読み取り誤差
図解法による地籍図には,観測誤差,プロット誤差そして読み取り誤差があるとされている。
地籍調査当時の平板測量による観測の誤差。その観測の結果を平板にプロットする時の誤差,そして平板(地籍図)作成後にその地図から読み取った時に起こる誤差である。
ここでは,地図が作成された後の読み取り誤差について考えてみる。
地図を読み取る方法として,各自得意な方法で読み取りをされている事と思う。
読みとる地図も,法第14条第1項地図を使用する場合は,オンラインで取得する。登記所まで出かけて取得する方法があります。
更に,閉鎖された法第14条第1項地図(以下閉鎖14条地図という。) の写しも併せて取得する。閉鎖14条地図を登記所で閲覧してフイルムにトレースして帰り,事務所で読み取る,または登記所で閉鎖14条地図の写しをもらうという方法になります。
いずれの場合であっても,読み取りに使用する器械は測量ソフトと組み合わせてデジタイザーを使用するか,スキャナーを使用されるのでしょう。直接自分の目と三角スケールにより,手動で読取ることは負担が大きいでしょう。
法第14条第1項地図であれば,250o×252oの区郭線とその座標値を利用して読み取りを行う。
閉鎖14条地図であれば,区郭内の図郭線交さ記号を利用するか,図郭枠の図郭線交さ記号を利用して読み取りを行うことになります。
この場合,自分の使用している方法であれば,ミリ単位での読み取りを何回行っても,センチ単位の誤差は発生することはあまりないでしょう。そのために,読み取り値が正確である,そのまま現地でも使用できるのだと勘違いをされている方を見受けることもあります。
しかし,地図上では同一の位置を表示しているはずが,その読み取り方法の相違により思ったより,その座標値が相違します。
ここで,実際の境界点の読取り座標を実際の業務例で確認します。
@ 町で公開されている町の読取り座標。
町において公開されている一筆地の境界点の座標です。
この座標値は国土調査の成果としての座標値ではありません。町が後日,地籍図から改めて読み取りを行った読み取り座標で,日本測地系,世界測地系を表示することが出来るようになっています。
A 閉鎖14条地図の写しから読み取りを行ったもの。
閉鎖14条地図の写しから,図郭線を利用して読み取りをおこなったもの。
B 測量会社が読み取りを行い使用している境界点の座標値。
測量会社が閉鎖14条地図をトレースして,そのトレースしたものを読み取りしたもの。
@,A,Bは,地図で表示されている境界点の位置をそれぞれの方法により地図から,その座標を読み取ったものです。(図−1)については正確な形状ではありません。
説明のために適当な縮尺としています。地図の中で比較的明確と思われる境界点の位置を@の町読み取り座標を基準として,それぞれ比較してみます。本来はCとして,法第14条第1項地図を250×252の図郭枠の座標値を利用して読み取りした座標も加えるべきかもしれませんが,今回は使用しませんでしたので省略します。
実際の現場で,たまたまこのような読み取り座標値が存在していました。
@の町の読取り値については日本測地系によるものと世界測地系の座標の二通りありますが,日本測地系によるものをパラメーター変換したものでしたので,日本測地系の座標値を比較します。Aは閉鎖14条地図からの読取りで,登記所のコピーを使用しています。B測量会社の読取りは平成12年当時のものと思われ,閉鎖14条地図をトレースして,それを読み取りしています
地図の縮尺は500分の1で(図−1)の形状を読み取っています。それぞれの境界点の読み取り座標値は(表−1)のとおりです。
(表−1) (日本測地系)
|
@
町読み取り座標
|
A
法14条地図読み取り座標
|
差
@-A
|
B
県地積測量図座標
|
差
@-B
|
差
A-B
|
|
X
|
Y
|
X
|
Y
|
凾w
|
凾x
|
X
|
Y
|
凾w
|
凾x
|
凾w
|
凾x
|
1
|
54,803.520
|
-105,637.328
|
54,803.461
|
-105,637.263
|
0.059
|
-0.065
|
54,803.570
|
-105637.267
|
-0.050
|
-0.061
|
-0.109
|
0.004
|
3
|
54,789.658
|
-105,627.073
|
54,789.633
|
-105,627.060
|
0.025
|
-0.013
|
54,789.716
|
-105626.922
|
-0.058
|
-0.151
|
-0.083
|
-0.138
|
4
|
54,803.754
|
-105,637.013
|
54,803.684
|
-105,636.989
|
0.070
|
-0.024
|
54,803.838
|
-105636.969
|
-0.084
|
-0.044
|
-0.154
|
-0.020
|
6
|
54,790.505
|
-105,610.765
|
54,790.454
|
-105,610.778
|
0.051
|
0.013
|
54,790.524
|
-105610.614
|
-0.019
|
-0.151
|
-0.070
|
-0.164
|
7
|
54,816.829
|
-105,619.509
|
54,816.760
|
-105,619.490
|
0.069
|
-0.019
|
54,816.771
|
-105619.363
|
0.058
|
-0.146
|
-0.011
|
-0.127
|
8
|
54,801.791
|
-105,603.752
|
54,801.708
|
-105,603.737
|
0.083
|
-0.015
|
54,801.854
|
-105603.749
|
-0.063
|
-0.003
|
-0.146
|
0.012
|
9
|
54,792.294
|
-105,593.502
|
54,792.403
|
-105,593.495
|
-0.109
|
-0.007
|
54,792.333
|
-105593.421
|
-0.039
|
-0.081
|
0.070
|
-0.074
|
10
|
54,820.793
|
-105,614.720
|
54,820.696
|
-105,614.672
|
0.097
|
-0.048
|
54,820.837
|
-105614.651
|
-0.044
|
-0.069
|
-0.141
|
-0.021
|
11
|
54,815.657
|
-105,607.007
|
54,815.658
|
-105,607.056
|
-0.001
|
0.049
|
54,815.666
|
-105607.038
|
-0.009
|
0.031
|
-0.008
|
-0.018
|
12
|
54,810.550
|
-105,600.660
|
54,810.507
|
-105,600.684
|
0.043
|
0.024
|
54,810.430
|
-105600.536
|
0.120
|
-0.124
|
0.077
|
-0.148
|
13
|
54,808.032
|
-105,596.154
|
54,808.236
|
-105,596.346
|
-0.204
|
0.192
|
54,808.019
|
-105596.254
|
0.013
|
0.100
|
0.217
|
-0.092
|
14
|
54,804.400
|
-105,586.719
|
54,804.483
|
-105,586.664
|
-0.083
|
-0.055
|
54,804.431
|
-105586.586
|
-0.031
|
-0.133
|
0.052
|
-0.078
|
15
|
54,799.717
|
-105,573.759
|
54,799.784
|
-105,573.792
|
-0.067
|
0.033
|
54,799.755
|
-105573.699
|
-0.038
|
-0.060
|
0.029
|
-0.093
|
16
|
54,792.715
|
-105,571.891
|
54,792.819
|
-105,571.978
|
-0.104
|
0.087
|
54,792.815
|
-105571.867
|
-0.100
|
-0.024
|
0.004
|
-0.111
|
17
|
54,810.007
|
-105,562.628
|
54,810.063
|
-105,562.642
|
-0.056
|
0.014
|
54,810.101
|
-105562.643
|
-0.094
|
0.015
|
-0.038
|
0.001
|
20
|
54,799.912
|
-105,573.197
|
54,799.922
|
-105,573.241
|
-0.010
|
0.044
|
54,799.903
|
-105573.135
|
0.009
|
-0.062
|
0.019
|
-0.106
|
21
|
54,792.658
|
-105,571.209
|
54,792.755
|
-105,571.282
|
-0.097
|
0.073
|
54,792.771
|
-105571.188
|
-0.113
|
-0.021
|
-0.016
|
-0.094
|
22
|
54,792.165
|
-105,566.684
|
54,792.253
|
-105,566.478
|
-0.088
|
-0.206
|
54,792.299
|
-105566.346
|
-0.134
|
-0.338
|
-0.046
|
-0.132
|
23
|
54,793.305
|
-105,559.912
|
54,793.385
|
-105,559.917
|
-0.080
|
0.005
|
54,793.412
|
-105559.791
|
-0.107
|
-0.121
|
-0.027
|
-0.126
|
24
|
54,795.239
|
-105,556.167
|
54,795.267
|
-105,556.311
|
-0.028
|
0.144
|
54,795.341
|
-105556.230
|
-0.102
|
0.063
|
-0.074
|
-0.081
|
25
|
54,801.090
|
-105,522.150
|
54,801.225
|
-105,522.215
|
-0.135
|
0.065
|
54,801.188
|
-105522.154
|
-0.098
|
0.004
|
0.037
|
-0.061
|
26
|
54,805.460
|
-105,521.716
|
54,805.512
|
-105,521.740
|
-0.052
|
0.024
|
54,805.511
|
-105521.707
|
-0.051
|
-0.009
|
0.001
|
-0.033
|
27
|
54,803.676
|
-105,530.818
|
54,803.765
|
-105,530.855
|
-0.089
|
0.037
|
54,803.795
|
-105530.905
|
-0.119
|
0.087
|
-0.030
|
0.050
|
28
|
54,805.512
|
-105,550.803
|
54,805.555
|
-105,550.772
|
-0.043
|
-0.031
|
54,805.585
|
-105550.737
|
-0.073
|
-0.066
|
-0.030
|
-0.035
|
29
|
54,797.011
|
-105,550.813
|
54,797.069
|
-105,550.733
|
-0.058
|
-0.080
|
54,797.091
|
-10,550.953
|
-0.080
|
0.140
|
-0.022
|
0.220
|
30
|
54,802.868
|
-105,527.6803
|
54,802.930
|
-105,527.722
|
-0.062
|
0.042
|
54,802.982
|
-10,527.770
|
-0.114
|
0.090
|
-0.052
|
0.048
|
以外にその差が大きいのですが,それぞれの凾wと凾xを使用しての閉合差√(凾w2+凾x2)が現地で実際の差となって現れる距離です。
13の位置については閉合差が@−Aが0.280m,@−Bが0.101 m,A−Bが0.236 m,
22の位置については閉合差が@−Aが0.224 m,@−Bが0.364 m,A−Bが0.140 m
と大きな差が生じています。
これは(図−1)でもわかるように地図上では緩やかな曲がりの位置であり,読み取りをするにも少し迷いの出るような位置でやむを得ないものと思われます。
その他の位置については0.008 mから0.178
mまでにあり,ほとんどの位置が0.05 mから0.16
mまでの範囲に納まっています。これは地図上では0.1ミリから0.3ミリ程度の誤差ということになります。
@の町読み取り座標とAの法14条地図読み取り座標そしてBの測量会社読み取り座標については,読み取り条件の相違から多少の誤差があります。お互いに何も考慮せず,自分の業務をおこなっている通常の状態で読み取りを行ったものです。これらは,すべて正しい値と考えて良いと思います。
自分自身の読取り方法により,数回読み取りを行って,それが誤差の範囲にあるとして満足するのではなく,現在においてはこれを読み取り誤差と考えても良いと思います。
現実にこのような現場に遭遇することは珍しいと思いますが,単純に町の読取り座標と自分が閉鎖14条地図から読み取った座標値のどちらかを使用するのか迷う事は多いでしょう。
町の読取り座標を使用するにしても,自分で読み取りを行い,その座標値をチェックしておく必要があります。
第3章 地籍図14条1項地図
地区で注意すべきこと
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