昭和40年代の図解法による地籍調査・座標平面
日本全国に国土地理院により一,二,三等三角点が設置され,その位置は緯度・経度により地球上
の位置が示されています。
国土調査による地図(地籍図)を作成するにあたっては,球面を平面として扱う平面直角座標系で
の表示にします。
平面直角座標系はガウス・クリューゲルの等角投影法が用いられています。この投影法では角度が
地表の角度と等しくなりますが,距離が中央子午線から離れるに従って増大されます。中央子午線か
ら東西90qの地点で子午線上の距離と地表と図面上の距離が等しくなるようにしています。1つの
座標系における距離の変化率を1万分の1以内とするように,日本全国を19の座標系に分けています。
1つの座標系は,原則として地域別で,原点から東西130q以上にならないように設定してあります。
四国は,第W系ということになり,四万十川の河口近くの太平洋上に原点(0.000,0.000)があり
ます。この原点から南北をX軸,東西をY軸として四国全体を一つの大きな座標平面として表示しま
す。一つの町の全域を測るためにはまだ三角点の間隔が広すぎます。そこでそれを補足するための
三角点が必要になります。
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四等三角点
昭和26年の国土調査法により国土調査
を行うために今までの一,二,三等三角
点の外に,新たに約1.5kmに1点とな
る様に四等三角点が設置されました。
一,二,三等三角点は基本三角点。
四等三角点は基準三角点と言われていま
す。
ここまでの作業は専門的な知識と技術
が必要であり国土地理院により実施され
ています。
下図の四等三角点の「点の記」をみ
てもわかるように,この地区の四等三
角点は昭和30年に設置されていること
がわかります。 |
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地籍図根三角点
三角点が整備された後,国土調査の実施機関である市町村が実際に調査や測量を行う事になるのですが
これらの作業は,市町村の国土調査担当職員が直接行うか,作業機関として測量業者に依頼して地籍図根
三角点を設置されます。
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地籍図根三角点は,基本・基準三角点を基にして設置
されますが,その測量方法については時代により変わっ
ています。
地籍調査作業規程準則(詳しくは基準点測量作業規程
準則)により実施されます。この基準点測量作業規程準
則に記載されていない事項については建設省(国土交通
省)公共測量作業規程に基づいて処理されています。
この地籍図根三角点の配置は,500mから800m程度に
配置され,国土調査実施地域の地図の骨格がここで作られ
て行きます。
図根三角点の多くは御影石で作られ,同様の素材で作ら
れた国の三角点よりも小ぶりではありますが,国土調査の
基本になる点であり,かなり強固に設置されています。
また,地籍図根三角点の計算・観測方法については現在
であればGPS測量やTSを使用して距離と角度を観測す
る結合多角方式による観測ですが,昭和40年代当時の地
籍図根三角点の観測については,角度だけを観測による
三角測量によるものです。
図根多角点
設置された図根三角点や基本・基準三角点を基に,三角
点を3個ないし4個使用して,出発する三角点から50m
程度を目安に30m以下にならないようにトランシット
鋼巻尺等(現在であればTS)を使用して到達する三角
点まで順次角度と距離を観測して,それを方向角・平面
距離にそれぞれ変換して計算します。
多角測量を行った結果,到達した三角点について計算に
よる公共座標値と,その三角点自体の成果としての公共
座標値との間に相違(誤差)が生じることになります。
この誤差が 定められた許容範囲内であれば,誤差を
多角測量で順次観測を行った点(図根多角点)にそれぞ
れ配分して,最終的な図根多角点の公共座標値を決定し
ます。
これを結合多角測量といいます。
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当然,この図根多角点には選点計画に基づき,あらかじめ鋲を打ち込んでおくか,木杭,プラスチック杭
コンクリート杭等何らかの目印を設置してあります。
その観測点にコンクリート杭のような恒久的なものが入っている場合地籍図にはↀ印の下に石と記載されます。
この図根多角点は,見通しとの兼ね合いもありますが,後々一筆地がそこから測れる様に考慮して設置していきます。
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現地での図根多角点
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図根多角点の大きさ
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設置された図根多角点から,国土調査実施区域の一筆地全部がそれぞれに観測できるよう形
よく配置していかなければなりません。そのためこの多角測量を網の目のように張り巡らされ
ています。
路 線
三角点から他の三角点まで,三角点から交点まで,交点から他の交点にいたる1つの多角測量
を路線と呼びこの路線は1次路線と呼ばれます。
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この1次路線で作成された図根多角点
や図根三角点を 3点から4点使用して
更に多角測量を行った路線を2次路線と
呼びます。
こうして全体でかなりの数の路線が作
成され国土調査実施区域内のほとんどの
一筆地をこうやって作成された1次路線
の図根多角点か2次路線,さらに3次路
線の図根多角点によって測る事が出来る
ようになります。
この路線の全部を記載したものが網図
とよばれるものです。
この網図をみることにより,路線の形
や組み合わせについて知ることが出来ます。
この組み合わせや形を上手に行わないと
後日,図根多角点を使用して観測を行う場
合,同一の境界点 |
を測った場合でもこちらの図根多角点から測った場合と他方の違った路線の図根多角点から
測った場合でかなりの差を持つ場合があり境界点の値は境界点を観測した図根多角点に
より決定されていることを知っておいてください。
また,同一の町であっても地籍調査の実施年度が相違しているため隣接している地域であ
っても,全く路線のつながりが無い場合もありますので注意してください。 |
一筆地の境界の調査
図根三角点や図根多角点の観測・計算と平行して旧土地台帳附属図面を基にして素図を作成し
隣接地との位置関係による一筆地の所在位置,所有者,境界,現況の地目の確認等を行ってい
きます。
この場合の調査については市町村職員が依頼を受けた測量会社とともに,土地所有者,隣接地
土地所有者等と土地の境界の確認をしていきます。
その境界の確認方法にはいろいろあり,境界の場所に竹等の標識を立てておくような指導があっ
たり直接土地所有者が立ち会ったり,不在地主で所有者が立ち会えない場合は地元の協力員等が
立ち会ったりして順次境界を確認して,その内容を素図に書き込み,後日の一筆地の測量資料と
しました。
この境界確認方法について,現在からいえば問題があり,個人間の私的な土地交換をおこなった
結果の所有権境界が境界とされたもの,公図に誤りがあったが公図の地図訂正が行われず正しい境
界(筆界)の表示がされたもの。また,里道・水路の付け替え処理が未処理のものや,道路の拡幅
の未登記分については国土調査の処理を待って現況主義でそのまま筆界として確認がなされたもの
があることも事実です。
しかし,全部の境界が相違してしまった訳ではなく,正しい境界(筆界)の中に,一部の所有権
境界が混ざってしまったと考えるべきでしょう。
当時の社会情勢や国土調査に対する認識の相違からある程度やむを得ない事情だったかもしれ
ません。現在,調査士が境界の確認を行う場合にはこれらのことを知って処理する必要がありま
す。
地図の中の地番が11-2+13+15のように複数表示されているものがあります。これは筆界未定
地として処理されたもので、国土調査の立会い時にお互いの境界が決定されず,1筆地の形状(境界)
を明示出来なかったものです。
この筆界未定地の土地の境界を特定する場合は,国土調査が実施されていない区域としての処理
つまり公図による処理の後,地図訂正を行うことになりますので注意してください。
国土調査で職権により地積更正,合筆,分筆,地目変更が行われます。地積更正については「B
錯誤国土調査による成果」合筆については他の地番の土地を一緒にしたものについては登記簿の登記
の目的欄に「何番,何番を合筆 国土調査による成果」というふうに記載され,吸収された地番は
「何番に合筆国土調査による成果」と記載されて閉鎖登記簿に綴られています。
分筆は「@B何番何,何番何に分筆 国土調査による成果」,地目変更は「A昭和何年何月何日
変更国土調査による成果」と記載されます。
しかし現地確認不能地の場合は登記簿の処理を要せず,そのままの記載になっていますので調査
する際には注意を要します。
一筆地の観測方法,図解法
図根三角点や図根多角点が設置され,一筆地の調査資料として素図も作成されて一筆地を測る
ための準備がなされました。
ここで一筆地を測る方法について,地図の要求される精度と時代の流れ(測量機械の進歩)に
ともない2種類の方法がとられています。
国土調査が開始されてから比較的古い時代では,図根三角点や図根多角点まではトランシット
と鋼巻尺で計算をして,一筆地の測量においては図根多角点を使用しながら,平板を図根多角点
の位置に据え付けて一筆地の形状を規定の縮尺でそのまま一筆地の形状を作成していく方法。
これを図解法といいます。
一つの平板の30p×40pがあらかじめどの位置の公共座標を表示するのか,詳しい定めにつ
いては省略しますが地籍図の図殻枠の左下と右上に記載された座標値は省略した規則により決定
されております。
使用する平板は大きさ縦40cm,横49.5cm,材質としてアルミケント紙(薄く伸ばしたアルミ
板をケント紙で挟み,貼り合わせて伸縮のない強靭な用紙としたもの)を使用して現地で使用する
前にあらかじめオージネイトグラフ(もしくは手作業)で30p×40pの図郭枠や,その内部を
10p区切りに表示する区郭線交さ記号を作成し,公共座標により図根三角点や図根多角点の位置
を縮尺に応じてプロットしておきます。(これらはいずれも赤字で記載されています)
現地の図根多角点の位置に平板で表示されたその図根多角点の位置を一致させて平板の据付を行
い後視点となる図根多角点にポールを立て,アリダードで視準して平板上の後視点との方向を
合致させることにより,結果的に一筆地の平板上の形状は,その境界の公共座標値を計算してから
平板にプロットしたものと結果が同様になります。
平板による一筆地の観測
後に述べる数値法であれば,前述のとおり一筆地の観測が終了すれば,後はほとんどの工程が
機械化されていて説明の必要は無いと思われますが,図解法(平板測量)によるものは最近使用
されず,若い調査士さんには経験の無い方も多いと思われるので,先ほどの図解法の項目と説明
が重複しますが少し詳しく説明したいと思います。
その平板(地籍図原図)を一筆地のある現場に持参して,平板を図根多角点の位置に据え
付けます。
この現地の図根多角点の位置と平板上の図根多角点の位置を合わせ,もう一方の図根多角点にも
現地の図根多角点にポールを立て,その方向に平板上の後視点をあわせた後平板を固定して,放射
線状に一筆地の境界の方向とテープ等により距離をそれぞれ観測して,平板上の放射線上の方向に
定められた縮尺の距離をプロットすることで縮図された境界が表示されることになります。
このようにして一筆地の形状を直接作成していきます。(地籍図原図を良くみると,一筆地の
境界点観測時に測量針を立てた跡が解ります。)
平板測量では一筆地の縮尺500分の1であれば距離の観測については5p単位で計測されました。
一筆地の形状を図示する場合0.1oが限度ともいえ,これは現地の距離では5pとなりますが
これ以上の精度でプロットすることは不可能と言えます。
形状の作成時には,それぞれの制限があり,実際の辺長との差,図根多角点からの位置の誤差等
が定められています。
不動産登記法第14条第1項地図
以上から地籍図原図と地籍簿が完成しまた。
形状や面積そして一筆地の辺長がそれぞれに誤差範囲内であれば,国土交通省大臣の認証の後
副図(原図の写しのため図郭枠,図根多角点の丸印が黒色表示である)が不動産登記法第14条
第1項地図(以下,法14条地図という。)として法務局に備え付けられ,地籍簿は登記簿の面積
として持ち込まれます。
地籍図原図については,図根三角点成果簿,図根多角点成果簿,網図とともに国土調査の計画
機関(市町村)に保存されます。
地図訂正
いろいろと説明してきましたが,法14条地図となった後,国土調査の誤りがあった場合の処理
方法は次のとおりです。
国土調査に誤りがある場合は地図訂正が出来ます。
国土調査を実施担当機関がまだ解散していない場合,その担当機関に申し出て「国土調査による
地図修正申し出」を行うこともできます。
国土調査担当機関が解散した場合は,地方税法第381条第7項により地図訂正の申し出を行う
ことになります。いずれも職権で行う申し出ですが,個人からも地図訂正の申し出を行うことが
出来ます。