表題部を変えよう

「技術の成果を法律の中に取り入れる」


山口県 渋瀬 清治


=所有権は別の人に=


 分筆というものは土地を売買するために行われることが多いものですよね。

 そのときになされる周囲360度の境界の確認作業は現地主と隣接地主の間で行われるの
が普通でしょう。

 そして確認が済んだら(永久杭が設置されて?)測量され、図面が作られ、境界確認書が取
り交わされ、分筆登記申請がなされていることでしょう。

 面積が確定すれば売り手と買い手の間で売買価格が決定されます。

そして土地家屋調査士の知らない内に、土地の所有権が他の人に移っています。



=土地の管理とは=

 するとその土地の所有者は以後、5年も50年も別の人ということになります。

驚くなかれその別の人は、土地購入の際に隣接の人と「顔を合わせて」の境界の確認をしてい
ないではありませんか。

 したがって当然、境界を管理するという意識は出てこないでしょう。

 境界確認をした現地主はすぐにその土地の所有者ではなくなり、別の者が所有権を取得して
隣接地主が誰だかも知らずにその土地を管理することになるという空恐ろしいことが日々、身
の回りに起こっているのです。



=記憶と意識=

 数量の確かな土地を売買するということでは、今までのやり方にも十分意味がありそうです
が、なにか少し変だとはお思いになりませんか。

  同じ土地について何枚もの少しずつ形の違う測量図がこの世に存在する(面積は違うことも
あれば同じ事もある)という変なことはどうして起こるのでしょうか。

 新しくその土地を所有することになる人も現地主と一緒に、隣接の人との境界確認作業に加
わり、文書を取り交わしておくことによってはじめて、その境界線についての記憶と記録が定ま
り、維持管理の意識も芽ばえてくるのではないでしょうか。ところが現実にはこんな事は出来な
いでしょう。とすれば・・・・・



=再確認=

 最近では官民境界を確認する作業の際に、今日確認した境界が明日不明になっても後日現
地に復元できるようにと言うことで、境界点の引照点を現地に設け、それを図面の上に表示し
ておくように求められます。

 ところがそうして表示された引照点や控えの点が現地にあって、容易に点検ができるにもか
かわらず、土地の形状が変わったり所有者が変わっていたりすると、国有財産境界確認事務
担当者は、境界確認済み証明書の発行を拒否します。

 理由は、現地が変わっているので官民境界の確認は以前の確認書では出来ないからだとい
い、また新所有者には証明書を請求する権利がないからだと言います。



=新しい境界=

 これは境界の確認は契約だという考えに基づいているためのようです。

 しかし契約だからと言って、別の所有者からの確認申し出に際しては前に決定した境界を変
えるものではないと言います。

 しかし争いが起こり、裁判になると、判決は、地積測量図があろうが、現地に以前確認した時
の標識があろうが、新しい線を境界としてしまったりします。

  紛争解決が至上命令だからでしょうが、やりきれないものを感じます。



=地球上の位置=

 ところで普通、土地の境界は地表面で考えられています。

そして、境界は地表の「地形・地物」が表わすものとされてきました。

大きな「もの」としては山の尾根や谷。道や川。小さな「もの」としては樹木や石柱。畦や垣根。
面白いことに、これらには幅(余裕)があります。

 ところでこれらは、別の言い方をすれば、地球上での位置を表しているとも言えます。

 現在の測量の知識と観測技術からすれば、境界を純粋に地球上の位置の問題として捉え、
(ある点を原点とする)地球的な規模での相対的科学的な位置として表示することが簡単にで
きます。これホント。



=過去の時代の遺物=

 現代の測量技術から考えると、前述のような測量資料やデータのある場合の境界確定の裁
判の争点は復元測量の精度の善し悪しの評価に関するものでなければならないと私は考えま
す。

 明治以来なんら境界を明確に表示する手段がなかったような場合はいざ知らず、判決につ
いての境界の形成説などというものは、技術者から考えると、境界の表現手段を持っていなか
った過去の時代の遺物のように思える変な話です。

 官民境界の確認を和解契約だなどといわしめたのは、今日のように位置を特定する技術が
ない時代ならばやむを得ませんが、今日現在、一度確認した所についてはこの考え方での取
り扱いはもう止めにしてもらいたいものです。



=登記簿を技術文書に=

 法務省や法務局に技術職員を採用し、不動産登記簿は法律関係者のみの取り扱うもので
はなく、技術者の技術の成果を登載し公示するための技術文書としての性格も持つこととなれ
ば、幾多の無駄な争いをなくす事ができるものと考えるのは、私だけでしょうか。

 官民境界確認のための立会についても、技術者が介在すれば、いつでも必要なときに何回
でも境界点を「同じ位置」に復元し、確認する事ができるのですから。



=私の主張=

 現在のままの登記簿である限り、つまり技術の成果(一筆の筆界の座標値全部)が登記簿
(正確には表題部)に登載されることなく、@地番・地目・地積を表示する文字と、A大部分の
情報が抜け落ちた抜け殻の地図しか謄本が交付されないとするならば、第三者対抗力を付与
するとされる登記簿は、実は、約束手形が不渡り手形になる可能性と同じ可能性を充分持ち
合わせています。

 地球上での、その「一筆」の確かな所在位置の数値情報をたやすく入手できるようにし、所有
権の及ぶ範囲つまり利用することが出来る土地の形と寸法についても対抗力を与えれば、土
地にまつわるトラブルが減るのは確実である。



=現実に合った前提を=

 現在の不動産登記法(表示登記)とその運用方法のままでは、土地は常に境界紛争の可能
性を秘めていることになると考えますが、それは不動産登記法が「現地には境界が明確に表
示されている」ということを前提にしているからだと考えられます。

 「現地に永久的に境界を表示し続けることは出来ない。」という真実を前提にして制度を作れ
ば、現実世界で起きているトラブルを上手く処理することが出来る制度になることに気付くべき
である。



=少しの変更で大きな成果=

 現地に永久的に境界を表示できるとする妄想を捨てて、例えば、一筆毎に作られる登記用
紙の特徴を生かして、所在位置・形状・寸法の情報を全て持っている「筆界点の公共座標値」
を表題部に記載することによって、人々に境界(筆界)にまつわる関心を起こさせることが出来
れば、大変な効果を生むと想像するのですが、皆さんどうでしょうか。



=土地家屋調査士=

 法律の不備を技術力で補うことが出来ることに気付き、それを実現し実行しうるのが土地家
屋調査士であると考えるが故に

 プロとしての生き甲斐を奪うような今の登記所、県土木、裁判所の境界確認の考え方を早く
葬り去りたいと考えるのです。

  「表題部に公共座標値を!」登載することが、その第一歩になると信じる。



表題部を変えよう
次のページ


トップへ
トップへ
戻る
戻る