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●あらすじ ついにGPSを買ってしまった。 前回の研修によって全員が購入する気にはなってたのだが、よくよく考えてみると金額との兼 ね合いもあり、本当に使用できるのだろうか。 床の間に飾っておくだけのものになりはしないか。 いろいろ心配だけはしたのだが、この連中、素面の時は元気がないが、酒が入ると気だけは 大きくなる能天気な連中。 日頃の行動にはあまり責任を負いかねるが、飲み会で言った事は責任を持たないといけな いと考えている。 とうとう前回の飲み会の責任をとってGPSを購入する事になってしまった。 現在のトータルスティションによる2級基準点の実務研修が軌道にのり、行政との結び付きも 少しではあるが出来て、本当に少額ではあるのだが町とも県の土木事務所にも基準点設置の 理解を得て、気持ち程度の補助金を出していただいている実績から、今後の数年間は、この 方式を継続して仕事をする事が出来るのでは、そうすれば、全員が労力奉仕をすれば3年程 度で返却出来るという、とらぬタヌキの何とやらで購入を決めた。 ●子供のおもちゃ 全員がGPSを使いたがっており。特に私などは、すでに四十路を越えており体力的にも下り 坂を迎え、出来れば私の業務地域、特に平地の自分が使用出来る場所に基準点を早急に設 置したい。他の調査士に先駆けて技術と知識を得たい等の欲があり、全員、それぞれの思惑 から購入を決定した。 だが、実は子供のおもちゃと同じで、あのおもちゃが欲しくなるとなんとしても買いたい、懐の 算用は二の次、欲しくなると外に目がいかない。まさしくその状況に大の大人が揃いも揃ってな ってしまった。 これだから飲べぇは始末が悪い。 利益を度外視し、使ってみたいから使うといった考えであるから、子供と同じように飽きたら そのままポイになってしまうのか。 それとも常時使用する事になるのかそのあたりは解らない。 ●さあ、やるぞ GPSの購入を決定し実際の使用方法の説明について、我々全員が集合しやすい日時という 事で、メーカーには非常にご迷惑をおかけする事になったのだが暮れの押し迫った12月28 日に設定した。 折角のメーカーのご好意の12月28日の集合であったが、やはり年末という事もあって容易 に集合とならない。調査士も人の子、やはりお金がなければ生きていけない。御用納めの日と あって、集金にいろいろと忙しい。それでも何とか11時までには全員が集合。 早速、河川敷にある四等三角点の周辺に集まり、交通の邪魔にならない場所でズラッとGP S受信機を並べて操作法の説明を受ける事になった。 交通の邪魔にならない場所であるといいながらも新興住宅地の道路上、いくら片側が河川敷 で6メートル以上の道巾が有るといっても、反対側は住宅が建っており、先程からその家のお ばさんがじろじろこちらを見ている。 どうも自分の家の車庫前に車を止めたのが気に入らないようだ。こちらとすれば十分過ぎる ほどに車の出し入れは出来る距離が有るのだが、そこはオバタリアン、自分の庭と勘違いして いる。 そんな事には負けてはいられないと操作法の説明が開始される。 ●GPSの操作法 4台のGPSの受信機をずらっと立てての講習が始まった。 何やらタコ入道というか、火星人のような器械が並んでしまった。本当に基礎からの講習であ る、このケーブルをどこにつないでといった事から始まる。果たしてこれで器械は無事動くのだ ろうか。 日頃パソコンのケーブルをはずしてしまうと今度はどれとどれを結んであったのか皆目解ら なくなる私としては不安が募る。 だが、ケーブルは一本のみであった、一安心。これならばなんとか解る。そして電源を投入、 画面に何やら表示が出てきた、しかしすべて英語で表示されている。英語なんか学生時代でさ え敬遠していたのに、今更付き合う気はさらさらない。 外国製の器械のため仕方がないそうではあるが、何とも恨めしい。 だが、メーカーもそこは心得たもので、お客の英語力を事前に収集していたのか、既に日本 語のあんちょこを講習前に作成してくれていた。後で是に頼りっぱなしになってしまった事は想 像の通り。 なんとか、あんちょこ通りに操作を行っていく、電源を入れ、受信している人工衛星の数が表 示されている最初の画面の説明。アンテナの高さの入力。ファイルネームの入力。そして観測 中の画面への切り替え。観測終了のための処理。電源を切る。操作を教わり、なんだ簡単じ ゃないかと内心ほくそ笑む。 早く観測をしてみたい。わくわく。やっぱり子供心に帰ってしまっている。 ●アンテナ高 三脚については、既存の整準台が着脱式のものでも、シフト式でも使用は可能である。私の シフト式の整準台も使用出来るとの事。 日頃みんなと基準点測量を一緒に行う時に、一人シフト式の器械を使用して迷惑をかけてい る私も何とか胸をなでおろす事が出来た。 アンテナについては、モジューラアンテナとコンパクトドームアンテナの二種類のアンテナを購 入したので、それぞれについてのアンテナ高さについて、講習を受ける。 モジューラアンテナのアンテナ高さは、モジューラアンテナの後部に収納されているテープで 器械点までの距離を測る。これは斜距離であるが、この分については後でプログラムで自動 的に計算してくれるらしい。 コンパクトドームアンテナはトランシットと同様にコンパクトドームの下の位置まで器械点から 測り、その距離に7センチ加えなさいとの事である。 モジューラアンテナにコンパクトドーム、ん、舌がもつれてしまう、英語に弱い我々はなかなか 覚える事が出来ない。ついにその形から、のっぺりしたアンコウに火星人の頭のようなタコと区 別を始めた。 どうやら私が受け持ったのはタコ、いわいるコンパクトドームアンテナのようである。これもど れが欲しいと言った訳ではなく、たまたま開けた箱の中身がそうだっただけという単純な事であ るから目的意識には程遠い。前途多難である。 ●器械の立てかた 器械の立てかたについては、もう反射板と同様である。移動する事のないようにしっかり三脚 を踏み込んで立て、脚頭をなるべく水平に設置した後、整準台を設置し、その上にアンテナを のせて設置が完了する。当然求心望遠鏡により、求心位置の確認と、気泡管が傾いていない かは厳密にチェックしなければならない。これはごく当然である。さあ、いよいよ観測だ。わくわ く。 ●観測時間 2級基準点の要領で行うため、1時間の観測という事で、第1セッションが13時から14時10 分、移動の後、第2セッションが14時30分から15時40分という事になった。 なんでも、全員がぴったり時刻を同一にして観測するのではなく、最終的に全員が一斉に観 測出来た時間が一時間あれば良いという事らしく、10分程度の余裕を見て時間の設定をおこ なったが、この事が後で役に立つなどとは皆思っていなかった。 ●器械のおもり役 器械点の設置場所には、前日真鍮性の鋲を設置しており、場所も解りやすい位置にある、 各人に大体の位置を説明し、住宅地図に位置をコピーしたものを配布した。 予定の時間が迫っているので一目散に現地へ各自車で移動する。 さぁ、現場に到着、早速器械の設置にとりかかる。三脚の設置については、お手のものさと 据え付けにかかる。 機械の設置はすぐに完了した、さあ、肝心のGPSのセットだ、アンテナと受信機のケーブル をつなぎ、電源を投入する。おかしい、最初の画面が出てこない。講習した時はすぐ出てきた はずなのに、またやってしまったか。はやく出てこい、衛星の情報も出てこない。ケーブルをつ なぎ損なったのだろうか。 みんなに悪い。 冷や汗がたら〜っ。 やっと音がして見慣れた画面に切り替わった。衛星が1、2おおっすごい8個も受信してい る。さすがに障害物の無い田んぼの真ん中。自分の実力とは関係がないのにすぐに気分が良 くなる軽薄さ。 これが四十路を越えた大の男の姿、かあちゃん御免、やっぱり俺は4番目の子供のようだ。 後は教えられたとおり入力している。と言えば聞こえは良いが、あんちょこどおり入力していっ たら何とか出来た。これなら小学生でも出来る。 しかし、たまには小学生以下の大人もいるのです・・・。 アンテナ高、ファイル名、全部入れて観測の画面になっている。時々ピッという音も聞こえてく る。 だが、本当に観測出来ているのだろうか。自分がする事が少ないだけに段々心配にってく る。 確か前回の研修で状況を調べるためにメーカーの社員が画面を変えていたな、どんな風に するのかな。ちょっとさわってやれ、と触ってしまった。 とたんに画面が替わり、なにやら見慣れない画面になってしまった。「ありゃ、この画面も英語 の表示でさっぱりわからん、弱った他の画面にしよう」とまた他のキーを押す、当然のように英 語の別の画面になるが、観測中の画面ではない。 「しまった、元の画面への戻しかたがわからない、どうすればいいんろう。」 ひょっとしてこの操作をしたために、今まで観測したデータが消えてしまったのでは。内心あせ る。だがいろいろ操作している内に元の画面に戻り一安心。 わからない事はやるものではない、おとなしくしていれば良かった。もう少し勉強してから触る 事にしよう。何でも操作法によればファイルをクリャーしてしまうらしい。触らぬ神にたたりなし。 クワバラ、クワバラ。やっと1セッション目が完了した。さぁ、2セッション目の観測場所に移動 だ。 ●移動時間 今回は、比較的測点間の距離が近く、車での移動が可能で、しかも平坦地という事で移動時 間を含めセッションの間隔を20分程度としていた。だが、その間隔では現実には難しい事を 知る事になった。移動距離は最大で800m程度であり、すべてが車での移動が可能で、横付 けが出来る場所である、したがって車の移動は5分程度、機械の収納に3分、再度の設置に8 分と計算しており。合計16分、後は余裕の4分で充分の筈であった。 しかし、現実はそう甘くなかった。 受信器は1、2分で据え付けが完了するのだが、これからが大変なのである。機械の操作に 慣れておらず操作マニュアル片手に「なるほど、なるほど」とやっているうちに10分はすぐに経 過してしまう、慌てて「こりや、いかん」とばっかり受信器の高さを測り、観測予定時刻には息咳 切ってやっと間に合う事が出来る。 幸いに受信器の電源を入れると観測を開始してくれるため、取り敢えず受信器の据え付け が終了すれば、とにかく電源を入れる事である。 ●やっぱり 観測の場所については、あらかじめ説明しておいたので、全員その場所にいっているはずで ある。観測を固定して行なう2点の二人を除いて、念のため次の目的地まで少し遠回りになる が、GPSを移動して新たに設置する2ヶ所を廻ってみると二人とも、それぞれに車を既に止め て、車からGPSを担ぎ出している。 さすがに、みんな慣れていると安心しながら、自分の2セッション目の場所に移動、器械を設 置し、観測を始めたころ。 車を止め、GPSを担ぎだしていたはずのY君が車に乗ってやってくる。 「どうしたの。」 「場所がわからん。」 「さっき、車を止めていた場所で合っているよ。川に突き当たる一つ前の道で、鉄道の方向に 伸びている道の水路のコンクリート橋の角に真鍮製の金属鋲があっただろう」 「いや、それは解らなかったです。同じような場所に、田畔のコンクリート擁壁に測量会社が 打った金属鋲はあったけれど」 「それの5メートル程横だよ。解らなかった」 「解らなかった」 「兎に角、行こう」 車で急ぎ移動し、場所は簡単に解ったが、既に観測開始の時間より既に15分が経過してい る。 「大丈夫かい」 「何とか、やってみます。」 彼も必死に頑張った様であるが、観測が開始したのはそれから5分経過してからのようであ った。 15時40分観測を終了し、全員私の事務所に集合し、観測結果をパソコンに吸い上げ計算 することとなった。 だが、例のY君。ちょっと帰ってくるのが早いように思えた。 「えらく、早く帰って来ていたんだね。」 「いや、みんな、えらく遅かったんじゃないですか。15時30分観測終了でしょう。」 「えっ。・・・。」一同顔を見合わす。 ●連絡方法 やはり、この様な事がないように、観測開始までの間と観測終了時にはお互い連絡を取り合 って観測する必要がある。 GPSの観測中はトランシバーの使用はなるべく使用しないようにとの事なのだが、観測の時 以外では、お互い遠距離であるため、何があるかわからず、不測の事態も考えられる。 時間を決め、現在の状況を報告し、確実に観測する必要がある。 ●結果 事務所に戻り、GPSの受信データをパソコンに吸い上げる。今回は、パソコンも最新のもの を使用しているため、解析のスピードは前回の倍近いスピード。 全ての解析が20分程度で完了した。 その結果2セッション目の5台のGPS受信器が全部同時に観測した時間は40分程度になっ ていたが、それでも基線となった距離については1セッションと2セッション目の距離の相違が 1ミリの精度、更に与点に使用していた四等三角点と三等三角点は、仮定平均でその距離の 差を比較すると2センチと非常に精度が良く。この町の担当だった国土地理院の測量技術に 驚かされる。それに比べて国土調査の図根三角点の精度は・・・。と日頃思っていたが、このG PS研修にあたって、図根三角点の座標値を付け直そうという事で新点の一つにしていたのだ が、実用平均による計算を行なうと、XY座標はなんと1センチの位置誤差であった。しかし高さ については、30センチ程度狂っていた。 新点についても、かなりの精度でその値が出たようである。 今回は実際に使用するという研修であったので、次回はある程度GPS測量自体の精度を 我々の測量と比較し、GPS自体の精度を身をもって納得したいものである。 ●観測計画をたてる場所 更に観測計画については、四国管内程度であればどこで測った情報でも最新の情報であれ ば、観測計画のための衛星の軌道情報として利用出来るそうである。 さすがに人工衛星の話で、2キロや10キロの単位ではない。その規模の違いに驚かされる。 我々の仲間のように県内の各地に分散し、使用にあたっては県下全域という広い範囲を考え なければならない者にとっては本当に都合の良い話である。
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