第3章 日本測地系と世界測地系
今回は鷹子17条地図の図根多角点の比較検証である。 既設の図根多角点と比較するためには新図根点は信頼性の高い正確なものでなければならない。 そのため、新図根点は新たな地図を作成するつもりで、実際に使用も出来る正確な図根点を作成することとした。 また、新設図根点の計画については比較検証の目的から、出来るだけ既設図根多角点を利用して、改測により同一点での比較が明確になるよう考慮した。 3.1 日本測地系から世界測地系へ 2002年4月1日測量法の改正により、日本測地系から世界測地系へと改正された。 昭和62年度に作成された鷹子17条地図の図根多角点は日本測地系で作成されている。今回検証に使用する新図根点についても日本測地系によるものを作成し、同一の基準により比較を行うべきか迷った。
検証を行うためには比較する側の新図根点が正確であることが必要不可欠な条件であり、更に土地家屋調査士の手によって絶対的に正確であると断言できる高精度の図根点を作成出来なければ検証の意義がない。 測量法の改正により、電子基準点の測量成果が公開され、世界測地系により既設基本三角点等の改測・改算が行なわれている。 また、測量の基本となるものは国土交通省公共測量作業規程であり、この規程には測量の基本的な事柄の外に豊富な測量経験から得られた合理的測量方法や高度の知識も記載されている。 この作業規程についても、既に測量法に合わせて改正されていることから、今回の新設図根点作成のための測量については、改正された国土交通省公共測量作業規程に準ずるものとし、世界測地系での比較を行うこととした。 3.2 電子基準点とGPS測量 今回の検証にあたって、GPS測量により基準点作成を行なっている土地家屋調査士の参加があったことから、今までの経験で知り得た地域性のある情報を最大限活用することが出来た。 鷹子地域を含む周辺の地域についても、世界測地系への移行前にGPSで観測を行なっており、与点とするべき三角点は非常に高精度であったことを確認している。 また、世界測地系へと移行されてからの電子基準点を利用したGPS観測についても経験があり、従来の日本測地系での三角点を使用したGPS観測との精度を体験した経験から、将来的には電子基準点を使用した観測を行うべきであると確信していた。 与点となる既設の三角点の成果について、世界測地系によって新たに改測をした成果が公表されていれば問題はないが、過去の観測データ等により改算されたものであれば、電子基準点を使用したGPS測量による観測値と比較すれば若干の相違があることも経験から理解している。 この相違は許容誤差範囲内で何等問題はないのだが、電子基準点を使用した精度を経験すればより良いものを望みたくなる。 検証当時、与点の現地調査を行なったところ与点の上空視界確保に問題があった。また、この与点成果は改測されたものではなく、改算されたものであった。 今回の検証の目的から正確な図根点を作成する必要がある。 以上から今回は新しい測量方法である電子基準点を使用したGPS測量を実施することとした。
3.3 TKY2JGDと鷹子地区 鷹子17条地区の既設図根多角点については、現在の日本測地系での座標をTKY2JGDによるパラメータ変換を行い、世界測地系での座標に変換した後比較を行うこととした。 この変換が既設の図根多角点の成果に影響を与えるかどうか簡単な考察を行なった。 鷹子地区既設図根多角点の座標値をTKY2JGDパラメータ変換により世界測地系へ変換をかけた場合、日本測地系による鷹子地区の範囲の四隅を日本測地系の座標値で表示する。 @ 左下 X=89500.000, Y=-64000.000 A 左上 X=90500.000, Y=-64000.000 B 右上 X=90500.000, Y=-62750.000 C 右下 X=89500.000, Y=-62750.000 この値をTKY2JGDにより世界測地系へパラメータ変換行うと以下のようになった。 @’左下 X=89878.9164, Y=-64240.3628 A’左上 X=90878.9216, Y=-64240.3522 B’右上 X=90878.9136, Y=-62990.3613
これは範囲の四隅について @〜Aの距離が 1000.000 @’〜A’1000.0052 A〜B 1250.000 A’〜B’1249.9909 B〜C 1000.000 B’〜C’1000.0119 C〜@ 1250.000 C’〜@’1250.0006 更に対角線方向についても距離の比較を行う @〜B 1600.781059 @’〜B’1600.780482 A〜C 1600.781059 A’〜C’1600.785682
微妙に相違していることが分かり、これからもTKY2JGDパラメータ変換は単純な平行移動ではない。 鷹子地区においてB〜CとB’〜C’は1000メートルで1.1センチ、A〜BとA’〜B’においても1250メートルで1センチの相違がある。 これらは既設の三角点成果を考慮しながら変換を行なっているために生じたものである。
今回の検証にあたっての影響を考える。 与点となる三角点について、成果値と電子基準点使用の観測値の差。 図根多角点に対するパラメータ変換による影響。 この二つを比較した場合、変換による影響は皆無ではないが、正確で精度の良い図根点を作成した後、既設図根多角点との比較検証を行なうという今回の目的からして無視出来る程度の量であると考えた。
|