|
● 素図はそろったけれど やっと、10月にはほとんどの座標と素図が揃った。 私が観測した分については6月の梅雨時を利用して図面を作成していたのだが、各自、多忙 でなかなか素図が送られて来なかった。 私も自分の業務で精一杯の状態で、全部一斉に送られて来たらとても手をつける気にはなら なかったであろう。 最初のデータは新居浜の宝さんから素図ととも9月中旬に送られてきた。続いて松山のO君 のデータ、少し間が空いて宇和島の山本君からはデータだけが送られてきた。 そして最後に一番測点数の多い今治のW氏のデータが素図とともに送られてきた。 座標データを取りあえず入力し、CAD上に全点をプロットして、送られてきた素図に基づいて 結線し、現況平面図を作成していくのだが、各自特徴があり、統一された点の取り方では無 い。 やむを得ず、素図と座標データを送ってくれた各自に電話で確認をし、オフセット等を行いなが ら結線を行ってみる。 ● 全体図があってこその部分拡大図 取りあえず、各自の作業範囲別に結線はしてみたものの、それぞれを結合しようとすると、と んでもない事になる。 本来、同一の線であるはずが、それぞれ別の方向へと向いている。どちらが正しいのか解ら ない。大元の素図を確認してみても、研修で行った為、慣れた人間が解り易く描いてくれている のなら良いが、始めて素図を書く人間がほとんど。 野帳に描かれた素図も、同一観測点からの観測については、本来見開きの一面で収めてくれ ていれば解り易いのだが、部分的に数ページに渡って、別々に描かれている。 作成した本人からすれば、丁寧に解り易くと言う事のようだが、全体図を描かず、拡大図ばか りを書いてくれても、その関係がどうなっいるのか全く不明。折角測点番号を記入していてくれ ても、全く解らない。 じっくり見ていると、現況の記号についても、記載の解釈がどうもそれぞれに違っている。 半円のマークの石積みの記号にしても、どちらが石積みの『てんば』を表わすのか、どうも解っ ていないようである。 同一の傾斜を持った石積みであるにもかかわらず、両端を別の観測班が観測し、素図を作成 してくれてはいるのだが、傾斜の方向が相違している現象も頻繁におき、大体現場を知ってい るとしても、石積みがどちらに傾斜していたかまでは覚えていない。 ● オフセット 現地でのオフセットの取り方も特殊な取り方になっている。通常の四角形であれば、3点あれ ばオフセットの値は不要で図形が描ける。最低2点とオフセットの値があれば、それなりの形 は描けるが、連続する2点とその点から測る事の出来ない2点へのそれぞれの距離を記載し ていれば、これも問題ないのだが、対角線の2点を測り、その点から未知の別の頂点までの 距離を入れたのでは通常の場合では図形の描きようがない。 仮に、どの線と平行、または垂直な線という風な表示があれば、これは図形を描く事は可能で ある。 現地での判断で、処理方法を誤ったのか。自分が常時行っている方法だから他人にも解る とやってしまったのか。自分の測量ソフトのCADでは可能だからとやってしまったのかは定か ではない。 ● 確認 それでも、なんとか格好はつけないと信用問題になる。500分の1の縮尺で現況図面を描くと A0のサイズを飛び出してしまう大きさの現況を、事務所の年末の忙しいさなかをぶつくさ文句 を言いながら仕上げていく。 U型側溝の両側2点を押さえて、内側の値をオフセットで図形化するのか。外側1点のみを押 さえて、他の線をすべてオフセットで図形化するのか。また内側1点を押さえてオフセットで図 形化するのか。 ブロック塀、コンクリート塀のいずれの端を押さえるのか。右側、左側それとも中央なのか。 傾斜のある擁壁の『てんば』部分と、擁壁裏を押さえるかどうか。小さな現場なら、ほとんどオフ セットを使用しないですべてを観測してしまえば問題はないが、なにせここは現地が広く、両側 の点を片側の点に出来れば、それだけで普通の現場の現況図面のための測点数くらい簡単 に倹約出来る。 これぐらいは自分の業務の中で心得ているだろうと思っても、調査士はやっぱり個人事業主、 個人々の癖があり、なかなか統一した図形にならない。 左側をとっている人もいれば右側の人もいる、そして中央の人もいる、作図をする人間は私一 人である。まさにパニック。 ● 情報 調査士の場合、地積測量図については、不動産登記法、細則、準則そして取り扱い要領によ り、細かく記載の方法については最低限度の統一化がなされているが、実務上何ら支障無く、 軽々とその条件を飛び越えて、それ以上の事を記載している。 だが、地積測量図の記載の仕方以外の事となるとどうなのだろうか。境界の確認。調査。当然 境界の復元。それらの事前測量のための現況図面の作成。現況図面とまではいかないが、最 低限度の情報を持った現地の図面を作り上げる事。精密であればあるほど情報量も比例して 増加する。 自分自身の仕事の信用度の向上にも、後日の参考資料としても、非常に役立つ要素がある。 素人にも解る図形化した目で見る土地境界の情報でもある。 ● 不幸の電話 この現況図作成は我々調査士にとっては大規模で一人でこつこつやっていたのでは、おのず と限界がある。 取りあえず、別件で納品は済ませているので納期は気にしなくて良くなっているのだが、1年近 く、本物を納品しないとさすがの私でも気がひける。年度末には後3ヶ月しかない。正月早々だ が、仕方ない。 また、いつものメンバーの力を借りよう。即座に電話。 「あのな。また不幸の電話なんやけど。」 「今度は何ですか。」 「例の、現況測量の件なんやけどな。」 各自、それぞれに中途半端になってしまったと、気持ちの中に残っているらしく、 「やっぱりきましたか。気になっていたんで行きます。」と、異口同音に電話の向こうの返事。 それではと、1月末に同じ町内で行うGPS観測との抱き合わせで、現地で確認をする事になっ た。 ● 現地にて そして1月末の土曜日。GPSの観測を午前中に済ませ、14時からの現地での確認となった。 一応、これまでに図化した分をA3用紙7枚一組にしてレーザープリンターで打ち出す。各自に コピーして配布。 観測した点については、プロットマークと測点番号を入れているが、結線してあるものが、まだ 7割程度。そのうち3割が明確でないため、記号を入れての完全な現況図になっいない。その ため全体では5割程度の出来である。 各自、その図面のコピーを持ち、それぞれの担当の場所で結線を行う。だが、もう時間が経過 しており、どちら側をとったのか定かではなくなっている。 また、即座に対応出来るほど生半可な量ではない、とにかく大筋を埋めなければならない。 どちら側をとったかわからないものは、取りあえず断面をとり、その幅の記載を行い、後日、観 測点間の距離をチェックして、どちらをとったか確認すればよい。とにかく、少しでも確認しなけ れば、本日集まった甲斐がないと、コンペックスと、図面と三角スケールを持ちながら、現地を 走り回る。 ● 出るわ、出るわ 確認した結果、やっばり、間違いが出るわ、出るわ。結線の勘違い。コンクリート杭。電柱の位 置の観測もれ、そしてこんなにも記号を間違っていたのだろうかと唖然とする。 自分だけの現況平面図だと、多少記号が相違しても、それらしき雰囲気があれば問題ないの だが、今回は料金を頂いての現況平面図作成であり、記号の相違は許されない。 だが、自分自身でも、ガードレールの記号と思っていたものが、並木の記号であったり、みか ん(果樹園)と思っていたものが、広葉樹の記号であったり。 フェンスが波線では無く、一点鎖線であったりと、今まで思っていた記号と相違する。更には河 川であるためブロック積とコンクリート擁壁の記号の違い。コンクリート直壁の記号。コンクリー ト水路のコンクリートの厚みまで記載すべきかどうか等々。 そして破線表示なのか実線表示なのか。 今まで、境界の確認のため自慢げに、現況平面図ですと官庁に提出していた自分が恐ろしく なってしまった。まさに無知という事ほど強いものはない。 とにかく、『ひどい』というのが正直な感想。これでは納品する事はまず無理だ。後日また日を 改めて確認しようという事になる。 さすがのW氏も「これは、1回くらいでは、無理ですよ。」と本音をぽろり。 ● 再測した方が 年度末が近づいた3月中旬の土曜日。やっとみんなの日程が1日だけとれ、確認にやって来 てくれた。 前回、全く結線が解らなかった支流の最上流から100メートル程の区域から、確認していく事 にした。 前回は時間的な余裕がなかったので、あらかじめ送付してくれた鉛筆で結線している素図から は結線出来なかったが、とにかく絵がなければ確認すら出来ないという当たり前の結論にな り、何とか素図を判読しながら平面図を作成。 そこは、三方張りのコンクリート水路、堰、コンクリート橋がある。現地に作製したばっかりの平 面図のコピーを持参し、確認を行う。 今回時間的な融通が効いたのは三人。まず、前回の観測で、どの部分を押さえたのか、素図 での確認が判読が難しいので、現地と平面図をスケールで読み取りながら、逐次確認をしてい く。 コンクリートの三方張りの水路には、落下防止用のガードパイプも設置してあるのだが、どうも ガードパイプの位置をとっているようなのだが、肝心の水路の『てんば』をとっていない。 おまけに、この部分の水路は、コンクリート擁壁が2段となっているため、余計にどこを押さえ ているか解らない。1点毎に確認。 更に、水路脇の道路の端にはU型水路があるのだが、この水路も、片側の1点のみしか観測 していない、後はオフセットで計算しろという事のようだ、通常の感覚で、どちらかに統一して観 測しているはずだからと、一番はしっこの部分でスケールアップして、水路のどちら側をとって いるか確認してみる。 「どうも、水路側の方をとっているようですね。」 「そうしたら、こういう結線になるね。」 「後はフェンスだね。これは5センチ外れた場所だからオフセットで書けるね。」 と言いながら、丁度真ん中あたりに来た時、どうも水路の曲がりかたが違う。 「あれっ。おかしいな。もう一回、スケールアップで確認しようわい。」とコンペックスで、道路幅 を確認する。 「ありゃ、今度はフェンス側を測っとるが。こりゃ解らんで。」 徐々にみんなの頭のネジが切れ掛かってきた。 やがてU型水路と集水桝が複雑に交差する地点、全く訳が分からなくなり、 ついに全員が『ぷっつん』してしまった。 「これは、再測量した方が早いで。」とうとう恐れていた事態になってしまう。 やむなく昼食後、光波測距儀とピンポールと手簿をそれぞれに受け持ち、再測を行う。3時間 かけて、観測数300点を終了。時間は17時を過ぎている。 ●まだまだ 「もう1回みんな集まって確認せんと無理じゃわい。」 「そうじゃね。またみんなに集つまってもらわんといけんね。」 この調子では、何時出来るのやら、不安が広がる。 それでも、なんとか全員が集合して確認。 その後2回の全員を招集。完了。やっと土木事務所への納品となった。 延々と続いた、現況平面図の作成。 やはり我々の能力を超えていたのだろうか。 一番感じたのは。測量会社と相違して、ひとつの仕事に当たる時の組織力。同一レベルの知 識。そして判断力が求められていた事を感じる。 恐らく、土地家屋調査士も、将来このような仕事も要求されてくるはずである。 また、自分自身の仕事の中に貪欲に取り込む必要があると思う。 作製は無理でも、少なくとも解読が出来なければ、いろいろな図面から状況を判断する事が難 しいはずである。
|