ギャップ
(錚錚たる男たちとやさしい言葉)

岡山の主婦調査士 藤原 秀子

到  着

 平成9年、まだ正月のあけぬ4、5、6日にかけて愛媛県といっても高知県に近い場所。リア
ス式海岸、ミカンのだんだん畑、そして真珠の南予地方に先輩のUさんと共に研修に参加させ
てもらいました。
 調査士兼主婦の私は、正月の行事を家族と共に過ごし、昨年の暮れにお誘いのあった研修
会に参加するため岡山を4日早朝に出発。瀬戸大橋を経由し、高速道路の松山道を走り、一
般国道をそれから2時間ひたすら走ったのですが、現地に到着したのは昼前。



ガードレールの下に

 既に研修は開始されていて、まるで見学だけに来たようで申し訳なかったのですが、それで
も何か自分の身に吸収しようと測量者の様子や動作を観察したり、前視点、後視点をみてい
ましたら現場を走る国道のガードレールの下に基準点が設置してあり、とても三脚が据えにく
そうで、私ではとっても据える事が出来ないだろうと思いました。
 後で聞きましたら、ガードーレールのすれすれに鋲があるほうが、三脚は据えやすく、また自
動車等から、基準点鋲そして観測者自身を守るためにも良いそうです。
 ガードレールはコンクリート擁壁の部分にあるため、当然基準点鋲はコンクリート擁壁に設置
出来き、不動標識の役割も充分に果たすそうです。
 時折、測量会社の方が道路の中央で器械を据えて観測していらっしゃるのを見るにつけ、勇
気があるなぁと感心しておりましたが、アスファルト舗装の中に打った金属鋲では、後々移動す
るので、基準点としては使用には堪えないという事だそうです。
 工事が完了すれば必要のなくなる測量鋲とは使用目的が相違するという事なのでしょうか。



器械の下にピンポール

 そして何よりも驚いたのは同一の観測場所で光波測距儀の下にプリズムを付けたピンポー
ルを設置してあった事でした。
 設置にあたっては、光波測距儀の求心望遠鏡を利用して、基準点の十字とピンポールの頭
の部分を求心望遠鏡で見て確認して、真っ直ぐに立っている事を確認するのだそうです。だか
らピンポールには水準器がついていませんでした。ピンポールにつけたプリズムの高さをコン
ペックスで注意深く測っておられたのですが、最初にプリズムを付けてポールを横にして測って
いる方と、ピンポールを立ててから、基準点鋲からの高さを測っている方、それぞれでしたが、
いずれの方も真剣な眼でミリ単位で高さを測っていらっしゃいました。



基本に忠実に

 この研修会に参加させてもらったのは今度で2回目になるのですが、皆さん基準点について
実際にお仕事をなさって、それなりに成果を挙ておられ、私も今からでも地元で仲間と協力しな
がら、単路線でも良いから基準点測量をやってみようという気になりました。
 実際、私が見ていても三脚の据えかたの速さ、観測の速さ、正確さ、みんなすごいと思うので
すが、直接お話をすると全く難しい事を言われないのが不思議な気がします。
 三脚はきっちり立てなさい。低い場所に立てる時は低い方に三脚の脚を2本立てる。ねじれ
のないように立てる。そして脚頭が水平になるように据える。必ず石突きは良く踏み込み固定
する事。地盤が腐葉土などで柔らかい場合は、固い地盤が出るまで掘る。木の根等が邪魔を
する時はそれを除けてしまう。
 気泡管は、落ち着いてきっちり合わせなさい。整準ネジはあまり使用せず、なるべく三つの整
準ネジもみんな揃って中央付近にあるようにしなさい。求心に間違いはないか。
 観測については同じ場所の同じ位置を測っているか。
 観測計画図どおりに観測をしているのか。といった様に、本当に測量の教科書を開いて一番
最初に書いてある事だけを言われます。
 そしてみんなで観測する時は、相手の事も考えて観測するという事をきちんと守らなければな
らないんだなと実感させられました。



再  測

 たとえ、観測が制限以内であっても、満足のいく値でない時は躊躇せず、再測をする。
 私からみれば、皆さん観測も上手で、あっと言う間に終了して制限内に充分入っているような
のですが、納得出来なければすぐ再測されます。
 私は再測は恥ずかしいと思って、慎重に正確にと思って観測が遅くなってしまうんですけれ
ど、あっさり「20秒と15秒か駄目です。再測します。」といってすぐ再測をされます。「後でどこ
が悪かったんだろうといろいろ悩むよりも再測をしてすっきりすればいいじゃないですか。」とあ
っさり言われます。
 勿論、再測をしても、充分早いので、私の観測が1回終了する間と一緒じゃないかなと思った
りもします。



ギャップ

 でも私が一番面白く、興味深く聞いていましたのは、研修の間に耳にした言葉。愛媛県独特
の方言。
 「・・・やらんけん。」
 「・・・ないんよ。」
 「・・・そうじゃね。」
 「・・・ほうじゃろ。」
 「・・・ならんの。」
 「・・・わい。」
 「・・・いけんですよ。」
 を聞いて、私は一人微笑んでいたんです。
 錚錚たる男らしい方々と、その方々から発するやさしい言葉のギャップに。





蛇足

 「岡山の藤原さん、こんな原稿書いてくれたで。」
 「あれっ、ぼくは標準語ですよ。」
 「ほんとかな。」
 「ほんとやがなっ。あれっ。」

 「Wさんは方言そのままやな。」
 「ええんじゃないですか。地で売っとりますけん。」
 「宝さんも、方言丸出しですよね。」
 「ほうよ。ほんやけどのえ、滝さん、あんたもそうじゃがな。」
 「ほうですか。年寄り集団は方言丸出しよね。ほんでも、言葉づかいはやさしいんですかね。」
 「南予の方はやさしいんじゃない。新居浜の方は大分きついけんね。」

 愛媛県のいろいろな方言があるが、よそからみれば全部同じように聞こえるらしい。
だが、測量の仕方はみんな一緒、調査士だけの測量があって良いはずが無い。



久しぶりに基準点測量研修
     
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