尺貫法からメートル法へ
土地家屋調査士 三宅 雄二
1 尺貫法(しゃっかんほう)ってな〜に
長さに尺、質量に貫を使った日本固有の単位系
メートル法の普及により法律上は昭和34年(1959年)からは廃止されている
それでもしぶとく生きのびている単位
日本家屋を建てる際には、いまでも尺(寸)を基準とした曲尺がメートル目盛りのスケールと併用して使われている。
調査士業務ではおそらく「坪」はメートル法以上に使われている
家を建てるので60坪に分筆してほしい。
宅地分譲したいが50〜60坪で何区画とれるか。
1坪当たり20万円で売買したい。
測量したら何坪あったか。
一尺はひじから手首までの長さと覚えておくと便利
2 尺貫法とメートル法の比較
長さ・距離
尺貫法(曲尺単位系)
|
メートル法
|
計算式
|
1里(り)
|
36町
12,960尺
|
3.9272727q
|
129,600/33m
|
1町(ちょう)
|
60間
360尺
|
109.0909m
|
3,600/33m
|
1丈(じょう)
|
10尺
|
3.030303m
|
100/33m
|
1間(けん)
|
6尺
|
1.8181818m
|
60/33m
|
1尋(ひろ)
|
6尺
|
1.8181818m
|
60/33m
|
1尺(しゃく)
|
10寸
|
0.3030303m
|
10/33m
|
1寸(すん)
|
10分
|
3.030303cm
|
10/330m
|
1分(ぶ)
|
10厘
|
3.030303o
|
10/3300m
|
1厘(りん)
|
10毛
|
0.3030303o
|
10/33000m
|
1毛(もう)
|
|
0.03030303o
|
10/330000m
|
面積
尺貫法
|
メートル法
|
計算式
|
1町(ちょう)1町歩(ちょうぶ)
|
10段(反) =3000歩
|
≒1ha(10,000u) 9917.35537u
|
1,200,000/121u
|
1段(反)(たん)
|
10畝=300歩
|
≒10a(1,000u)
991.735537u
|
120,000/121u
|
1畝(せ)
|
30歩
|
≒1a(100u)
99.1735537u
|
12,000/121u
|
1歩(ぶ)
1坪(つぼ)
|
10合=6尺平方
=1間×1間
|
3.30578512u
|
400/121u
|
1合(ごう)
|
10勺
|
0.330578512u
|
40/121u
|
1勺(しゃく)
|
|
0.0330578512u
|
4/121u
|
宅地及び鉱泉地に使う単位は,坪 合 尺
宅地及び鉱泉地以外の土地に使う単位は,町 反 畝 歩
単位系の違い
曲尺(単位系)
|
間詰(単位系)野取図、畝順帳
|
【6尺】= 60寸
×1/10
【6寸】= 60分
×1/10
【6分】= 60厘
|
⇒ 【間】
⇒ 【合】のちに【分】
⇒ 【勺】のちに【厘】
|
3 尺貫法からメートル法へ、どのような作業をしたのか
昭和41年は換算表が頼り
尺貫法の単位から平方メートルへの登記簿の換算について
土地又は建物に関する計量については、昭和41年3月31日までは尺貫法による計量単位を用いてさしつかえないことになっていたが、昭和41年4月1日以後は、すべて平方メートルによる計量単位を用いなければならなくなった。
昭和41年3月1日民事甲第279号民事局長通達によれば、1万坪未満は換算表を作り平方メートルに換算するようにしたが、換算率は1万坪未満については、1坪を3.30578512平方メートルとし、1万坪以上については1坪を121分の400平方メートルとするものであった。
|
第7章資料編、「土地建物面積換算書」参照
今なら電卓ひとつで簡単
計算式
1尺=10/33m
1間=6尺=60/33m
1坪=6尺平方=60/33×60/33u
=3600/1089u
=400/121u
1u=121/400坪
=0.3025坪
|
↓
実務では単純に、0.3025の数字を使って
平方メートルから坪へ、坪から平方メートルへの換算をすればいい。
u×0.3025=坪
坪÷0.3025=u
|
計算してみましょう
五畝二四歩は何uですか。
|
|
u
|
524÷0.3025ではないですよ。
5.24÷0.3025でもないですよ。
|
35坪と100uはどっちが大きいですか。
|
|
|
4 伊能忠敬の業績をメートル法にしてみると
伊能図の縮尺を現在のメートル法に置き換えてみましょう
大図(だいず)
|
1里を3寸6分で表したもの
|
縮尺 1/
|
|
中図(ちゅうず)
|
1里を6分で表したもの
|
縮尺 1/
|
|
小図(しょうず)
|
1里を3分で表したもの
|
縮尺 1/
|
|
伊能忠敬(1745〜1818)が算出した子午線1度の弧長 28里7町12間を
現在のメートル法に置き換えてみましょう
|
伊能忠敬
|
(江戸から蝦夷地まで)
|
110.985Km
|
ベッセル楕円体
|
(北緯35度から北緯41度までの平均)
|
110.997Km
|
GRS80楕円体
|
(北緯35度から北緯41度までの平均)
|
計算してみましょう !
5 建物を調査するときにも
6 たかが単位というなかれ
火星への大接近での勘違い
1998年12月12日、ケープカナベラルから打ち上げられた火星気象衛星「マーズ・クライミット・オービター」は順調に飛行して翌年12月1日頃、火星の両極地上空を通過する、ほぼ円の軌道に乗る予定だった。ところが、火星の向こう側を回っている途中に、まったく不通状態となってしまった。それは、人工衛星が飛行コースから大きくはずれ、火星の大気圏内に突入して破壊されてしまったためと推測されている。その原因は、人工衛星からの通信データを受信していた技術者集団は距離を「ヤード/ポンド法」で換算し、その情報を受けたNASA側では「メートル法」で解釈したことによる初歩的な判断ミスで、飛行コースを誤ったためと見られています。
これで130億円が無駄
調査士業務もメートル法と尺貫法の使い分けが肝要です
・ 今でもお年寄りと話をするときは、坪で話をする方が伝わりやすい
・ 60坪で分筆と依頼があって平方メートルに換算するのを間違えたら大変
・ 50で分筆してくれと頼まれた。 坪? 平方メートル? どっち
・ 公図、土地台帳が正しく理解できません
答え
五畝二四歩は何uですか。 575 u
35坪と100uはどっちが大きいですか。 36坪
大図(だいず) 1里を3寸6分で表したもの 縮尺 1/ 36,000
中図(ちゅうず) 1里を6分で表したもの 縮尺 1/ 216,000
小図(しょうず) 1里を3分で表したもの 縮尺 1/ 432,000
110,749q 伊能忠敬 (江戸から蝦夷地まで)
110,985q ベッセル楕円体 (北緯35度から北緯41度までの平均)
110,997q GRS楕円体 (北緯35度から北緯41度までの平均)
|