図根多角点亡失による新設基準点の使用で起こるズレ
図根多角点が亡失した場合,新設多角点を設置する事になります。 新設多角点は亡失した図根多角点そのものではありません。 亡失した図根多角点の近傍に設置した新設多角点をそのまま使用して境界点や亡失した図根多角点を復元したとしても,完全に同一の位置にはなりません。 これは亡失した図根多角点の作る座標系と,新設した多角点の作る座標系(位相)がわずかに相違している為です。 この座標系(位相)が相違する理由として,いろいろな事が考えられます。 同一の条件で同一多角点を観測・計算した場合。 たとえば基準点研修などで同一与点を使用し,新点2,3点を観測・計算した場合,観測者それぞれの成果数値がわずかに相違して,誰の数値を採用するのか悩む事になります。 さらに,同一与点を使用したとしても,時間の経過とともに現地の状況の変化により観測条件や,使用する測量器械の性能により同一点であっても,その数値が相違してきます。 前者の場合は数値を統一する必要が,後者の場合は新設多角点の作る座標系と亡失した図根多角点の作っていた座標系を一致させる必要があります。 そんなことは測量誤差の範疇であり,些細なことを気にする必要は無いと思われるかもしれません。 しかし,この相違が直接一筆地の境界にも影響を与えるならば,一筆地の境界を扱う専門家である調査士はその相違(ズレ)について,考える必要があります。 座標系(位相)のズレを一致させる方法として,現地に残る構造物に対する座標値比較でその差を導き出し,その量を操作することによりそのズレの調整をすることになります。
●図根多角点からの測量 申請地を観測した図根多角点が異動無く残っていれば,各観測点の読み取り座標値と図根多角点の成果座標値を使用して,図根多角点から境界点の関係は逆計算により復元可能です。 その為には視通の効く図根多角点が2つ以上必要で,申請地の近傍(50m範囲)にあるその図根多角点と後視点となった図根多角点を探します。 ここで異動の無いと思われる図根多角点を発見出来れば,ほぼ問題無く,読み取りによる境界点の座標位置(以下「読取り位置」という。)を復元することができます。 しかし,30年以上も前の図根多角点が運よく残っているとは限りません。 そこで申請地の近傍100m範囲に広げ調査してみますが,この範囲で探し出せた2つの図根多角点は,お互いに視通ができるのか否か,2つの図根多角点と申請地との位置関係を考慮すれば使用可能でしょう。 時代の経過とともに,地籍図作成当時の図根多角点は亡失していきます。この程度の範囲では,探し出せないかもしれません。捜索範囲をさらに広げ,200m〜300m範囲まで調査します。 ここで図根多角点が運よく見つかれば,お互いに視通ができるか否か,2つの図根多角点と申請地との位置関係を考慮しながら読み取り位置を一応復元することは出来ます。 しかし,探し出せた図根多角点と申請地の境界点との関係は,境界点を直接観測した図根多角点ならば問題ありませんが,そうでなければ残存していた図根多角点と申請地の読取り位置との関連については直接の関係では無いことに注意しなければなりません。
●新設多角点設置 申請地近傍の図根多角点が亡失している場合,申請地近傍の100m範囲で諦めるか,200m〜300m範囲まで図根多角点を探すのか,人それぞれですが,再び任意座標の重ね図で確認する方法に戻ることは専門家として抵抗があると思います。 近傍に残存する図根多角点2点を使用して100m以上の距離のある境界点を放射測量での復元や開放多角測量で申請地近傍に新点を設置して境界点を復元する方もいるかもしれません。 しかし自分自身の測量の精度を知るために,最低でも図根多角点3点以上を使用して結合多角測量を行いたいものです。 図根多角点同士を使用して結合多角測量を行えば1/2,000〜1/10,000程度の精度ですが,与点となった図根多角点同士が同一路線内のものでなければ,自分自身の測量の精度に関係なく満足な精度が得られない場合も多くみられます。 他路線同士での精度ということになると1/1,000〜1/3,000程度,図根多角点同士の点間距離が近い場合は1/300〜1/500程度ということもあります。宅地を観測するならば,経験上も実務上も最低限1/5000以上の精度が必要だとされており,不安を感じさせる精度です。 この場合,境界点の復元をする為に行う測量であると割り切ってしまえば,そのまま使用することが出来ますが,肝心の自分自身が行った測量の本当の精度というものが不明になる恐れがあります。 技術的な問題,そして経済的な問題もあり,自分の中で納得するものが必要です。
●国土調査法施行令別表第5 (表1) 国土調査法施行令別表第5(1筆地測量および地積測定の誤差の限度)
備考 1 精度区分とは,誤差の限度の区分をいい,その適用の基準は,国土庁長官が定める。 2 筆界点の位置誤差とは,当該筆界点のこれを決定した与点に対する位置誤差をいう。 3 Sは,筆界点間の距離をメートル単位で示した数とする。 4 aは,図解法を用いる場合において,図解作業の級がA級であるときは,0.2に,その他であるときは0.3に当該地積測量図の縮尺の分母の数を乗じて得た級とする。図解作業のA級とは,図解法による与点のプロット誤差が0.1ミリメートル以内である級をいう。 5 Fは,1筆地の地積を平方メートル単位で示した数とする。
別表第5の備考2には,「筆界点の位置誤差とは,当該筆界点のこれを決定した与点に対する位置誤差をいう」とあります。 当該筆界点のこれを決定した与点とは,地籍図で表示されている境界点を直接観測した図根多角点です。 地籍調査時,その境界点を直接測った図根多角点から,もう一度測って(復元して),別表第5の範囲にあるかどうか確認しなさいということになります。 したがって,探し出せた図根多角点が,地籍調査時に境界点を直接観測したもので無い場合は注意する必要があります。
別表第5の位置誤差については,地図の精度区分が甲3であれば平均二乗誤差15cm,公差45cmということになっており,半径45cmの円の範囲にあれば良いということです。 えらく余裕のある範囲と思われるかもしれませんが,ここでもう一つの誤差である点間誤差を考慮する必要があります。 この点間誤差について,隣接する境界点を考えた場合にいずれの境界点とも半径45cm以内にあっても,その二つの点間距離には誤差円の同一方向になければ制限をこえてしまいます。 点間距離については1つの方向だけでは無いので,最終的には平均二乗誤差の半径15cmの円の範囲内でないと誤差制限を超えると思ってよいでしょう。
このような誤差範囲の制限を考慮する場合に,図根多角点が相違する(ズレる)ことで,座標値のみの比較をした場合,別表第5の範囲から外れることもあります。 それだけで範囲外となることはあり得ないとは思いますが,別表第5でいう範囲内でやや微妙な位置にあるものが,観測に使用した図根多角点の実際の位置と亡失した図根多角点で表示される座標値が相違する為に,ズレが加算される形で範囲外になってしまう事はありえます。 通常業務でも結合多角測量を行い,1筆地周辺に連続して複数の多角点を設置して,観測多角点から隣接する多角点を超えて境界点を観測した場合,本来観測すべきであった多角点から観測すると境界点の座標値にズレが生じます。 これは,本来多角測量自体で誤差配分されているものを考慮せず,座標値を求めた為に生じたズレが主なものですが,観測した多角点の相違により何らかのズレが発生するという身近な事実です。 新設の多角点を設置した場合,与点の座標値は変わりませんが,与点を結ぶ形の新設多角点はどのようになるのか。与点と,その路線の中の多角点を同一点で,同一の条件で再度観測を行ったとしても,観測成果・座標値が一致するとは限りません。 わずかですが,測量誤差を生じます。
更に測量機械が相違すれば,ここでも相違する理由が増えることになります。 新設多角点を設置した場合,その図根多角点自体が,既存の座標値とやや相違した位置を示す座標値を持つ(ズレる)ことになることを承知していなければなりません。 詳しく説明し直すと,新設した多角点の座標値は,地籍調査時に境界点を測量した図根多角点からすると位置的にズレがある。新設多角点から観測した境界点の座標値にもそのズレは影響します。 この3つの図は,与点となった図根三角点は同一で路線の形や観測方法・観測時期は相違しますが実際に観測したものです。 路線の形やその観測方法により同一位置にある●で表示された多角点の座標値が相違しました。 図6(昭和62年頃水平距離での観測),図7(平成3年頃水平距離での観測)は,単路線でありながら与点をお互いに取付け点にしていることや,図7については路線の形に問題があります。 図8(平成7年頃観測)は,基準点測量という形で厳密網計算を行っています。 3つの方法の相違により図根三角点に一番近い同一位置の多角点でも,座標値は1〜2cm相違しました。
既設図根多角点からであっても,本来その境界点を観測すべき図根多角点から観測したもので無ければ境界点の座標値にズレが生じます
ここで生じたズレをどう考えるのか,このズレは座標系(位相)のズレとも言えるものであり,座標系(位相)を統一して(ズレを最大限消去して),別表第5の内容を吟味しなければなりません。 この座標系(位相)の統一という事がこの話のテーマです。
●任意座標と公共座標 少しまわり道になりますが,ここでいう公共座標とは厳密な意味での公共座標ではありません。 公共測量作業規程に準拠した測量の成果という意味で使用しています。 自分の測量成果と地籍調査時代の成果とを比較する事になりますから,その比較に使用する自分の測量成果が「ものさし」となります。 「ものさし」はJIS基準のような皆が認める正規で,かつ正確なものでなければなりません。 変形した自分勝手な目盛りのものさしでは,微妙な分量を正確に観測することが出来ず,先ほど記載した微妙なズレを発見することが出来ないかもしれません。 逆に地籍図の測量時には存在していなかった誤差を,新たに測量したことにより付け加えてしまうかもしれません。 自分だけの独りよがりの任意座標では,正規の基準によるものでは無いので,「ものさし」としては利用出来ないということになります。
正規の基準とは公共測量作業規程です。 公共測量作業規程に準じた測量,つまり公共測量ということになる訳です。 厳密には,公共機関からの発注が必要になりますが,「ものさし」として使用するには,そこまでの必要はないと思いますので,ここでは単純に公共測量作業規定に準じた測量を公共測量,その成果を公共座標と表現します。
任意座標と公共座標の大きな相違は,各種の補正計算を行っているか否かということでしょう。 各種の観測の制限等についても決められています。
地籍図は地籍調査の作業規程に基づいたプロの仕事です。 当時の測量器械と知識を活用して作成された地図であることに違いはありません。 調査士は,その仕事に対して尊敬の念を持って対応する必要があります。 それが,任意座標では無く公共座標を使用するということであり,観測制限についても公共測量作業規程に記載してある筒一杯の制限で満足する事では無く,自己研鑚ともいうべき制限の中で業務を行ってこそ,地籍図を取り扱うことが出来ます。
●4級基準点 そこで飛躍するかもしれませんが,「正しいものさし」を作るために新設多角点を基準点に準拠するものにしましょう。(以下「基準点」という。) 基準点であれば,正しいものさしの役割とともに確定測量に安心して使用することが出来ます。 街区基準点設置地域では,街区基準点の使用が義務づけられていますが,地籍図地区についても,もともと公共座標での測量が義務付けられています。 街区基準点設置地区と地籍図地区の違いは,精度の良い与点が近傍に存在しているか否かということでしょう。 街区基準点設置地区では街区三角点や街区多角点が設置され,申請地近傍200〜300m範囲には基準点が存在しています。 一方,地籍図地区では近傍の図根多角点は亡失していますが,図根三角点まで範囲を広げれば,かなりの確率で存在しており,安定した精度が保障されています。 申請地からの範囲は500〜800mということになります。 地籍図の図根三角点は3級基準点と同等程度とされていますので,図根三角点を与点として4級基準点を設置すれば,基準点としても信頼できるものを設置出来ます。 簡単にそのような事を発言するな,技術的な問題・経済的な問題があるとお叱りを受けるかもしれません。 しかし基準点を設置した場合,今までの任意座標の多角点とは相違して基準点の成果は累積していき,やがては近傍の自分の設置した基準点を使用して別の申請地にも利用することが出来るようになります。
現在ではGPS測量機がありますので,既設の図根三角点や1,2級基準点,国家三角点そして電子基準点を使用することは容易になっています。 申請地を囲むように200 m〜300mの範囲に3級基準点を2,3点設置して,そこから更に申請地を囲む形で4級基準点を設置すれば,信頼できる精度の良い基準点が地籍図の中に表示されている図根多角点と同等以上の配置になってきます。
●復元測量の精度と確定測量の精度 復元測量の精度と確定測量の精度を考えてみます。 復元測量の精度とは他人の成果を復元して位置を示すまでの測量に必要な精度。 確定測量の精度とは明確になった位置を,自分の責任で他人にわかるように正確な座標値を表示している事を証明する事ができる測量の精度です。 復元測量については,地籍図作成時の図根多角点を使用しての精度になりますので,もともとの図根多角点同士の精度が良くなければ,それ以上の精度を求める事は出来ません。 地籍図に表示された境界点位置を探し出すという事では問題ありませんが,この成果をそのまま自分の確定測量の成果として,地積測量図に記載出来るのでしょうか。 復元のみを考えるのでは無く,境界が確定したら,その位置を正確に表示するという確定測量の事も考えなければなりません。 復元は復元測量・確定は確定測量で別に行う。 これが理想なのですが,それこそ経済的に無理があります。 だからこそ,「正しいものさし」でもある基準点を復元測量に使用してしまおうという考えが生まれます。
●TKY2JGD 地籍図は旧日本測地系で作成されており,現在,我々は世界測地系での観測・計算を行っています。 その為,地籍図の図郭線上の区郭線交さ記号の座標値についてはTKY2JGDで変換されて表示されています。 TKY2JGDは旧日本測地系の座標値から世界測地系の座標値へと変換するもので国土地理院のホームページにも掲載されている便利な変換方法です。 国土地理院の管理する三角点の成果は,世界測地系にする為にGPS測量により直接観測されて改測されています。
しかし私が業務を行っている地区では,主要な役割を持つ4等三角点は改測されていません。 旧日本測地系での成果を世界測地系の成果とする為には,旧日本測地系で測量された成果をTKY2JGDで世界測地系の座標系に変換して使用することになります。 TKY2JGDでの変換については,調査士が業務を行う程度の小さな範囲であれば平行移動程度の変換と考えれば良いのですが,基準点を設置しようとする者にとり,厄介な問題があります。 4等三角点の旧日本測地系での成果を変換して得られた世界測地系の座標値と,実際に電子基準点から同じ4等三角点を直接観測して求めた場合,近傍の4等三角点との相対的な位置関係である点間距離は成果値とは1〜3cmの相違ですが座標値比較では10cm〜15cm程度の絶対的位置誤差ともいうべきズレが生じています。
旧日本測地系での基準点や三角点成果をTKY2JGDで世界測地系に変換した成果値を与点成果として,GPS等を使用して新設の基準点を設置すれば問題ないのですが,電子基準点を直接使用してGPS測量を行った場合の基準点成果とは相違があることになります。
実際問題として,地籍図地区で新たに基準点を設置する場合,荒れ放題になった状態の山頂の三角点や既設基準点を与点として観測を行う必要があるのか。 電子基準点とGPSを利用すれば,立地条件の良い場所に効率的に基準点を設置する事が出来るのに,直接電子基準点を利用することが出来ないか悩むところです。
本来の基準点作業では国土地理院に相談して,その方法を決めるべきですが,自分の業務,調査士業務を行う上で考えると,電子基準点を使用した測量が一般的になり,電子基準点からの直接の座標値との比較で考えられる様になっています。 そこで,電子基準点から平地にある観測のやり易い三角点を直接観測してみて,TKY2JGDによる変換とどの程度のズレを生じているか,地域性によるズレを理解しながら,電子基準点を使用した基準点を設置する方法をとりました。 地籍図の境界点の座標値については,TKY2JGDによる変換であることから,電子基準点を直接利用した基準点と境界点との関係について,地域性によるズレが加わることになります。 このズレをどのように扱うのかは,現地で測量を行う人が臨機応変に考える必要がありますが,このズレも座標系の統一にあたり考慮にいれるべきズレのひとつと考えます。
●アナログとデジタル 地籍図作成の為の三角点や図根多角点には成果座標値が存在しています。 境界点の座標値は平板測量であるために平板上で図化されてはいますが,観測成果としての座標値は存在していません。 境界点の座標値は,後日地籍図を読み取ることにより得られた座標値で,直接観測されて得られたものではありません。 この座標値が少数点第三位で表示されているとすれば,座標値を復元することにより位置精度はミリ単位で決定できるのでしょうか。 よく考えてください。 読み取り値ですから,確定した値ではありません。 少数点第三位までが表示されていてもミリ単位での測量の結果ではなく,そこには半径10cm程度の円を代表する値が表示されているのです。 この半径10cm程度の円の範囲であれば,どの値も正解なのです。 数値で受け渡された値では無く,地籍図作成当時のプロット誤差・復元の為に地籍図から読み取りを行った時の読取り誤差を含んでの範囲なのです。 大体このあたりという視覚で表示していた人間的な感覚が通じず,デジタルの表示になったばっかりに代表値のみが正解のように思われてしまいます。 座標値で表示されていても,精度そのものが上がった訳では無く,反対に視覚的な情報量が欠落したと言えます。
●ちょっと違う 図根多角点も境界点の座標値もTKY2JGDのようにズレを一括して一気に変換して求めてしまえば良いと思っている方は多いようです。 確かに一気に全体を変換してしまえば簡単ですが,実作業では地籍図が作られた過程を遡り,開きなおす作業が必要です。 法14条地図作成作業でも解ることですが,基準点設置作業と1筆地の観測作業とは一連の作業です。 基準点設置の後,その基準点を使用して1筆地の境界点を観測しています。 地籍図地区の場合は図根多角点を観測し,計算して数値を得た後,地籍図原図にプロットします。 そしてその地籍図原図を現地に持参して,その図根多角点に設置した後,境界点を平板測量しています。 図根多角点と境界点の測量は別々に行われています。
●開きなおす 多角点の成果と1筆地を観測したデータは別物です。 調査士が少し大きな現場で業務を行う場合,多角点の測量と1筆地の境界点の測量を同時に行う場合はありますが,前述のとおり地籍図や法14条1項地図作りの場合は,基準点(図根多角点)網を設置し,観測の後,一括で計算します。 その成果を使用して1筆地の境界を観測することになります。 つまり図根多角点と境界点の観測は別物なのです。 同時に観測していたとしても,先に図根多角点のデータを計算した後,境界点の観測データを別に計算します。 したがって,変換について別々に分離した形で考える必要があります。 図根多角点2つを使用して,その2つで全体の境界点を含む座標値を一気に変換する方法は,図根多角点の成果により縮小拡大・回転がかかります。 境界点の観測データは,図根多角点2つを使用し,片方を観測点,片方を後視点として使用しての観測です。 後視点を0度方向で観測して,境界点を観測したデータは,観測点の上にそのまま乗っかって計算した結果です。 境界点の観測結果は,図根多角点の成果による縮小や拡大をかける必要はありません。 1筆地を別々の図根多角点から,それぞれに観測した状態が明確であるならば,読み取り座標と図根多角点との関連で,逆計算での放射計算を行い,放射測量の結果を図根多角点の成果に,もう一度上乗せして計算すれば良いのです。
●最後に ここで述べたズレは街区基準点設置地区でも同様に存在します。 地籍図地区ではこのズレが,比較的大きくてアナログ的なものでもあるため,指摘されると簡単に理解出来ますが,街区基準点地区についてはこのズレが小さく,すべてがデジタルであるため,簡単には理解できません。 地籍図地区で亡失した図根多角点に替わる新設基準点を設置した場合の処理について,境界点を守るために基準点をいかに維持するか。 境界を守り,地図を守る為に,筆界の専門家である土地家屋調査士独自の観点から体系的に理論付けし,ズレの解消方法と共に別表第5に替わる基準を土地家屋調査士自らが構築して,街区基準点設置地区にも提言する必要があるでしょう。
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