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●ちょっと思う事 国土調査による法17条地区において、よく聞く事は国土調査の図面は精度が悪い。立ち会 いがおざなりである。形状が相違して、地図訂正を必要とするところばかりである。といった文 句である。 だが、私はこれらの文句を聞く度に、ちょっと思うことがある。一般の依頼人さんならば、自分 の感覚でそういった事を発言するのは自由なのですが、土地家屋調査士も一緒に同じ事を言 ってしまっているようです。 ●確証 当然のように、土地家屋調査士は調査と測量を行うプロであり、依頼人と一緒に感覚だけで ものを言ってはならない事は明白です。 国土調査が何処を境界として測っているのかを、少なくとも国土調査と同様な方法で証明し なければならない。これが復元である。決して図面の形状と現地の形状の単純な比較であって はならない、我々土地家屋調査士は復元した、その結果によりものを言わなくてはなりませ ん。 『遠くの基準点よりも近くの引照点』といった表現もありますが、この引照点が果たして、国土 調査以前から存在しているものなのか。異動がないものか。 少なくとも調査する義務はプロとしての責任と言えます。 どういった方法によるか、近隣の住人に聞き取りを行うのも一つの方法で、当然やらなけれ ばならないのだが、人間の記憶ほどあいまいなものは無い。 2〜30年も経つと、どちらが先だったか、明確に出来ない場合もあり、隣接土地所有者同士 が土地の利用形態をお互いに便利な様に変更している場合もある。 この場合は、境界について立ち会いをしても、現況で安定している構造物が境界で間違いあ りません。との証言になり、恐らく国土調査の前から、この境界だったはずです。どうも国土調 査が間違っているのではないか。といった聞き取りの結果になる。 現地と国土調査の図面が相違する。国土調査は立ち会いもせず、測っているからこういう事 がおこるのだと納得してしまうのでしょうか。 ●もう一歩 そこで、もう一歩。いくら精度が悪いと解っていても、必ず国土調査の復元を、国土調査とは 逆の手順で行うことである。国土調査はそれなりに公共座標値を持っており、成果品である法 17条地図から、その境界の座標値を読み取り、その1筆地を測った近隣の図根多角点から その座標を使用して、逆打ちの計算をしてみて、現地ではどの位置あたりに国土調査で境界と された位置が何処かを明確にする。 現地でその位置を復元してみせると、意外にも、「国土調査では、その辺りになっています か、確かに以前は、その辺りに石積みがあったんだけれど、隣と話し合って、今のコンクリート の境界にしたんだけれど、そうですか。ずっと以前にやったように思っていたけれど、国土調査 の方が古かったんですか。」とこう言う事も少なくありません。 これは本人達も、現在の境界で間違いないと思い込んでいるのですから、悪意では無いわけ で、その事実を導き出してあげることも土地家屋調査士の調査の仕事と言えます。 むやみに国土調査どおりにする必要もありませんが、当然許される誤差もある訳で、その範囲 であれば、柔軟に対応しても差し支え無いと思われます。 ●全域が地積測量図既提出 国土調査による法17条地区は、公図地区においては全域が既提出の地積測量図がある地 域なのだと考えて下さい。公図地区であっても、その土地に既提出の地積測量図があれば、 その地積測量図により復元し調査をされている事でしょう。 その中には、三斜測量で辺長の記載も無く、杭の記載も無ければ、引照点の記載も無く、現 地復元性の無い物から、座標法により引照点や不動標識もきっちりと入っているものまで色々 です。だが、この復元性の無いと思われる地積測量図であっても、無視する事なく何とか復元 しているのではないでしょうか。 それが国土調査地区でも言えるのです。幸い国土調査実施地区には、根拠となる図根多角 点や図根三角点があるのです。そして境界には公共座標らしきものまであるのです。これを使 わない手は有りません。 ●図根多角点の亡失 だが、国土調査実施から時間が経過すると、該当の1筆地を測った図根多角点は当然のよ うに亡失してしまっています。 与点(三角点等)の出発点・到達点とも同じ点を利用した二つの結合トラバース(路線)であっ ても、その中間付近で、さらにこの二つの路線をつなぐ形で結合トラバースでも実施すれば、と んでもなく悪い精度になった事を経験した事があると思います。 (国土調査の路線が全て1次路線だけであれば、信頼性は全く違ったものになったでしょう。 仮に3次路線迄であったとしても、計算結果を平均していれば、それはまた違ったものになっ たかもしれません。) ●違いを考慮する 基準点測量については、専門書に譲りますが、勿論、こういった新設の多角点から国土調査 時の境界を復元したものは、それなりの根拠がありますから、それなりの位置にくると思われ ます。 そうだからと言って路線を作成し、復元した位置が即座に境界であるとするのは、間違いで す。 「そうだ、その位置から乙1であれば目安は25cm、そして最大限75cmの許容誤差がある 事を説明して、利害者の立ち会いを得れば、それで良いのだ。」、いや、それはまだ早いので す。この事については後に詳しく述べる事に致しますが、新設の多角点と、その1筆地を測っ た図根多角点との差を考えなければならないのです。 ご承知の様に位置誤差というのは、その境界を測った図根多角点からの位置の誤差なので す。当然新設の多角点と、既設の図根多角点とでは、仮に全くの同一の位置にあったとして も、その測量方法の相違から、座標値が相違してきます。一方読み取った境界の座標につい ては、そのままなのです。多角点の誤差なんて、ちゃんと測量をしてやれば、たかだか1cmや 2cmくらいだろう。気にする必要なんてないさ、とお考えかもしれませんが、案外この路線の組 み方によって、相違するものなのです。 この違いを考慮しなければなりません。 ● 現況を測る それでは、どうやって、既設の図根多角点と新設の多角点との座標のずれを見つけるのか。 一番、良い方法は、たとえ1つだけでも図根多角点が残っていれば、新設の多角点から、測っ てみれば、容易にそのずれは判明しますが、そういった風に近所に図根多角点が残っていれ ば苦労はしない。そのとおりです。 現況を測る事です。新設の多角点から、依頼のあった1筆地だけではなく、少なくとも利害関 係のないような場所まで、現況を全部測ってしまうのです。 当然、新設の多角点から、それは観測しますので全て国土調査の座標(公共座標)を持って いる事になります。 それを法17条地図から読み取った1筆地の座標と共にCADの画面上で比較してみて下さ い。 まずはどちらかにずれている傾向が解ります。更に、立ち会い時の証言を確実にさせる場所 と、相違している場所が明確に成ります。 その後、1筆地の形状を現況の、確実と判断された場所へ、なるべく固定する形で、当然たく さん確実と思われる場所があれば、なるべく全部に合う形の位置に移動してやります。(この移 動量を仮にスライド量と呼びます。このスライドが既設の図根多角点と新設の多角点との座標 のずれなのです。)。縮少・拡大は必要ありません。 なんだ、任意座標でやっている事と変わらないじゃないか。手間暇がかかるだけじゃないか そう思ってしまうかもしれません。 でも、結果は同じでも、信頼度は全く違ってきます。 これがプロの仕事と言えるのではないでしょうか。
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