図根多角点の地図上の位置

(図根多角点の地図上の位置を読み取ることにより解る事)

図解法による地籍調査の成果である図根多角点の地図上の位置について,重要な要素なのですが,現在の法14条第1項地図では,あまり意味のないことのように思えるかもしれません。

しかし,図解法による地籍調査による法14条第1項地図(以下地籍図14条地図という。)では重大な意味を持ちます。

平板測量で図上表示されていたものが,新たに数値をもったような扱いを受けていますが,現実には図根多角点の座標値を平板上にプロットした後,平板測量がされています。地籍調査作業規程準則第89条で「図解法による細部図根測量は,平板の区域内のすべての計算点等を原図用紙上にプロットして行うものとする。」とあります。

この平板へのプロットが正確に出来ているか否かは,法14条第1項地図から境界点の読取りをした座標にも大きな影響を与えています。

単純にプロット誤差,読み取り誤差と一くくりにされていますが,少し詳しく考えると,一筆地の平板測量の際に,@図根多角点のプロットの誤差は,そこから観測された境界点位置全部にプロット誤差分だけ平行移動した量(ズレ)の影響があります。A境界点の観測時には,そこで単独の誤差(観測誤差・プロット誤差)が生じます。そしてB地図が出来あがった後での地図からの読み取りの時に,境界点ごとに読み取り誤差があります。

第3章の「図根多角点のプロット誤差」でも説明していますが,図根多角点が正確な位置にプロットされていなかったら,そこから観測された境界点はその分だけ平行移動した形になります。そしてその境界点を現地で観測した際の現地での誤差(観測による誤差・プロット誤差)が発生して,@,Aを合成した形で地図上に境界点の位置が表示されています。

そのような境界点の座標を読み取る際にも,Bの読取り誤差を生じることになり,最終的には@ABが合成された座標値が得られている事になります。

ABについては,その誤差を個別に判断する事は難しいのですが,@の「ズレ」については,図根多角点のプロットされた位置と実際の図根多角点の座標値を比較してやれば,@の「ズレ」による平行移動によるものの量が解ります。(※ @については第3章の「図根多角点のプロット誤差」で詳しく説明しています。)

その図根多角点から観測された境界点は全体的にその分だけ,図上での位置(座標値)は平行移動している事になります。その為には,図根多角点の印も読取る事が必要です。

図根多角点をプロットするには図郭線を利用してプロットされていますので,図郭線が正確かどうかというところまで確認する必要があります。大きな外枠の300×400の図郭線で確認すれば間違いないのでしょうが,一筆地程度であれば10cm間隔の区郭線交さ記号(トンボ)を利用して確認しても良いでしょう。

区郭線交さ記号で区切られている範囲は100.0mm四方であるべきものが,現実には99.8mmであったり100.2mmであったりします。

その歪みがどの程度であれば問題ないのか,という事にもなります。作成当時の作成過程や長い年月が経過して用紙自体の老朽化による歪みを考慮すれば,0.2〜0.3mm程度はやむを得ないのではないでしょうか。

この程度の歪みであれば,どの区郭線交さ記号が正確なのかを確認することは難しいので,四隅のトンボを利用して4点補正により修正すれば良いでしょう。

そのようにして,地図から図根多角点の印のある位置を読取ることにより,地図上の座標を知る事が出来ました。

この読み取り座標と図根多角点の地籍調査時の成果値を現実の事例で比較してみたいと思います。

「誤った復元1」では道路,河川に囲まれた広い土地六筆の土地の境界を確認する業務でしたので,通常の業務をよりも広めに読み取りを行い,周辺の図根多角点の印を全部で18点読取りました。(表−1)

読み取り値はmm単位での読み取り,実際の図根多角点の座標値はcm単位で単純比較する事は変だと思われるかもしれませんが,そのまま比較してその差を計算することにします。図根多角点の成果座標と地図からの読み取り座標との座標を比較して,最終的に座標の閉合差を表示しています。(表−1)

 (表−1) 図根多角点成果値と地図からの読取り値との比較

 

@ 閉鎖された法14条第1項地図から

の読み取り座標(日本測地系)

A 図根多角点成果(日本測地系)

  @-A 差

 

名称

X

Y

名称

X

Y

凾w

凾x

閉合差

1

T1

54,784.982

-105,664.789

KK236-2

54,784.950

-105,664.810

0.032

0.021

0.038

2

T2

54,786.584

-105,634.437

KK339-12

54,786.560

-105,634.400

0.024

-0.037

0.044

3

T3

54,820.909

-105,616.610

KK236-3

54,820.890

-105,616.630

0.019

0.020

0.028

4

T4

54,835.242

-105,631.544

KK345-12

54,835.290

-105,631.530

-0.048

-0.014

0.050

5

T5

54,855.940

-105,639.158

KK345-11

54,855.980

-105,639.120

-0.040

-0.038

0.055

6

T6

54,900.009

-105,681.957

KK14-30

54,899.940

-105,682.090

0.069

0.133

0.150

7

T7

54,891.182

-105,694.892

KK345-9

54,891.220

-105,694.900

-0.038

0.008

0.039

8

T8

54,867.102

-105,687.557

KK345-10

54,867.140

-105,687.510

-0.038

-0.047

0.060

9

T9

54,866.087

-105,720.434

KK345-7

54,866.160

-105,720.470

-0.073

0.036

0.081

10

T10

54,756.518

-105,509.139

KK339-5

54,756.490

-105,509.130

0.028

-0.009

0.029

11

T11

54,790.184

-105,555.556

KK339-10

54,790.190

-105,555.510

-0.006

-0.046

0.046

12

T12

54,791.868

-105,588.522

KK339-11

54,791.870

-105,588.480

-0.002

-0.042

0.042

13

T13

54,813.918

-105,535.524

KK339-9

54,813.910

-105,535.420

0.008

-0.104

0.104

14

T14

54,863.037

-105,586.791

KK236-4

54,863.010

-105,586.690

0.027

-0.101

0.105

15

T15

54,898.332

-105,560.637

KK236-5

54,898.350

-105,560.560

-0.018

-0.077

0.079

16

T16

54,896.942

-105,512.210

KK14-11

54,896.980

-105,512.150

-0.038

-0.060

0.071

17

T17

54,877.070

-105,506.330

KK14-10

54,877.070

-105,506.200

0.000

-0.130

0.130

18

T18

54,837.693

-105,510.948

KK339-8

54,837.700

-105,510.820

-0.007

-0.128

0.128

 
 10cm以上差のあるものが5点あり,他の13点は10cm以内に収まっています。座標の閉合差で10cmであれば,地図の縮尺は500分の1ですから,図上では0.2mmです。

一番相違しているのはKK14−30です。座標の閉合差で15cm,図上では0.3mmの相違があります。

昭和49年当時の地籍調査作業規程準則第89条第2項には,前項のプロットの方法及び誤差の限度は別表第12に定めるところによるとなっています。

 (表−2)  別表第十二 プロットの方法及び誤差の限度

図解作業の級

プロットの方法

誤差の限度

A

コオージネイトグラフによる。

±0.1mm以内

B

図郭線定規又はコオージネイトグラフによる。

±0.2mm以内

C


別表第12だけでは解りにくいので,別表第7(表−3)も参考に記載します。



 この地図は縮尺500分の1,地図の精度区分は甲3ですから,B級という扱いになりプロットの制限は0.2mm以内という事になっています。

地図の作成時からの用紙の老朽化ということを考慮すれば,問題ないものと思えます。

各境界点自体のプロットについても,観測時の条件は相違しますが,単純に考えれば,(表−1)で示されている程度の誤差が境界点をプロットする時にも個別に生じているものと思われます。

相違している事ばかりに目を取られがちなのですが,座標の閉合差が10cm以内の他の13点に注目すると,昭和49年当時に図郭定規で図郭線を引き,その図郭線から計算値に基づき人間の手により手入れされたものが,これほど正確にプロットされているという事も事実です。

正確であることが当たり前のように思っている事も,これを知ればその成果品である地図をどのように扱う必要があるのか,おのずと答えは出るでしょう。誤差とひとくくりにして判断せず,取り除けるものは,取り除く努力をする必要があります。

図解法による地籍図14条地図地区の場合,公共座標を利用するからこそ,「重ね図」の作業を意識して実行することも必要になります。


第4章 地籍図14条1項地図
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