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●GPS研修当日 そうこうしているうちに、GPSの研修の日はやって来た。 メーカーの方も観測計画の事もあり既に現地を下見しており、それによって本日の観測は午 後からと決定され、近くの会場でGPS講演の後、現地で実習を行う事になっていた。 我々も最初にGPSについての講義をしてもらう会場に集合し、GPSの実習にあたっての打ち 合わせを行う。 当初我々が考えていた与点2点にGPSを配置し、新点の二つの位置でGPSを移動させれば 良いと考えていた。特に新点2については、与点を結ぶほぼ直線上にあり、こういった条件の 方が精度的に良く、配置に全く問題はないと考えた。 しかしメーカーの責任者は即座に、「これでは内角が無さ過ぎます。新点1と2にGPSを固定 して、与点を移動した方がいいですよ」 早速助言に従い、セッションを組み替えた。 メーカーの指示により、各自腕時計の時刻を合わせ観測開始時刻を打ち合わせ、1セッショ ン1時間20分の予定で観測を予定した。だがちょっと疑問が持ち上がる。 「あのう現場に行って観測するのに、今回の場合だったら3台の受信機が寸分違わぬ時間か ら観測を開始しなければならない訳ですか。」 「いや、多少の時間のずれは関係ありません、実質的に3台の受信機が同時に受信している 実質の時間が1時間あればいいという事です。」 「それで、多少余分に観測時間を設定している訳ですね。」 やっと納得、早速現場へと直行する。 今回は与点2つに新点2つ観測場所は4ヶ所あるにもかかわらず受信機は3台のため観測 には2セッション必要であり、器械の移動の関係上私は2セッションとも固定して観測する新点 2での観測となった。 ●新点2にて 車で、新点2へと移動する。現場は四輪駆動の車じゃないと難しい坂道を海岸へ向けて降り ていった海岸の防波堤に作成した基準点である。 現場に到着すると三脚を据え受信機を設置しているが、えらく高く据えている、どうも私の身 長よりも高い位置になっている。求心望遠鏡を覗こうとして、爪立ってもぜんぜん覗き込む事 が出来ない。仕方なく、防波堤のに沿って材木を立てかけ、その上に片足をかけてやっと覗き こめる状態で求心した。 「現場の基準点の埋設をして、斜距離を観測した時は器械高1.55mで観測したのに何故な んだろうか。」と思いながら、いつものように自分の無知を知る事が恐く黙ってみていた。 設置後、今度は受信機の高さを観測している。厳密な器械であるからどのような測定をする のかなと興味深々でみていたが、何のことは無いコンペックスをドームの形状をした受信機の 下盤の外側にあて、基準点からの高さを斜距離で取ったのみであった、これでは我々と変わり ない。 「それだけでいいの」 「はい、斜距離で結構です、この受信機の直径はわかっていますので、後で距離をソフトで変 換します」 なるほど、単純なのね。 観測の最中はトランシーバーや携帯電話はGPS衛星の発する電波の妨害になるため使用 してはならないという事で、あらかじめ観測開始時間を設定していたその時間となり、観測を開 始した。 だが我々は何等変わる事なく傍観しているのみである。今回は2級基準点の作成という事で スタティック測量により1セッションに対して1時間の観測が必要である。 まさに手持ちぶさた、何もする事が無い。あちらこちらでウロウロ。雑談もしているが、そんな に長く続く訳もない。 ええい、いつもの癖。「缶ビールを買ってきます。」ついにビールを買いに走ってしまう。1本づ つの缶ビールを買ってくるが、まだ予定時間は終了しない。 ついに時間を持て甘し、先程疑問に思った事をきいてしまう。 「あのう、何故あんなに受信機の高さを高くした訳ですか。」 「はい、この基準点の位置は前にヒラメの養殖場があって、確かに高度15度以内で障害には ならないんですが、屋根がトタン板ですので、乱反射なんかがあって良くないんです。だから出 来るだけ高くしました。近くに自動車やトタン屋根や看板があると駄目なんです。」 「へぇ〜っ、そうなんですか。」そんなものなのだそうだ、こりゃもっと勉強しないと大変だ。 思ってはみたが何もする事が無い。延々と観測は続く。1セッション終了、他の班の移動を待 ち、2セッション目の観測予定時間まで待機した後、観測開始。 だがついにビールのほろ酔い気分に負け防波堤に横になり寝入ってしまい目がさめたら観 測は終了していた。 ●パソコン 後は講義を受けた会場に戻り、解析をするだけである。一目散に会場に戻りパソコンの前に 陣取る。 3台の受信機からそれぞれのデータを10分ほどかかって取り込み、早速解析に取り掛かっ た。 使用与点の座標系と水平位置(X、Y)と標高を入力すると立ち処にWGS−84の座標系に変 換してしまう。 パソコンのデイスプレイ画面に色々表示され、メーカーの担当者は逐一大事な事を説明をし てくれる。だが私の頭もパソコンに負けないくらいの忘れるスピードを持っている。 もっとも忘れる事が出来るのは一遍頭に入り、理解しなければ忘れるとは言わない。この場 合右から左と言ったほうがいい。 そのうち新点1と新点2の斜距離が表示された、斜距離は537m582高低差101m550。 我々が観測した値537m589、101m523とは1センチ、と2センチの相違であった。 当然、光波測距儀にもGPSにも誤差が考えられる。 この程度なら充分使用可能ではないか。 ●途中経過 更に基線の解析も次々に終了していく。その早い事。観測が待ちに待たされた分だけ余計に 早く感じる。1セッション、2セッションそして、外側全部の環の閉合差がX、Y、Zの値がすべて 1センチ以内に納まっている。 「すごい、器械だなぁ、」と改めて感心。 なんでも、GPSで観測し一回計算(点検計算)してみるらしい。この値は非常に正確らしいの だが、既に日本全国に国土地理院によって三角点が作成され、座標が与えられているので、 この値との整合の関係で既存の与点の値を与えて既存の座標系に合わせるための変換をす る。この作業により精度が落ちるらしい。使用した与点のうち1つのみを固定するのは仮定平 均、使用した与点全部を固定して平均計算を行うのは実用平均というらしい。 これは我々が行うトラバー測量が与点の精度に影響される事と同じらしい。 だが、ここで決定的に違うのは、我々の測量は逆に与点により救われている面の方が多いと いう事である。自分自身の観測したトラバー測量が良いのか悪いのかは判断できず与点が正 しいものとして判断している。どうしても技術的な事になると不安がつのる。ましてや与点となる 基本三角点や基準三角点がおかしいとは絶対に言えない。(宴会で酔えば言っておりますが、 国土地理院様ごめんなさい。正気ではないんです。) ●恥ずかしながら これで研修は終了した。 だが、私は大変な思い違いをしていた事に後日気がついた。 それは、観測計画に影響する観測予定日のGPS衛星の軌道の情報である。 これまで漠然とGPSの講義を受けていたため、GPSの軌道の情報については、GPSの製 造メーカーがアメリカの軍隊から情報を受け、その情報を個々のユーザーに流しているのだと 思っていた。学生時代から落ちこぼれといわれて久しい私だが、やはり学習能力は最低の様 である。 別のメーカーと観測計画の話をしている際に、つい恥ずかし気もなく「最初の観測計画を立て る際の衛星の配置をどうやって知るんですか。」と聞いてしまった。 さすがにメーカーの担当者も「そんな初歩的な事も知らないのか。」と呆気に取られていたよ うだが、さすがに気を取り直し、「いや、この受信機で観測すればいいんです。衛星自体が軌 道情報を発信していますので、観測の前に現地の上空の視界の良いところであらかじめ受信 すれば情報が取れます、大体1ヶ月前までの情報なら何とか大丈夫な様ですが最新の情報が 良いにこしたことは有りません、保守のため使用出来なくなる衛星もありますから。」 恥ずかしい。この程度の知識で高い器械を買おうとしている。
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