|
● 依 頼 先日、苦い経験をした。依頼地は国土調査実施地域、境界線については102番所有地A、 隣接地100番所有者Cにより個人同士の話し合いで一部変更して既に使用しているが、その 部分については所有権移転の話はついており、金銭の授受は完了しているので、そのための 分筆登記をしてくれとの事であった。 もう一つの隣接地101番については境界に問題は無いとの事であった。 依頼人Aについては私の顔見知りの方であり、現地は既に話がついているとの事であったの で、新しい境界線に合致するように分筆し、所有権移転をして最終的に新しい境界を作成すれ ば良いと考えた。現在の境界を確認してもらい、国土調査で表示された境界についてはその 内側となる位置でもあり、金額的にも折り合いがついているとの事から、後で図上で復元したく らいで良いと考えた。 ![]() ● 現場にて そのため100番の所有者のCさんが現地の境界確認について、「わしは@、A、G、H、J を結ぶ線で問題ありません。後の売買する面積はH、I、Jの三角形だから図面のとおり調 査士さんのいいようにしてもらっていいよ。もう私は用が無いので帰るよ。」とさっさと帰ってしま われた。 AさんがCさんに既に売買の同意を得て使用しているのだから、Aさんの立会いでいいかと安 直に考え、もう一方の隣接地101番の土地所有者BさんとA、B、C、D、Eの境界の確認の ための立ち会いを行った。 Aさん、Bさんとも、国土調査の線の位置を復元したものでかまわないという事になり、それぞ れの位置の復元を行い誤差を調整して双方の了解を得て、境界標識を入れた。 しかし、後日、100番の土地所有者Cさんから電話がある。「あの境界は認めない、最初に 確認をした現在の境界線A、G、Hを境界とするのならかまわない。いくら国土調査を復元し たと言っても、自分の土地となっている部分D、C、B、A、G、H、Iで囲まれる土地につい ては私の土地ではない。人のものを貰う気もないが、土地を取った覚えもない。一時的に格好 だけと言われても、私はそういった境界については認める事は出来ない」。 ● 国土調査の復元と言うけれど 「お前は、国土調査、国土調査と言っているけれど、本当にちゃんとやっているのか。おまえ の言う事は信用出来ない。国土調査は役場がやってくれたんだから間違っていないはずだ。 おまえなんか信用出来ない。役場の職員に復元をさせる。」 「はぁ、役場の職員に復元してもらうのは結構なんですが、同じ図面で復元しますので、大抵 同じ事になると思いますよ。」 17条地図の写しを見せながら説明をしたのだが、全然解ってくれない。 まるで私が地図を適当に作成して、うそをついている様に思われている。 既に話がついていると依頼人のAさんの言葉を鵜呑みにした私も悪かったのだが、国土調査 ではこうなっていますと最初に言っても、恐らく同じ事を言われただろう。 「国土調査をなぜ復元したのだ。三者の境については、いままで、私は文句をつけられる事 なく過ごして来たのに、おまえのおかげで、もめごとの当事者にされるではないか、元々自分 の土地ではないのだから、その土地の事は関係ないし、一回も自分の土地だと主張したこと がないのに、何故その土地は自分の土地だと言わなければならないのか。全く迷惑な話だ。 国土調査の図面が間違ったのもおまえのせいではないのか。」Cさん、興奮のあまりまるで 関係の無い事まで私のせいにして、頭ごなしに怒る。 ● 原 因 なんでも、Cさんが自分の土地では無いといっている部分は国土調査前は現在死亡されてい るDさんの土地で104番であったらしいが、そのDさん、なんと104番の土地を隣接する102 番所有者Aさんと、同じく隣接する101番所有者Bさんにほとんど同時期に二重の売買をされ てしまったらしい。そのため、AB双方がお互いの所有権を主張したため102番所有者のAさ ん、101番所有者Bさんのお隣同士の仲が悪くなったらしい。 当然Cさんにはまるで関係のない事であり、もめごとの中には入りたくないという一心のようで ある。 「国土調査の時は皆さんお立会いはされたんですか。」。「そんなのしとらんで、このあたりで は、ほとんどしとらんよ。」 国土調査の協力員により、どんどん境界の確認がなされ、このような事情を知らず、既に境 界が解らなくなっていた104番については102番の土地に合併されたとして、境界を決定し現 況の状態に合わせて測量したものらしい。 ● 話が違う 話が違うぞ、もう一度境界の確認のやりなおしだ。地図訂正もやらなくては。 再度事情を説明し、改めて境界確認を行なわなくてはならない。 Aさん、Bさん、Cさんに再度、お願いし、何とか境界確認を行っていく。 だが仲が悪い事はいろいろな問題を生じる、どちらも都合の良いように私の話をとってしま う。 もめると思っていた最初に確定した位置については、既に双方で大体、話がついていたとみ えて、再度境界を改めるという話にはならなかった事が救いであったが、問題は関係のない位 置である。 境界については大体国土調査と合致しているのだが、わずかな隙間や10cm程度の事が問 題となる。 何とか、私を味方につけようとしながらも、お互いの立ち会いで認めた事でも、自分の主張が 通らないと、「調査士が、そうなるように操作したからこの境界になったのだ。」 「お互い、確認をしあったら、この位置で決まります、本当にこの位置でよろしいですか。」と 念を押したことも、「おまえが、この位置は絶対に変えないと言った。」とまるで、悪意のかたま りとなる。 更に興奮のあまり、一人で喋って、都合が悪くなると、すべてこちらのせいにしてしまう。 それでも何とか話をつけ、境界を確定し境界標識を入れ、業務完了と安心していると、翌日 「あの位置ではやっぱり納得出来ない。」の電話である。立会いをしている時に面と向かって何 故言わなかったのだと腹立たしい事この上もないが、再度立ち会う事になる。 いっその事、テープレコーダーで全部録音するかビデオで一部始終を録画しておこうかとも 思ったが、あまりにも大人げない。仕方なく頭をさげ「私の不徳のいたすところです」となんとか 話しを進行させた。 A、B双方には「お互いの境界ですから、はやくすっきりしましょう」。そしてCさんにも「もめご とをなくす協力ですから、何卒よろしくお願いします。AさんとBさんが双方でお願いにあがった 時は、もめごとが解決した時ですから、何とか協力してください。不愉快な思いをさせて申し訳 ありません。」 Cさんも、国土調査の図面の事は役場に何回か行かれ、復元の形状が誤りなく復元されてい た事がどうやらわかっていただけたようだ。 ● 調査士とストレス 調査士業務なのか、調停委員なのか解らなくなりながら、それでも何とか、境界を全て確定 し、境界確認書・地図訂正の承諾書に全員の印鑑証明書をとり。実印を押印してもらい、県と 町の境界確認・地図訂正承諾書もそれぞれに下り、地図訂正、地積更正は終了した。 短気な私が、よくもここまでじっくり交渉したなと我乍ら感心したのだが、最初の事前調査が 悪かった事が最大の原因である。 おかけで大変な労力と、経費と神経をすり減らしたにもかかわらず、業務をやり遂げたという 充実感はなく、一つの仕事をやっとすましたという義務感から開放されただけであった。普通は これだけ行なえば依頼者から「おかげで助かりました」と喜ばれるのが救いなのだが、余分な 費用がかかったせいかその言葉を聞く事はなかった。 単に顔見知りであるという理由で一方的に信用してしまったおかげで、私の慢性胃炎は一段 と悪化し、この間の医師の診察では、心臓に悪いからとコーヒーも止められてしまった。 調査士業務ほど体に悪いものはない。 思わず薄くなった頭髪を撫でで見る私であった。
|