松山地方法務局における建物の対応

土地家屋調査士 宮本 邦彦 

建物に関する法務局の処理等について、注意を要する事項について、法務局サイドからの視点で、感じたことを書き綴ります。なお、これは宮本が登記官として処理し感じたままを紹介しますが、現在もその取扱いが踏襲されているかについては責任が持てません。

当時の取扱いとしてお含み願います。

 1 昭和48年以降、登記事件数の確保のため、地番と家屋番号が異なる建物について、職権で家屋番号の変更登記を行った。

問題点 機械的に登記簿上の作業のみで対応した。

現地における建物の存否の確認等は一切行っていない。

家屋番号が付与されていなかった建物についても全て家屋番号を付与した。

その結果、コンピュータ移記の結果のみが現在登記記録に反映されているため、家屋税法施行当時に存在した建物と存在しなかった建物との判別が困難となってしまった。

注意点 建物調査の際、コンピ移記閉鎖建物登記簿(表題部用紙)における一元化当時の家屋番号の記載の有無が重要である。

 2 松山局管内登記所においては、混乱を最小限にとどめるため、現地に存在しない建物について下記のとおり依命通知が発出されている(表示に関する質疑集)。

内容 既に取り壊し、又は焼失により滅失している建物について

@        登記名義人である法人が解散しており、その清算人の所在が不明

A        登記名義人が死亡しており、その相続人が行方不明

B        登記名義人は存在するが、土地所有者からの滅失登記申請の要請に同人が応じない。

等の場合には、滅失した建物の敷地所有者あるいは敷地上に建築した建物の所有者等利害関係人から登記官への職権を促すための建物滅失登記の申し出で立件処理していただきたい。

局回答 いずれも貴見のとおり取り扱う。

(昭和58年11月25日登第217号依命通知)

 記憶 当初は利害関係人(敷地所有者等の申し出資格者)の理由書(印鑑証明付き)で行っていた。

 昨今は登記手続きを受託した土地家屋調査士が証明を代わって行っているものが見受けられる(証明力の欠如?)。

また、土地家屋調査士は登記原因につき、登記記録の建物が現地に存在していたか否か、かつその同一性が認められ、さらに物理的な原因を確認し調査報告書に記載すべきである。安易に「年月日不詳取壊し」を登記申請情報における登記原因として使用すべきではない。過去に類似建物に関する訴訟の際、登記官及び土地家屋調査士に対し法廷において裁判官より指摘されたことがある(伊予出張所事件)。

しからば、登記原因はいかに記載すべきなのか。私の指導は「不存在」を登記原因として、申出すべきであると過去の要領説明会等で行っている。

登記官の中には「不存在というのは、実際に登記されている建物が当初から存在しなかった場合であり、不適当であるとする登記官もいるが、それでは表示登記抹消原因をいかに記載すべきか問うと、回答に窮してしまうことが多い。

本来であれば物理的な原因「取壊し・焼失・倒壊・重複・合体」等を採用している。

この不存在は、所在地番における地上建物が現在「存在」しないということである。当然、曳航移転等により近隣に類似建物が存在しないことの確認は必要である。

所在地番がかけ離れている場合等においては、登記されている建物に対し所在変更登記は受理できないとの考えが主流であり、かつ、旧家屋台帳法施行時に存在しなかった「家屋番号なし」の建物と同様要領第100条の規定による申出の登記原因は、「不存在」以外はあり得ないと考えている。

ただし、相続人等承継者からの場合は、「年月日不詳取壊し」とすることが望ましいと考えている。

基本的には、登記規則第16条第15項に準じ規則第96条第1項の登記官の職権発動による表示登記に関する登記の手続きであるため、登記官は基本的に実地調査を行うべきである。また、登記官の職権発動になじまない場合は、「中止」の措置がなされるため、「取下げ・却下」等は該当しない。

※ 平成23年10月改正の「不動産の表示登記に関する登記事務取扱要領」説明会において、現在松山局は、平成17年不動産登記法改正以降、「登記法第57条・手続準則第63条による催告を行ったうえで処理を行っている。」旨説明があった。このことは、法務局の誤まった手続きによる処理を考慮することなく、民事局長通達である準則のみによる対応を行っている。これにより、新築登記の処理が遅延することも発生する場合が生じることとなる。法令に基づいて処理するのであれば、登記官において再度、家屋番号の消除を行い、その判別が一般国民によってもできるように対応すべきではないかと考える。

 登記処理について、登記情報システムにおける処理でないことから、「登記完了証」の自動発行がされないことから、旧不動産登記法における登記済みに準じ「処理済み」が必要な場合は、申請情報副本を提出することにより交付される(要確認 平成22年首席事務連絡)。

 3 古い建物に関する相続人からの表題登記申請依頼に注意

土地家屋調査士においては、現地調査を行うことから、古い建物で取り壊しされた該当建物が、登記記録では滅失登記がされないまま残存しているものについて、誤って登記用紙の流用を行うことは見られない。

しかし、司法書士業務については現地確認を行うことは処理行程に含まれていない。

そのため、市町における建物評価証明が申請依頼物件と床面積等が似かよっている場合、存在しない建物について、相続保存・相続移転がおこなわれている事案が時々見受けられる。

 4 昭和52年以前の国土調査等における、建物所在変更登記について

愛媛県内における国土調査は、地番に各種記号(十干十二支等)が冠記されていたことから、地番変更を含めて実施されている。しかしながら、当時は土地の地番変更は地籍簿により登記するものの、建物については、その所在変更資料が提出されることはなかった。

また、現在のように事務処理に対し能率機器が対応できていなかったため、建物については所在変更することなく、所有者からの申請に頼っていたものである。

特に、国土調査の成果で分筆・合筆が行われ、建物敷地は枝番が付与されているにも関わらず、親番のみで登記されていることからそのままとされたものである。

その後、登記のコンピュータ入力作業の際、判明するものについては職権で所在変更を行った建物もあるが、判明しないまま「改正不適合」として紙登記簿で残存しているものもあるので注意を要する(各地における戦災復興区画整理登記も同様)。

なお、証明書・要約書請求の際に、物件一覧表では把握されるため、窓口において乙号担当者から情報が知らされる場合がある。

 松山局においては、行政区画変更等による「建物所在変更登記(家屋番号変更含む)」については、登記官の職権登記を補助するものとして、建物図面を添付することなく処理することとされている。

 ※ 平成7年7月1日施行表示に関する登記事務取扱要領についての質疑応答集第12条関係

質疑 旧町名・旧地番等で表示されている建物について所在地番(家屋番号)変更・更正登記の場合は、建物図面はなくてもよいか。

局回答 昭和51年6月4日登記課長通知のとおり図面添付は必要ない。

 「既登記・未登録」建物の現出

「土地台帳の沿革と読み方」友次英樹著 日本加除出版P61

登記簿と家屋台帳との一元化の際、登記簿に基づき表題部の登記用紙を改製した。

建物について、既登記・未登録の事例が生じたのは、下記の理由による。

不動産登記法が明治32年6月16日施行され、建物の登記は課税、非課税を問わず申請があればすべて登記していた。一方、家屋台帳は昭和15年の家屋税法に基づき同17年に調整されたが、家屋台帳に登録された物件は課税物件に限られていた。その結果、非課税物件に登記はあっても家屋台帳には登録されていないことから、家屋台帳が新設されるまでの間に登記した非課税建物については、既登記・未登録となった。

 


第5章 地籍調査地区でも
知っておきたいこと
     
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