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心配事 2 (ご存知でしょうが5) 図根多角点の亡失により,新しく図根点や基準点を設置して,亡失した図根多角点に替えることになります。新設図根点や新設基準点は正確な値であり,一筆地の境界点の座標は法14条1項地図からの読み取り座標値を使用すれば,地籍調査時の図根多角点と境界点の位置関係に変動は与えないものと考え,それぞれの座標値をそのままに処理している場合があります。 新規の図根点や基準点を設置した時に起こる条件の交差によるズレについて説明してきましたが,このズレに気づかず処理をしている場合です。(図1)で示すように,亡失した図根多角点の代わりに新設図根点や新設基準点を設置した場合,たとえ同一位置であっても,新設図根点や新設基準点の座標は亡失した図根多角点の座標と相違することになります。 ![]() ここで,図根多角点と一筆地の境界点の関係を(図2)のように表示することとします。 この地籍調査時に設置された図根多角点から観測された境界点と法14条第1項地図からの読み取り境界点座標との関係は国土調査施行令別表第5の許容誤差の範囲内にあるはずです。 (図2)の図根多角点と同一の位置に新設図根点・新設基準点があるならば,現地の境界点とのお互いの関係は変わりません。ただ新設図根点・新設基準点は位置が同じであっても設置条件・測量環境等が相違するために結果的に座標が相違することになります。そのため座標平面上に表示される位置には相違がありますが(図2)の関係は変わりません。 (図2)の図根多角点と境界点の関係が新設図根点と境界点,新設基準点と境界点という同一の関係が座標平面上で,(図3)のように,新設図根点の座標位置,新設基準点の座標位置を基準としてそれぞれの関係を座標の相違する位置で表示されることになります。 実際には,図根多角点は亡失しているのですから,元の位置と相違する場所に新設の図根点や基準点を設置することになります。新たに設置された図根点や基準点の座標値を使用して,地籍調査時の図根多角点をその座標値により復元します。 そして法14条第1項地図から読み取った境界点の位置を同様にして,新たな図根点や基準点の座標値を使用して復元することになります。 このような回りくどい無駄な説明をその都度加えなければなりません。そこで,矛盾を承知で亡失した図根多角点がその位置に存在し,その位置を新設図根点または新設基準点として観測したものとして考えてください。 そのように考えると,図根多角点と境界点との関係,新設図根点と境界点との関係,新設基準点と境界点との関係は同一となります。(図3)のように,図根多角点と境界点との関係と新設図根点・新設基準点と境界点の関係は新設図根点・新設基準点の座標値が相違するために,座標上では平行移動していますが,同一であるはずなのです。 相違を明確に表示するために図では平行移動の量を大きく表示しています。その量は0〜2メ―トルまでの移動量で,多くは1メートル以内だと思われます。平行移動することにより,そのズレを解消する方法を今までは説明してきました。 ここでは,その平行移動の処理がされなかった場合を説明していくことにします。 図根多角点と境界点の関係と新設図根点と境界点の関係は同じで,(図4)?のような平行移動した関係であるはずなのですが,新設図根点や基準点は正確な値であるから,地籍調査の成果とそのまま比較出来るのだと考えて,新設図根点の新たに観測・計算された座標値と法14条第1項地図の境界点読み取り座標値を同一座標平面上でそのままに処理して,使用すると(図4)?のような関係になります。これは明らかに捻じれた関係になっています。 (図5)で更に詳しく説明することにします。 ここからは,現実的な対応として,地籍調査の図根多角点の位置は法14条第1項地図に記載のある図根多角点の?印も読み取った値,そして法14条第1項地図の境界点読み取り座標はUで表示します。更に,新設基準点4-3についても,そのままの座標を使用して同一の座標平面に表示しました。 この段階で土地所有者の承諾があり,地積測量図が作成され,面積等が確定されてしまい,予算化されてしまえばUで表示された境界点をこのとおり処理しないと官公庁では事業が進まなくなります。そこで個人の財産である一筆地の境界点位置の正確さよりも,公共事業優先ということで強引にこのUの位置を一筆地の境界として確定し,その結果として,現地を無視した形で地図訂正がされてしまうことがあります。 そして,地図訂正の原因として地籍調査は粗雑で,立会いが満足ではないと簡単に片付けられてしまいます。 今回の問題点はここなのです。 新設基準点4-3から亡失した図根多角点(ここでは仮にAB23-6とします。)の座標値により,その位置を復元してみると,(図6)の図根多角点AB23-6の位置になりますが,図根多角点AB23-6が現地に残っていれば相違した位置になります。 同一点なのだから,座標値が相違するのはおかしいと思われるかもしれませんが,亡失した図根多角点の代わりに,新たな図根点や基準点を設置すると,その設置条件により座標値が相違してしまうことは最初に説明しました。 そしてその異なった座標値である新設基準点4-3の方を基本とした座標平面により座標を表示しました。これは国土調査施行令別表第5の許容誤差以外のもので,微妙に座標系が相違するということなのです。 新設基準点4-3から現況を測量してみると,現地には境界らしき点Kがあります。土地所有者・隣接地土地所有者もこの位置を境界として主張しています。 新設基準点4-3と図根多角点AB23-6,そしてUとKの境界点の座標を新設基準点4-3の座標値を基準に,同一座標平面上に表示してみると,(図6)のように境界点KとUにつていて各点では微妙な相違はありますが,全体的にみれば同一方向・距離に共通してズレていると思われます。これは新設基準点4-3の座標を基準とした場合,図根多角点AB23-6の表示(座標値)がこの分だけズレていると思えば良いのです。 (図5)の新設基準点4-3とUの関係は(図4)の?ではなく,(図4)の?の状態になっている事に気づかれると思います。 (図6)で表示したように,図根多角点AB23-6とUの境界点の関係。もう一つは図根多角点AB23-6が新設基準点4-3の座標値からすればある一定方向にズレているとする新設基準点4-3とKの境界点の位置関係が適切な関係なのです。 図根多角点AB23-6は現実には亡失していますから,図根多角点AB23-6を観測してその座標値で直接比較してみることはできません。 ただし,KとUの境界点の表示する座標を比較することにより,本来同一であるべきはずのものの位置がある一定方向に一定の距離で相違していることを確認出来ます。これにより地籍調査の際に境界点全体に影響を与えた観測点である図根多角点を新設基準点から観測した場合の座標のズレ知り,その量を知ることが可能となります。 ![]() これは,現況測量を行うことにより比較的簡単に知ることが出来ます。(図7)のように新設基準点を使用して現況測量を行うと,法14条第1項地図からの境界点の読取り座標は,ある一定方向に全体がズレていることが簡単に判ります。 ここで簡単に地籍調査の図根多角点の精度が悪いと簡単に決めつけてしまう事になりがちですが,先程説明したとおり,亡失図根多角点に替わり新設図根点・新設基準点を設置した時の条件の相違,そしてそれによる座標値の相違(ズレ)が含まれるだということを理解しておけば違った処理になります。 現況が地籍調査時から異動した状態でないことが確認出来れば,法14条1項地図による境界点の読み取り座標か新設基準点から観測した境界点の座標値のいずれかを平行移動してやれば,正しい位置関係になるはずです。 この後の正しい処理については,既に説明していますので省略します。ここでは,誤って処理をされてしまったものについて説明することにします。 (図3)で,図根多角点と境界点,新設(既設)図根点と境界点の関係を図示しました。平行移動しなければならなかったのですが,条件の交差を処理しなかったために,(図4)?のように本来の既設図根点と境界点の関係が正しく表示されず,既設図根点と境界点との関係が複雑な関係になり歪みが生じています。 今回,その歪みを発見し,修正しなければなりません。(図4)Aのような関係が本来の関係ですから,(図4)Bのようにもつれてしまった関係を確認し,修復する必要があります。 ![]() (図8)のように修正方法を改まって図で表示するとえらく難しい処理のように思われますが,いたって簡単です。 通常の処理である@法14条第1項地図から境界点の座標を読取る。A新設基準点を設置する。Bその基準点を使用して少し広い範囲の現況測量をする。この三つが揃えば簡単に解決することができます。 現地には既設図根点があり,境界点の標識は無いものとして,地積測量図には,新設図根点から関連する境界点の座標が表示されています。そこで新設基準点を利用して,既設図根点を観測,または既設図根点そのものを新設基準点として観測し直し,新設基準点から観測した現況図にそれら全部を掲載します。 そうすると,もう一度(図7)の状態になり,既設図根点を使用して復元した前回の境界点位置は,新たに読み取りをした法14条第1項地図の境界点座標では境界点の位置が少し相違するはずです。 詳しく言えば,地積測量図に記載されている境界点座標と今回読み取りをした境界点の座標については,ほとんど同一と言っても良いものはずです。既提出地積測量図に記載してある図根点を準拠点として,その座標により現地で復元してみると,それ以上に相違する位置になります。 これは,新設図根点・新設基準点を設置した時の条件の相違がそのまま現れています。説明を行っても良いのですが,図が煩雑になるだけであまり意味がありませんので,簡単に(図9)で表示します。 (図9)は既設(新設)図根点3-4とその時に使用した法14条第1項地図から境界点を読み取りした座標A,新設基準点3-4と新たに法14条第1項地図から境界点を読み取りした座標U,そして新設基準点3-4か実際の境界点と思われるKを観測しました。 ![]() (図9)はそれらの座標を新設基準点3-4の座標を基本に,それぞれの座標を同一座標平面に記載したものです。(図7)と同様の表示となり,AとUの境界点については,読み取りをした時点では,読み取り誤差程度のほぼ同様の値と思われます。 ただ,既設図根点4-3と今回の新設基準点4-3について,同一点を観測したとしても,観測条件等の相違により,その座標値が相違します。 このズレがAとUの読み取り誤差部分に追加されてしまいます。いずれにしても,正しい処理をしていればKの位置そのものか,それに近い値となっているはずなのです。 しかし,地籍調査の図根多角点の精度は悪い。だから土地所有者達の主張する一筆地全体がズレている位置を境界とするには,法14条第1項地図の境界点読み取り座標値を訂正しなければならない。現況との間にズレがあれば,読み取り値そのものがそのズレた位置を表示するように訂正しなければならない。 このように考えてしまいました。亡失した図根多角点に替わり新設図根点,新設基準点を設置する度に地図訂正をしなくてはならないのでしょうか。 (図9)で新設基準点4-3からすれば,境界点はKの位置が本来の位置であると推定出来ます。 このような過程を,素人に対して説明をすることは大変な労力を要しますが,一つ一つ丁寧に積み上げ説明することで,我々土地家屋調査士もその過程に行き着くまでの矛盾を取り除くことが出来ます。 この過程を丁寧に説明することが出来れば,地籍調査の精度は悪い・立会いはいい加減と批判していた素人にも,本当の原因について納得させることが可能になります。 そのためにも,新設するのは基準点であるべきであり,法14条第1項地図からの境界点の読み取り座標についてもなるべく客観的なものを使用することが必要でしょう。 ここまでは,一筆地全部がズレた位置にある場合の説明でした。一筆地が全部ズレている場合の説明や証明は簡単です。 ●ズレを考慮せず分筆した場合に対応するには 実際に問題が起きるのは,いえ,起こっているのは,条件の交差によるズレが起こっているにもかかわらず,そのまま分筆されてしまった場合なのです。 今度は,分筆の場合を説明することにします。 既設図根点4-3から,現地の分筆予定地点B1,B2,B3,B4,B5を観測しました。分筆は(図10)で示すとおりB1,B2,B3,B4,B5を順次結ぶ線になります。 この場合の分筆方法として,法14条第1項地図から境界点の読み取り座標Uによる一筆地の形状に現地で既設図根点4-3から観測したB1,B2,B3,B4,B5を結ぶ分筆線と,境界点の読み取り座標Uを結ぶ民民の線上で交わる点については,交点計算によりC1,C2として計算します。 一筆地の形状についてはUの境界点を使用して,求積地についてはU7,U6,U5,U4,C1,B2,B3,B4,C2,U7で囲まれた土地として分筆されました。 実際買収される現地はB1,B2,B3,B4,B5を結ぶ分筆線と,境界点の読み取り座標Uを結ぶ民民の線上で交わる点について交点計算によりC3,C4を計算すると,K31,K30,K45,C3,B2,B3,B4,C4,K31で囲まれた範囲になります。 分筆された土地について,地積測量図で表示されている土地と実際の土地ではかなりの相違があることになります。 しかし,この分筆の後,残地の測量を行うと,B1,B2,B3,B4,B5については現地の既設図根点4-3から実際に観測されていますので,現地で確認しても正確な位置に境界杭が設置してあります。 ただ,民民所有地との境界点C1,C2の位置について,本来の民民境界とのズレが発生することになりますが,昔実施した地籍調査がおかしいと官公庁の担当者に説明されると土地所有者も「何かおかしい」と疑問を持っても,地籍調査が悪いのかと納得してしまっているのかもしれません。 ![]() しかし,分筆線だけでなく残地,求積地ともに現況とは相違する地積測量図が提出されてしまっています。残地について依頼があれば,前回の分筆の処理が正しいのかどうか,確認しなければなりません。 どのような方法が必要なのでしょうか。 簡単な方法なのです。先ほどと同様の三つの方法なのです。@法14条第1項地図から境界点の座標を読取る。A新設基準点を設置する。Bその基準点を使用して少し広い範囲の現況測量をする。この三つなのです。これに既提出の地積測量図は当然加わることになります。そして@の読み取りなのですが,残地部分だけでなく,前回求積された土地も含んで読んでおいてください。出来れば,隣接地も含んで読み取っておいてください。通常の分筆業務と全く同様の手順ということになります。 結果として,先程の(図10)と同様の現況図が出来上がるはずです。ここまで説明すれば,簡単に原因が判明し,前回の分筆時にどのように処理すべきであったかが明確になります。 この後の処理については,個々の事案により解決するしかなく,分筆錯誤,地積更正,再分筆等いろいろな方法が考えられます。自分の最良と思われる処理をすれば良いでしょう。 ●立会いについて 最後になりましたが,このような作業をしているから立会いが不要ということではありません。 一番重要な事は,当事者の立会いで,異動のない筆界を確認してもらう。その為には,少なくとも地籍調査当時の状況と,その筆界は地籍調査時までに異動がなかったのか,そして地籍調査を行った後も異動がなかったのかを確認することは重要な事です。そこで始めて,地籍調査で明示された境界が筆界なのか所有権境界なのか区別されます。 地籍調査で明示された境界を復元することは大切なことです。ただ復元位置は参考であり,平均二乗誤差の範囲や公差の範囲を超えるからと,強引に境界位置を誘導してはなりません。 地籍調査で明示された所有権境界(または合意境界)ではなく,当事者が筆界を明示されている場合もあるからです。そのような事を肝に銘じながら,法14条第1項地図の境界点の読み取り座標と現地とのズレを考慮したスライド量の処理を行いましょう。 当然,復元して当事者の立会いにより確認された位置について,条件の交差によるズレ,スライド量を修正した後,国土調査施工令別表第5の許容誤差にあるかどうか確認する必要があります。 そこで地籍調査の成果がどうであったのか,地図訂正が必要か否か判断することになり,これが土地家屋調査士の職責を守るための最後のチェックでもあるのです。
(表1)国土調査施工令別表第5 備考 1 精度区分とは,誤差の限度の区分をいい,その適用の基準は,国土庁長官が定める。 2 筆界点の位置誤差とは,当該筆界点のこれを決定した与点に対する位置誤差をいう。 3 Sは,筆界点間の距離をメートル単位で示した数とする。 4 aは,図解法を用いる場合において,図解作業の級がA級であるときは,0.2に,その他であるときは0.3に当該地積測量図の縮尺の分母の数を乗じて得た級とする。図解作業のA級とは,図解法による与点のプロット誤差が0.1ミリメートル以内である級をいう。 5 Fは,1筆地の地積を平方メートル単位で示した数とする。
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