棟 番 の 話

                                              福 田  晃

 古い建物の所在地番は、申告制度であったためか、間違った所在を表示したものを多く見
受けます。
 なかには、100mも200mも離れたところで登記されているものもあります。
 また、一元化作業の際の未登記・未登録、未登記・既登録、既登記・未登録の処理が適切で
なかったために重複登記となったものなども見られます。
 申請人に聞いてみると、昔そこに住んでいた!。昔間借りしとった!。本籍がそこだった!。
親父がやったことだ、わしゃ知らん!。
 その他、登記の後、耕地整理や国土調査によって所在が変更されたのに、建物の所在はそ
のままとなっているものもあったようです。
 既に国土調査を終了した地区の調査士さんに聞いた話ですが、国土調査とともに、地番を古
い地番から新しい地番に変更したため、登記簿の建物の所在についてそれに対応した地番に
ついては新しい地番に変更されましたが、分筆や合筆により対応する地番がなくなっている場
合は、古い地番のままとされ、建物の登記簿についても所在不明とされて、別綴の登記簿にな
っているため建物登記をする際に調査漏れになる例も少なからず有るようです。
「あれ、この建物は登記しとるがや。あんた本当に登記所で調査したんか。専門家じゃろうが。
しっかりしせえや。」
と不安がられる原因になったりします。

 これら建物の所在更正登記や滅失登記の依頼を受けると、登記されている建物か、ほかの
建物かの区別が難しく、大変頭を痛めます。
 その上、土地の調査測量より手間がかかり、あ〜あ、受けなんだらよかった。おかげでほか
の仕事が手につかん。と愚痴ることしきりです。
 報酬額のほうも土地の1/5から1/10程にしかならない。土地の調査測量より手間暇がか
かったとしても、建物に土地なみの請求は出来ません。

 また、このような登記には必ず担保の設定が絡んでいるもので、その内、本人から、次には
司法書士の先生から、その次には銀行から・・・まだか!まだか!まだか!とせかされ。
 すみません!、すみません!、すみません!。と三唱しております。

 このような場合、もっとも戦力になるのが「棟番」です。これは法令や条例で定められたもの
ではないが、どの市町村でも、建物課税の便宜上、一個の建物ごとにつけた整理番号なのだ
そうです。

 この番号は別紙のような「プレート」に調査番号を刻んで、玄関などの上に張り付けてありま
す。
 増改築などしないかぎり、古くても残っております。ただ、古いものはアルミ板が粉を吹いたよ
うになって番号が見えなくなっておりますが、手で擦ると、なんとか番号が見えてきます。
 そして、この番号は別紙の調査表の番号と一致しておりますので、この棟番を調査して調査
表の閲覧をすることが出来ます。
 地方税法で、建物平面図や建物名寄帳を備える事となっており、さすが我が市は真面目に
やっておるわいと感心して、担当者に聞きますと、「そんな税法なんかは関係なしに調査表をつ
くっておるんよ。」あれれっ。
 調査表の表には、調査番号(棟番)は勿論のこと、既登記、未登記、家屋番号、所在地番、
所有者、新築・増築の別、その建築年月日、等が記載され、裏には方眼線が引かれていて、
建物の形状だけでなく、間取りも調査されています。
 特に、増改築を繰り返したものや、既登記の建物を取壊し、その位置に新築した建物につい
て、取壊しの年や、新築建物の新築年が入っていたりして、申請人本人にも解らないような事
実が出てきたりして、建物の特定に役立ちます。
 中には、昔の長屋式の建物で、現在の区分建物の要件を満たしながら、個別に一棟の建物
として登記されているものや、反対に一部分のみを登記しているものなど。その多くは所有者
が同一である場合も多く、今回の登記ではどういった処理をしなければならないかの判断材料
にもなります。
 時として、建物の新築年と所有者とされる申請人の年齢との矛盾も起こってきます。意外な
事実が判明して真実どうりにやらなければという調査士の良心と、登記が出来さえばいいか
ら、この事実には目をつぶっておこうという気持ちと、日頃から物事を深く考えない私でも悩ん
だりします。でもこんな事例は宝くじの1等に当る程の確率ですのでご安心。
「えっ、当った。じゃあ、調査士やめて外の仕事した方がいいんじゃない!。」

 話が脱線してしまいましたが、いっその事、登記の平面図も間取りを表示すれば、数十年後
の建物特定に役立つのでは?、と思ったりしております。
 いらんことを言うな!、手間が増えて困る。と批判を受けそうですねえ。

 現在の建物登記と違い、古い建物の所在は、あまり現況と一致しておりません。大抵の場
合、市町村ではそのような建物についても正しい所在を確認しているようですが、登記所から
通知された建物の所在は変更出来ないので、誤っていることを承知で調査表に記載していると
のことです。

 ただし、正しい地番を鉛筆書きで併記しているそうです。
 私の市では、間違っている所在地番の建物は、所有者に更正するように指導してくれている
ようです。感謝せねばなりません。
 調査表が大きな戦力になるとは言っても、余りにも登記上の地番とかけ離れた所在の場合
は、不存在で滅失登記をして、表示登記を起こすほうが、登記官の心証が良いと思いますよ。

 それに、我々調査士が時としてミスをするように、調査表にもミスがあります、膨大な数の中
には、どうしてもそんな物も有ります。良く有るのは夫婦間で本来の所有者を確認せずにすべ
て夫の所有としている場合も見られます。

 調査表は有力な証拠ですが、その信憑性を確認する我々の調査能力も大事なのです。
 家屋番号の無い建物など、建物登記の変遷については、余り資料もなく、誰も知識修得に前
向きでないためか、調査に支障をきたすことがたびたびあります。
 どなたか、ご指導をお願い出来ませんか!。






建物調査の実務と本音
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