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田舎の公共事業担当の官庁職員と話をしていると、境界について非常に簡単に考えている 職員が多い事に驚かされる。 官民境界の確定をするために我々と立ち会う窓口の職員については、境界についてはどう いう事なのか解ってはきている。 ただ、公共事業を担当する職員については我々にはとても理解の出来ない感覚の人間がい る。「工事をしてやるんだ有り難く思え、少しくらいの事は黙っていろ、ガタガタ言うのなら工事 をしないぞ。」まさに、小役人根性丸出しの職員もいる。 そんな職員に分筆し買収した土地の境界について聞くと、とんでもない答えが帰ってくる。 ● 役所にて 調査士・「現地なんですが、丁度昨年買収されており、提出された地積測量図を元に復元す ると、新設されたコンクリート擁壁の途中までしか買収されていないようですが。また、隣接す る土地も連続して買収され、隣接地との境界も特定されていますが、私が立会いして確認した 位置とは、かなり相違するんですが。」 事業担当者・「国土調査の図面を復元した境界で登記をしたのです、立会いなんか必要無い でしょう、それにどの程度ずれているんですか。」 調査士・「買収位置がコンクリート擁壁の中に5cm程ずれるのと、民地同士の境界線は実際 の境界よりも50cm程度ずれています。」 事業担当者・「どこから復元されたんですか。」 調査士・「提出された測量図に準拠点2つの位置と座標が記載され、現地にも残っていまし た。距離についてチェックしたら32mで3mm程度の差でしたので正しいものとしてそこから復 元しました。だから復元の誤差については1センチ以内であると思っています。」 事業担当者・「8センチと50センチですか。でもそれくらいなら位置誤差でかまわないんじゃ ないですか。許容誤差は70cmくらい有るんでしょう。」 調査士・「えっ。・・・・・・・」。気を取り直して、「位置誤差というのは、国土調査を復元した位置 と現地の本当の境界の位置が、その範囲内にあれば、誤りでは無いという事なんです。復元し た位置のままで表示して良いという事ではないんですよ。だから、国土調査が完了していると いっても必ず立会いは必要で、正しい境界の位置を表示する必要があるんですよ。当然国土 調査の復元をして正しい境界を測量図には記載しなければなりませんので、新しく数値法で測 量された測量図が提出されたら、今度は許される誤差というのは甲2程度と言われているで す。だからこの場合は3、4cm程度になりますよ。」 事業担当者・「ああっ、そうですか。難しい事はわかりませんが、調査士さんが勝手にそんな 事を言っているだけじゃないんですか。今までこれで問題になった事はありません。それにうち はきちんと公共座標で出しているんだから、立会いも必要無いでしょう。詳しい事は測量会社 に聞いてください。現地で説明させます。それに、きちんと分筆線の復元をさすように言ってお きます。」 どうも、我々調査士の測量、いや私の測量は信用されていないなと思いながら事務所に帰 る。 ● 現地にて 調査士・「土地所有者との立会いをされましたか。」 測量会社・「いや、立会いはしていませんが、工事の承諾の実印をもらっいてるからかまわな いでしょう。私達は設計については予算もらっていますけれど、登記の測量図はサービスです から、いちいちそんな手間をかける事ができませんよ。」 調査士・「ところで、公共座標で表示されていますけれど、どの与点を使用されましたか。」 測量会社・「ああ、一応国土調査の図根点を使用して結合トラバースを組んだんですが、現 地と合わなかったので、現地の構築物を元に、座標を変換したんです。」 調査士・「使用された図根点はえらく遠い場所ですね。もっと近い場所に、精度の良い図根点 も図根三角点もありますが、何故使用されなかったんですか。」 測量会社・「あったんですか。知りませんでした。」 調査士・「一度、結合トラバース測量をされて座標を計算したけれど現地との位置がスライド していたので、今度は現地に合わすように、国土調査図面を読み取った座標と現場の構築物 が合っているとして、実際の座標にスライドを掛けられたという事ですね。それで、私と座標が 大分違ったんですね。」 国土調査図面から読み取った境界の位置はほとんど一緒なのに、現地で測量会社さんが設 置したトラバース点を私が自分の設置したトラバース点から測ったら普通だったら単純に座標 を比較しても10センチ程度で納まるのに、1メートル近くも違って私のトラバース測量が間違っ ているのかな、しかし、この現場から50メートル程離れた現場については、10センチ程の位 置誤差で復元できていたので、おかしいなと思ってた。 調査士・「これで理由が大体解りました、それと今回打ってもらった杭が、今回登記された位 置ですね。ありがとうございました。」 打たれた杭は、境界である石垣の『根』には無く、誰がみてもおかしく思われる、石垣の『てん ば』に打ってあった。実は私は現場で既に隣接者との立会いは済ませており杭の位置が相違 している事は直に解った。しかもこの測量会社の杭は前日までは確かに、石垣の根に打って あつた。 そして、帰りがけに。 測量会社・「調査士さんは、どうやって合わしているんですか。私にはわからないんですけれ ど。」 調査士・「1筆、1筆ぜんぶ立会いをして、現実の境界で図面を作製します。そのために地積 測量図の250分の1と土地所在図の500分の1か1000分の1の図面で縮尺を必ず別にし て、許容誤差を考えながら作製します。当然その誤差を越えたら地図訂正をします。」 測量会社・「えっ、縮尺を別に作製してもいいんですか。地積測量図と所在図で違っていても いいんですか。」 調査士・「当然、許される範囲がありますけれど。全く違っていたら駄目ですよ。ゆるい曲線 や、小さいがたなんかは、縮尺によって表示出来る事が決まって来るでしょう。大体地積測量 図は250分の1で作製しますが、それでも書く事が出来ずに10分の1なんかの拡大図を地積 測量図に入れますよ。それと同じ事ですよ。」 測量会社・「役場の担当者からは500分の1の処であれば、必ず縮尺は同じにするようにと 言われていますが、1000分の1のところは測量図を500分の1で作り、形状や寸法はきっち り同じにしろと言われていますよ。本当に、地積測量図と土地所在図で違っていてもいいんで すか。」 調査士・「間違えられると大変なのですが、先程も言ったように、許される範囲内においてで すよ。当然使用の目的が異なる訳ですから、ある程度の事は仕方ないと言うか、許されま す。」 測量会社・「でも、そんな事をしていると手間ばっかりいって大変でしょう。うちの会社だったら 社長に採算が合わないと怒られるだろうな。」 ● ふたたび役所にて 調査士・「先日はありがとうございました、今日早速、測量会社さんと現地で会ってきました。 ただ、現地は地図訂正の要素も含んでいるようですよ。」 事業担当者・「何か、ありましたか。」 調査士・「隣接の境界や周囲の土地に国土調査とかなりの相違がみられますよ。恐らく、該 当地については丁度80センチほどの位置誤差があったはずですが、本来、これは地図訂正 を行って分筆・買収をしなければならない事案のようでしたよ。それにやはり、コンクリート擁壁 の途中にしか買収の位置がきませんよ。」 事業担当者・「今更、地図訂正なんか出来ませんよ。登記も出来てしまったんだからもういい じゃないですか。物を作って杭を入れたらそこが境界になるから、多少違っていても誤差という 事にすればいいんじゃないですか。今までも違っているといって来られた調査士さんや測量会 社はいたけれど、みんなうまくやってくれていたんですよ。図面を訂正してくれと言ってきたのは あなただけですよ。調査士としての力が無いから言って来ているんじゃないんですか。それに 第一、そんな余分な予算は有りません。」 調査士・「いや、それでは困るんですが、買収の残地について分筆の依頼がある訳なんです から、一度分筆抹消をしていただいてから、地図訂正をして正しい地積で再度、分筆し買収し てもらうのが、後々のため個人のためにも役場のためにも良いのですが。」 事業担当者・「それは正論でしょうが、いちいちそんな事していたら、官庁は事業なんか出来 ませんよ。」 調査士・「事業を推進する立場からみたらそうかもしれませんが、しかし、今はそれで良いか もしれませんが、住民がもう少し意識が高くなってきたら、裁判になりますよ。現在は役所と争 い事をしたくないと言って、違っているのを知りながら黙っている方も多いですが。一度裁判に なると堰を切ったように出てきますよ。やはり、直接他人の財産を取り扱っかっているんですか ら、それなりにやらなければならないんじゃないですか。」 事業担当者・「じゃあ、どうしろと言うの」 調査士・「地図訂正はどうにもなりませんが、せめて確定測量をして下さい。現地の用地買収 図面と構造物の出来上りが相違する事は頻繁にあります、別に調査士に頼めとかそんな事は 言いませんが構造物完成の出来上がりで確定測量の後、登記図面を作製すれば費用もあま りいらず現地との相違も防げます。」 事業担当者・「それは言っている事は解るけれど予算がなぁ。」 ● 優秀な公務員とは やっぱり、今日も同じ議論のくり返し。自分達の責任を誤った公差の解釈でまぬがれようとし ている官庁の職員。 優秀な彼らに、愚直な我々の主張が解らぬ筈が無い。わざと誤った解釈をし、予算の不足を あげていれば彼等は少なくとも自分で責任をとる必要がないのだ。 法務局もこれらの事実を知りながら、官庁の登記を締め付けると公共事業が停滞するという 理解の名の元に登記に便宜を図っている。今まで法務局が官庁が提出し、既に登記がなされ た分筆・買収した路線に誤りがあったのですみやかに官庁と法務局が修正しますといった正義 感あふれる登記官には、残念乍ら今まで会った事が無い。 調査士がその事実を指摘しても、依頼人と調査士でそれらの訂正を行い、登記の出来るよう にしなさいとの指導があるのみである。しかし、この事は法務局も暗に官庁の職員の公差を認 めている事になり、その責任においても公差の解釈と運用においても同罪である。
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