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● ひげの渋瀬、冷静さの平岡氏 平成6年5月28日、29日、西条市ひうちのひうち会館で山口会の平岡氏、渋瀬氏を迎えて 前方交会法、後方交会法の理論と実技を研修する業務研修が行われた。 会場のひうち会館は西条の港を埋め立てられた工業団地の一角にあり、誘致企業の研修用 の施設として作られたという説明でであった。 自分勝手に、四角いコンクリートの打ちっぱなしの殺風景な建物と無愛想な事務員を想像し て、近代的な建物の立ち並ぶ工業団地を車で会場を探していると、更に近代的なしゃれた建 物が見えてきた、どうもこれが問題のひうち会館らしい、「うわー、すごいなぁ」と感心して、中に 入る、突然、山口会の渋瀬氏が「どうも」と出てこられた。 相変わらずのヒゲが懐かしい。今回はどんな話をしてくれるのか楽しみである。 ![]() ● 邪道 定刻から少し遅れたものの、渋瀬氏の「これから述べる方法は邪道です、しかし使用できる 邪道です。図根点を探すという意味で使用できるものであり、公共測量で使用は出来ない事を 知っておいてください」とお断りの後、平岡氏の落ち着いた語り口で「図根点の探し方(番外 偏)」と題された研修は開始された。 まず、基準点(図根点等)からの開放点の作り方を三角形の問題ととらえ、その基準点と開 放点によってどうやって三角形の形を決定するのか。分度器と物差しをどのように使えば三角 形が出来あがるのか。そして、同じ事をトランシットと測距儀で行えば測量に応用出来るので ある。 ● 三角形の作り方 既知点A点、B点のある場合、新点をC点とした場合の三角形の作り方。 @.既知点B点に機械を据え、既知点A点を後視して、新点C点への距離と角が測れた場 合。 A.最初から新点C点に機械を据え、既知点A点を後視して既知点B点への角度と距離が測 れた場合。 B.最初から新点C点に機械を据え、既知点A点を後視して、既知点B点への角度とA点、B 点への距離がそれぞれ測定出来た場合。 基本的には以上の3つの場合が考えられ、それぞれ三角形が出来あがる。測量の計算では @の場合に観測して得られた測角、測距データを用いるのが一般的である。そこでAとBの 場合は観測したデータを使用して三角形の未観測の部分、つまり@の場合の測角、測距にあ たるデータを算出することになり、これを偏心計算という。 我々の偏心についての一種の恐怖感を取り除くかのように、偏心についての考え方を非常 に平易に説明をされ、その三角形を利用して未知の辺長や角度を算出するための Aの場合の正弦定理や Bの場合の二辺狭角法 の使用の仕方についての説明があり。そして平岡氏の作成した練習問題に移る。 ● 電卓 研修の打ち合わせの時に、平岡氏より、計算が必要になりますので、パソコンがあれば用意 していただけますか、もし用意できなければ電卓で計算できますけど、というやりとりがあり、一 応、パソコンは用意していたのだが、電卓で計算出来ますという事で、参加者には関数付きの 電卓を持参するように伝えており、それで十分と考えていたのだが、どうやら、ここで当方と平 岡氏との行き違いが始まっていたようである。 平岡氏「正弦定理と2辺狭角法のプログラムはこれです、入れかたは解りますか」。「えっ、電 卓にプログラムなんか入れた事なんかないぞ、説明書どこにいったかな。弱ったなぁ、」平岡 氏、あれっという顔をしながら、「電卓にプログラム入れられていないんですか」意外そうな顔を している。 どうも、あてがはずれたらしい。 ● それでも技術屋か 仕方なく、電卓で四則演算を逐一、計算する事となったが、当然練習問題の計算もあまりは かどらず、休息時間となってしまう。 突如、渋瀬氏、「あなた方は、指方先生の講義をお受けになって知識は確かにあるかもしれ ない、しかし、我々は技術者であり道具を使うという事は大事な事である。 一番身近な電卓を充分利用されないのはどうした事なのか。 四則演算のみで良いと考えられているのだろうか。 道具を利用出来なくては技術屋ではない。」 きついお言葉、 言われるとおりである。確かに、持参した電卓にはプログラムの入力が出来る様になってい る。しかし、プログラムを入力するのが面倒であり、四則演算のみの計算しかしていなかった。 反省。 ● 偏心について 最終的に偏心は三角形を考えれば良い。 三角形を組み合わせていき、三角形の角および辺長の関係を順次考えていけば、最終的に すべての角度と辺長がわかるはずだから、それが出来るように観測さえすれば良い。 それが偏心です。非常に基本的に解りやすく説明される。 しかも、平岡氏が説明されている三角関数についてほとんどが中学2.3年程度で習ってい る事柄であるそうだ。 その程度で説明できるのかと感心したり。三角関数がえらく高度な数学に感じたり。 日常使用しないとここまで忘れるのかと愕然としたり。 人によってそれぞれであったことだろう。 また、実際の観測にあたっては遠い距離の方を後視点(0度)とするのが測量の常識ですの で、計算についてもそのようにしておりますとの事。測量の常識の無い私はいつも、どちらを 0度にするのか、偏心の勉強をした時はちゃんと解ったつもりになるのだが現場についた途端 に忘れてしまい。どうせ内角を計算するのだから近い方を0度にしてやれば後々計算が便利 だと勝手に解釈(手抜きと無知)していた。 研修以外の説明が私には役立つ。 いかに、測量の勉強が不足しているか。しかし、会場を見渡すと全員当たり前という顔をして いる。こんな事で感心する私が情けない。 ● 前方交会法について 構造物への座標付けについて、 @近くに三角点のある場合に他方の三角点を後視して開放点2点を出して開放点から観測 する方法(一番良いのは三角点に閉合させて全点から観測する方法)。 A三角点が構造物の近所にない場合についての方法 角の交点の理想については90度である事、あまり尖った形になる事を避けるように、太い鉛 筆の芯で図を書いて考えてみれば良い。太い芯であれば交わっていても、交わっている点が 明確で無くなると説明がされる。 算出した座標のバラツキについても、すべてプロットさせ、あまりはずれる値は除外して、残 りの値を算術平均して決定するとの事。今回、折角西条支部の会員たちが、研修用に実測さ れたデータについては、形が少し悪い(尖っている)のと、得られた座標のバラツキにかなりの 差があり、通常プロットさせて状況を判断する場合は1/1のプロットで判断する(位置誤差20 センチ程度)にもかかわらず、1/10程度で表示させないとプロット出来ないほど(位置誤差 1〜2メートル)であるから今回のデータは残念ながら使用出来ないとの事であった。 ● 後方交会法について 後方交会法については、 @正弦定理を使用した方法 A2円の交点による方法 以上の2つがある、今回は2円の交点による方法を詳しく説明を受けた。この方法は機械点 と座標値を持った3点(A点、B点、C点)のうち2点と機械点を組み合わせて、任意の3点を通 る円は特定されるという性質を利用し、第1円をA点とB点そして機械点を通る円。第2円をB 点、C点そして機械点を通る円とした場合。第1円と第2円による、2円の交点を求めれば機械 点と反対側の点の座標値を求める事が出来る、更に判別式により反対側の座標については 取り除く事が出来る。だたし、この方法も万全ではなく次に述べる条件の時はとんでもない結 果が待ち受けているので注意が必要であるとの事。 @円を特定する際の2点と機械点がつくる、機械点の位置の内角が0度または360度の近 似値になる測角は特定出来る円が怪しくなるので避ける事。 A特定した2円の中心と機械点がつくる、機械点の位置の内角が0度の近似値の時は座標 のずれが大きくなる。 B特定した2円がほぼ同一位置になる場合(A点、B点、C点、機械点が同一の円 周上にある時)は、2円の交点が無限に存在する。 以上の説明をされ、現実に自分の作製されたデータを公開された。ほとんどが20センチ程 度の位置誤差であるにもかかわらず。前記の条件のところは、さすがにとんでもない数値(6K m以上のズレ)となっている。これらは、現実に作業し膨大な量のデータの蓄積の裏付けがな いと説明出来ないであろう。すごいの一言。 ● 現場を作る すごさを感じると同時に折角だから参加者に実技を体験させてあげたい。先程習った前方交 会法で今からなんとか現場を作ってきます。「明朝6時から、観測しましょう」と15時頃から有 志の二人、現場の近所に1級基準点が設置されている情報を仕入れて、構造物に座標を付け に飛び出していった。 18時、本日の研修は一応終了し、「明朝6時より後方交会法の実習を行います」と発表し、 参加者のひんしゅくを買ってしまったが、後は懇親会、飲めば何とかとなるだろう。いつものよ うに懇親会の賑やかな事、しかし、19時になっても有志二人は帰って来ない。事故でもあった のだろうか。やっと19時30分ごろ二人が帰ってきた。「出来たかな。」「何とか。」「お疲れ様。」 この後、急いで食事を済ませ、構造物の座標値の算出のため籠りっきりになり、開かずの間 からは電卓の音のみが聞こえた。役に立たない私はひたすら懇親会に精を出し、ホロ酔い気 分となった頃、懇親会も終了し、お決まりの個人の部屋に集まっての討論会(愚痴言いたい放 題大会)となり、23時でやっとお開きとなった。明日の事が心配になり、開かずの間を覗く。 「やりよるかな」。浴衣に、ねじりはち巻きのオバケが「出来たよ」。一安心。さぁ部屋に帰って 寝よう。廊下には百鬼夜行、いろんなオバケがうろうろ、夜の巷に出没したという噂もあり。西 条の夜は更ける。 ● 現場にて 翌朝6時、ひうち会館の玄関前に集合した。さすがに眠いと全員が参加してはいなかった が、それでも36名が集合していた。前日、一級基準点から開放点2点を使用して前方交会法 によりそれぞれ座標を付けた、電柱、サイロ上の避雷針そしてもう一つの一級基準点を使用し て、後方交会法を実施した。現場の道路の任意の位置に機械を設置し、電柱、避雷針、一級 基準点を順次視準して測角を行い、自己の位置の座標を算出し、求める基準点の位置を座 標により逆計算により探す実習を行う。 前日の懇親会の酔いも手伝って、皆、動きが鈍い、「電柱のどこをみるのかわからんぞ」、3 本の電柱の支柱がやぐらのように組合っており、その3本が1本にまとまって上空に伸びては いるが、更にその先端は一回り細くなっており、少し曲がっている。皆、ここだ、そこだとかしま しい、早朝に路上で大の大人が40名近くトランシットを覗きこんでいるのだから通勤の方には 大変迷惑をかけたと反省。しかし、なんとか、観測も終了し、現地で計算をして逆計算を行うこ ととなった。悲しいかな、前日、渋瀬氏に怒られたとおり、電卓にプログラムの入力も出来ず、 いろいろやってはみたが、結局、平岡氏の電卓に頼ることとなる。このような状態にもかかわら ず、逆計算により、算出した位置は、ほとんとど2,3センチの位置誤差であった。これは、 我々の観測ではなく、前日の選点と観測が良かったおかげである事は言うまでもない。だが、 新居浜の西氏、逐一、電卓ですべての公式を順序だてて、入力し、正解にたどり着いた、愛媛 会も満更でもない。 ● 有効数字 9時、何とか現場も終り、朝食にありつく。さすがに、朝一仕事した後はおなかがへる、朝食 のお代わりは出来ぬかと大食いの私をはじめ皆思ったはず。健康、健康。 9時30分講義開始。本日から途中参加の今治の4氏も、会場に顔を出されている。 実習をやったおかげで、前日の説明が、実感となって理解出来る。更に、講義を再開した平岡 氏が丁寧に復習してくれる。 またトラバース測量についても、辺長についてはなるべく均等にという事で、極端に辺長が短 い場合等は、後視点と前視点を直接観測したように偏心して辺長をなるべく均等にして計算し て下さいというのは掛け算については有効数字の関係から、一番小さな桁数に影響される。し たがって極端に小さな辺長がある場合は、その数値の影響をモロに受けるため、距離につい ては均等にする事が好ましいという事です。との渋瀬氏の説明。 14時、研修は無事終了した。山口会の渋瀬氏、平岡氏には豊富な知識と現場での体験を 生かした研修をしていただき感謝の一言につきる。しかし、いつか両氏と同等の知識で対等の 話し合いをしたいものである。対等以上なのが調査士業での失敗談だけの落ちこぼれ調査士 の報告はこれにて終了。
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