図根多角点のプロット誤差を考える

(図根多角点のプロット誤差による境界点への影響)

 既提出の地籍測量図の復元を行う場合,地積測量図に準拠点や基準点の記載があり,境界点にもすべて座標値の記載のある数値法によるものであれば,その位置にTSを据え付けて,地積測量図に記載された境界点の座標値を逆打ちすることにより,境界点の復元が簡単に出来ます。当然,基準点なり準拠点の点間距離や地積測量図に記載された境界点の不動標識と復元位置が一致しているかの点検は必要ですがそう迷う事なく,境界点の復元が出来ます。

地籍調査の場合,申請地を観測した図根多角点と後視点とした図根多角点が現地に残っていれば,境界点については法14条第1項地図や市町村の読取り座標を利用して,同様の復元をされていると思われます。

図解法による地籍調査の場合,図根多角点を観測して計算した後,平板にその座標値をプロットして,そのプロットされた位置を基にして境界点が観測され,結果的に平板上(座標平面上)に表示された境界位置の座標を読み取る事で境界点の座標値を得ています。

現地に一筆地を観測した図根多角点が異動なく,残っている場合について考えてみます。

図根多角点AA21-5,AA21-6は本来,点線で表示されるべき位置なのですが,プロット誤差で実線表示の位置にプロットされてしまった。

その結果,実際の境界点の位置を平板で観測した際には,境界点K1,K2,K3,K4の境界は本来の点線の位置ではなく,実線の位置に表示されてしまいます。実線で表示されている境界点と図根多角点の位置関係と点線で表示されている境界点と図根多角点の位置関係は同じものですが,座標平面ではその表示されている位置が相違する事になります。これは,図根多角点のプロット誤差がそのまま境界点の位置に反映されたためです。



市町村役場で,地籍調査の図根多角点AA21−5,AA21−6の座標値の交付を受けて,境界点の読取り座標を使用した場合,図根多角点は点線の位置を使用し,境界点は実線の位置の座標値を使用している事になります。

先ほどの点線と点線,実線と実線の位置関係ではなく点線と実線の相互間での位置関係になっています。

これを誤差として扱う事もできますが,ある程度排除する事は可能です。境界点の読取り座標については,地図からの読取り座標のみなので真値と比較できませんが,図根多角点には地籍調査時の成果があります。

ここで,現地に残る図根多角点は異動がありませんので,(図―1)の法14条1項地図から図根多角点の表示であるↀの位置を読み取り,座標値を得ると,(表―1)のようになりました。 

(表―1)

 

@ 図根多角点成果(点線表示)

A法14条第1項地図からの

読み取り座標(実線表示)

B

  @-A 差

 

名称

X

Y

名称

X

Y

凾w

凾x

閉合差

1

AA21-5

40004.44

-89982.56

T1

40004.572

-89982.534

-0.132

-0.026

0.135

2

AA21-6

40029.59

-89925.67

T2

40029.496

-89925.621

-0.094

-0.049

0.106

  図根多角点AA21―5の実際の値と読み取り位置の座標値との間には,Bのように若干の相違がありました。その差は凾w=−0.132,凾x=−0.026であり,実際の位置は南側にあるようです。そこで,一筆地を観測したAA21―5のプロット誤差を,そのまま一筆地の読取り境界点の座標値に補正量として加えると,一筆地の境界点座標はほぼ南側に全体が異動します。(表−2) 

   (表―2)

A法14条地図読み取り座標

補正量

読み取り座標修正値

名称

X

Y

凾w

凾x

X

Y

A1

40034.651

-89988.073

-0.132

-0.026

40034.519

-89988.099

A2

40042.818

-89972.144

-0.132

-0.026

40042.686

-89972.170

A3

40021.652

-89961.187

-0.132

-0.026

40021.520

89961.213

A4

40013.433

-89977.335

-0.132

-0.026

40013.301

89977.361

 当然,境界点を平板で観測した時の観測誤差や,それをプロットする際にも同様の誤差がありますので,誤差を全部排除出来た訳ではありません。図根多角点AA21―5を正確にプロット出来なかった為に,その図根多角点から観測した境界点に与えた誤差の大部分を修正する事が出来たものと思われます。厳密に考えれば,図根多角点AA21−5だけではなく,AA21−6についてもプロット誤差を考慮しなくてはなりません。ここでは,同一方向にほぼ同様の誤差が出ていますので,AA21-5のみで計算された補正量で単純に処理しても差し支えないでしょう。

逆に図根多角点のプロット誤差が現地の実際の距離で15cmから30cm(図上距離で0.3o)以上あるような大きなもの,地図上に表示された複数の図根多角点を確認してみて,それぞれのプロット誤差について,規則性がなくバラつきがあるような場合には,このような修正は行わない方が良いのかもしれません。この判断は現実に業務にあたる方によるものが一番でしょう。

1筆地または複数の土地を復元するような場合,複数の図根多角点から観測を行っている場合も多いものです。

1筆地にしても,土地の表側と裏手では,異なる図根多角点から観測しており,お互いの図根多角点は路線も相違して関連がないという場合もあります。

このような場合には,先ほどと同様にして,該当の図根多角点からから観測しているものについては,その図根多角点のプロット誤差をその観測点から観測した境界点に補正してやれば良い事になります。したがって,境界点はどの図根多角点から観測されたのかを見極める事も重要になります。

 

 (図−2)の地図上の図根多角点AB23-8とAB23-9の図根多角点の位置を読み取ります。

(表−3)

 

@ 図根多角点成果(実線表示)

A法14条第1項地図からの

読み取り座標(点線表示)

B

  @-A 差

 

名称

X

Y

名称

X

Y

凾w

凾x

閉合差

1

AA21-5

40004.44

-89982.56

T1

40004.572

-89982.534

-0.132

-0.026

0.135

2

AA21-6

40029.59

-89925.67

T2

40029.496

-89925.621

-0.094

-0.049

0.106

3

AB23-8

40065.32

-89948.00

T3

40065.402

-89947.983

-0.082

-0.017

0.084

4

AB23-9

40039.78

-89997.64

T4

40039.902

-89997.697

-0.122

-0.057

0.135

(図−2)の場合で,図根多角点AA21−5からはK4,K3の境界点を,図根多角点AB23−8からはK1,K2の境界点を観測していることがわかっている場合は,それぞれに分割して先程と同様の処理をします。

図根多角点AK21−5のプロット誤差は凾w=−0.134,凾x=−0.033,図根多角点AB23−8のプロット誤差は凾w=−0.082,凾x=−0.017です。

図根多角点AK21−5から観測した境界点K4,K3,図根多角点AB23−8から観測した境界点K1,K2にそれぞれの補正量を加えます。

 (表−4)

A法14条地図読み取り座標

補正量

読み取り座標修正値

名称

X

Y

凾w

凾x

X

Y

A1

40034.651

-89988.073

-0.132

-0.026

40034.519

-89988.099

A2

40042.818

-89972.144

-0.132

-0.026

40042.686

-89972.170

A3

40021.652

-89961.187

-0.082

-0.017

40021.570

-89961.204

A4

40013.433

-89977.335

-0.082

-0.017

40013.351

-89977.520

 

あまりにも,細かな修正で大局が見えていないとお叱りを受けそうな処理です。

平板を使用していた時代や任意座標で測量をしていた時代では,観測点と境界点だけの位置関係を考慮すれば良かったのですが,座標平面上で処理を行うために公共座標で業務を行うために生じた誤差です。観測点を換えれば異なる誤差が生じる。観測点の座標が相違していれば,そこから観測した境界点の座標値にすべて影響を与えるというごく当たり前の事の説明です。

このような処理の後,現地の復元を行えば境界点の位置誤差がより少なくなります。


第3章 地籍図14条1項地図
地区で注意すべきこと
     
前のページ  次のページ

トップへ
トップへ
戻る
戻る