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● 観測の結果 何とか観測した結果、土木が買収し、境界標識の無い位置(この時点では一切、境界標識は 入れられてなかった)についても、私の座標に統一して変換する事が出来、すべての位置が、 現地ではどの位置にあるかも判明した。 だが、そのおかげで続々と不都合が出て来る。 比較的問題が無いと思われていた、現国道の道路拡幅の買収が薄くかかっている土地でも、 道路のU型水路を新設して、境界はその構造物の端という合意なのだが、どうも土木工事の 都合からか、10センチ程度ではあるが民地側に入り込んでいる。 だが、この程度の事は、土木事務所の工事では当たり前。と言えばちょっと語弊があるが、許 容誤差の範囲と諦めなければならないのだろうか。 土地所有者も納得している事を、わざわざもめる材料を提供しなくても良い事なのかもしれな い。 ただし、土木事務所には厳重に注意しなくてはならない。 不思議な事に国土調査の復元の位置の方が、現地の構築物にぴったり一致している。おそら く、これは現地の既存構築物に合わせて工事を行った為と思われる。 一番問題になっている申請地の北側の水路、そして分筆買収し、道路とした三者境界を復元 してみると、国土調査の復元位置からいうと1メートル以上も北東側となり、水路を挟む反対側 の土地の位置に来る。 現況の水路位置とは一致する。 だが、この位置では水路の海へ流れ込むまでの形状は、国土調査と著しく相違する。現状の 水路には蛇行があり、水路幅についても大分狭くなっているし、東側の海に接する部分につい ては北側の民地との境界は国土調査と現状はほぼ一致し、申請地との境界は、申請地に1. 5m程入りこむ状況になる。 国土調査が相違しているのか。工事により水路の現況を変更したのか、何れかである。 ● 取り敢えず役場へ この水路位置について、申請人さんに聞くと、現在この水路はコンクリートの三方張りの水路 になっているが、申請人が購入したのは国土調査終了後であり、その時点ではまだ石積みの 水路だった、その数年後、町の方で護岸工事と一緒に工事をしてくれたんだと言う。したがっ て、どの辺りまでが境界なのかは分からないという事であった。 だれしも官庁が工事をしてくれるのなら、境界についても間違いなく明確にしてくれるだろうと思 うのは不思議ではない。 確認の為、町役場の担当課へと向かう。 「あのう。ここの水路なんですけれど。町が護岸工事との兼ね合いで工事をされた様なんです が、どうも国土調査と形状が相違しているんですが、もともと相違していたんでしょうか。」 「ここは町が工事をした場所ですが、台風なんかで壊れたら危ないというんで、2期に分けて工 事をしたんですが、失対事業でやった分ですから、今のようにきっちりした図面が残っていない んで、その時点で、現在のように国土調査と違っていたかどうかまでは分からないです。」 「それじゃあ、逆に現況どうりだったかどうかも全く分からないんですね。」 「はい。」 ● 交渉相手 弱った。これでは、どれが正しいやら全く分からない。 救いは申請人が強行に境界を主張していない事である。 兎に角、地図と現況そして買収のための地積測量図がそれぞれに相違する事。 旧県道(現町道)の分筆の相違。そしてごく最近分筆した県道(現国道)の分筆については、完 全に国土調査と比較すれば、相違する事は明確になった。 取り敢えず、最大の原因は県である。 地図訂正をしようにも、県が入れた分筆線が邪魔をする。説明用の現況平面図に国土調査の 復元線を入れたものを添え、土木事務所の管理係へと交渉に行く。 ● 土木事務所へ 日頃、境界確認業務の窓口でもあり、我々の境界確認申請に付き合って実地に確認の為の 業務を行っている彼らは、土木事務所の買収線の位置について、登記の為に提出された地積 測量図と現実の境界標識のずれについての実態を良く知っている。 「ありゃ。また。違ってましたか。」 こちらが拍子抜けするほどあっさりした対応で、 「どのくらい、違ってますか。」 「この程度違ってますよ。」現況平面図に国土調査の境界復元線を入れて現国道、現町道の 相違について説明する。 「これはひどいですね。」 「現国道については、全体を測量せず用地部分のみを測り、それを国土調査と現況が一致し ているとして、現地の構造物に合わせて分筆線を入れた為でしょうね。工務の方に言って、測 量会社に地積測量図を訂正させます。そして県道については、つい最近、この間の4月から、 町道に所管換えがされて、町の方が管理していますので、町の担当者を交えて話をする事に しましょう。」 即座に町役場、県土木事務所、そして私で、この地図訂正の為の打ち合わせに入る事になっ た。 数日後、私の事務所に、明日午後1時に打ち合わせをする旨の電話が入る。 ● 町役場会議室 町役場会議室、日頃顔を合わせている境界確認の担当者達ばっかりが集まり、問題点は良く 分かっているせいか、話は率直である。 土木担当者「違っているのは直さないといけないけど、予算がないんよ。ここは、町の方で何と か予算取れませんか。」 町担当者「う〜んっ。どうしてこんな事になったんかいな。」 私 「この場所は、道路よりも民地が低く、5、6メートル程の崖になっているんですが、国土 調査では、その法面については個人の所有地という事で道のてんばをとっていたのを、後で分 筆した時に、事情を調査も、立ち会いもせず、おまけに復元もせずに、常識的な場所という事 で道路擁壁という事で法尻から個人の土地という事で分筆をしたんでしょうね。」 町担当者「何ともなぁ。残地なりを確認の為測量してくれたら、すぐに解っただろうに。おまけに 1ヶ月前だったら、まだ県の管理だったのに、弱ったな。しかし、何とかしないと、兎に角理事者 に話してみます。」 私 「立ち会いと承諾については、個人申請という事にすれば、役場と土木。そして県の港 湾が承諾して頂くんだったら、早いですよね。」 土木担当者「同じ県同士ですから、港湾の方には、こちらから立ち会い等の事については交渉 します。」 私 「それだったら、楽ですね。お願いします。」 ●費用 町担当者「それで、費用どのくらいだったらやってもらえます。あなたに全部お任せする事にな ると思うので、なるべく安くやって。」 私 「分筆については、個人が当然負担すると言っていますので。分筆抹消等については 県が嘱託で全部出来ますよ。」 土木担当者「いや、分筆抹消だけなら何とかなるんですけど、古い分筆の分。結局寄付しても らって擁壁を作り、コンクリート杭を入れた位置までを正しく、もう一度分筆してもらえません か。そして国道の分で新しく分筆した場所については、測量会社に言ってもう一度、図面を作り 直してもらいます。」 私 「いや、こんな事をされた測量会社さんは信用が出来ません。買収位置がほとんど同 じで、道路の構造物の端が境界の位置でいいと言うのなら、私が実測したデータで地積測量 図を作製します。それを土木事務所の方で登記所に持ち込んで下さい。」 土木担当者「そうして頂けるのなら有り難いです。分筆抹消じゃ無くて、個人が全部やる形で考 えてもらえませんか。」 私 「分筆抹消じゃなくて、既に分筆して所有権移転をされている分を、県から個人に戻す 形をとって、個人が合筆、分筆して、その時に土木の道路分も一緒に分筆するという事です ね。本来個人に負担して頂く分を除いて、恐らく費用的には〇〇万円くらいかかるんじゃないで しょうか。」 土木担当者「なんとか××万くらいになりませんか。」 私 「それは、半額ですね。ひどいなぁ、まあ今までこんな場合の費用は出なかったんだ から、それを思えば仕方無いですね。ただし協力は最大限してくださいね。それで、今度は間 違いの無いように、申請人さんを入れて立ち会いをしたいんですが、何時頃して頂けますか。」 土木担当者「港湾の方には、日時が決まればこちらから連絡をとって来てもらうようにします、 それで良いですか。」 私 「はい。」 ● しばらくの間 町担当者、土木担当者ともそれで別れる。 申請人から何回かの催促があるが、一向に町担当者からは連絡が無い。 待ちにまった3ヶ月後。町担当者から、 「理事者の理解を得る事が出来たので、早速処理をして下さい。立ち会いは1週間後の水曜 日でいいですか。土木にはこちらの方から連絡をします。」 との電話が入る。 30分ほどして、県の土木事務所からも同様の電話が入る。 ●立ち会い 1週間後、境界の立ち会いは始まった。国土調査の復元位置は総てペンキ等で示している。 その違いについて一つ一つ説明を行いながらの立ち会いとなった。 一番相違する、現町道の分筆前の元々の国土調査の官民境界の復元位置を見せる。 「見事に、道路てんばの位置で復元出来るでしょう。」 「なるほど、これは完全に当時分筆の為の測量をした人が何も確認しなかったんですね。どう もあなたの言われる通りのようですね。取り敢えず、ここはこの復元位置で最初の地図訂正に ついては承諾します。おまけに工事自体も分筆の形状と違った形になってますね。これは申請 人さんにお断りをして、なんとか道路構造物分は道路に寄付してもらうようにお願いするしか無 いですね。申請人さんは難しい方ですか。」 「そんな事は無いですけれど。使用出来ない土地だといっても現在の登記面積よりも150u以 上余分に寄付の要求をされる訳ですから、お断りだけはきちんとして下さい。」 「はい、分かりました。とにかく予算が無いので土地代金のお支払いは出来ないので、お断り するしか無いですね。」 これで、地図訂正の登記費用まで個人負担という事になっていたら、いくら田舎の土地の単価 が安い場所とは言え、大問題になっていたのだろう。 取り敢えず本来の分筆以外の費用だけは官庁が持つという事になり、ある程度の無理なお願 いは出来る状態であるのは不幸中の幸いと言える。 ●水路・港湾 北側の水路部分については、1メートル程後退する境界については、水路を挟む反対側の土 地の境界についても、三方張りの水路に20センチ程後退して自分でコンクリート擁壁を築いて ある。その位置を境界としてもらうのなら、申請地についても50センチ程度の後退で良い。更 に現況と国土調査の形状の激しく相違する買収部分については、現況の形状で地図訂正を行 おうという事になった。 港湾部分については、国土調査と現況は一致するため構築物が境界であるとされた。 また町道部分の擁壁の寄付部分についても、申請人は既にコンクリート杭を境界として認識し ており、現地も常識的な境界位置になっている。面積の問題が片付けば、これも問題無く済み そうである。 ● 反対側の同意 ただ問題は北側の水路である。 「あの北側の水路ですが、地図訂正しようとすると、反対側の北側所有者の承諾もいります よ。当然あの土地も地図訂正しないと駄目です。あの土地も最近、土木によって拡幅工事をす る為に分筆されていますので、この土地と同様に分筆抹消しないと駄目ですよ。」 「ああっ。そうですね。地元の町会議員さんで、この地区の世話役さんですから、町の方からお 願いしてみます。水路の工事もあの方のお世話でやっており、現実にはそうなっているし、水 路幅の後退についても多分納得していただくでしょう。交渉してみましょう。とりあえずその方向 で測量をしておいて下さい。」 そして総てが終了、ほぼ全点が常識的な位置で落ち着いた。 「取り敢えず、これで面積を計算して、断面図等を作製して境界確認書を提出しますのでよろし くお願いします。」 1週間後には、確定測量・境界の写真・断面図等の作製出来たので、港湾課には土木事務所 を通じ、境界確認書を提出した。 ●現実的対応 登記所には聞かせたくない会話がどんどん飛び出す。 現実には、この方法しか無いのだ。 国土調査が正しい位置だったのか。現在の水路が工事前と変更がないのか。申請人も土木 も、そして町も、反対側土地所有者も全員が明確な事を知らない。ましてや、この地域は国土 調査図面以前の土地台帳附属地図は、閲覧が可能であるが、とても位置の復元に耐えれる 図面ではない。 一番悪いのは県の分筆なのだが、それを実地調査もせず、頭から信用して何も確認しなかっ た登記所にも責任はあるのだ。 本来の地図訂正には馴染まないかもしれないが、誰も迷惑のかからない形で、現状の安定し ている状態に訂正するのだから何が悪い。 と完全に開き直ってしまう事にした。 ● 登記申請 反対側土地所有者も快く承諾してもらい、やっと登記処理が出来る事となった。 早速、県から個人への所有権移転、地目更正、合筆、地図訂正、地積更正、土木の必要部分 と個人の必要とする分筆。 更に水路を挟む反対側の土地についても同様に所有権移転、合筆、地図訂正、地積更正、分 筆を行った。 幸いに登記所からのクレームは無く(たくさん付箋はついたかもしれないが、自分に都合の悪 い事は総て忘れる事にしているので、あしからず。)登記は終了する事が出来た。 後は司法書士が共有物分割で三人の必要個所をそれぞれに単独所有として、登記は完了。 このし事件は通常の分筆登記の数倍の時間を要したが、何とか終了する事が出来た。 ● ぶつくさ・ちょっと追加 今回は官庁の対応も良く、依頼人も自分の都合もあり非常に協力的で、何とかこの程度の話 で終了したのだが、官庁の提出する地積測量図に問題点が多いことは今も昔も変わらない。 官庁が公共事業の為に、急ぎ分筆し、兎に角、登記をしたい。 登記をしないと買収の金額を土地提供者に渡せないといった理由は分かる。 しかし、それだから登記が出来さえすれば良い、と考えるのは大きな間違いだろう。 地積測量図は永久に保存され、その記載された位置については、光波測距儀等の測量機械 の発達により簡単に1センチ以内の誤差で、その地積測量図から復元出来るのである。 地積測量図による復元位置と現地の境界標識の位置の相違。これは一番最初に登記(地積 測量図に名前を記載)をしたものが確認し、その相違が明確で自分に間違いがあれば責任を とるのが当たり前で、工事の施工に誤りがあるのならばそれ相応の処理を講じなければならな い。 こんな簡単な理屈も、お役所では、登記と工事では担当が違うという一言で片づけようとしてい る。 官庁の担当職員にすれば知識や技術が無いのに、責任ばっかり負わされるという気持ちもあ るかもしれない。 それならば自分で責任が持てるように、それなりの境界確認や測量が出来るように、内部で質 的向上の努力を行うか、あるいは予算の上積みを行い、それなりの調査・測量が出来る程度 の予算の計上を行い、外部に発注すべきであろう。 それすらも出来ない官庁は嘱託登記事件を提出すべきでは無い。(理事者が、全くそういった 事が分からないと言うのなら、一応登記所に相談してみればどうでしょうか。) 後日の裁判費用、それに費やされる時間を考えれば、どちらが得策か簡単に判明するだろ う。きっちりとした対応と処理を行っていないと、たまたま運が良くて現在問題にならないとして も、境界の問題は、その時点、その時点で常に新しい問題として発生し、現在の処理が後日 (何十年後)問題にされるのだ。 ●誰の手柄 このような状況でありながら、登記所が官庁の提出した事件の実地調査を更に省略する方向 であるならば、登記所も登記簿に登記官の印を押印するように、地積測量図にも登記官が押 印し、何故、現地復元性が無く(準拠点表示により記載されているが、準拠点も工事により撤 去される。)、民地同士の境界の確認すらなされていない地積測量図(国土調査地区におけ る、買収幅だけの実測による読み取り図面)が、登記出来たのか、その責任の一部を明確に して頂きたい。 また、その土地の残地の分筆を行ったときに、こう言った齟齬が判明すれば、それを受け入れ た登記所とその官庁の連携により訂正すべきである。 何故、我々土地家屋調査士が、そして官庁に土地を提供した個人が、本来官庁にあるはずの 責任を肩代わりしなければならないのだろうか。 こんな事が何故登記できたんだろうかと、提出官庁はもとより、登記所自体の信用度も低下し ていく。 当然のように、その登記に携わる、我々土地家屋調査士の信用度もそれなりに考えられてし まう。 こんな事を繰り返していれば、やがて一般の住民は、登記なんかしなくていいさ。どうせ登記な んていいかげんだもの。現地さえきっちりしていればいいさ。と考えるようになる。 そして、いたるところ地図混乱地域となるのだ。 その時、果たして誰が責任をとるのだろうか。(手柄?かもしれない。)
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