図根多角点と基準点

●問題点

 埋石(図根多角点)を使用しての測量をすれば、国土調査による公共座標値は得られるとい
う事になりましたが、ここでちょっと問題になる事が生じます。
 国土調査実施時には、図根多角点は全部存在していると思うのですが、そのうち永久的な
標識を入れて、その位置を〇に中棒で表示し、更に石と表示しています。20年以上も経過す
れば、この〇に中棒、石の表示のものしか残っていないという事になります。
古い図解法による国土調査と言う事になりますと、埋石(図根多角点)についても1つの平板に
何点かあれば良いという事になっております。
 当然、トラバース測量の考えからいけば、連続した2点を埋石で残していてくれれば、何とか
なる訳なのですが、今回依頼を受けた1筆地を測った図根多角点がちょうどその埋石のある
場所とは限らないのです。
 現在のように、観測点が全て残っていれば問題はそれほど深刻になりませんが、最初から1
平板に何点かの埋石さえあれば良いというものであれば、まず、その石の位置から実際に測
った場所も限られ、仕方なく、近隣の埋石を探して、そこからトラバース測量をやって現地を観
測する事になります。
 ところが、この近隣から、埋石を使用して今回観測する場所にトラバース測量をするという事
がまず、大変なのです。
 埋石を探す手間。必ずしも全部が全部残っているわけではありません。折角探し出しても、
埋石と観測しようとする場所を測った図根多角点は同一の多角路線であったのかどうか。
 相違する路線であった場合。まじめに結合トラバース測量でもしようものなら、本当に近い距
離であるにもかかわらず、いや、本当に近い距離だからとんでもない精度。それこそ数百分の
1なんていう精度になってしまいます。これって本当に使用できるんでしょうか。観測をしようと
する場所だけなら、まだなんとかゆるせますが、追加で、埋石のあった場所。そしてその中間
地点の仕事の依頼があった場合、一体、これだけのひずみをどうしょうか、といった悩みになり
ます。
 手間暇かけて、精度の悪いトラバース測量しか出来ないのか。という疑問に行き着くでしょ
う。当然、もう任意の座標では、どうしても怖い。かといって本格的に図根三角点あたりから、ト
ラバース測量をするのは本格的すぎて自分では無理だと思われているのではないでしょうか。





●やらなければならない事

 いいえ、国土調査のトランシットとテープで観測していた時代でさえ、図根三角点をつなぐトラ
バース測量を行っているのです。今、光波測距儀が発達して、図根三角点同士の距離を測る
事が簡単に出来る時代になっているのです。
 その便利さを使わない手はありません。図根三角点をつなぐといっても、いきなり50mピッチ
で10点も20点も観測する方法ではありません。
 図根三角点は本来基準点測量では与点として使用する事は認められてはおりませんが、図
根三角点が使用出来なくなったら、国土調査の成果が全部否定される事にもなりかねませ
ん。なんとか図根三角点自体も3級基準点程度の精度は保っているという事なので、その様に
扱えば良いと思います。



●順序

 図根三角点から2、3点の新点を作成し(ただし、3級程度の基準点の作成となります、なる
べく直線的に均等な距離で配置を心がける)その三角点をつないでしまえば良いのです。
 その後、必要な場所に、その3級基準点程度の新点から新点の間を50mのピッチ程度(4
級基準点)でつなげば、最終的には5、6点の観測で終了します。
 その後はこれらの新点を使用して測量して行けば、かなり精度の高い測量が保てます。この
中間地点の観測をしたら、今観測している場所から行くと少しずれて、どこかにひずみすが生
じてしまうという心配が要らなくなります。
 当然、これらをくりかえしていけば、自分の手で国土調査と同様に、いえ、それ以上に精度の
良い網図が出来上がります。
 最初の高次の観測について上手に選点や観測を行っておかないと、次数が下がるに連れ
て、どんどん精度が下がる事を肝に命じておいて下さい。
 昔、国土調査で実施された路線の組み方も、土地を大量に測る必要やその当時使用した測
量機械の性能等の問題もあり、正直な感想を言うと出来るように路線を組んでいると感じるの
ですが、当時の事情を考慮すると仕方の無い面もあります。
 といっても、我々が路線を組む以上、当時よりも良い形で、基本にあった形で路線を組んで
おかないと、今度は我々が批判される事になります。



●路線

 同一の図根三角点の組み合わせで観測を行ったとしても、国土調査と同様な形になる事は
まずありません。より良い形で、更に精度が増した形で、より便利な場所に基準点が残る形、
当然きっちりとした構造物に鋲を打ち込んだりして、自分で残す努力をしなければなりません。
 図根三角点を使用すれば、その範囲の中では、一番精度の良い値が得られるという事で
す。また、図根三角点でも、国の三角点から作成されており、それなりの精度の成果ですが、
その値に満足出来ないという方は、国の三角点から本来の基準点測量をするしかないでしょ
う。
 ただし、それは一人での作業量の範疇を越えていると思われます。
 こういった風に、改めて路線の観測をおこなった場合、与点の図根三角点の持つ誤差の配
分について相違が出来、1筆地の境界との座標同士での位置関係の相違が生じるのではない
かという疑問は当然もたれると思います。
 しかし、国の三角点の位置誤差が10センチ程度、図根三角点では30センチ程度と言われ
ています。もし仮に最大限30センチの誤差があるにしても、誤差の配分で考えれば、その1筆
地を測る位置でどの程度の差が生じるでしようか。
 ただし、これは与点の誤差が現地ではどうなるかという事ですので、後で述べるスライド量と
は意味が多少相違します。



●違い

 仮に、この与点の誤差がそのまま現地に反映されたとしても、30センチ程度の位置の相違
という事になりますが、ちょっと下図1、2、3の図面を見て下さい。



図1の場合、与点の図根三角点同士の視通が直接効き、ほとんど直線的に単路線を組んで
いますが、路線の距離は1.2キロ、閉合差3センチ程度で精度は約1万分の1です。ところが
図2は同じ与点を使用して、現場が大分西側にあったためぐるっと膨らみをつけて、このあたり
全体が測れるようにと路線を組んだものです。全長が2キロを越えましたが、距離誤差が同様
に3センチで精度は3万分の1という事になりました。
 図3は図2の位置よりも更に西側に現場が出た為、この現場の近所の図根三角点を探したと
ころ、一番近くの平地にあった図根三角点は亡失していましたが、山頂近くの図根三角点を探
し出し、図根三角点の亡失している地域についてもカバーするため3級程度の基準点に準じた
新点を結合多角方式により作成しました。
 ここで、図1、図2、図3に共通する点3-25は本来同一の座標値となるはずですが、それぞれ
の観測により計算を別々に行なった結果、1センチ程度で微妙に値が相違しています。
更に図2と図3において与点から遠く離れた図2の5の位置を図3の基準点3-31から測り直す
と、約3センチの座標の相違が見られます。
 これは、見かけ上、非常に精度の良い場所でもこの程度の誤差が見られます。通常図根三
角点同士の精度は8000分の1程度ですから、普通はもっと差が見られる事になります。(図
3の結合多角方式の計算結果は、水平角厳密網の標準偏差9秒程度でした。)



●国土調査の路線との比較

 今の図1、2、3は同一の与点を使用して、同一の人間が同一の方法で観測し、その路線の
形が相違する為に起った相違でした。
 だが、この値と国土調査の路線による値を比べてみればどうなるでしょうか。
使用した図根三角点の亡失。大量の土地を測る為に路線の組み方との相違。
 1次路線なのか、それとも3次路線なのか、現地を測った図根多角点とは細かい比較をしな
ければなりませんが、現地の与点に対しての位置がどうしても図根三角点から離れるにしたが
って、その図根多角点の座標値が精度が悪くなるのはしかたない事なのかもしれません。
図根多角点の精度管理表を見ても、時々1000分の1を下回る精度がありますが、これでも
充分国土調査の制限をクリアーしているのです。
 おかしな言い方ですが、自分の作成した基準点も国土調査の図根多角点も間違いでは無い
のです。後々使用するために、どちらの信頼性が高いかという事なのです。
 先程言った様に、少し先の現地を測り、中間を飛ばして、また今度の現地を測ったら、どうも
中間の地点に大分しわ寄せをしてしまった。どうか、この中間の場所の測量がこないでくれと
思う事のないようにしなければなりません。



法4条地図の読み方
     
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