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選点に付き合いながら、まだまだ解っていない私にとって、視通の聞く場所は全部観てしまえ ば良い。したがって、新点の選点位置は、その全部がみえる場所であればあるほど良い。単 純にそう考えてしまい、2キロ近く距離の離れた新点さえも、すぐ観ようとして、「あれも、観測す るのなら、この位置にしなければ」。「いや、あれはここからは観測しません」どうも専門家であ る彼と意見の一致をみない。 彼にとったら、観測のしやすいよう、観測方向をなるべく三方向で留めるよう配慮し、更に網 の形が良くなるよう新点を選点してくれている。観測方向は出来るだけ四方向以内に留めてお かないと、加速度的に観測制限から外れて行くそうである。 「この場所なんか、観測しやすいんじゃない。」「いや、そこはすぐ基準点が亡くなってしまいま すよ。」どうも、私はいちいちピントが外れてしまっている。 ● 光 山の中の三角点や偏心点から、観測の際に新点を探すのは、比較的簡単である。しかし、 新点から山頂にある三角点や偏心点を観測するためには、木が茂り、暗く、なかなか見えるも のではない。そこで懐中電灯が活躍する事になる。 山の中から新点の方向に向かって懐中電灯で光をあてる。最初はつけたり、消したりして、 他の光と区別させて、大体の位置をつかみ、後はつけっぱなしで、ターゲットの位置を望遠鏡 でとらえる。この直接の光は強すぎるため、その後、新点の方向からターゲット板を懐中電灯 で照らす。この光はミラーにより反射し、丁度月の光のようにやわらかい丸い光となり、望遠鏡 で捕まえる事が出来る。当然、この手順の途中で、直接ターゲット板を捕らえる事が出来る場 合が多い。 案外、山頂にある三角点の位置は、外から探す場合、思ったよりも木が高く、山の中腹のよ うに感じる時が多い。そのため、いきなり、何もなしに山の中の三角点や偏心点を新点から探 すのは困難で、時間ばかりがかかる。 また、完全にぽっかりと伐採をするのは、どうしても大量の伐採となり不可能であり、最少限 度の伐採としているため、目標の大体の位置は分かったが、肝心のターゲット板の位置が、木 の隙間に白い空白がたくさんあり、ターゲット板がその中に交じり分かりにくい場合も多いもの です。その場合、トランシーバーで連絡を取りながら、ターゲット板の後ろでタオルとかを降った り、広げたりして協力をしてもらうと良く分かります。ただタオルの色は出来るだけ白が良いでし ょう。 はじめから、見えないものとして、懐中電灯、タオル、トランシーバーは必要最小限の準備 で、山に登りましょう。 零細企業で相方が人夫さん一人しかいない私の事務所では、偏心点からの観測の際、この 教訓から、遠方の後視点である山の方向の三角点に人夫さんが、トランシーバーとターゲット 板、そして懐中電灯を持って上がり、近いもう1方向の山の中の与点である三角点には私が、 あらかじめターゲット板を据えて、その上に懐中電灯を縛り付け、偏心点の方向に向けて照ら した後、急ぎ山を下り、偏心点からの観測を行ない、何とか観測する事が出来ました。 ● 三脚の据え付け方 今更、三脚の据え方でもないのだが、地盤の軟弱な場所での据えつけ方。山間部の腐葉土 の覆った、草木の根の多い場所はいくら三脚の石突を踏み込んでも、なかなか固定出来ず、 フワッと跳ね返って来るものである。私はこんな時、なるべく機械の振動を与えず、そっと測る しかないと思っていた。 こんな考えは、やはり誤りである事が判明。とにかく腐葉土は取り除く、草木の小さな根は切 り取ってしまう。きっちり固定出来る状態にして、石突を踏み込み、三脚を固定する。 アスファルト舗装上の三脚の据え方、今度は反対に固くてなかなか踏み込めないアスファル ト舗装、足場は良いが、踏み込めていないため、ちょっと機械にあたると、三脚がずれてしま う。 解決法は踏み込めるよう、鋲でちょっと穴をあけて、その位置に踏み込む事。 いずれの場合も脚頭は必ず水平に据える事。 木製三脚は、やっぱりいいよ。安定性が抜群。熱による伸縮も少なくて良い。でも重たい。山 頂の三角点まで担いで上がるにはしんどい。時と場所と精度そして体力を考えて木製と金属製 三脚は使い分けしましょう。 ● 太陽 観測にあたっての注意。太陽が器械点と観測点の位置関係で観測点の後ろに太陽が位置 した場合は、これはまず観測しない方が良いでしょう。なかなか観測するための概略の方向が なかなか探せません。探せたとしても、もやがかかったような状態でしか見えません。観測して も、本当にきっちり測れているかどうかちょっと心配になります。 太陽がま横にある場合。帽子のひさしを上手に使いましょう。 望遠鏡を覗きこむ眼に太陽の陽射しが入り、非常に観測が難しい。場合によっては目標が 見えませんが、帽子のひさしで上手に太陽光線を遮れば何とか観測出来ます。しかし、もう少 し待って、太陽が移動するのを待って観測した方が賢明でしょう。 太陽が器械点の後ろにある時、楽勝。楽勝さっさと観測しましょう。目標物がくっきりと浮かび 上がっています。でも再測はこんな条件の良い時の方が多いですから、充分注意しましょう。 ● 山にあがったら 初めての三角点に登るとき、道がある時は極めて少ない。雑木をかき分け、バラに足を引っ 掛かれながら山頂に向かって、ただひたすら登っていく。登る時は必死だから少々の無駄があ っても登れる。 やっと山頂の三角点に到着したら、落ち着いて周囲を見渡し、選点を行なうのは言うまでもな いが、今度観測に来る時の事を考えなければならない。今度は重い荷物を背負い乍ら上がっ てこなければならない。しかも、それは高価な物である。 案外、頂上に上がってしまうと、何等かの道があったりするものである。次回の労力をなるべ く減らすためにも調査しておきたいものである。転ばぬ様に足場の良い登り道を付けておく必 要もあり通行出来る程度の伐採をしたり、迷わぬように目印を付けておく必要もある。特徴の ある地形であれば記憶しておくだけで良いのですが、全部が特徴のある地形とは限りません。 せめて登り口にでも目印をしておきましょう。 ● トランシーバー 現在、私の事務所のトランシーバーは故障中であり、使用する事が出来ない。遠方を観測す る場合、観測が終了した合図を送る事が出来ないため、あらかじめ何分後に終了しますとか、 何時何分まで観測しますので、その後こちらに帰って来てください等あらかじめ打ち合わせして おく。しかし、順調な時は良いのだが、思わぬ出来事、例えばターゲット板が低すぎて見えな い。丁度木の小枝があたってしまい見えない。高くしてとか、その枝を指示をする事が出来ず、 現地まで急ぎ走って行き、その旨を伝え、自分でもその様に操作しながら、再度器械点に戻 り、観測を始めるが、この様な時に限って新たな障害が発生するもので、またまた現地に出向 き、小事務所の悲惨さを充分過ぎるほど味わうのである。 身近な現場では、3、40メートル程度離れた位置の逆打ち。通常の現場だと、大声で叫べは 事は足りるのだが、横で工事でもしていたり、工場があったりするとこちらは大声をはりあげて 「20センチ後ろ」と叫んで指を2本立て、後ろへ下がるように指示しても、相方の人夫さんは、 耳の後ろに手をやり、「えっ、何」と聞きかえす。再度、同様に指示すると、今度は2メートル後 ろに下がってしまう。 こんな現場に出会ったら、横からこっそり見ると、漫才を見る様で非常におもしろい。自分達 は真剣だが、はたから見ると大笑いの典型的な事例。 こんな時、文明の利器のありがたみが分かるのである。 ● 体力 私は、体力には少々自信があった。学生時代は運動部に所属し、頭の不足分を体力で補っ ていた。機会がある都度、三角点にも上がったりして山登りについても、なんとかこなせる自信 があった。 しかし、若さという事を思い知らされた。 現在、40代にかかってしまった私はその年齢についてあまり考えた事がなかった。まだまだ やれるぞ。まさに体育会系の乗りで今回の基準点の作製についても頑張って、20代の若い調 査士の度肝を抜くはずであった。しかし、現実は。こちらが一生懸命山を登って、息切れし、休 もうとしても彼らは黙々と行進を続けているではないか。体力が無いと私が密かに思っていた 若い調査士に置いていかれた。ショック。私の頭の中で自信が崩れていく。マラソンの中継の ように。「なにくそ」としばらくくっつついていかないと、ずるずると遅れてしまう。その場面が頭に 浮かび上がってくる。 ついていかなければ、気持ちはそう思っても、体がついていかない。「無念。」ついに、持ち前 の気楽さが出てきてしまった。「目的地につければいいや。先にいっといて。」あっさり、マイペ ースに変更。どんどん置き去りにされてしまった。されでも、なんとか、山頂にたどり着く。若い 連中、口を揃えて「もう一つ、向こうの山のようです。もう一つ山を越えましょう。」ヘナヘナ、意 気消沈。ええいっ、もう先にいって。もうゆっくり行くから、先程までの自信はどこへやら。 「みんなと一緒の時は無理して頑張って下さい。とにかく、無理して下さい」。後の飲み会でW 氏から言われる。 そういえばW氏も私とそう年齢が変わらない。彼のものすごい体力もそういって自分に言い 聞かせながら頑張っているのだろう。脱帽。
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