おのぼりさん

(地理院測量部に行く)

● 基準点設置作業

 話は、宝さんの公嘱の仕事からだった。
 51筆の地図訂正の仕事を請け負った、宝さん。折角の大規模な仕事であるから、基準点を
作成し、きっちりしたものにしたいという気持ちもあり。
 どうせやるなら最終的に17条地図にまで持ち込もうと、法務局の基準点作業設置作業の指
定を受け、基準点を使用し地図訂正を解消出来れば、そのまま公共座標を持つ為、最終的に
法17条地図として法務局に受入をしてもらおうと考えた。
 まずは、第一関門として法務局の基準点設置作業の指定を受ける事が可能になり。
 第二関門として、公共測量の届け出を行わなければならない。
 だが、実際の届け出をやった事がない。W氏にしてもGPSに関しては始めてである。とにかく
地理院(測量部)に行って教えてもらおうと言う事になり、時間の空いた三人で測量部へと向か
った。
 この三人の中で測量部に行った事のないのは私だけ。
 W氏は測量会社で当然のように、新婚O君は法務局主導の17条地図作成の為に、2、3回
責任者と共に来ているという。
 こうなれば、知識も面識も無い私は、ひたすら聞き役に回る事しよう、変な事を言って他の二
人に迷惑をかけてはいけない。



● 測量部で

 合同庁舎の測量部前での事。
「どこの部署の人に聞いたらいいのかな。」
ドアの張り紙をみる。「え〜っと。何々、基準点の点の記等の閲覧、謄本については〇〇係。
 公共測量の届け出等については調査係に、その他の件は庶務係に申し出下さいか。」
だが、張り紙に調査係の名称はない。
「まあ、ええが、1時になったし、中に入って聞こうや。」

ドアを開け、室内の一番近い方に、
「公共測量の事で教えてもらいたくてやってきたんですが。」
「公共測量作業規程どおりやってもらったら、何も問題ないんですが。なにを聞きたいのか良く
解らんな。担当者は今人事異動で居らんのだが。」

「お電話したら、難しい事でなかったら、いつでも良いという事だったので、今週の金曜日にお
伺いしますといっていたんですが。」
「ありゃ、誰がその電話受けたのかな。まあ、どんな事なのかな。」
「じつは、この現場なんですが」と地図を広げ。
「与点の三等三角点三つと市の作成した一級基準点1つを使用して、1級基準点を1つ、そし
て2級基準点を2つ、更に3級基準点を3つ作成したいんですが、」と観測図を見せる。
「うーん。このセッションとこれは、作業規程はクリャーしているんでしょう。それだったら、これ
でいいと思うがな。基準点の詳しい事になると。人事異動の時期で、担当者がまだ、来ていな
いんです。丁度、解る者は予約が入って、いま応対しているところですから待ってみます。」
「はい、待ちます。いつまでも待ちます。」
「基準点についての詳しい事は、解らんので、そうしたらここで待ってますか。」



●じっと待つ

閲覧台の椅子に座って待つ。
当然のように閲覧台の上にある表示をいろいろと見る事になる。
「厳しい事書いてあるなぁ。」
『図根三角点は四等三角点以下の精度である為、基準点測量には使用出来ません。』
解っていた事とはいえ、国土調査地区に住む私としては、少しつらいものがある。閲覧台で既
に、このような記載があるという事は私程度の認識しかないものが、ここに問い合わせに頻繁
にやってくるという証かもしれない。
そして、じっと待つ事1時間。



● やっと

やっと、測量会社らしいお客さんとの応対が終了し、担当の係長さんがやってこられた。
「お待たせしました。」名刺交換の後。
「今回、地図混乱地域の解消という事で、最終的に法務局の法17条地図を作成するという事
になりまして、そのために公共測量の届け出をしたいと思い、その技術的助言をお願いしたい
んですが。」
「計画書を提出していいだかないと、助言する事は出来ないんですけど。」
「すいません、この届け出をするのは始めてなもので、至急計画書は提出しますので、お願い
できませんでしょうか。」
「解りました。」
「実は、この地域なのですが。」
机の上に、今回、法17条地図を作成する事になる尻無川周辺の2万5千分の1の地形図を広
げ、説明を行う。
「三等三角点を三つ、市が作成した1級基準点を1つ使用して、1級基準点を1つ、2級基準点
を2つ。3級基準点を3つ作成したいんですが。それで、これが観測図なんですけれど。」といっ
て1級基準点を作成する観測図を見せる。
「ああっ、これがそうですか。この基線は不要ですから、この与点は要らないと思いますけれ
ど。それで与点の確認はされているんですか。」
「はい、先週。既に仮の観測を行って、与点のチェックはおこなってきたんです。便宜上、新点
を一つ作って観測したんです、これが精度管理表なんですけれど。」
「精度内に充分入ってますね。これだったら大丈夫ですね。」
係長さん、ここでちょっと思い出したように、
「測量業の登録をされていますか。」
「しています。」幸いな事に愛媛の公共嘱託登記土地家屋調査士協会は測量業の登録をして
いる。



● 話かわりますが

「あの、話が替わるんですが、基準点鋲には、公共という言葉の刻印は要るんですかね。」
「いや、要らないと思います。どっちでもいいんじゃないですかね。作業規程の中の基準点鋲の
図にも、何も書いてないですから。」
「そうですか、刻印を頼まないといけないのかどうか、迷っていたんです。」

「あっ、ちょっと待ってください、先程、私が言ったのは間違いのようです。ちょっと気になったん
で調べたんですが、測量法の中に公共測量の場合は公共測量と解るようにしなければならな
いという記載がありますので、公共という字が要りますね。」
「それじゃあ、早速刻印をするよう手配します。」
「もう、基準点鋲をいれられるんですか。」
「はい、出来れば、すぐにやりたいと思っているんですが。」
「基準点の配点を見せていただいて、変更して頂くようになるかもしれませんが、現場でそこし
かないというなら仕方ありませんね。」



●さすが

 W氏が質問の替わりにと、自分の使用しているパソコンを持参し、最近の観測結果の平均図
を見せる。
 とたんに「がちがちに組まれてますね。もっとラフに組まれた方が良いですよ。トータルステイ
ションの時はこれでいいんですが、GPSの場合はベクトルで方向性を持っていますから、網計
算をした時に調整が出来なくなります。」
 「そうですか、新作業規程の解説と運用を読んだら、路線の形の状態で簡単にしてあるので
疑問に思っていたんです。」
 「仮定網の時は、基線を先程のように使用して、計算すればいいんですけれど、実用網の時
はがちがちでは無く、その基線を外さなければいけないですね。」

「今まで、1年くらいGPSで研修をしていまして、やっと少し解りだしたので、今回、公共測量の
届け出をしようかという事になったんですが、難しいです。」
「はい、GPSは簡単になったと言いますけれど、やりはじめると、奥が深いというか、難しいで
す。標準偏差が悪いから、何故悪いというのも確立されていませんし、今は経験によってしか
解りませんから難しいですよ。」
「あの、解析の方法についての教科書みたいなものはないんでしょうか。」
「これは、今のところないですね。手探りの状態ですね。」

「標高の問題も、電離層の関係なんかがあって、夏観測したものと冬観測したみものを比較す
れば、制限から飛び出す事になります。」



● 他の基準点使用

「それと、地理院以外の作成した基準点を使用する場合は、その認証の番号等を必ず記載し
ておいて下さいね。認定書のコピーなんかも付けて下さい。どこか注意しなければならないよう
な事の記載あったりしますから、もし解らなかったら、こちらから、それをやった計画機関にもら
うようにします。取りあえずその計画機関には基準点使用の承諾をとって下さい。地理院の方
は、届け出の認証はするんですが、管理の方は計画機関になりますので。」
「それで市の作成した基準点を使用するという事なんですが、その網の形とか、その基準点を
作成する時に、今回使用する与点の三角点は使用しているんですか。」
「はい、この中の三角点の一つについては使用しておりませんが、他の三角点は使用している
ようです。前回の市の基準点はフリーネットで与点の精度を確認してから計算してありますの
で、大丈夫だと思います。これがそうです。」
「はい。これだっら大丈夫ですね。」

「プログラムのコピー検定は、今年の4月から不要になります。」

「GPSのプログラムの中のWGS−84からの変換パラメーターなんですけれどどれを使用され
ていますか。」
「メーカーの測量ソフトでは原点平行移動量による方法を使用しております。」
「平行移動は東京座標をWGS−84に変換させるパラメーターですので若干のずれがありま
すから、出来れば座標変換プログラムTKY2WGSか基準点座標92を使用してもらった方が
いいんですけれど。」
「基準点座標92については本は持っているんですが、使用の仕方が解らないんです。」
「これは1、2等三角点の各々の位置での変換パラメータが記載されているんです、だから現
場の近所の三角点を調べてもらって、その値を手入力してもらったらいいんです。TKY2WGS
というプログラムはそれを自動計算して、その位置を補完した形で修正してパラメータを計算し
てくれるんです。まあ、5キロ程度だったら、平行移動でもいいですけれど。」
「アンテナ高なんですが、新規程ではセンチでの表示という事になったんですが、記録簿への
記載なんですけれど。」
「アンテナ定数については、ミリまでありますけれど、測定値については、センチ単位で書いて
頂いて、アンテナ高についてはミリを四捨五入してセンチで記載していただくという事になりま
すね。」
「あのう、測定値もミリ単位で記載して、アンテナ定数と測定値を加えたアンテナ高の時に、そ
の値を四捨五入してセンチ単位にしてはいけませんか。」
「それはどちらでもかまいません。」
「作業規程なんですが。建設省作業規程でやれば宜しいですか。」
「計画機関の定めた作業規程を見せていただいて、それで審査する事になるのですが、出来
れば建設省公共作業規程でやっていただいた方がよろしいんですが、GPSも従来のマニュア
ル案から、しっかり作業規程の中に記載されましたので、それに従来のマニュアル案では不都
合な事も出てきております。」
「計画機関が、建設大臣宛てに作業規程の追加という形で建設省公共作業規程で行うという
風に申請すれば良いのですか。」
「そうです。それで問題はありません。」



●満足

測量部からの帰り。
「来て、良かったね。」
「うん。」
「最初は、どうなるかと思ったけどね。」
「きっと。我々が帰った後、あれは何ぞ、という話になっているだろうね。」
「そうやね。いきなり来て、訳の解らない連中がごそごそ言って帰ったんだから。」
「まあ、後でちゃんと教えてもらったし、知らない事も教えてくれたし、とにかく来て良かった
ね。」
「ところで。反対側に座っていたのでわからなかったんだけれど、パソコンの画面はどこを出し
たの。」
「この間やった、あの現場よ。」
「ああ。あそこ。」
「見せたら、少しはびっくりしてくれるかと思ったんやけどな。あっさり言われてしもうたかい。」
「まあ、向こうは本元やから、情報も早いし、実際にいろんな事が出来るからなぁ。」
三人とも肩の荷を降ろし、新居浜の宝さんが待つ現地へ、選点に向かった。



たそがれ調査士達のGPS奮戦記
     
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