法第14条第1項地図への手入れ

三斜法での測量を行っていた昭和40年代から昭和50年代にかけては,1筆地だけの事しか解らず,地図全体を扱うような現在の境界の復元方法などは思いもよらぬ事でした。

分筆さえ出来れば良い,法第14条第1項地図には適当に線を入れておこうと処理をしていましたが,その適当に入れた線の位置が,現在はGPS測量を使用して,普通の土地家屋調査士の手により法第14条第1項地図から直接復元されてしまいます。こんな事は当時思いもよらなかったでしょう。

しかし,測量器械の発達以外での地籍調査の1筆地の観測方法・地図の作成方法については,昭和40年当時と大きく変わることはありません。我々調査士がそのような業務方法について知らなかった,いえ,知ろうとしなかった。正しくは実行しようとはしなかったのです。専門家として怠慢と言われても仕方のない事です。

(ア)地図への手入れを考える

電子基準点を利用したGPS測量で,座標値の単純比較という点では簡単に法第14条第1項地図から復元の出来る環境が整った現在,新たな分筆処理をして地図に新たな線を入れる場合,今度はその線を他人に復元されてしまうという事を考えておく必要があります。

「線1本相違しても駄目」と昭和50年代の法務局の窓口で言われたことのある言葉です。地図と地積測量図の1筆地の形状が線1本でも相違したら地図訂正,これは地図が11で現地の境界を反映していると解釈されているようです。それはそれで正しく「時と場合」なのですが・・・。

あまりうるさく言われるので,法第14条第1項地図の縮尺が1/500,地積測量図の縮尺を1/250で作成していながら,法141項地図を拡大しただけと思われる地積測量図も提出されています。そして,嘱託登記に多くみられる地図の縮尺と地積測量図の縮尺を同一にした地籍測量図兼土地所在図があります。

地籍調査時も,今回の測量時も同一の場所を測っているのですから,相違は無いはずと言われればそれまでなのですが,現実には1/250の地積測量図だからこそ細かい形状・位置を表現する為に多少の相違が出来ます。

土地の勾配のある場所での上側にある土地と下側にある土地の境界について,石積みが境界線とされ,直線のように見えるため地籍調査時に両端の境界を結んで直線にしていた場所であっても,今回の測量時に改めて中間地点に境界杭を入れて位置を表示すると,中間の位置を追加したために,誤差範囲の曲がりが生じる場合もあります。

これは筆界を調整した訳でもなく,丁寧に境界確認をした結果であり,それを忠実に地積測量図に表示しただけのことです。

地図が現地を反映するのは勿論ですが,地積測量図こそが,11で現地を反映し,復元出来るものなのです。

地図のデータ,これを所在図データとすると,地積測量図のデータとは相違するものなのです。

所在図データは地図を手入れするためのデータで良いのです。

地積測量図データは,現地を正確に表したものあり,他の地区からも復元できる必要があります。

正確さという意味では,日本測地系での基準点使用なのか,それをTKY2JGDでパラメータ変換をかけたものなのか,世界測地系で設置された基準点を使用したのか,直接電子基準点を利用して新たな基準点を設置して観測したものなのか,その種類を明確にしておく必要があります。

地図への手入れという意味では,法141項地図は地図管理システムですから,管理された統一座標があります。しかし,これは管理システムの内部座標であり,現地に対応するものではありません。

その為に先ほどの4種類もの座標については考慮する必要はなく,今回の新設境界線の位置が所在図ではどの位置になるかということですから,従来の所在図データに合致した形状(座標)とすべきだということになります。

つまり所在図データの座標値に新設境界線は地積測量図のデータ(座標値)を使用してしまうと,所在図データの中での形状とのズレが生じてしまい。地図全体からすれば誤った位置に新設境界線の位置が記入されてしまうことになります。

正確なのは地積測量図だから,地積測量図で確認すれば良いと思われるかもしれませんが,全体を把握するには一般的には所在図データからの把握になることも事実ですので,気をつけたいものです。


第3章 地籍図14条1項地図
地区で注意すべきこと
     
前のページ  次のページ

トップへ
トップへ
戻る
戻る