一筆地の接合について

現在の法14条1項地図(以下「法14条地図」という。)については,地図のつなぎ目の無いシステムです。しかし,この地図は前述のとおり閉鎖された法14条地図(以下「閉鎖14条地図」という。)を読み取り数値化されたものです。

 したがって閉鎖14条地図の精度が向上した訳ではなく,またつなぎ目の無い地図になったからと言って,閉鎖14条地図当時に抱えていた問題が解決された訳でもありません。

 ここでは,法14条地図では問題とされないが,閉鎖14条地図が抱えていた一筆地の接合という問題を取り上げてみます。

●地図からはみ出る一筆地

閉鎖14条地図において,地図1枚の大きさに制限があり地図で表示される縦30p×横40cmの範囲は,縮尺が500分の1であれば実際の距離では150m×200mの範囲です。

この範囲内の一筆地の形状が所定の縮尺で表示されている訳です。

そのため地図の中ほどに記載されている一筆地については広大なものを除けば問題ありませんが,地図の端に記載されてしまう一筆地については,やむを得ず隣接する地図にまたがって表示されることがあります。

一筆地全部が1枚の法14条地図の中に表示されている場合は,図形そのものがそのまま現地の相似形と考えれば良いのですが,その形状の表示が地図数枚に渡る場合は,該当する複数の地図を合わせて,一筆地の形状を確認することになります。

しかし,形状,面積,境界点の位置等について,そのままという訳には行かず,ある程度の調整を要することになります。

数値法による一筆地であれば,すべての測点が座標値で表示されているため,複数の法14条地図をあわせた場合のズレについては考える必要もないし,器械により図面の作成をしているため,接合のズレについては考慮する必要はないでしょう。

しかし図解法によるものの場合は,かなり誤差を持つこともあり,いろいろな申請をするにあたって地図訂正を要求された場合もありました。

●地籍調査時の観測

図解法による場合,地籍調査時において,平板(地籍図原図)を使用して一筆地を観測するときにその一筆地が使用している平板の図郭枠の外側になった場合は,同一の土地を測っていても平板を替えて測ることになります。

一筆地を測る場合,平板(地籍図原図)には,あらかじめ30p×40cmの図郭線とその図郭線の中を10p間隔で区切る図郭内の区郭交さ記号,そして図根点についてその座標を基にプロットしています。

そして何よりも,平板自体を替えてしまいますので何らかの誤差を生じることは避ける事が出来ません。

この複数の平板に描かれた該当の一筆地の形状を作成する場合,地籍調査の図面作成時にはそれなりの規則があり,それは地籍調査作業規程準則です。

●  地籍調査作業規程準則

昭和40年代の地籍調査作業規程準則から図解法で作成された地図の接合の方法を抜き出してみます。

 (接合の方法)

第133条 接合部分における図形の水平位置の較差は,当該平板上の図形の水平位置と隣接する平板上の図形の水平位置とを仮接合写図により,比較して求めるものとする。

2 図形の水平位置の較差が図上において図解作業の級が別表第7に定めるA級の場合においては0.4ミリメートル,B級の場合にあっては0.8ミリメートル,C級の場合にあっては1.5ミリメートル以内であるときは,その水平位置を決定位置として図形を変位させなければならない。この場合において,異なる級の図解作業に基く図形の接合についての制限については,上級の級の数値によるものとする。

3 前項の規定にかかわらず,図解作業の級が別表第7に定めるB級又はC級の場合で,かつ,図形の水平位置の較差が図上において0.3ミリメートル以内であるときは,接合される地図の図解作業の級が同一であるものにあっては仮接合写図に表示された図形の水平位置を,図解作業の級が異なるものにあってはB級の地図の図形の水平位置を決定とするものとする。

 4 縮尺の異なる図形についての水平位置の較差は,小縮尺の図上で求めるものとする。

 (整 理)

第136条 図形は,一筆地測量の進行に応じて鉛筆で順次に整理し,図形その他の事項に誤りがないことを確かめた後,これに墨入れするものとする。ただし,接合部分については,接合を終わった後墨入れをするものとする。

2 前項の作業を終えたときは,地籍図の様式を定める総理府令に基き,装飾して原図を作成するものとする。

 以上,準則を読んでいただくと,記載された較差以上であれば,地図を訂正する必要があるのですが,意外に大きな較差が許されているのが解かります。

ちなみに地籍調査の図面作成のための線の幅は0.1ミリと言われています。

A級であって0.4ミリの較差があれば,平均をとって0.2ミリの位置に変位することになりますが,それはすでに線1本分相違した位置になってしまいます。

かなり大きな歪が地図作成の時点で生まれる事になります。

単純に複数の地図にまたがる一筆地の形状が,その接合部分で線1本までの相違ならば良いが線2本程度(これは程度についての考えが各人違っているでしょうが)相違すれば地図訂正の必要があると考えられるのか,明確な基準を示す事の出来る方は少ないのではないでしょうか。不動産登記事務取扱要領においても,一筆地が複数の地図で表示されている場合の接合に対する許容誤差についての記載は無く,単に法14条地図に対して面積,辺長,位置誤差等をあつかう別表第5での比較しか考慮されていません。

案外,このことについては突き詰めて考えられた事は無いのではないでしょうか。

しかし,法14条地図では既に処理されてしまいました。

本当に正しい処理がなされているのでしょうか。心配な面はあるのですが,一応処理がなされているので,それに合わせた対応が必要です。

しかし,閉鎖14条地図を確認して,地図訂正を要するものなのか,それとも法14条地図処理の時点での処理誤りなのか判断しなければなりません。


第3章 地籍図14条1項地図
地区で注意すべきこと
     
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