図根多角点亡失とプロット誤差

(新設多角点と亡失図根多角点のプロット誤差による境界点への影響) 

前項で図根多角点のプロット誤差による境界点への影響について説明しました。前項では地籍調査時の図根多角点が現地で異動なく残っている事を前提に説明しました。

現実には図解法による地籍調査は昭和60年代までに作成されており,30年以上が経過しようとしています。

申請地を観測した図根多角点も亡失が目立ちます。そのような状況であっても,地籍調査の成果はもう使用する事が出来ないと諦める必要もありません。前項の現地で説明を追加することにします。

前項で図根多角点の実際の座標値の示す点線位置と座標平面上で示される実線の位置については説明をしました。

図根多角点と境界点の相対的な位置関係は問題ありませんが,図根多角点から観測された境界点の位置について,その図根多角点の実際の座標値とプロットされた位置の相違する分だけ,境界点の地図上位置から読み取った座標値については相違している事も説明しました。

それでは図根多角点が亡失していればどうすれば良いのか。

(図−1)は,現地の一筆地と地籍調査時の図根多角点路線を表示しています。

1筆地の観測は,図根多角点AA21―5から行っていますが,現地を調査したところAA21−5は亡失していました。幸い,同一路線のAA21−3,AA21−4,AA21−6,AA21−7については異常なく現地に残っていました。

この場合は,新設多角点を設置する事になります。新設多角点を仮にNAA21−5とすると,前項の図根多角点のプロット誤差による相違についてはどうなるのでしょうか。



亡失した図根多角点AA21−5の実際の座標値は地籍調査の成果です。地図上で表示されている位置を読み取れば地図上の座標値が判明するので,その比較をすれば良いことになります。

前項と同じことになりますが,境界点K1,K2,K3,K4については亡失した図根多角点AA21−5の実際の座標値と地図で表示されている位置の違いだけ,境界点の地図上での位置,つまり読み取り座標は実際と相違しており,図根多角点AA21−5の地図上で表示されている位置を読み取ることにより判明します。

(表−1)

 

@ 図根多角点成果(実線表示)

A法14条第1項地図からの

読み取り座標(点線表示)

B

  @-A 差

 

名称

X

Y

名称

X

Y

凾w

凾x

閉合差

1

AA21-5

40004.44

-89982.56

T1

40004.572

-89982.534

-0.132

-0.026

0.135

2

AA21-6

40029.59

-89925.67

T2

40029.496

-89925.621

-0.094

-0.049

0.106

 ただ,ここではプロット誤差という事ですから,図根多角点の実際の座標値と読み取り座標を比較してやれば,境界点に与えていた影響はそのままなのです。

図根多角点AK21−5のプロット誤差は凾w=−0.132,凾x=−0.026であり,境界点K1,K2,K3,K4にもそのまま影響しますので,プロット誤差をそのまま補正量として加えます。 

 (表−2)

A法14条地図読み取り座標

補正量

読み取り座標修正値

名称

X

Y

凾w

凾x

X

Y

1

40034.651

-89988.073

-0.132

-0.026

40034.519

-89988.099

2

40042.818

-89972.144

-0.132

-0.026

40042.686

-89972.170

3

40021.652

-89961.187

-0.132

-0.026

40021.520

-89961.213

4

40013.433

-89977.335

-0.132

-0.026

40013.301

-89977.309

 図根多角点のプロット誤差で境界点の座標がその分だけ相違していましたので,境界点の読み取り座標を修正しました。

後は現地で,この座標を使用して復元という順番になる訳ですが,現地には復元の為にTSを据え付ける図根多角点がありません。

そこで,亡失した図根多角点に代わる新設多角点を設置しなければなりません。

どのような設置方法が最適なのか。それは新設多角点から座標値を使用して,正確に亡失図根多角点の位置を復元出来るような多角点が一番良い訳です。そうすれば新設多角点と復元を行う境界点の関係は,亡失図根多角点と境界点との関係と同一になります。このような関係を本書では「同一の座標系」という表現で統一しています。

このような事から,新設多角点の設置方法については,与点の誤差配布を行う必要もあり,最低でも結合トラバース測量を実施すべきです。新たに実施した測量の精度を知り,誤差の配布状況を確認する事が重要になります。

開放トラバース測量では,誤差の配布も出来ず,測量の精度を知る事もできない,最終的に「同一の座標系」にならないので問題があります。それではと新設多角点を設置せず,すべての視通がきくから,50メートル以上の距離を近傍に残る図根多角点から一気に観測する事も「同一の座標系」にならず問題です。

ここで,「同一の座標系」を正確に表現すれば,「亡失した図根多角点の座標系に限りなく同一に近い座標系にしたもの」という事になります。 

本項では,亡失図根多角点が1点で,近傍にある他の図根多角点は異動なく,現存しているという非常に条件の良い時だけで考えました。実際は近傍の図根多角点がすべて亡失しているという状態になっています。その時の処理については別項「図根多角点が亡失した場合の新設多角点によるズレ」等で詳しく説明します。

 どのような場合でも,地籍調査による図根多角点の成果座標値の交付を受け,地図上の図根多角点の位置から座標値を読み取り,比較することによりプロット誤差を知る事が出来ます。境界点の読み取り値をそのまま利用せずに,そのプロット誤差を補正量として使用して境界点の座標を修正すれば,公共座標での処理をより正確なものにすることが出来ます。これは,信頼性を上乗せするための基本的な大切な作業です。

申請地近傍の図根多角点を法14条第1項地図から,その図根多角点の印を追加で読み取りすれば良く,簡単な作業ですので是非実施してください。

また,平板で観測して境界点をプロットする際にも,このような誤差が発生しているという事を頭の中に入れておいてほしいものです。


第3章 地籍図14条1項地図
地区で注意すべきこと
     
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