけた。
だが、お善を持ってきた女将さんが「明日も朝食、いらないんですか。」と確認すると、即座に、
W氏「いりません。朝早いですから。」(ああっ、やっぱりたこ部屋なのだ。)



● けちのつき始め

 翌朝、6時起床。6時30分出発。宿の支払いは後でしますと書き置いて、現場に出かける。
当然朝食は無い。午前9時までに1セッションはどうしても済さなければならない。
本日は、最後のセッションだけが山のぼりだが、これも車でいける為、体力的には楽な一日で
あるが、朝から風がきつい、小雪も舞っている。普通だったら測量には出かけない日。それで
も観測スタート。だが、やっぱり何かは起こってしまう。
それは、第2セッション目、いきなりトランシーバーに
「倒れました。風で三脚が。」とO君の悲鳴に近い声が入ってくる。
W氏「アンテナ大丈夫かな。」
「アンテナは大丈夫です。ゆっくり倒れたからなんともありません。」
W氏「了解。直ぐ電源を落として。」
「はいっ。今電源を落としました。」
W氏「そしたら、また電源を入れて観測を開始してください。」

他のみんなも慌ててトランシーバーで
「現在の観測を終了して、再度観測を開始するんですか。」
「はい。そうして下さい。」
 うかつに、電源を落とすと、他の4人の観測に影響するため、やらなくてはならない事が解って
いてもつい慎重になり、指示を待っての行動になる。
5分後、同一の場所で新セッションとして観測は開始された。
「どうも、すいません、川の欄干の横の基準点鋲でコンクリート擁壁に上塗りしたコンクリート部
分がひび割れて、ぐらぐらしていたので、うまく三脚が据えれず、突風がふいて、倒れてしまい
ました。すいません。ちょっと目を放していた間だったんです。」と事情説明と誤りの声がトラン
シーバーから聞こえる。
 だが、これがけちの付き始めだった。今までのGPSの観測では、一人にけちが付くと、最後ま
でその人にけちが付くというジンクスが出来上がりつつあった。
おかげで少し、観測時間が延長されたが、それでも第3セッションまで終了。



● アイスバーン

 標高700メートルの泉ケ森には三等三角点がある。見晴らしが良いためテレビの中継所が3
個もあり、頂上まで車が行けるよう道がついている。だが前日からの雪がふったりやんだりし
ている。頂上まで果たして車で行けるだろうか。
 不安と共に、4輪駆動の車2台に全員が便乗し、頂上へと向かう。平地に雪は全くないが、平
地から見上げると七合目あたりは薄く雪をかぶったようにみえる。
 とにかく行くしかない。出発。どんどん頂上へと登って行く。順調に上がって行く。さすがに七合
目付近から道の横に雪が残っているのが見える。それでもこのあたりは走行には影響が無
い。九合目になるとさすがに雪道になっている。それでも何とか四輪駆動だけあって何とか走
る。やがて頂上にやってくる、最初のテレビ塔が見える。ここから目的地までヘアピンカーブを
曲がり200メートル程の距離を残すだけである。
 だかそのヘアピンカーブを曲がろうとハンドルを切った瞬間。車輪が廻るだけで、車は前進し
てくれない。スリップだ、雪道がアイスバーンになっている。汗が額を走る。運転者以外は車の
外に出て後を押す。三人が力一杯押しても、まだ車輪は空回り。やむなくハンドルを切り、進行
方向に一直線になるようにバックする、ぎりぎりまでバックするとアイスバーンも少し途切れて
いる。
 そこから改めてスタート。車は一気に進む。泥でズボンを汚した三人を乗せながら後200メー
トルを走る。
 後は注意深く走るだけ、ゆっくり雪道を走り、何とか目的地に到着。
 テレビ塔と、桧が邪魔をしている為、なるべく高く上げる必要がある。当然スカイレッグを使
用、ポールも4本つなぐ、脚立を使用、ポールをまっすぐにする為、紐を三方から引っ張り、2
台のトランシットを使用し微調整。後は観測の間、風がふかない事を祈るだけである。私と今
回応援に来てもらっているH氏を残し、全員観測現場へと降りて行く。
 不思議な事に、小雪は舞ったが、風はほとんど無く、途中小雪から雨になったが、幸いにも風
はあまり無く、第4セッションの観測は無事終了。
 我々が器械をかたずけ、注意深く坂道を降りて行く。他の4人の観測は、各自移動して、この
時間帯で、最終セッションを観測しているはずである。やっと、30分掛かりで下山。
 下山すると、宝さんが観測中である。もう時間は17時が来ようとしている。おまけに天気が悪
いため、まわりは薄暗い。
 時間がまだ少しある為、宿への支払いに走る。これで、早朝書き置きを残し、出て行くという
夜逃げでもしたよう気持で、なんとなく心残りだった気分でいたのが救われる。
 そういやぁ、本日も朝食と昼飯を食わしてもらっていない。支払いを終わり、近所のコンビニら
しきお店に入るが、中身は酒屋さん、仕方無く大量の酒のつまみを買い集合場所に戻ると、全
員集まってくる。もう辺りは真っ暗。これから約1時間30分かけて、第2の現場へと向かわなけ
ればならない。全員、空腹をするめをかじりながら誤魔化し、なんとか愛媛の一番南端の法務
局の出張所のある町へと一路ひた走る。



たそがれ調査士達のGPS奮戦記
     
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