太 陽 観 測



● 興味津々

 極星観測、そんなものがあることさえ知らずにいた私にとって、どんな事をするのか興味津々
である。

 子供の頃、北斗七星と一緒に北極星を見た記憶がウッスラとあるが、夜空のどの辺りだった
か不安になる。ついつい天気のいい日は、子供の図鑑を見ながら星探しをする。
 妻からは「どうしたの、お父さんに似合わずロマンチックな事しよるね。頭、おかしくなったんじ
ゃない。」と、勘ぐられるハメになる。

 そして、2月6日19時、新入会員研修終了後、いよいよ極星観測がスタートした。さすがに先
生、最初からポンポンと講義がはずむ。

 正直、理論的な事はあまり解らない。先生の説明につれて、何とか手簿や計算例に目を動
かし、解ったような気になる。観測の時間から9時間差し引いてグリニッジにおける標準時
(UT)にするところまでは何とか解った。極星においても太陽観測においても観測時刻により
角度が変化するとの事。北極星の場合は観測時刻が1秒違っても角度への影響は1秒以下
だか、太陽の場合は動きが早くて観測時刻が1秒違うと角度にして10秒移動しているそうであ
る。




● 腕時計

 日頃腕時計の時間なんか目安にしか思っていない我々調査士は、約束の時間に遅れないよ
うにとわざと時間を進めている者、買ったときに時間を合わせたままの者、分までは気にする
が、秒まで気にする者はほとんどいない。

 時報(JJY)も信号音の最初の立ち上がりの瞬間がその時刻を表す事さえ知っていた者はい
ない。

 先生の号令により全員一斉に時計の時刻合わせを行う。しかし、時計の時刻の修正の仕方
が皆分からない。そこで助教のS氏が受講生の間に忙しく走り回る。何だかんだとやりながら
そろそろ現場に移動する時間が近ずいて来たが、夜空はドンヨリと曇ってしまった。




● 夜空と幽霊と北極星

 現場の今岡御所から果たして北極星が見えるだろうか。Sさんが心配して21時30分頃、一
人現場へトランシーバーをもって移動する。現場の今岡御所の三角点は池の土手にあり、地
元の調査士さんの話ではここで自殺した若い女の幽霊が出るとのこと。気味が悪いので私が
行くとは言えなかった。

 現地に到着したSさんからの連絡は悲観的なことばかり、「先生、全然見えません。」「S君、
しばらく、現場で待っていなさい。」無情。こんなやりとりの後、22時になると先生の決断によ
り、全員現地へ向かった。現地には、すでに昨年の内にS氏、W氏、M氏が池の土手に鋲を
打ち込んで、すぐに観測出来るように準備してくれている。三人1組の班編成でトランシットを設
置、池土手に10台のトランシットと30人の男共がズラリとならんでしまった。これではうら若い
女の幽霊は恥ずかしがって出てこれない。あれっ、池の下の方のビニールハウスの辺りの路
上で、うすボンヤリした光があるではないか。ひょっとして幽霊か。先生「あれがターゲットで
す、あの光をバックにして北極星を観測しなさい。」ヤレヤレ。

 準備万端、後は北極星のお出ましを待つばかり。本日の北極星はお化粧直しに念がいって
おり、なかなか顔を出さない。24時が過ぎても月さえも出てこない。「だれか、先生に中止にし
てとお願いに行け。」と声はすれども先生が怖くて、だれも言いにいかない。仕方なく私が猫に
鈴を付けに行くハメになる。




● 太陽観測

 翌朝、会場の多目的ホールに集合し、今度は太陽観測のため再び今岡御所へと向かう、光
波のトランシットを使用すると、中のダイオードが焼けて使いものにならなく恐れがあるので、メ
ーカーにお願いして、セオドライトと接眼レンズのフイルターを借用し、観測を行うこととなって
いる。フイルターを使用せずに太陽を視準すると、失明すると脅かされこわごわの観測でもあ
る。

 準備の都合で少し遅れて現場に着くと、測量経験豊富な今治のW氏、もうセオドライトを設置
して、観測しているではないか。こちらに気付くと、「もう終わったよ、太陽がみえるよ。」と、手
招きをしている。接眼レンズにフイルターが付いていることを確認して、恐る恐るのぞき込む
と、何やら一面にオレンジ色が見える、「見えんよ。」、W氏苦笑しながら、「それ、全部太陽で
すよ。」、「エッ」再度のぞき込む、確かに太陽だ。恥ずかしい、早く自分達の所で観測しようコ
ソコソ。

 「エーッと、5対回やるんだったな。今度のバックはあの位置のポールで太陽を正、反とも2回
ずつ読む。そして、正の位置の場合は第1像限で太陽をみて、太陽がヘアーにかかる瞬間の
角度と時間、反の位置は第3像限で太陽をみて、太陽がヘアーから外れる瞬間の角度と時間
を観測するんだったな。」と確認しながら、失明しないように願いながら、観測する。フイルター
が付いているかどうか、観測者以外もよく注意し合ってと言われたけれど、どうも私の班は業
務の理事同士で新入会員研修で恨みがあり、私の時に注意をしてくれるかどうか不安である。







● 観測開始

 恐る恐る観測をはじめる、オレンジ色の太陽がフイルター越しに見える。ヘアーと太陽を確認
し、「時計」と号令を掛けると、もう太陽はヘアーからはずれていた。その早い事。時間はもう1
1時を過ぎようとしている。2対回、3対回、順調に観測できているはずだ。4対回目、首が痛
い、何回観測しても太陽が捕らえられない、おかしい。求心望遠鏡が、私の眼鏡が邪魔をす
る。太陽の高度が高くなり、なかなか難しくなる。4対回目の観測をするのに10分を越えてしま
った。5対回目、やっと終了。私の班は全員終了した。13時には全員終了した模様である。




● 雑さが一緒

会場に帰って手簿の整理、計算簿を作成、パソコンに入力してもらい何とか結果にたどりつく。
不思議なことにチームワークのない、我々三人の観測値が、3秒程度の誤差で、ほとんどピッ
タリ、1対回毎の観測値のバラツキは3人とも30秒程度あった。お互いに彼よりは自分の方が
腕が良いと思っているので、自分の方が正しいとかしましい。

 しかし上には上がいるものでSGさん、5対回の観測のバラツキが3秒以内にあり、一同アッ
ケにとられる。ちなみに、太陽観測や極星観測は時間制限(10分以内)はあるが、観測制限
値は無いそうである。しかしキッチリした値が出るほうが良いに決まっている。我々3人は雑さ
が一緒である事が判明した。

 今回は、研修であるため、機械点と後視点の座標値をあらかじめ観測し、計算していたが太
陽観測で求めた値の方向角との差は40秒程度であった。 これならば一般業務で与点が1つ
の場合でも使用可能であろう。

 なんでも、太陽測量は精度が粗いので、公共測量では認められていないが極星観測の場合
は4級基準点の場合は認められているそうだ。

一体、どんな精度が出るのか体験してみたかった。残念。

 ワイワイガヤガヤとやっているうちに18時。研修は終了した。



新人研修編
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