高岡町基準点設置作業 3

                ( 選 点 )



平成20年9月17日調査士会館駐車場、朝8時集合

   平成20年8月29日に法務局と法14条地図作成のための基準点設置についての契約が

  成立したそうである。

   本日から選点を開始する。

   車3台に別れ、高岡町に向かう。


最初から反省

   迷惑おっさんと測量屋さんは現場に何回か足を運び、地形も頭の中で整理が出来ている

  ようだ。

   こちらとすれば、本日始めての場所で、どこにどのようなものがあるかさっぱり理解して

  いない。

   大体の地形が頭の中に入った頃には基準点作業は終了している。

   既に2人は、我々が現場完了までに要する程度現場に来ているということになる。

   自分の業務のトラバース測量の要領であれば、ある程度の事はできると自負しているのだ

  が、地図作成の為の図根多角点作業はそれと決定的に相違するものがある。


   自分の業務であれば、与点からの選点については自己の業務範囲の場所のみを気をつけ

  て選点すれば良いが、地図作成の場合は、最初から最後まで業務範囲の現場であり、すべて

  に対応しなければならないことである。


   選点は単に図根多角点間の定められた距離だけでは無く、後発の測量の便利な場所か否か

  という事も考え、作業すべきである。


   更には、定められた以上の精度が全体で要求される。


   この作業は、選点に関する知識は当然必要だが、基準点測量を行う実力と経験に余裕が

  無ければ成せないものである。


   老眼おっさんのように、基準点作業の入り口から道に迷っている者にとって難しく、自分の実力

  の無さを思い知ることになる作業である。


解らない成りに

   地形図を渡され、進行方向の道路上に選点をしていく。

   図根多角点間の距離と視通を確認しながら、コンクリート構造物のある場所に選点をする。

     「このあたりが、良いよ。」

   と、手を上げるのだが、迷惑おっさんが来て

     「もうちょっと、こっちじゃね。」

   と図根多角点設置位置にチョークで丸印をつけ、微妙に修正されてしまう。

   老眼おっさんが主張した場所と迷惑おっさんが修正した場所を比較しても、図根多角点間の

  視通は同様だし、コンクリート構造物も同様、かえって器械を据えるには主張した場所の方が

  良いくらいなのにと思う。


   何回かこんな事を繰り返していると、迷惑おっさんこちらのモヤモヤを察知したように

    「こっちやったら、奥の境界も見えるやろう。」

    納得。

   後発の一筆地測量の事を考えている。本当は、こんな事くらい解っとけよと迷惑おっさんは

  言いたかったのだろう。


少しは学習したけれど

   反省なら猿でも出来ると、何とか学習したつもりだったのだが、またまた自分の実力の無さを

  知る事になる。

   図根多角点を設置するような場所で、奥の境界の見える位置、出来るだけ一筆地測量で

  境界を観測できる位置を考慮しながら選点していくと、今までよりも違った目線で位置の選定を

  しだしたのだか、地図全体での路線の考えに全く考えが行き着かない。


   1本の路線での選点(行きっぱなし)しか出来ないのだ。

   現場の状況、地形を十分理解していないので当たり前といえば当たり前なのだが、地形図に

  路線の計画図を書いて渡してもらっているにもかかわらず、現場だけを見て地形図を見ずに

  判断している。


   「この位置どう。奥の境界も見えるよ。」

   「そこは、後ろの路線の図根多角点から見るので、こっちがええワイ。」

   地図作成地域の建物の混み入ったあたりになると、こんな会話が繰り返されだした。

   もう、こうなって来ると注意力散漫おじさんは、老眼を理由に地形図が見えないことにする

  しか無くなった。


使用する、しない。

   そんなこんなで、皆の足を引っ張りながらも選点は進む。

   高岡地区は街区三角点、街区多角点、節点、補助点が設置されている。

   当然、これらは与点として使用しなければならないものであるが、選点をしていると、節点・

  補助点については迷うことになる。

   街区三角点、街区多角点を与点にして図根多角点を選点していくと、節点、補助点の位置

  は都合の悪い場所にあるものも多い。

   図根多角点とは設置された目的が相違している為、仕方のないことなのだろう。

   もう少し、横にあれば一筆地の境界が見える。


   道路の交差点にあり複数の図根多角点との視通が必要な場所なのに視通の取れない位置

  にある。

   利用の出来るものは利用するが、地図作成の為に必要な場所と思えない場所にあるものは

  無理をして利用せず、図根多角点を新たに設置することになる。


   図根多角点と補助点が同じコンクリート枡の右、左で設置されていたりすることになる。

   都市部の住宅地という事もあり、境界には調査士の設置した会標が数多く残り、調査士の

  設置した準拠点鋲も数多く残っている場所でもある。


   道路コンクリート構造物に土地の開発時に使用したと思われる小さな真鍮製の鋲が要所

  要所に配置されている。


   利用の出来る場所にあるものについては鋲の周りをセメントで補強して使用することになった。

   松山市の基準点は、道路台帳作成の為に設置されている関係上、どうしても道路中央の

  位置にあり、選点中悩むことになる。


やぶ蚊

   この地区は山が迫っており、水路が建物の込み入った場所の裏手になっている、昔の整地さ

  れていない水田に隣接した曲がりくねった水路がそのまま残っている。

   水田は開発により宅地となり、建物が密集したが水路位置はそのままのようである。

   水路は主に生活廃水用の水路となり、農業用水路としての機能は持っているが水量も無く

  なったため、やぶ蚊が多くなったのだろう。


   ここで1日を過ごすと、顔がひりひりしてくる。

   だが、この地域の水路は、道路と道路を最短でつなぐ位置にあり、水路沿いに選点をしてい

  く必要がある。


   水路に接して里道があり直線の場所は、視通もとれ選点も容易なのだが、周りが住宅の

  ブロック塀に囲まれ、曲がりくねっていると視通の関係から、図根多角点間の距離も極端に短く

  なってくる。

   最後には三方張りの水路の底の部分に図根多角点を設置せざるを得なくなった。

   それにしても、やぶ蚊はいたい。


カーブミラー跡

   カーブミラーが立てられていた跡がある。

  カーブミラーの鉄柱部分が撤去され、コンクリート土台に残された鉄柱部分が穴になっている。

   周囲には図根多角点を設置できるようなコンクリート構造物は何も無い。

   横は、ごみ置き場でコンクリート舗装はしてあるのだが、ここに図根多角点を設置するのは

  遠慮するべきであろう。

    この位置は三叉路になっており、必然的に3方向を見渡せる場所に図根多角点を設置しな

  ければならない。

   もう一度、周りを見渡せば、アスファルト舗装の道路と山側の土の傾斜地、そしてごみ置き

  場である。

   吸い寄せられるようにカーブミラーの跡に目が行ってしまう。


            

     右側の四角コンクリートがカーブミラー跡   コンクリート土台に残る支柱跡に設置

   T4055はこうやって決められた。


網の形

   地形的に平坦で住宅地、道路がある程度整備されている場所なので図根多角点の配置が

  密になっていく。

   どうしても、3方向、4方向は当たり前の状況となり、取り付け点の観測のある場所については

  5方向となる。

   網の形がどのようなものが良いのか、老眼おっさんには理論的に解説する能力も実力も無い。


   ただ、漠然とした感覚で「視覚的に貧素な形になっては駄目、張りのある形にすると良い」と

  思っている。


   そうは思っても、実行することは出来ない。


   出来上がった結果はいつも貧相な形になっている。

   その過程についてのノウハウが無い。

   迷惑おっさん言うところの「失敗からの経験」なのだろうが、失敗から学ぶ真摯な態度・努力

  そして集中力が老眼おっさんには欠落している。


   現地で図根多角点間の視通が取れず、計画と相違することになっても、迷惑おっさん即座に

  「じゃあ、こちらは止めて、あちらと結ぶようにするから、構いません」計画図を見ながら変更

  していく。

   感覚だけで口を挟む老眼おっさん、こうなると皆目わからない、沈黙が続く。


お願い

   選点のために歩いていると、軽トラックが我々を追い越し道路端のお家に入っていった。

   広い敷地に、この地方の昔からの農家特有の両側に倉庫の付いた立派な門構えのお家である。

   軽トラックから降りたおじさん、測量屋さんに

    「もう、やっているのかな。」

    「はい、ご迷惑をおかけします。」

    「いやいや、大変じゃな。」

    「今の人が自治会長さんです。ここがお家です。」


   どうも、顔見知りになっているようである。

   自治会長さんのお家を通り過ぎ、そのまま団地の中の道路を行くと団地に囲まれた中に田ん

  ぼが広がる。

   見渡せば1ha以上の農地である。


    自転車に乗ったご婦人が、迷惑おっさんを見かけて

    「あれ、今日も来とんさったの。」

    「今日は。」


   お互い会釈をして去っていった。

    「あの人は、この農地の地主さんよ。」

    「えっ、これ全部。」

    「そうよ。」

    迷惑おっさんと測量屋さんは、自治会長や基準点設置に協力を願わなければならない

  方には、既に挨拶をしている。

    日常の調査士業務であれば図根多角点を道路上に勝手に都合よく設置しているのだが

  広範囲の業務を行なうには当然の気遣いなのだろう。


   だが、こんなに気遣いをしても基準点設置部隊「たこ部屋」には厳しい環境が待ち受けていた。


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