建物いろいろ

(建物 2)

● はじめに

建物の登記はいろいろな事例が多く、その取り扱いも調査士や、登記官によってそれぞれの
ようである。

一見して笑い話のようになる事例や、ジワーッと後から腹が立ってくる事例も多い。




●建物の外周くらいは

建築確認通知書は木造の場合は、設計変更や1.81mから1.91mへのグリッドの変更といった事
が考えられるので、検査済証が出ている建物と言えども一応外周と、位置決めの為の土地境
界からの距離はテープで測っている。

だが、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物となると、建築確認通知書が出ていると全部測る事
にならず、せいぜい一番長い距離や、形状のみの確認、そして土地境界からの距離のみを測
るという事にして、後は建築確認通知書任せとなる。これは殆どの場合、寸法がミリ単位で記
載され、各種の計算が添えられている為、まさか基本になっているこの値が変えられる事は無
いだろうし、正確な記載だろうという事で建物本体については信用しているのである。


この間、国土調査実施地区での三階建ての鉄筋造の建物が新築となり、銀行から建物表示
登記を依頼された。

この地区については通常、建築確認通知書が不要の地域で、こちらも建築確認通知書は無い
物として、建物所有者の立ち会いを得て、建物の外周、土地境界からの距離を全て測量、そし
て所有権の調査の為、建物所有者に所有権証明書の事を確認すると建築確認通知書がある
との事、ただ手元にはないので後日、銀行を通じて送付するという事で別れた。

事務所に帰り、ある程度の下準備という事で、外周の実測寸法について、閉合差が1cm程度
であったので、形状について実測の誤りはないものとして、閉合差が0になる様に調整を行
い、床面積の算出も出来。建物図面を作成し、法17条地図に当て込んでみた。だが、筒一杯
に建ってはいるが実際には隣接の土地境界にははみ出していないにも係わらず、建物の柱中
心で作成した建物図面は、土地の形状からはみ出してしまった。

こんな事は、筒一杯に建っている場合には、ちょっと仕方の無い事。地図訂正の必要までは無
い、単純に線1本程度の事である。建物の形状を線1本程度、縮小して表示すれば問題は無
い。とタカをくくっていたのだが、丁度銀行から所有権証明書として建築確認通知書が送られて
来た。




● 再調査

建築確認通知書を眺め、床面積の計算に使用している寸法を確認したところ、国道と接する
間口部分が6m弱の距離であるにも係わらず、私の測った寸法と比較すれば12cm長い。つい
でに奥行きも11m程度であるが同様に長い。

「おかしい。建物の形状については長方形の単純な形状であり、平行する二辺についても別々
に実測しており、その差は1cm程度の差しか無い。間違っていないはずだが。とにかくもう一度
測りに行こう。」

自分の観測に間違いは無いはずだが、こんなに違っていているのだったら、ひょっとしてと早
速現地に向かう。

現地に到着。建物の所有者に、もう一度確認の為、外周を測らせてくださいとお断りの後、観
測をする。

取りあえず、間口の距離を測ると、前回と同様の数字である。鉄筋コンクリート造であるから差
し引き計算をしても、この位置で壁の中心となり間違っていない。一体、建築確認通知書の寸
法はどこの距離を記載しているのであろうか。建築確認通知書を見れば、私と同じ考えで、壁
芯から壁芯までの距離としているのだが、実際その距離は、壁の外壁から外壁までの距離と
なっている。奥行きについても同様の結果であった。

建築主に「あの、建物の寸法ですが変更されましたか。」

「なんか知らんけど、建築業者が何か変えた言いよったい。」

「ああ、そうですか解りました。」

ちょっと、この差はありすぎるので、私は自分の測量をした数値を使用して、表示登記を申請。
問題無く登記は終了した。

だが、2、3週間後、現地から車で2時間程度の距離にある設計会社本店の設計担当者から
電話が入る。




● 設計業者と建築業者

「登記をしてもらった建物の寸法が違っているのですが、修正してもらわないと困ります。」

「実際に測量をしましたらあの数字だったんですよ。それに建築確認通知書の寸法のままでし
たら、土地の形状からはみ出しますよ。」やんわりと、違っていますよと言ったのだが、電話を
かけてきた設計士は意味が解らないらしく、

「最初、あの土地の地図の寸法が違っていたんで、それで役場に修正をしてもらっているんで
間違い無いはずです。」

「はぁ〜っ。」

法17条地図を修正した形跡は無く。現地での隣接の土地境界からははみだす寸法でありな
がら、えらい剣幕で言ってくる。どうやら、建築確認通知書の敷地図をその寸法の建物が入る
ように調整して、役場の建設課も土木事務所もそれで了解しているのだからいいだろうという
事のようである。こんなのを相手にしても仕方が無い。

「そう言われるのでしたら、こちらももう一回調査しますが、お宅もよく確認して下さい。」

数日後、現地の近隣にある、設計会社の支店の方が事務所にやって来られ、

「あの、まだ、私は現地にはいっていないんですが、本社から一体どういう事なのか聞いてこい
と言う事なんですが。」

これまでの経緯と、実際の寸法について説明。

「現地で確認して頂いて、もし違っているようでしたら、訂正はしますよ。」

「はい、それでは、取りあえず現地へ行って確認して見ます。」

と言って別れたのだが、その後何も連絡はなかった。


どうやら、設計会社は、現地で敷地の調査をしたのかどうか解らないが、設計だけを行い、後
は地元の建築業者にすべて任せてしまったようだ。

そのため、最初の敷地調査を誤り、そのまま筒一杯の形での設計をしてしまった。ところが実
際に施行する段階になって、その相違が解り、建築業者は、隣接の土地に入る訳にはいかな
いので建物の寸法を変更した、壁の位置を設計よりも内側にし、設計担当者に連絡。

だが本当に管理を行っていなかった設計担当者は、敷地調査が相違していたので、建物の設
計について「役場に言って変更した。」という内容を、敷地調査は間違いなく、役場の地図が間
違っていたので、敷地調査による最初の設計どうりに建てる事が出来るように、役場の地図を
修正して、そのとおりになるように「役場に言って修正した。」と受け取った。

本当に管理をしないで、電話連絡程度での交信で済んでしまったのだろう。

これは、一体で管理をしなければならないものが設計のみ、建築するのみとなってしまった為
に起った問題である。だがこの手の問題もしばしば起るそうである。

土地家屋調査士として、それに巻き込まれ為にもどんな建物でも、外周の距離。形状。境界か
らの距離、そして建物の材質くらいは調査しておきたいものである。




●寸法

言わずもがなであるが、実際に建物を測った場合(当然の様に、現地で壁芯、柱中心を考慮し
ながら測量していく)、その外周の閉合差を0にする様に調整するのであるが、建築確認通知
書記載の寸法との差についてどうすれば良いのだろう。

極端な場合、1間を1.91mにしている場合、半間であれば0.955mとなり、実際に測量する場合
はせいぜいセンチでの測量であり、ミリ単位の測量は、最後の調整の事を考えると、あまり必
要では無いと思われる。

当然0.955mであれば、実際に測れば0.94mから0.98mくらいの幅で測っている。実際の被覆の
事を考えれば2、3センチの相違は、建築確認通知書の寸法を使用しても良いのではないだろ
うか。

ただ、ここで勘違いされては困るのだが、建築確認通知書の1つの辺長が0.955mの10倍の
距離の9.55mの時に実際に測った距離が9.80mであれば、建築確認通知書記載の9.55mの距
離で登記して良いという意味では無い。

その値は割合では無く、単に建物の場合は、柱等に被覆してある関係上、その被覆の関係の
誤差は当然考慮しなければならないという意味である。当然、全く寸法が相違しているとしたら
土地家屋調査士がその辺りは自分の職責と自己の業務の常識で判断する事である。

非常に細かい事で恐縮なのだが、ミリ単位の表示にするかセンチ単位の表示にするかも土地
家屋調査士として、いろいろの関わりの中で弾力的に考えれば良いと思う。




●建物の中に建物が

ある敷地内に、既登記の木造平家建ての建物があり、その建物は既提出の建物平面図等と
の比較でも形状の相違もなく、存在している。

だが、その存在の仕方が問題である。丁度奈良の大仏様ではないが、既登記建物をすっぽり
覆い隠すように、鉄骨造陸屋根の建物が建つてしまった。

この鉄筋の建物の登記を行わないといけないが、果たしてどういう処理を行えば良いのだろ
う。既存建物の玄関へは、新築建物の玄関を通りますが、既存建物と新築建物との間(隙間)
は、何もありませんが、距離的には余裕があり通路のような状態です、広い場所で5m程度、
せまい場所でも3m程度の間隔があります。ただ外気分断性はあります。


既登記の木造建物の処理は。

後から覆い隠すように建った鉄骨の建物の登記は。

何か、クイズのような話になりましたが、実際にあった話です。これについてはどう処理したか
というよりも、ご自分だったらどうするか、地元の登記官ならどうするか考えてみて下さい。いろ
いろ話が出来て面白いのでは・・・。




● 広大な土地に所在する建物の所在は

建物の所在位置の決定方法について、国土調査実施地域の法17条地図地区は、この時ば
かりは恩恵にあずかるのだが、広大な土地の中にある建物の所在位置の決定となると、ちょ
っとばかり困った事になる。

実は、先日お寺の『奥の院』の登記を頼まれた。だが、その『奥の院』はというと、標高500m
の山の山頂近くにある。元々そのお寺の本殿が建っていた場所に建てたという事なのだが、
国土調査を実施した時には、既にお寺は麓の平地に移り、現地は荒れており、周囲はお寺所
有の広大な山林という事で、国土調査で境内地から山林に変更され、広大な山林に合筆さ
れ、25000uの土地となっていた。そんな地形だから、隣接地もすべて10000uを越える山
林ばかり、隣の山との境界は、杭がある訳出も無く、植林された木の大きさの相違で見極める
程度で、境界は立ち会いの度に2、3mはすぐ相違する様な山の中。

ただ幸いな事に現地へは車の通行可能な林道がある。反面この林道は登記がなされておら
ず、現地の形状と相違する地形になっており、余計建物がどの位置にあるか解らない。

それでも昔、境内地だった場所の区切りは石積み等があり、明確である。国土調査で1筆にし
なければ楽なのにと思いながら、仕方無くなんか方策は無いかと考える。

公共座標でやろうかと早速光波測距儀を担ぎ奥の院に向かうが、実際公共座標で表示する事
となると、とてもではないが、この位置からいくと500m程に位置する場所に四等三角点があ
り、何とか単路線を組もうとすると2キロ向こうの山の山頂に三等三角点がある。

ここで、何とか基準点測量を行って位置決めをしたと言えば、本当に教科書的で優等生の答
になるのだが、そんな事やっていたら、50年以上たった立派な桧を何本切り倒せばいいか解
ら無いし、折角基準点測量をしたって、林道の登記でもやるのだったらやってもいいが、後々
利用価値も無い。

いつもどおりの建物の位置決めを単に大規模に行う事とした。

ひたすら境界の明確な場所を法17条地図と比較しながら探す。200m程離れた場所に山道
があり、地図上にも合致している。更に屈曲点が明確で地図上からも相違ない2点を探したと
ころ、幸いにもあった。こうなればこの2点を測り、任意の開放トラバース測量を行い奥の院の
建物角3点を観測。そして広大な地形を法17条地図から読み取り、地図と一致する現地の山
道の2点を基準として、図面に入れ込み、その位置から土地境界までの距離を読み取りその
まま入力して登記所に提出。

自分でも是しか方法が無いと諦めての図面作成ではあったのだが、日頃境界は明確にして位
置決めをしろと言っている手前後ろめたい気分が残る。

でも、これしかないよ。公図地区の土地家屋調査士はどうやっているのだろうか?。




● 公共座標で

最近不動産登記取り扱い要領が改正され、広大な地形にある建物の位置決定について公共
座標(?)での表示が出来る事が記載された。そんな要領が出された後、またまた似たような
建物表示の依頼が来た。今回は幸い(?)な事に、土地の表示登記絡みの依頼であり、嘱託
事件でもあった。

この土地も広大な土地を買収し、山の中腹に延べ床面積が2万uの建物の表示登記であっ
た、土地については約30筆を買収し、造成により一体で利用。小さな山全部が建物の所在地
である。

しかし、合筆は大字が相違する為出来ない。一番近い民有地の境界からでも200m以上はあ
り、小山を利用した造成のため、起伏が激しく直接距離を測る事も出来ない。

だが、この場所は幸いな事にこの小山の頂上に図根三角点があり、700m程離れた場所の
ほぼ平地といっていい場所にも図根三角点がある。

頂上の図根三角点は、建物の敷地に含まれる位置で、土地表示登記の関係からも基準にな
る点が必要とされていた為、図根三角点を使用しての単路線ではあるが3級基準点に準じた
測量を実施。

本来は図根三角点を使用しての基準点測量は認められていないが、自分の登記で使用する
分についてはどんどん活用したいと常日頃感じているので、躊躇なく実施。図根三角点間の7
00mを4点の新点を作成。それなりの結果(1/8000程度)しか出なかったが。元々の国土
調査自体の精度と思われる程度の精度が得られたのでそのまま利用する事とした。

敷地内に2点基準点を設置、その2点を利用して申請建物の外壁を5点ほど観測、座標値を
得る事が出来た。

更に、法17条地図から、この敷地の境界点を公共座標で読み取り画地を作成した。

座標同士での距離を計算して境界からの距離を入れ、更に外壁の座標値を入れて建物位置
を決定。

これも本来からいけば手抜きであるのだが、分筆して杭入れがされている場所さえ本当の境
界かどうか怪しい状態だから、よっぽどこの方法の方が正確だと自分勝手な理屈を付けて諦
めるずぼらな田舎土地家屋調査士。




● 紺屋の白袴

だが、この建物の測量、特に建物形状を実際に測量。資料として設計図面の提供を受けたの
だが、その実際の施行と設計の相違には戸惑う。本当に資料としての価値しかなかった。

官庁であるから所有権証明書は不要なのであるが、建築確認通知書を審査する立場にある
役所の図面とは思えないほど、設計変更部分が多かった。

最近の建物らしく曲線を多様してある為、現場で工夫して施行しなさいという事なのかもしれな
いが、四角な形状で設計してある場所が、階段のような形状に変更されていたり、勝手口なん
かも形状が変更されている。設計図を見ても、1、2、3階の壁厚が相違しており、出入りがか
なりある。

また、2階部分は中2階の状態で外からは全く解らない。3階にいたっては中空に所在している
ので、どのくらい1階から出ているのか解らない。

特に困ったのは、壁の質が場所により工夫され変更されている為、壁の厚みが相違している
のである。単純にガラスのみの場所、50センチの厚みの壁を使用してあったり、わざと石積み
の壁にしてあったり、こんな設計になると、ある程度現地で都合の良いように施行が任されて
おり、測ってみないと解らない。まさに土地家屋調査士泣かせの建物となる。

土地家屋調査士さん、地元に変わった形をした官庁の建物が建ったら、あらかじめ下調べの
つもりで観に行くことを進めます、たとえ発注が来なくても興味深い事がたくさんあります。もし
発注があれば的確な見積もりが出来、もくろみが狂う事が無くなります。




●竣工図

この事例について、1級建築士を兼ねる土地家屋調査士に聞くと、官庁の場合、確認用の図
面は最初の計画段階の図面であり、その後業者に施工図を作成させ、竣工時には竣工図を
必ず提出させるのだそうだ。

この竣工図は、建物の算出の基点の記載があり、電卓を叩く程度で実際の距離が明確になる
らしい。だが、追加で言った彼の言葉が気になる。

「聞いてこられた方には、官庁の建物や、大きな建物で業者がしっかりしてる場合は、必ず竣
工図があります。特に役所は厳しいですから竣工図がないと受け取りませんから、必ずあるは
ずです。それを言って貸し出してもらいなさいとアドバイスしてるんですが、皆さん竣工図がどん
なものか解らなかったんじゃないんでしょうか。」

恥ずかしながら、私は建築確認通知書がすべてだと思っていた。従って、施工図や竣工図な
んて見せてもらってもどういう目的のものか解らない。

土地家屋調査士(もっとも落ちこぼれの)でさえ、この程度なのだから、役所の現地の担当者
は、その図面、下手をすると建築確認通知書さえ知らない場合がある。

ひょっとして担当者から、「こんな書類があるんですが。」と書類を見せられ、「一杯あります
ね。施工図、竣工図、ですか、これは不要です。ああ、ここに建築確認通知書が有りますね。
これでいいです。後はこちらには関係有りません。」と言ってしまっているのでは・・・・。ああ、勿
体ない。勉強しなくっちゃ。


もう建築確認通知書なんか信用出来ない。

誰、土地家屋調査士の建物図面なんか信用出来ないなんて言ってるのは



建物の話も少しだけ
     
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