何か、変

(器械についてしまった癖)
新居浜の宝です。
意気込んで

 正月そうそうの御屠蘇気分が抜けきらぬ時期の研修。いつもいつも参加するだけの研修会
で申し訳なく思いながら、今回も参加。
 みんな、それぞれに光波測距儀を持参。今回は存在をアピールしなければ、私が研修会当
初からのメンバーであった事も忘れられてしまう、少しはいいところを見せなければと意気込ん
で参加。
 リースの終了した光波測距儀も、業者に依頼しオーバーホールをして万全の体制。だが、こ
ういう事は黙っている方が良い、いつものメンバーについ、つい喋ってしまい、後で格好のつか
ない事になる。



何とかなるだろう。

 観測現場に到着。「器械を持ってきたよ。どこで測ろうか。」
 格好を付けたいばっかりに言ってしまった。本当は最近器械を触っていないけれど、昔とった
杵柄。何とかなるだろう。内心びくびく。
「ほなら3−37に行ってもらえます。」
 3−37の三級基準点の新点は、足場も良く。観測する方向は3−38、3−36そして与点の
11番の三方向。いずれも150mから200mほどの距離で、ほぼ均等に配置されている。

 今回は5班の班編成の共同作業。一応観測の順番は決まっているのだが、支障の無いとこ
ろから測距・鉛直角・水平角の観測をこなして行く。
 観測の制限については、作業規程の制限の半分以内に収める事を目標にされている。そん
なこんなで器械操作にプレッシャーを感じながらじっと待っている。



この位置わかりますか。

 そのうち3−38に登った滝ちゃんからトランシーバーで
「この位置解りますか。」
滝ちゃんの位置を観測図で見ると、住宅地から山の中腹を走る農道に向けて50m程山に登
った場所のようだが、目でその辺りの場所を探すのだが、ミカンの段々畑と防風林、そして一
面に茂った雑木で、どこもみな同じように見えて、一向に解らない。
「どの辺りですか。」
「そちらから見ると、水道のポンプ倉庫が見えると思いますが、その上の方で枯れた木が四本
並んでいる場所です。」
「えつ、ポンプ倉庫、そんなのどこかいな。」



反射板が見えない

 枯れて白く見える木が4本程見える場所は解った。だが人影や反射板なんて全然見えない。
「見えません」
「そしたら、木の前に出て枝を降ります」
という声とともに、白い木の前の方に、土と石が落ちてくるのが解る。続いて作業服を着た足が
滑り落ちて来て、やがて滝ちゃんが2m程の枝を左右に振っているのが見える。
「見えました。」
「この、5m程上に反射板があります。」
大体の位置が解ったので、目を凝らして5m程上をゆっくり見る。
枯れた大きな木の間から、何やら黄色と赤色の木製の三脚が見えるが、丁度枯れた大きな松
が斜め邪魔をしており、残念ながら反射板は見えない。
「脚は見えるけれど、反射板は見えません。」
「そしたら、この位置なら解りますか。」と3−38の位置に戻った滝ちゃんが三脚の位置にしゃ
がみこむ。丁度1m程の高さだろうか顔が見える。
「見えます。」
「そしたら、器械を低くして観測しましょうかね。」
と話した、とたん「切ろうや、松枯れとんじゃろ。」
 なべ隊長の声が聞こえる。
それから15分後、現場に駆けつけた、なべ隊長達が枯れた大きな松をゆすっているのが見え
る。何やら危なっかしい。
「あれは、大きなけん、時間がかかるで」と思いながら待っていると、とうとう30分後には、音を
立ててみかん畑の方向に倒れて行くのが解る。
「やるもんじゃなぁ」
早速、視通が取れる事を言わなければ。
「よく見えますよ。」
「そしたら、観測をはじめて下さい。宝さん、そこ一人だったら達川さんに行ってもらうけん」と
 なべ隊長。



観測開始

 そうだった。観測をはじめなければ。
まもなく、達川さんが助っ人にやって来てくれた。
「すいません。観測始めるけん。手簿かまんで。」
ちょっとカンニングと、器械への設定方法をマニュアルを見ながら入力して行く。
「それじゃあ、水平角観測からいくよ。」
多少の緊張を伴い観測を開始。手簿を付けてくれる達川君、開業して八ヶ月の新人さんとの
事、ここはいいところを見せなければ。第1方向、第2方向、第3方向、反転して第3方向から
第1方向に戻り、更に270度付近に合わし2対回目の観測開始、いい調子で終了。よしよし、
こんなものかな。達川君のチェックを覗き込むようにして結果を持つ。



何か変よ

 あれ〜っ。何か変よ。観測差が1分もある。達川君心配そうに「書き間違えたんでしょうか。」
「ほうじゃね。まあ再測しようや。」先輩の貫禄を見せながら。まだ余裕、余裕。
今度は二人とも注意深く、観測。数字も丁寧に確認。1対回目。2対回目終了。
 だがまたまた1分程違う。
「おかしいね。もう一回やろか。」
 3回目に挑戦、だが今度はバラバラの値。どうなっているんだろう。こりゃいかん、この間まで
同じ器械を使用していた山本君が、隣の観測点で既に観測を終了して待機している。
「山本君、手が空いとったら、この器械で観測してん。どうも変なんよ。」
「はい、わかりました。」と観測する事が半分趣味になっている山本君がやって来る。

 いきなり、「宝さん。器械据え直してもええ。」どうやら、小生の技量をはなから疑っているな、
まあ、この際仕方が無い。
「うん、ええよ…。」
 観測開始。やっぱり同じ結果になる。もう一度挑戦。やっぱり同じ「あれ〜っ。おかしいね。
なんかネジが滑るみたいよ。」
 そこへ心配した、なべ隊長がやって来た。
「達川さん、器械もって来とろ。達川さんので観測しようや。」
すばやく、器械を設置。観測にかかる。
 観測開始。達川君の観測が進む。自分の器械だけに手際が良い、2対回終了。観測終了と
同時に点検に取り掛かる。観測差、倍角差、定数点検。
 「よし、いけた。観測差3秒です。お疲れさんでした。」
最初の観測を開始してから何と1時間半、やっと終了。やれやれ。



お酒飲ますけん

 待機しているみんなにトランシーバーで「お待たせしました、終わりました。」
すかさず、山の上で待つ滝ちゃんから
「宝さん、今日のビールは宝さん持ちですよ。」
「持つ、持つ一人3本ずつ持つけん。」何とでも言ってくれ。
どうしたんだろうか。オーバーホールしたばっかりの器械。小生の利き手の親指の怪我。…。
頭の中をいろんな事が駆け巡る。へたくそ・・。そんな言葉もネオンのように浮かんでくる。だが
山本君だって同じだったと回避。

 一般業務の中で、この器械、本当に使えるんだろうか。そして今までの結果は本当に大丈夫
なのだろうか。再測の緊張から、落ち着いてくると段々頭の中でこんな心配が広がってくる。



原因は何

 取り敢えず、自分の仕事の中で確認しなければならない。地元の新居浜で作成した3級基準
点で確認してみよう。研修を終え、新居浜に帰り2、3日が過ぎ、業務が落ち着いた頃、新点8
点。既知点3点の11個所で器械が使用出来るかどうか前回と同様に観測を行う。
 2対回観測で観測差はほとんど5秒。1度だけ15秒が出たので再測を行ったのだが、その
結果5秒であり無事完了。成果についても間違いなかった。
 あの悪夢のような、研修での再測は何だったのか。地元での今回の観測と、前回の研修は、
器械は同じ、観測者が事務所の補助者のS君に変わっただけである。昔とった杵柄と横着に
構えていたしっぺ返しなのだろうか…。

 結局はネジの絞め方に個人差があって、我が事務所の器械は普段からS君がほとんど使用
しており、リース期間も終了しオーバーホールをして使用している器械なので、長い期間の内
に個人の癖がしっかり染みついた器械になってしまったという事のようだ。
 皆様、御騒がせしました。

「S君、この器械は君の器械だ。」



久しぶりに基準点測量研修
     
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