序文にかえて


                                         土地家屋調査士 橋  宝

ある研修懇親会の席で「“伊予の調査士トッポ話”は,調査士の文化ですよ。・・。」といわれた。お話しをしてくれたご仁は,愛媛の調査士では知らない人はいないだろうと思われる,大唐正秀氏(元松山地方法務局長)である。

あの話から今日まで,“伊予の調査士の文化”といわれても何が文化なのだろうかと,事あるごとに,私の“灰色の脳みそ”にひっかかるものがあった。今思えばその大唐さんをして“伊予の調査士文化”と言わしめた実体こそが,一調査士が試行錯誤して悩んだことを包み隠さず(恥ずかしげもなく),自分の言葉で表したことにあるのだろう,と思う。

境界鑑定の分野においては,示された鑑定事項において特に断りがない以上求めるものは筆界であるし,筆界特定においても,調査員が調査する境界は,制度として筆界の調査である。私は《ここに書かれている事が》,訴訟などにおいて,図解法による法14条1項地図地区で国土調査時に確認された境界が紛争当事者間に争いがない場合や,当事者に不服があったとしても,他に客観的な資料が見つからなければ,筆界探索の根拠ともなり,此処に書かれてある調査手順なり方式が,法務局・裁判所などの筆界についての考え方に一定の評価をもたらすことになるものと信じている。

そして,人口集中地区では,街区基準点の使用が義務付けられて3年が経過した。愛媛県土地家屋調査士会会員の街区基準点を利用した測量は,“一定の基準の中で調査士会が管理し統一的に実施”できていると思われる。このことは街区基準点を管理している自治体からも評価を受けていると聞いている。この素早い適応と実施会員全体の底上げには,愛媛会の各地での,故・指方正廣先生を招聘した研修をはじめとする各種の“基準点測量研修”によるところが非常に大きく,それを支えられた有志の調査士各位には深い敬意を表するものです。

そうして迎えた今,調査士制度変革の時期にこそ“えひめ調査士の文化”である「伊予の調査士トッポ話(1)(2)(3)」などをひも解いて,そこに描かれている20年にあまる田舎調査士の四苦八苦しながらの日常業務を “前向きに読み解く”ことも新たな調査士の一歩のためには必要なことと思う。

今回の本は,一調査士がそのトッポ時代から現在の業務のあり方まで変化を続けた技術編の集大成を記したものです。

新人の調査士は勿論,ベテランの調査士にも知っておいてほしいことを著者の目で表わしたものです。



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