報   酬



● えっ、料金いるの

 我々、調査士の報酬は一体、何なんだろうと。報酬体系うんぬんというえらい身分でもなく、
そんな事を考える気もさらさらない。最近、お客さんに報酬額が高いと目をむかれ、それでも
渋々支払っていただけるならまだ許せるが、分筆や地目変更が出来たら後は無しのつぶて。
一向に報酬がいただけない。
 こんな事件が多くて困っている。

 依頼人が死亡する事例もたまにはある。しかも、依頼人だけの都合で分筆なりを依頼されて
いた様な場合は利害関係のある人もなく、一時人間を休業してあの世まで料金を取り立てに
行く訳にもいかず、請求先がなく、品位(?)ある調査士としては泣き寝入りとなる。

 依頼人自身が勘違いにより依頼され、再度の確認にもかかわらず、「それでも良いからやっ
てくれ」と強硬に主張。仕事が出来てみれば自分の勘違いに気付き。「何とか安くしてくれ」ま
ぁ、こんなのは可愛いほうである。

 調査士を公務員と勘違いし、役場でやってくれないから国土調査の位置を測りだしてくれ。つ
いでに隣との境界に鋲でも打っといてくれ。「料金はどうされるんですか」。「えっ、料金いる
の」。さっさと帰れ。


● 境界確認にて

 土地の仲介者から「これから現地で土地の売買をするのだが、依頼人さんが先生に立ち会
ってもらってくれと言っておられるのですが、明日14時に現場に来てもらえませんか」。
 「依頼人さんから、電話でも御依頼があれば行きますよ。取り敢えず、電話でも私の事務所
に入れてもらうようにしてください。」
 「解りました。電話してもらう様にします。」その後電話は無く、
 翌日13時、また仲介者から電話があり。
 「14時に現場に来てもらえますか。」
 「いや、依頼人さんから電話ありませんよ。」
 「あれっ、おかしいなぁ。言っておいたんだけどなぁ。是非に先生にと言う事ですから、すいま
せん、申し訳ありませんが、現地に来てもらえませんか。」

 一応現地の法17条地図と登記簿謄本だけは法務局に申請して持参し、渋々現場に出かけ
る。

 現場には既に依頼人と仲介者が話をしていた。「どんな事で立ち会いを必要とされるのでしょ
うか。」と尋ねると、
 単純に現地の位置の確認をしたい、そして面積があるのか知りたいとの事。
 「境界確認をして実測売買をされるのですか。」
 「いや、そこまでは必要がない。」
 「誤った場所でないかどうかの確認で良い。」
 「それでしたら、現地は国土調査が終了しておりますので、法17条地図で確認されますか。」
 「一応、法務局の図面はあるのですが。」
 それではここの境界という事ですか。と尋ねると、
 仲介者「ああ、それは私が前所有者から聞いています、隣接の役場の買収した土地につい
ても一応話をしています。」と説明をはじめた。
 私もちょっと説明を聞いていたが、これ以上現場にいても時間の無駄であるので「それでは」
と引き上げた。

 依頼人と仲介者は礼すら言わず、尚更報酬の事など聞きもしない、もっとも報酬を貰う気も
無かったが。事務所に帰る車の中で「馬鹿野郎、いいかげんにしろ。」ついつい品性の無い調
査士になってしまう。
 半年ほどして、依頼人から建物を建てる事になったのだが、境界確認をしてもらえないかと
の電話。
 「はぁ、いいですけれど境界は仲介の方が知っているんじゃなかったんですか」
 「いゃ、実は今度建物については、仲介者のやっている建築屋さんとは別の建築屋さんにお
 願いしたので、新しい建築屋さんは土地の境界が明確でないと土地の造成も出来ないと言
 われているんですが、改めて仲介者に確認するとはっきりしないんです」
 前回の事を思い出し、少し腹を立てて応対をしていたせいもあって「全部の境界確認をする
必要がありますので、費用はかかりますよ。なんでしたら、再度仲介者に連絡して境界を教え
てもらったらどうですか。」
 「そうですね。電話してみます。」
 早速、現場から電話をされたが、仲介者は「私はもう知りません、そちらで勝手にやってくだ
 さい」との返事。
 「いいかげんな奴だなぁ、仕方ありません。料金のほうは承知しておりますので、よろしくお願
いします。」

 この後はきっちり境界確認をして、無事建物は建った。料金もいただいた。しかし、仮に仲介
者の建築屋で建物を建てていたら、どのような境界紛争になっていたか解らないし、私も料金
を戴くことはなかったろう。恐らく別の事件として料金をいただいたかもしれない。


● 建物の表示登記で

 今度は、建物登記での話。
 年の瀬も押し迫って、急いで建物登記をしてくれとの事。
 何でも税金との兼ね合いで、現実はご主人が資金を出して作業場を新築しているのだが、ど
うも役場の税務課には、誤って妻の名義で届け出をしていたらしい。贈与税がかかると言わ
れ、何とか税金のかからない方法で登記してくれと今回の依頼となったらしい。
 至急現場を調査、測量して、依頼人のご主人に事情を聞き取り。資金を出されたご主人名義
で登記を行い、資産の価値が下がった段階で奥さんに贈与されてはという話になり、依頼人も
了承。
 早速、所有権証明書の大工の証明と成人二人の証明、それぞれに実印の押印と印鑑証明
書を用意していただくようにお願いして、書類の整備が出来、事務所に持参していただいた。

 慌ただしかったが何とか年末に登記完了した。
 一応、登記完了の連絡を入れたが、支払いは滞ったまま税務申告の時期となり、突然「あん
な登記私は頼んでいない、取り消してくれ。」

 晴天の霹靂である。わざわざ現地で調査を行い確認をして。法務局も実地調査を行い、再度
本人に確認をしているにもかかわらず「依頼をしていない」興奮した口調でこの一点張り。
 よく聞いていくと税務申告の相談をしたところ、間違った所有者になっているので、登記を直
してもらえといわれたとの事。
 どうもおかしい、こちらの判断では、どうも反対に理解されていると思い、しばらく時間をおい
て、落ちついてからもう一度話し合った方が良いと判断、ちょっと保留していたところ、再度、電
話があり、「はやくしろ、税務署に申告出来ないではないか。お前がすべて悪いんだ」とまで言
われる。
 「本当に良いんですね。」と念を押し、表示登記の抹消を行い、その旨を連絡。
 「もう、いいかげんな事をするなよ。」散々悪態をつき、依頼人?はその足で税務署に税務申
告にいかれたようである。

 しかし、税務申告が終了した直後と思われる時間に事務所に電話が入った。
 「もう、一回同じ登記をしてもらえないだろうか」
 「はぁ、何故でしょうか。とりあえず事務所に来ていただけませんか」
 どうも、私が考えたとおり、税務課の職員の説明(当初の登記の話のとおり)を反対に理解し
ており、折角、登記をして正しい所有者にしたにもかかわらず、誤った、大変だ、ごっそり税金
をとられると心配のあまり、当方を悪者にして、登記依頼をしていない事にすれば、事が納ま
る、と考えられたらしい。

 しかし、実際に税務署に行ってみると「折角、ちゃんとしてあったのに、何故登記を抹消してし
まったんですか。このままでは、大変な贈与税がかかりますよ。」と諭されたらしい。
 この時、やっと依頼人は自分の勘違いに気付いたらしい。
 慌てて、真っ青な顔をして「何とかならないか。」
 「法務局も実地調査にいかれ、確認してある登記を取り消したのですから、すぐには登記出
来ないかもしれませんよ。それに、申し訳ないですが、再度調査して、必要書類も再作製する
ようになりますので、今度うかがった時はどなたか同席していただけませんか。」
 といやみも少しいいながら(今度同じ事になったらもう知らんぞ)

 仕方無いので、翌日再度調査(実際は登記の意志の確認)に出かけ、長男のお嫁さんの立
ち会いの元で、「本当にこの登記をご主人名義でしてよろしいんですね。」と確認。
 依頼人「ええっ、登記して下さい。安くしてくださいよ。」カチン。
 何を考えているのやら。
 謝る方が先だろろう。

 法務局もぶつぶつ文句をいいながら再度、表示登記は完了した。
 こんな場合、表示登記、表示抹消登記、再度の表示登記と請求出来るのだが、なかなか田
舎の調査士、腹は立っても全部は請求出来かねる。

ええいっ、気分の悪いこと。



報 酬 編
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