第2章 鷹子17条地図図根多角点維持管理状況 鷹子17条地図のために設置された図根多角点について、現在までの状況を報告する。 2.1 数値管理 鷹子17条地図は図根多角点や一筆地の筆界点座標については、法務局において数値管理されている。 特に一筆地の境界座標については1点1座標の原則から、既設の管理された境界点座標と実測された境界点の座標値が公差範囲内であれば、法務局で公開されている座標値を使用するものとされている。 一筆地を分筆して新設の境界点を設置する場合は、分筆前の一筆地全点の観測により境界標識の設置状況に異常がなく、観測された座標値についても許容誤差範囲内であれば、実務上は既設点1と既設点2を結ぶ直線上の位置に新設境界点を設置し、コンクリート杭等の不動標識を設置する。 分筆にあたっては、双方求積が義務づけられているため、新設の境界点の実測値をそのまま使用した場合、座標値をみると直線にならない、そして求積を行った場合面積が相違することとなる。 また、隣接地等の面積にも影響を与えるので、実測を行った観測値を使用するのではなく、既知点1の座標値と既知点2の座標値の直線上となる座標値を計算して使用するよう取扱いがなされている。 2.2 図根多角点の復元 このような細やかな注意規則で管理されており、公共座標で作成された地図であるため、図根多角点からの測量は必須とされ、鷹子17条地図は作業完了と同時に図根多角点の維持管理のスタートとなった。 各境界点の亡失による復元、分筆作業による新点の設置、その測量に欠くことのできない図根多角点の維持に土地家屋調査士が関与して現在に至っている。 ○昭和63年3月22日 松山地方法務局登第69号 法第17条地図作成モデル作業地域の表示に関する登記事務処理要領 ○松山地方法務局基準点標識管理要領 (昭和63年6月 1日 松山地方法務局長訓令第5号) (昭和63年6月28日 松山地方法務局登第140号) いずれも愛媛県土地家屋調査士会会員必携に、その作業について事務処理方法が記載されている。 松山地方法務局基準点標識管理要領では、現地を定期的に見回ること、あるいは他の官公署、一般、工事人等からの問い合せへの対応が明記されている。 だが、図根多角点・筆界点(現地)と法務局の法17条地図との的確な関連付けのための処理は出来ているのだろうか。 2.2.1 図根多角点の設置場所 @ 図根多角点の設置場所が、農道、水路の場合は建設省所管である。 A 松山市道、愛媛県道に設置の図根多角点は道路占有許可をとっている。それぞれ所有者、管理者は各地方公共団体の各担当課である。 B 民地の図根多角点設置場所については土地所有者の了解を得て設置している。 昭和62年当時と比較すると、鷹子地区も開発により宅地化が進み、図根多角点を取り巻く環境も大きく変化している。 官公署の公共事業、そして個人所有地の所有者の都合等、法務局がいかに図根多角点の管理、保全に努力しても、その設置場所は法務局の所有地でも管理地でも無いという現実がある。 2.2.2 経費の予算化 今まで1次路線、2次路線の復元、新設を法務局、地元改良区、松山市からの依頼で約100点近く行ってきたが、その必要経費についての予算処置は十分とはいえない。 法17条地図作成に関わった者(土地家屋調査士)としては、地図の精度を劣化させてはならないという使命感はあるが、すべてを奉仕活動により行うことも出来ず、経費の予算化という大きな壁がある。 ただ、この鷹子17条地区においては、図根多角点の大切さが地元住民に浸透しているため地元改良区の協力が得やすく、各作業においても各官公署に強く要求することが出来る。 これは、共に17条地図作成を行なったという信頼関係によるところも大きいと自負している。 2.3 最近見られる事例 ここ4、5年の傾向としては、民間のビル建設業者、測量コンサルタントが行った理解不能な復元点(図根多角点、境界点含む)が部分的な地域に存在するようになっている。 この理解不能な復元点について、該当地で業務を行おうとする会員からの問い合わせに対し、我々は全く関与していないため復元の為の測量方法、その精度管理表などの測量精度に関しても情報が無く対応することが出来ない。 同時に他の残存する図根多角点との整合性にも問題が生じており、維持、管理について今後の大きな課題となっている。
※ 民間のビル建設業者により、河川に隣接する一団の土地の造成があった。これらの土地は畑であったことから、かなりの埋め立てがされた。 また、同時期にこの地域の河川改修も予定されていたため、あらかじめ県の要請により図根多角点の復元等に備え引照点の作成等を行なっていた。 だがビル建設業者による土地造成工事が先行して開始されたため、復元、新設を実行することは出来なかった。 造成完了後、測量コンサルタントにより図根多角点の新設、復元が行なわれた模様であるが、我々が図根多角点の復元に備えてあらかじめ作成した引照点から、復元を行なうと位置が相違している。 この区域以外からの図根多角点を使用して、該当地の図根多角点を観測すると、数センチ相違している。ただ、この該当地域内だけを比較すると、相違は見られない。 この地域だけが、別の座標値を使用した特別区となってしまっている。これは使いやすい図根多角点だけを使用し、他の図根多角点との整合性を考慮しなかった。
※ 図根多角点への認識についても、あまりにも重要であるという意識が先走りしため、図根多角点自体を残せば良いということからアスファルト舗装ごと切り取り、工事完了後に切り取ったアスファルト舗装ごと埋め戻された場所もある。 座標値とそれを担保する図根多角点が一致してこそ有効なのだが、図根多角点の素材そのものが大事であると勘違いしたもので善意であるが故に、直ぐには移動について判明しがたい事例であり、注意を要する。
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