ちょっと教えてや
(あまりにも初歩的な事ですが)


● 三脚の据えかた

 「三脚の据え方教えてや。」
「簡単よ。脚頭が必ず水平になる様に据える。三脚の脚の広げ方は正三角形になるように、脚
はねじれのない様に。足場に高低差がある場合は、必ず低い方に2本の脚を据える。石突は
必ず、良く踏み込んで動かないようにする。これだけよ。」
 「それだけかな。なんか秘訣はないん。」
「別に、単純にそれだけですよ。」
「器械の高さを合わせる時はどうするん。」
「簡単よ。同じ要領で据えた後、脚頭を水平にして、求心をしておけば、そのまま水平を保って
やるように、脚を上下すれば簡単に高さを合わせる事が出来ますよ。」
「器械の高さは垂直に測れんやろ。」
「うん。普通に器械を据えた状態だったら、器械の幅と、標石からの器械高のマークの位置ま
での斜距離をピタゴラスの定理で計算してみたら解ると思いますけれど、大体我々が据える普
通の高さであれば2ミリ程度の差が出るから、そのつもりで調整すればいいんじゃないです
か。」
「器械を乗せた後は何か注意する事ある。」
「求心をする際に、求心を確認した後、更に180度廻して求心が合っているかも必ず確認せん
といかんですよ。まあ、必ず器械は点検しとってよ。」
「後は。」
「気泡管で水平の確認は勿論ですが。整準ネジをあまり動かして、水平を保つのは感心しない
です。整準ネジによる調整は必要最小限にする事。観測に影響します。それから、三脚の脚
頭から器械がはみ出さんように据えて下さいよ。」

「・・・。」



● 踏み込んで

「山なんかで、腐葉土で地面がふわふわして三脚が立て難い場合どうするん。」
「表土が出るまで、兎に角、掘ります。」
「大分掘らんといかんやろう。」
「そうですね。それでも表土が出てくるまで掘ります。」

「山だったら、細い木の根がたくさんあって、うまく踏み込めんやろう。」
「釜や鋸で切ります。兎に角、動かないようにします。木杭を打ち込んで、その上に据えるとい
った事もありますよ。」

「アスファルトやコンクリートの舗装面なんかは、滑ったりして、きっちり設置出来んやろう。」
「コンクリートの所なんかは、三脚の位置が決まったら、その位置にくぎできずをつけてやって、
滑らないようにして固定します。いろいろ工夫してみて下さい。」
「・・・。」



● 調査士と電卓

「電卓持ってますか。」
「はい。」
「そしたら、これ計算して下さい。」
「ちょっ、ちょっと待って、sin,cos,tan,ええっと、角度を直すには・・・・。この電卓使った事な
いからキーの操作が解らん。パソコン持って来たらいけんやろか。」
「現場で、計算はどうやっているんですか。」
「現場で計算したら間違っていたら困るから、必ず事務所に戻ってから計算してます。」
「何回も、現場と事務所往復せんといかんでしょう。電卓を使えたらその場できちんと出来ます
よ。」
「間違ったら困るし。」
「現場が、山奥で1回で済まさないといけない時なんか困るでしょう。」
「いや、そんな現場だったら断るから。」
「仕事の依頼はそうかもしれませんが。パソコン任せにしておくのも危ないんじゃないですか。
せめて自分で最小限のチェックをする必要もあるんじゃないですか。」
「・・・。」

「メモリー機能も、もっと使えるようにならんと。」
「・・・。」



● 研修会で

 測量実習のため測量機械メーカーから器械の提供を受け、測量研修を行った。基準点のた
めの研修という事で2級経緯儀を提供してもらっている。そして最新の器械であるため操作方
法が皆目解らない。
 一応前日説明は受けているのだが、日頃異なるメーカーの器械を使用している者にとって
は、全く未知な器械である。それでも取りあえず、おぼろげながら操作法を覚え、実習が始ま
る。
 電源の投入は何ら問題はないのだが、気象補正。プリズム定数の入力の段階になるとパニ
ック。研修生全員でこのキーはあれだの、これだのとかしましい。
 測量器械メーカーの担当者に聞きながら、何とか操作を進める。
それでも器械が良いせいか、ほとんどの研修生が制限内で観測を終える。

 後日、測量機械メーカーの担当者との会話。
「先日はお世話になりました。」
「いえいえ、とんでもありません。」
「あの器械、いい器械ですね。」
「ありがとうございます。」
「でも、操作方も解りにくいですね。」
「ええっ、そうですか。」
「私が慣れていないだけです。でも、ばらつきもないし、いい器械ですね。最近の新人さんはみ
んなああいう器械を持っておられるので、私達は肩身が狭いんです。結果がいいのは、器械の
おかげで、腕がいいんじゃないよ。って言ってみたくなるんですよ。」
「そうですね。最近の器械は2軸補正でいいですからね。」
「でも、前回の研修では、本当の素人さんもいらっしゃったから、器械を提供されてひやひや、
されていたんじゃないですか。」
「はい。実は心配な方もいらっしゃったんで、じっと張り付いていた班もあるんです。」
「どの班ですか。」
「実は。・・・の班の方なんです。」
「あれっ。私の班ですか。」
「器械。みんな片手で扱われていたでしょう。ていしん管をきっちり締めておられるかどうか心
配だったです。」
「そうですね。確かに片手で扱ってましたね。」
「それと、誰も180度回転させて求心や、気泡管が合っているかどうか確認されませんでした
ね。」

「ドキッ。・・・ 。」



● 高さと縮尺係数

 私が業務を行う場所は標高200メートルの場所。これを平均海面上に投影補正してやると、
100メートルで3ミリ程度の補正になり、実際に測った距離よりも短く表示してやる事になる
が、実際においては、この程度の差は器械自身の持つ誤差で無くなってしまう程度かも知れな
い。言い換えれば1筆地には些細な影響だが、1キロになれば3センチの差が生じることから
も、路線においては必ず必要な補正と言える。
これは物理的にも、はっきり説明出来やすいのだが、なかなか頭では解っていても実行出来
にくいのは縮尺係数である。

「縮尺係数については、どうも納得が出来ないんだけど。」
「どうしたんで。」
「いや。縮尺係数というのは、結局、決まり事だよね。何の違いのない場所でも、私の地域だと
Y座標が90キロ付近だから、ほとんど関係ないんだけれど、宝さんの地区だとYが0に近いか
ら縮尺係数が0.9999の値になって100メートルで1センチの補正が要るようになるんだよ
ね。」
「そうよ。」
「だけど、商取引というか、現地には相違がないんだよね。標高だったら、まだここは高さが違
うから、平均海面上の距離に換算しますと言えるけど。なんか不合理な気がするんだけど。」
「しかし、決まり事でみんなが統一しょうと言う事ですから、それでいいんじゃないん。極端に言
えば、高さだって、距離の長さだって。縮尺係数だって建設省作業規程に定めて、同一の方法
で測量をしようと言う事ですから、迷う必要はないんじゃないかな。」
「う〜んっ。なんか釈然としないな。逆打ちをする時も、縮尺係数を考えてやっいている訳。」
「うん。しょるよ。」
「面倒くさいやろ。」
「当たり前の事やもん。」
「・・・・。」
 本当のところは、依頼人等に、私が納得させる説明を行えないために、あれこれと迷う事に
なる。ひとつ反撃してみよう。
「大きな工事や構築物を伴う場合なんかは困るんじゃないん。」
「どんな工事ですか。」
「たとえば、橋なんかを作る場合。橋の設計とか、構造物の長さ何かとの関係では困るんじゃ
ないん。」
「工事屋さんなんかは、自分達の公共座標というか、任意座標といった方がいいのかもしれな
いけれど、自分達で座標原点と一定の標高を定めて、そこから各種の補正をかけてやりよる
よ。」
「そしたら、構造物を作る人も、設計をする人もみんなその事を頭に入れてやりよる訳。」
「ほうよ。当たり前じゃが。」
「すごいなぁ。そしたら建設省作業規程で定められた事というのは、基本中の基本言う事よ
ね。」
「当然よ。」
「・・・調査士、生き残れるやろか。」
「頑張らんかい。」



● 誤差

 「位置誤差の事なんだけど、この間、質問を受けてね。精度区分にある位置誤差というの
は、半径なのか直径なのかって聞いてきた訳よ。」
「それで。」
「半径ですよ。と言ったら。えらく喜んでね。乙1だったら75センチあるから150センチ差があ
ってもいいんですか、ってまた聞く訳よ。」
「何、それ。」
「結局、本来の位置、もしくは復元した位置を中心として75センチの半径で描いた円のいずれ
かの位置にあれば良いという事だから、その差は最大限でも75センチなんだけど。」
「そういう事ですよね。それに位置誤差だけでは無く、辺長の公差や面積の公差があり、位置
誤差よりも、辺長の公差。そして面積の公差の方が段々厳しくなっているので、なかなか位置
誤差がこんなに出てしまうと、地図訂正や地積更正の事例になりますよね。」
「それが解らずに、単に位置誤差だけの話をしようとしているみたいで、半径75センチの円の
中に、本来の境界点と復元した位置が最大限の範囲、端と端で入っていればいいと考えてい
るみたいなんよ。結局150センチの差があっても良いでしょうという考えをする訳なんよ。」
「なんか、この議論してると、気分が暗くなるね。」
「何故。」
「いや、本当に知らなくて質問してくる人もいるんだけど、直径と半径を手段として考えている人
も多いんじゃないかな。」
「復元する度に、その誤差が使えると思っている人もいるしね。」
「なにか、基本的な考えが脱落しているような気がするね。」
「同時に、そういう決め方をしてくれる方が、自分自身の責任逃れが出来るという考えが根底
にあるみたいだね。」

「調査士って何をする仕事なんだろうね。」



聞くは一時の恥
     
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