第5章 比較検証
5.1 図根点作成の相違 鷹子17条地図の図根点測量は、与点を三等三角点、四等三角点とし図根三角測量及び図根多角測量(一次、二次)と行っている。 図根多角測量は四等三角点1点と図根三角点6点を与点としており、主に与点から与点を結ぶ単路線により作成されている。単路線の原則は与点間をなるべく屈曲がなく短い距離で結ぶことであるが、路線を通す道路の形状や次数のことを考えると、原則どおりとならない場合も生じてくる。 時として異なった路線同士を結合させた場合、思わぬ悪い精度となることを経験されている方も多いだろう。 これは、同一路線であれば精度管理が出来るが、他の路線との整合性に問題がある為と言われている。 現実に鷹子地区においても、既設の図根多角点が亡失したため、別路線の図根多角点を与点として、結合多角測量を実施したところ精度が2000分の1程度となった事例がある。 鷹子地区は県道と伊予鉄道が東西に現地を分断しており、そのため多角路線も同様に長く平行に走る単路線となっている。 検証部分の1つは、このような路線が相違することによる精度の影響を確認した。 さらに網図から外周路線の弱さが窺えることから、多角網の突出した部分を検証した。
5.2 変換と固定 比較の方法として、以下の二つの方法をとることとした。
5.2.1 【変換】 鷹子17条作成時の図根多角点をTKY2JGDより変換した座標値と今回電子基準点を使用して世界測地系により実測した同一点との座標値の差(方向と距離)を単純に表示する方法。
5.2.2 【固定】 TKY2JGDで計算した変換値と、電子基準点を使用した実測値を比較すると若干相違が生じる。移動の恐れのない条件の良い1点を固定することにより本来の差のみを表示する方法。 今回は地下埋設された図根三角点B2については、現地調査の結果から道路の沈下による移動の可能性があり、図根三角点に近く、移動の恐れもなく良好な状態で現存しているAB12-15を固定した。
5.3 差 1級図根点測量では、図根三角点B2を確認した。 【変換】南へ32mm 【固定】南東へ6mmであった。(現地調査で標石に傾斜がみられるとの報告あり)
3級図根点測量では、上空視界の良い既設の図根多角点の改測を行い、 図根多角点AA11−1(3−1),AA12−6(3−3),AA223−3(3−9),AB12−13(3−17),BB215−5(3−19),BB12−8(3−22),BB215−1(3−23)を確認した。 【変換】大部分は南へ30mm〜42mm、 BB12−8(3−22)は南へ14mmの差となった。 【固定】AA223−3(3−1),AA12−6(3−3),AA223−3(3−9)は南東へ14mm〜20mm、BB215−5(3−19),BB215−1(3−23)は南へ10mm以内となった。 BB12−8は逆に北へ14mmの差である。 精度管理表からみるとこの路線は精度が他の路線よりも異常に良い。 このため他路線との歪みが出たと考えられる。
各路線の精度管理表(法17条地図作成当時)
5.4 方向・差 4級図根点測量 (これからは【固定】のみで比較をする。) Aブロックの中にある路線の精度管理表(法17条地図作成当時)
Bブロックの中にある路線の精度管理表(法17条地図作成当時)
Cブロックの中にある路線の精度管理表(法17条地図作成当時)
Dブロックの中にある路線の精度管理表(法17条地図作成当時)
ここで、各ブロックについて検証結果をそれぞれに記載する必要があるのだが、誌面に限りがあり、多くの示唆を与えてくれたCブロックについて詳しく検証結果を記載することとする。
5.4.1 Cブロック AB11路線とBB12−1は移動方向が逆になっている。 BB11路線とBB202路線は並行路線であるが、移動方向が違う。 BB201路線とBB202路線も並行路線であるが、移動方向が違う。 BB201−5とBB202−1の距離(点間約90m)は成果値の座標値により点間距離を計算したものと、実測距離や新図根点との点間距離とを比較しても約3cm短く、この付近については平均計算を行い、計算結果を得たからといって、安易に使用することは出来ない。 一次路線の精度は良いが、検証結果では路線に捩れがある。 図根三角点B1は校舎の屋上にあり地上方向の視準は急角度となって、角観測に何等かの影響が出たと考えられる。
5.5 路線長・路線図形 B,C,Dブロックはいずれも地図作成の図根三角点より外周に突出た路線である。 突出た部分は、路線長が必要以上に長くなるので見かけ上の精度は良くなるが、路線図形としては弱く、歪が生じる場合がある。 Dブロックの隣接地域で、将来松山市の国土調査が実施された場合、この箇所17条図根点・筆界点と国土調査図根点・筆界点とは歪みが生じる事になる。 国土調査では特にこの事には対応しないと思われ、この歪みをどのように修正するか、再測量も念頭においておく必要がある。 今回の検証ではこの様に、影響が大きく出そうな箇所を選んで測量計画をしたが、外周の図根三角点を結んだ線より内側にある図根多角点の移動量は、当時の測量資料から推測すると検証部分の数値より小さいものと考えられる。
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