大洲支部 測量研修3
         (平成21年5月16日)


        (高度角補正)


   19時40分、参加者は電卓での計算で頭がガンガンしているころ、高度角
  補正計算の説明の開始となった。


   渡部氏が講師の研修では何があるのか分からない。
   前もっての段取りなんか教えてくれていない。


   今回の測量研修は基礎的な事をやるとは言っても、基準点測量の研修だ
  から、高度角の補正計算の説明が必要であろうとざっとした原稿は作ったの
  だが、どの程度の説明で良いのか分からない。


   時間配分さえも分からない、やっと先ほど1時間程度という指示があったの
  だが、参加者は電卓の計算をいやというほど行っている。


   実際、私だって電卓の計算で頭ががんがんしている。
   更にはお腹がすいている時間帯である。
   十分言い訳をしたところで当日使用した原稿を利用して改めて説明したい。

   現況を測るような通常の測量では、器械高や目標高も測らず、距離観測さ
  えも水平距離だけの場合が多いかもしれない。
   しかし、このような測量をしていると多くの情報が無駄になってしまっている。


     


   器械高、目標高を測りTSで水平角・鉛直角を観測し、斜距離を観測すれば
  目標地点に対する比高を計算することが出来ます。





   黒色の点線矢印に注目していただくと、器械で観測した地点(観測点)から
  視準した相手(視準点)の高さの差が計算できます。
  高さの差を比高といいます。


   点線の矢印に沿って計算式をつくると


   比高 = 器械の高さ + 斜距離×sin鉛直角 − 目標の高さ


   さらに、観測点の標高H1が解っていれば、目標点の標高も知ることが出来
  ます。
     H2 = H1 + 比高


   それぞれの地点での標高が解れば、それぞれの標高の差により断面の形状
  も取れ、境界点の高さが明確であれば水平位置と高低差により、簡単に異動し
  ているかどうかも知ることができます。


   通常の測量で、このように器械の高さや目標の高さ、鉛直角の観測を行って
  いれば、基準点測量を行うについても、それほど変わったことがあるわけでは
  ありません。





   基準点測量は、必ず点検を行い1つの観測データではなく、複数の観測データ
  の平均を使用します。


   各種の補正については、別の研修に譲ることとして、ここでは高度角補正(鉛
  直角の補正)についてのみ考えてみたいと思います。


   まず、基準点観測といえども、通常のトラバース測量と変わることはありませ
  ん。


   基準点測量の場合、距離の観測データは一方向のみで反対の方向からの観
  測データは使用しません。


   器械についてはi、目標についてはfとして簡略に表示することとして、距離観
  測データを使用する側の添え字を1、距離の観測データを使用しなかった側の
  添え字を2とします。


   器械点であればi1、i2、目標点であればf1、f2、と表現します。
   この添え字の関係については、この距離を観測した関係の基準点間では、常
  にそのように表示されます。


   上図で左側の観測点がTA、右側の目標点がTBという名称の場合で器械が
  TAにあった場合は、ここからの距離観測データを使用しますので器械高はi1
  TBは目標になりますので目標高はf2という表示になります。 





   逆に、器械がTBに移動した場合、距離観測データは使用しませんので器械高
  はi2、TAが目標となりますので目標高はf1という表示になります。
   添え字は固定して使用しますので間違いの無いようにしてください。





   ここで、1からの観測で器械高i1、目標高f2、高度角α1、斜距離Dを観測し
  てその観測データを使用します。


   2からの観測では器械高i2、目標高f1、高度角α2、そして斜距離はチェック
  として観測はしますが、その観測データは使用しません。


   鉛直角をほぼ同時に、正・反(1と2の位置)で観測することにより観測当時の
  大気の気圧による影響(気差)、地球の丸さによる影響(球差)を打ち消すこと
  ができます。


   これが正・反同時観測を行う大きな理由です。
   更に正・反で観測することにより、上図でもわかるように二つの直角三角形
  が出来あがります。


   図形的には、1から観測した直角三角形と、下図のように観測された斜距離
  Dを共有して180°回転させたような形の2から観測した直角三角形が出来て
  いることが解ります。


   そこで、基準点測量では、斜距離を観測した1でつくられた直角三角形と
  距離を観測しなかった2から観測されてつくられた直角三角形を点検すれば
  その成否について判断することができます。


   その結果、平均された直角三角形を1の側に考えるという作業になります。


   平均された直角三角形をつくるには、観測された高度角α1とα2を平均す
  れば良いことになりますが、高度角のα1とα2を平均すると、α1とα2は反
  対を向いた角度です。
   単純に α=(α1+α2)/2 のように計算してしまうと、限りなく0°に近
  い数字にしかなりません。


   そこで1側の角度で考えるとα2の向きを反対にしてやる必要があります。


   そのため、平均高度角を求める式は α=(α1―α2)/2
  ということになります。


調査士の設備で基準点測量ができるのか


   それでは一番肝心な、土地家屋調査士の器械設備で基準点測量が出来る
  のか、出来るとするならば、どのような事が必要なのか考えてみましょう。
   土地家屋調査士の日常の測量は下図のような測量だと思われます。


     


   この状態では、先ほど説明した同一形状の直角三角形が2つ出来ませし
  使用する斜距離の視通線が同一でもないために正・反同時観測の意味もな
  いように思われます。


     


    1と2からそれぞれに観測した高度角は、本来観測しなければならない位
   置ではない場所を測っていますね。
    1の位置からは器械高i2の位置を測る必要があるのですが、目標高f2の
   位置を観測しており、相違する距離は(i2−f2)ですが、以下単にAと表示
   します。


    2の位置からは器械高i1の位置を測る必要があるのですが、目標高f1の
   位置を観測しており、相違する距離は(i1−f1)ですが、以下単に@と表示
   します。


    1からの観測した高度角α1と斜距離Dを固定して考えることになります。


    どうしても難しく考えてしまいますので、こんな問題で考えてください。
   直線あ、直線い、は平行な直線である。
    直線あの直線上の点A、E、直線いの直線上の地点B、Cで交わる黒字の
   点線はすべて直交している。
    AE間の距離は@である。
    BC間の距離はAである。
    AC間の距離D、B地点の観測角α`2を使用してα2の角度を求めよ。
    ただし観測角α1については使用してはならない。


        


    この問題から、これは偏心だなとすぐ察しがつくと思います。
    B地点での観測をC地点で観測したようにすれば良いわけですよね。


    B地点からはA地点を観測せずにE地点を見ている訳です。
    その距離は@の距離です。
    B地点から直線上のC地点に平行移動します。
    その距離はAの距離ですよね。
    この時、直線いと直線あは平行な直線ですから、直線いで移動した距離
   の分だけ直線あでも移動します。


    つまりA地点からAの距離移動したA`地点に移動するわけです。
    B地点でA地点を観測せずにE地点をみていたものが、B地点からC地点
   に移動したことにより、平行移動したAの距離と観測が相違していた@の距
   離の分を加えた分の位置を観測することになります。つまりE`の位置を観
   測しているということになります。


      


   まだα2の角度はわかりませんが、何やら関係らしきものが出てきましたね
  距離を角度に換算することができれば、何とかなりそうですね。
   それでは上図から、必要な要素だけを図示してみます。


       


   ここで、解っているものは斜距離D(以下Dという)、2からの観測角α'2
  距離としての(i2−f2)+(i1−f1)です。
   図から下半分の直角三角形の関係により、2からの観測された高度角α'2
  からもう一つの角が90°−α'2であることが分かります。


   そこで上図の絵の大きな三角形で角とその向かい合う辺との関係を表す
  正弦定理を使用すると


 

   このdα2は図でも解るように(i2−f2)+(i1−f1)の距離に対応する角度
  補正角です。
   この補正角の中には、2からの実際の観測値である高度角α'2が含まれて
  います。

   1からの高度角α1に対応する直角三角形のもう一つの高度角である2から
  の高度角α2を求めます。
   図から、求めたいα2と補正角dα2とα'2を比較すると実際の観測値α'2
  の角度の方向のみが異なっています。

   図の形をそのまま数式にしてみますと、
   補正角dα2 =α2 +α'2 となりますが、
   α'2は他の2つの角度と反対向きの角度ですので
   補正角dα2 =α2 −α'2 ということになります。


   したがって求める高度角α2 = α'2 + 補正角dα2

   ということになります。


   と一応説明は終了したのだが、先ほどからの計算で頭が混乱しており
  丁寧な説明にならず、ザーっと説明してしまった。


   渡部氏「全く解らん」と説明のまずさにご立腹である。
   何とか穴埋めをということで、渡部氏が用意してきた計算例を計算する
  ことになった。


   


       


    


    以上のとおりです、ここで公式の(i2−f2)と(i1−f1)に注目すると
   i2=f2であればi2−f2=0であり、またi1=f1であればi1−f1=0です。


   すべての器械高・目標高が同一(i1=f1=i2=f2)であれば公式は不要
  補正は不要ということになります。


   2の位置の観測時に1の目標にミニ・プリズムを使用して1の位置の器械高・
  目標高が相違した場合、2の位置からの目標の位置が相違する分、つまり
  (i1−f1)の分だけ距離を角度に換算して補正する必要がある。


   1の位置の観測時に2の目標にミニ・プリズムを使用して2の位置の器械高・
  目標高が相違した場合は、1の観測に合わせる必要があるので、2の位置の
  器械高i2を目標高f2の位置に移動する必要があり、その移動距離(i2−f2)
  の分だけの距離を角度に換算して2の位置からの角度に対して補正する必要
  がある。


   器械高、目標高がすべてがバラバラの場合は、この両方の距離の合計距離
  に対して角度換算して、2からの観測角度に対して補正が必要になります。


   この高度角補正の式を記憶しておけば、ほとんどの場合の高度角補正が出
  来ます。


    器械高、目標高をすべて同一にするべきか、観測時に器械高、目標高を
  丁寧に測って、高度角補正を行いながら基準点測量を行うか、それは観測を
  行う方の判断にお任せすることになります。


     平成21年5月               土地家屋調査士 滝上洋之


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