観  測


(延長1キロの河川の現況を測る)

● みんなで

 4月27日、28日の予定で県下各地及び岡山県、島根県からの参加者、合計15名の参加者
により研修は開始された。

 電子平板が発達している現在、電子平板で測ってしまえば事は簡単かも知れないが、我々
調査士で現況図の測り方の要領等、本格的に知っているものは殆どいないだろう。

それどころか費用が高くなり、手間がかかりすぎるといった理由から現況平面図をとっていな
いかも知れない。

現況を測るという事は昔の平板測量に1日の長があり、光波測距儀に慣れてしまった今の若
い調査士は面倒臭いとやりたがらないかもしれないが、総てが座標を持つという現況測量は
各人の経験の為にも、またコンピュータ時代に対応した情報の収集という事にもなり、今回は
丁度良い研修になるはずである。




● 始めに

現場の河川の横にあり、地図訂正の該当になる学校の駐車場に集合。

各自、持参の光波測距儀やピンポール等車から取り出し、用意を行う。

そのうちいつもどおりW氏から説明がある。

「器械の観測者、手簿者、変化点を押さえるポールマンの三人一組でやります。ポールマンは
現況の押さえた場所を大体どこだったかを絵にして素図を作っていって下さい。そうしないとど
こを押さえたかわからなくなりますよ。」

今回は、ほとんどの参加者が前回ここの4級基準点を作成した時のメンバーでもあるため、基
準点の位置については承知している。

「全部が全部押さえなくてはいけない事はないですよ。現況図ですからオフセットで書けますか
ら、この位置から何センチといった形でどんどん処理していって下さい。それじゃあ実際にやっ
てみます。」

と、自らポールマンになり、どんどん変化点を押さえ、手簿者が「はい、何番です」という番号を
確認しながら、「この番号はこの位置。」と現況の素図を野帳に書き込んでいく。

観測点から測れない場所に来ると「はい、ここを測って下さい、」コンペックスで、その位置から
の延長方向の距離をとり、素図に「この番号から何センチと」いう風にどんどん処理して行く。さ
すがに「1日1000点とった事もあります」という言葉は伊達じゃない。

一区切りがつくと、「大体こんな感じです。みんなで手分けしてやって下さい。」と素図を記載し
た野帳をみんなに回覧する。

そのまま現況平面図になっているところがさすがである。




● 一斉に

5人が一組になり3班編成で、各自河口付近の基準点に集まる、重複する事のないようにそれ
ぞれに「ここはこちらが測るから、この上流はお願いします」と連絡を取り合い観測を始める。

各班それぞれに観測の度に「測点番号何番です。」「もっとミラーを上げて。」「この地点からオ
フセットで何センチのところが建物角です。」等々。にぎやかに始まった。




●どこ、とりよん

だが、さすがに要領の良し悪し(慣れているのと慣れていないの差)の差が徐々につきはじめ
る。特にポールマンの経験の差がものを言うようである。

私も必要でないところをこまめにとりW氏に怒られる。

「どこ、とりよん。」

「河川の土手の天羽とガードレールの部分を別に測りよるんやけど。」

「あっ、それ。500分の1の図面にしてしまったら、出てこない線でしょう。ガードレールの線だ
けをとった方が間違いがないですよ。」

確かに、ガードレールの位置と土手の天羽は、距離はせいぜい10センチ、一緒でも問題のな
い場所である。

更に、河川と国道が交差する幅4メートルほどの橋梁での事。変形の橋のため土台が複雑に
なっており、10センチ単位でガタになっている。

まあ、その形状どおり変化点をとらなくてはと、丁寧にとっていったのだが、素図が何が何やら
解らない。書いた本人が解らないのだから他人が見て分かろうはずが無い。

「これ、こんなになったんだけど。」

「おおっ、力作じゃが。ほやけど500分の1にした時、解るん。上から見る形になるからもっと
大雑把でいいんじゃない。」と簡単に言われてしまった。




● いずこも

いずこも、私と似たり寄ったりの出来のようなのだが、素図の作成についても上手、下手があ
るようである。

最初から一枚にきっちりかけている人、なかなかうまく書けず。部分部分に分けて数枚に記載
している人。最初にW氏から見せられた素図とは大分見劣りがする。これだけは美術的なセン
スもものを言うが、慣れが大半である。

現況の範囲を的確に把握し、それを頭の中で按分して、どの位置にくるのかを割り振る。当然
分かりやすく、誇張するところは誇張して分かりやすくする。

こういった事が大事だ。当然測量においては数字を分かりやすい字で書くことが要求されてい
る。分かりやすくする事は、同時に間違いを無くする事でもある。




●秘密兵器

そうこう言いながら、観測は進んで行く。

大体基準点1個所での観測は、250点程度のようである。大体の観測が終了すれば、順次上
流の基準点に移動して観測を開始する。

段々、河口付近と違ってミカン畑が多くなり、2メートル程度の障害になって来て、通常の状態
ではミラーが見えなくなってくる。

ついに高さが要求され始める。いちいち新点を作成して、そこから観測していたのではきりが
なくなる。座標を持たすといっても、これは境界点の観測では無い。そういう割り切り方も大事
になってくる。

そのため各自、いろいろな工夫が出てくる。

まず簡単なのは2メートルのDMポールを使用して一番高い場所にミラーを据え付け観測。更
に3mのポールが登場。

やっぱり工夫が違うのは、W氏、彼の場合は常に実践に裏打ちされている。

5メートルのスタッフに、ミラーを工夫して取り付けているではないか。これだったらとんでもない
場所でも観測出来る。W氏は自分で工夫しているが、取り付け金具は既に販売しているとの
事である。




●総数1万点

そういった工夫を繰り返し、何とか天気にも恵まれて進んで行く。だが何せ、本流の延長120
0m、平均の川幅15m。支流の延長300m、平均の川幅3mだから、なかなか終わらない。
本流部分の7割程度を終了した時には予定の二日間が過ぎてしまった。

仕方なく1ヶ月後GPSで隣接の地域に2級基準点を設置する計画となっており、翌日を使用し
て追加の現況測量を行う事になった。

6月3日は、最初参加出来なかったメンバーも加わり、5班での班編成となり、また支流の部分
の観測が主体。そして大分慣れてきたこともあり、どんどん観測が進む。

昼過ぎには総てを完了。観測した点数の総数は4000点という膨大な数になっている。既に流
域の国土調査図面を読み取っており、それを合算すると1万点を超える現場になってしまった。

各自(5人)自分の観測結果を持ち帰り、計算をした後、その座標をフロッピーで送付してくれる
事になった。最近は日調連フォーマットやシーマ変換があるのでパソコンのソフトが相違しても
何とか座標のやり取りが出来る。

更に自分が測った場所でもあるので、素図を基に、測点をプロットして、それを結線して、改め
て丁寧な素図を送ってくれる事になった。




● なかなか揃わない

だが、みんな忙しい連中で、たまの休みもGPS観測に走り回り、ほとんど現況について時間を
避けなかったのだろう、約束した結果を7月になっても誰も送付して来ない。とうとう8月に入っ
てしまい、不本意ながら電話で催促をする事になる。

「悪いけど急いでくれる。」

「すんません。直ぐ作って送ります。」というのはいい方で

「ありゃ、結線がどうだったか忘れたぜ。まぁ何とかやらい。」と危なっかしい。

それでも9月中旬には一人を除いて送付されて来た。どんどんシーマ変換で私のパソコンに入
力して行く。






そして、自分の仕事が落ち着いた10月のある日、現況平面を作成している内に、この班が境
界杭について観測していない事に気がついた。電話で「杭は観測せんかったの。」

「すいません。すっかり忘れてました。再測に行きましょうか。」

「ええよ。こちらでやっとくから」

と現場に来たのだが、きれいな水があり、風通しも良く、岩積みがあり、尚且つ日陰もある。こ
こは蝮の名所。

以前ここからちょっと外れた場所でも、図根三角点を探した際に、小さい蝮と遭遇し、ひやりと
した思いがある。

しかも、今は冬眠前の一番危ないと言われている季節。人夫さんと「ひょっとして、蝮がいるか
もしれませんから、気を付けて下さい。」と言いながら、基準点に器械を据えながら準備に取り
掛かる。

だが、観測を開始しようと一番近くの境界杭からと、コンクリート擁壁の1m程の段差の下にあ
る草の中に見える境界杭を眺めていると、何やら太く長いものが通る。「ああっ、ヘビだな。」と
思ったのは良かったのだが、じっくり見ていると茶色の元地に何やら丸い銭型模様がいくつも
見える。

「おじさん、これこれ。蝮ですよ。」

人夫のおじさん「ああっ。本当よ、これは太いわい。」

無言の内に、二人は器械をかたずけ。まだ12時前だというのに本日の観測は終了してしまっ
た。


現況を測る
     
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