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今更、図面の読み取りなんて、と思われる方が多いのを承知で、素人に聞かせる為の基礎 からの話だと思って、しばらく我慢していただきます。 図解法の国土調査による法17条地図では、この読み取りによっていろいろな事が生じてい ます。 ●昔、平板で 単純にどういった読み取り方をするかという事になりますと、もう20年くらい前の話なのです が、1筆地の形状を法務局に行きの法17条地図をトレースしてくる訳ですが、平板測量で1筆 地を測った頃は、国土調査の形状と現地の形状を、そして辺長の距離を現地でまずチェック。 現地を測量して図形を完成させたら、今度は事務所に戻り、内業で測量図と同一縮尺に拡大 した国土調査の図面と、観測の結果動いていないと思われる境界を固定した後、回転させたり して、その形状の相違を見て、現地で設置した杭から、その相違した距離を図面で読み取り その量だけ再度現地で移動するといった風に調整しておりました。当然、その固定した位置 が、本来の境界でなかったとしたら、全部の境界が相違してしまうという危険性もあった訳で す。 ただ、この頃は、不動標識とか、境界、そして復元といった事は後回しで、商取引のために 面積だけが解れば良いといった風潮でもあり、現在のように、境界すべてに杭を入れたりする 事はあまりありませんでしので、もし違っていても、今度測る時はまた測り直せばいい、といっ た調査士にとっては誠に都合の良い時代でしたた。 そのため、その頃の地積測量図を基に、復元するとしたら、大変な事になるのはご承知のと おりです。 ●昔、トランシットで そういった頃、遅まきながら、やっと私もトランシットを使用し始めました。しかし本格的に測 量の事を勉強したわけでは無く、全くの独学だった為、法17条地図の使い方も、平板時代と 同じようなもので、あらかじめ現地の形状を17条地図のトレースをしまして、現地の形状を確 認します。そして、任意の座標で、現地の器械点に鋲を打ち込み、そこにトランシットを設置。 そこを座標の原点(0、0)とし棒コンパスで磁北の方向を0方向にし、更に後日の観測の為 にどこか適当な後視点となる場所に鋲を打ち込み、取りあえず現地を測ります。 まあ、この時、依頼人さんが、あまり境界の事は解らない。大体この辺りだと思う。ただ、隣 地も自己所有地だから適当で構わない。 それじゃあ、不明な場所は国土調査の形状に合わせましょうという話になったりします。 そうなると、まず観測した値で、観測した境界点らしきところの座標を法17条地図と同一の縮 尺でプロットして、ついでに、原点を中心として50m程度のメッシュをきり、その位置をプロット しておきます。 そうすると、実際に現地で観測した値のデータとなっていますので、その下に法17条地図を トレースした現地の形状をなるべく合同形になるように、回転なり、移動して、位置決めをして やれば、後は上になっている実測したデータの座標系で読み取ってやれば、形状の相違する 場所について、その座標を得る事が出来、後日その値を器械点と後視点を使用して現地に復 元してやる。いやひどい場合は、座標だけ求めて、現地はそのままという事もありました。 これなんか、平板の仕事を単純に数値に置き換えた仕事で本来のトランシットの使用をして ないという事だと思います。 ●反省 当然、ここでは、法17条地図をトレースする時にその形状だけトレースして、トンボや外郭線 に記載されている座標値なんて、全然気にもせず、そんなものはトレースなんかしません。いま 思えば、非常に怖い事をしてきたんだなぁと思うのですが、恐らくこんな事をしていたのは私だ けだろうと思いますので、笑って読んでおいて下さい。 そのうち、トランシットを使用する事に慣れ、SINやCOSの計算を電卓片手にする様になり、な んかおぼろげに計算のやり方が解ってきました。 それでもその当時は放射法の計算しか解らない。これでは現実的には現場を測る事は出来 ないと測量の参考書をねじりはちまきで読みながら器械点を何とか変えて計算する開放トラバ ースの計算も解るようにはなって、何とかある程度の現場は測れるようになったんです。 当然、そんな観測のやり方ですから、閉合ましてや結合トラバースなんて言葉は頭の中では 理解出来ても、トランシットにテープの観測方法、そしておぼつかない測量知識・技術、そんな 事から、まず使用出来る与点といったものが、現実に頭に浮かばなかった。 三角点というものは知っておりましたが、遠くにあるようなそんなものには縁がない、50mくら いの場所にないと使用出来ない、とはなから思っておりましたので全くそういった機会はなかっ たわけです。 ●石 ところが、そのうち法17条地図に○に中棒のマークの下に石と書いてあったりしたのが気に なりだしました。ちょうどその頃から、引照点という事がとりあげられる様になって来てもおりま した。国土調査の埋石も引照点として使用出来ると言う事だったので、引照点として、探して記 載はしていたのですが、それは単に、引照点の一つとしての記載であり、国土調査図面の石と 表示のある場所を固定出来るといった感じだったのです。まあ、その埋石を観測点として使用 するといった感覚でなかった事は確かです。 そんな時、町の仕事のからみで、山の境界を測ってくれという依頼がありました。当然のように、山ですから、引 照点となるような構造物がある訳ではありませんので、 何らかの手段で境界を決めていかなければならない。た またま一緒に行ってくれていた人が、役場で国土調査を やっていた人でした。 現地は山頂に近い山道との境界。道は90センチ幅 で、荒れていないきれいな道で、その道の真ん中に国土 調査の図面を見ると石と書いてある。 その人が「ここを掘れば、この石が出てくるはずだか ら、掘ろう。」という事で1メートル四方を10センチ程度の深さで丁寧に掘ったら、その石が出て きた訳です。同じように、そこから30m程離れた視通の効く場所もう一つ石が出てきた。そこ で、最初に出で来た埋石の場所に平板を据え付けて、角度と距離で境界の位置を決めていき ました。 その時、「なるほど、石とはこういう風に使用するのか。」と実感しました。 ●現実 その当時既に国土調査は終了していましたが、まだその後始末程度の事は引き継がれてお り、役場の担当課の職員に知り合いがおりましたので、いろいろ聞く事が出来ました。 それでその埋石には、座標がある事。当然国の三角点から図根三角点が作成され、それを基 に多角路線が1次、2次、3次と組まれている事を知りました。それでもその知り合いは技術的 な知識がある訳ではありませんので、深く理解をする事はできませんでしたが、多角点網図 成果簿等については、便宜を図ってくれ、3、4地域のコピーをさせてくれました。その時は町 全域がほしかったのですが残念ながら、不明の地域が多数ありました。 この頃からようやく測量ソフトを入れたパソコンが販売され始めました。現在のような測量計 算からCADまで簡単に作成出来るなんて、まだそこまで発達していなかったんですが、それで も早速購入し、わずらわしい計算から開放されたという事で、どんどん現場でやれる事。つまり 埋石を探し、その石から観測する事を始めました。 当然、埋石の持っている値は国土調査で得た公共座標値ですので、復元する境界について も公共座標値で読み取る必要が生じました。ここでやっと法17条地図の外郭線の座標値を使 用しての読み取りを行う事になりました。 ● 読み取り方 読み取り方については、皆さんプラニメーターやデジタライザーをお持ちですので、今更説明 する必要はないと思いますが、ちょっとおさらいのつもりで聞いて下さい。 本来、一番外枠の外郭線の左下と右上の値を使用して読み取るのが一番正確なのですが、 我々調査士の対処するのは1筆地ですので、その1筆地を囲む形になる区郭線交差記号(ト ンボ)から読み取る方法が一般的でしょう。 愛媛県の場合は、Y座標については、ほとんどが負の値となります。そこで、右端のトンボマ ークの位置から水平方向に左方向への縮尺に合わせた距離を読み取ります。 X座標については、下側トンボからの垂直な距離を読み取ります。 このように読み取った距離について、X座標については、そのまま基準にしたトンボの位置の 座標値を加えれば国土調査上の公共座標になります。またY座標については、基準にした右 端の座標値の符号をのけ、絶対値にした形の座標値に読み取った距離を加え、再度その値 に負の符号を付ければ、同様に国土調査上の公共座標になります。 ![]() ![]()
● 人間の眼
ここで、ちょっと人間の眼の分解能について触れておく必要があると思います。人間の眼の 能力は25センチ離れた場所で0.2ミリのものを識別出来るという事らしいのです。それではこ のことをそのまま地図の読み取りに当てはめると、地図上の0.2ミリは1000分の1の図面で すと現地では20センチ、500分の1ですと10センチ以下のものは地図上からは人間の眼で は判断出来ないという事になります。 国土調査の図面上の境界線は大体0.1ミリの線で記載されているようですので、1000分 の1で10センチ、500分の1では5センチ程度でしか識別出来ないというのが本当のようで す。 したがって、ここでの読み取りについては、その程度でしか読み取る事が出来ないという事は 良く理解しておいてほしいものです。 ● 面積の計算方法 一応、読み取りについては以上で終了したのですが、読み取りを行った1筆地全部につい て、三斜法で面積を計算してみて下さい。 一方、先程読み取る事が出来ました座標で、最近 の面積の計算方法である座標法で計算し
てみて下さい。 そして、その三斜法と座標法で算出され た面積を比較して見てください。どういう結果になったでし ょうか。おそらく、この求積を行った土地について、乙1程 度の公差で収まった方はいらっしゃったでしょうか。 ここでは対応する面積を383uとすれば、下表から乙1 としてその公差は5.89uです。なに、ドンピシャ、いや、そ れは少しおかしいですね。 恐らく、これだけの事で2、3u の差が生じたと思います。 この112番の土地の図面は実測したデータを作図した 後、それぞれに三斜法・座標読み取りによる座標法で面 積の計算をそれぞれに行ったものです。実際のデータを使 用して座標法で計算すると386uですから、更に面積の 差が生ずる事になります。 同一の図面を同一の人間が、本来同一の面積が出るはずの正しい面積の計算方法を使用 したにもかかわらず、こういった差が生じます。 当然の様に、国土調査で算出された面積と、現在の測量方法・計算方法で算出された面積 は相違するのが当たり前という事にもなります。 (下表は公差早見表) ![]() ● 同一の座標系 そうこう言いながらも、埋石(図根多角点)と、国土調査が測った1筆地の境界について同様 の座標系に数字上はなります。 しかし、これは図面上だけの事であり、現実はそういう訳ではありません。片方の埋石につい ては、当時の国土調査であってもトランシットでトラバース測量が行われ、数値がその時点で 提出されています。だが1筆地の方は、その図根多角点に平板を据え、アリダードで角度を テープで距離を観測し、その結果を直接平板にプロットしたものを、別の時期に、先程やって いただいた要領で、個人や役場が読み取りを行い、その数字を得たものだという事です。そう いった事から、読み取りの座標値で境界をそのまま表わすと考えるのはいささか無理があると 言えます。 読み取りの値は、本来の境界を示す(探す)参考にはなりますが、実際の境界の座標値その ものではありません、ここでは、普通言われている公差がそのまま生じます。(国土調査で、そ の1筆地を測った図根多角点がその土地を問題なく測れる状態で残っているという前提です が。)つまり、読み取り値で復元出来た位置から公差の範囲の円を描いた場所に、本当の(国 土調査で測った)境界がありますよ。と言う事なのです。したがって、境界を表わす座標値は もう一度、現地で確認をされた値と言う事が出来ます。
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