今治支部測量研修会H20年5月

1.光波測距部の点検

  平成20517日、朝7時、西予市の自宅から高速道路を走り、途中の内子PAで

 八幡浜の誠二さんと待ち合わせ、松山ICで高速を下り、道後から山越えで今治市玉

 川総合運動公園へと向かう。



  1年前の512日にも、この場所で今治支部研修があり私は参加している。

  今回は集合時間が30分早くなっていたが、昨年と同時刻に出発したので、昼食の

 弁当を買う予定であった公園入り口のコンビ二に寄る時間がない。


  遅れては駄目と公園に直行する。集合時間の午前9時ちょっと前に到着。


  今治支部会員さんは既に集合している。私たちを入れて総勢24名との事。

  定刻、日下支部長の挨拶、そして渡部副支部長の本日の研修の簡単な説明がある。


  まずは基線場で各自持参のTSの距離の点検を行う。


  この基線場の基線長はターゲット用824790とミニプリズム用が825125と同一の

 観測点で種類別に相違する距離を点検することが出来る。



  気温20度、気圧1003ヘクトパスカルとの渡部副支部長の指示がとぶ。


  観測点には、木製の三脚が踏み込まれ、日下支部長のTSを使用して求心する。

 そのまま日下支部長の観測が開始される。



  ここでも、距離の点検としながらも、別のTSが観測点の横に据え付けられ、観測点

 にある鋲と観測点に据えられたTSの求心が一致しているかどうかのチェックがされて

 いる。



  前回の点検では、独自の距離を観測していたTSも新しいものに変わり、今回は

 丁度の値を測定している。



  着脱式、シフト式の順番で各自の持参したTSを順次点検していく。

  私の10回の観測結果は8247982511であった。一安心。

  各自、良好な結果だったようだ。



2.観測練習(3方向観測)

  3人を一組の班編成がされる。


   山の中腹(2段目)にあるAの位置、下側のコンクリート擁壁の西側にあるBの

  位置、そして同様に東側にある@の位置が観測点である。

   @ABの中間に木杭に鋲を打ち込んだCがある。


  


 この@ABCを1組にして、重さなることなくA、B、C、D、E、F、G、H班の8組が

  設置され、
8組の同時観測が可能なように設営されている。


 


  観測点@、A、Bの位置から相手の水平角、鉛直角、斜距離を観測し、順次観測点を

 移動しながら三角形の内角を観測する。


  更にその位置から山の1段目に設置されたCの位置の水平角と鉛直角も観測して

 最終的にCの位置の標高の出合差を求めるものである。



  この研修には街区基準点を利用するための必要な要素がしっかりと組み込まれている。

  1年前の研修では、「どの点をバックにどこの距離を観測するのか。」質問が飛び

 交っていた。



  今回は誰もそんな質問はしない。

  配布された@観測図を見て、即座に自分の観測する要素を理解出来ている。


        


  いつものように、自分のTSの下には相手の目標となるミニプリズムがピンポールに

 2個取り付けられている。



  それぞれが相手方の方向に向けられ、その高さを相手方に伝え、相手方は自分の

 方向に正対しているか確認して、正確な方向を指示する。


       


  @ABの観測点のほぼ中間点に設置されたCの位置には、木杭に鋲が打ち込まれ

 目印としてアルファベットを記載した紙を貼り付けている。



  午前1130分、一斉に観測が開始される。


  「Cの位置の観測については、プリズムを据付けず、距離も観測しませんので

 水平角については鋲の頭の下で観測、鉛直角については頭のてっぺんで観測して

 ください。鋲が曲がっていますので注意してくださいよ。」



  確かに、望遠鏡でCの位置を覗きこむと、鋲がやや斜めになっている。


  水平角はヘアーで挟みこんで観測できるのだが、鉛直角となると鋲の頭が光り

 後ろの風景ににじみ込んでいるように見える。



  他の2点がピンポールにミニプリズムのセットで、俗にいう「クモの巣」の中心を

 観測すれば良いものと条件が相違するため勝手が違う。



  TSの観測、手簿記入は観測者自らが行い、その観測が制限内にあるかどうか

 自分ですべて計算し、制限から外れた場合は素早く「再測量」を他の二人に申し

 出ている。



  観測の良否の判断は、作業規程にある4級基準点の緩やかな制限値ではなく

 自分自身が体験して身につけた自分自身の設定値により判断している。



  現場で最低限行わなければならない判断が出来ているようだ。


  現在の観測結果であれば最終的な段階にどのような影響があるのか。

  最終的な成果品を完成することが出来ず、改めて現場に来なければならない

 手間隙を実感し、その場での再測量を恐れない判断も身についているようだ。



  相手方の二人も承知しているので文句は言わない。

  再測量も、1年前の観測からすれば各自の観測に要する時間は格段に短く

 なっている。


  3方向の観測であれば10分程度だろうか。


  1230分を過ぎ、腹の虫が朝方買いもらした弁当の事を請求しだした頃

  観測場所の片隅でコンロにお湯を沸かしていた渡部氏達、箱からカップラーメンを

 取り出しお湯を注いでいる。



  「お腹減ったろう、食べんで。」と参加者に配っている。


  そういう言えば、誰も食事をせずに頑張ってる。


  カップラーメンを立ち食いして、いつもの食後の一服もなく、食べ終わった者から

 再び観測を開始する。



  おかげで午後2時には、ほとんどの班が観測を終了。


  観測と同時に観測手簿の整理が完了した者も少なくない。



2-1 計算

  日陰に入り、観測手簿の整理を開始する。

  観測手簿の整理が済めば、本日の研修目標であるCの位置の標高を計算する

 ため電卓片手に計算していく。



  まずは、配布された@観測値の図の中に自分の観測した水平角・鉛直角・器械高・

 目標高そして斜距離を記載して、順次内角を計算していく。



  観測差、倍角差が2桁になっている観測点が複数あり、改めて図に表示すると

 我ながら恥ずかしい値である。



  
  



  観測値は1の内角584530秒、2の内角563839秒、3の内角643538

 となり、私の測った三角形の内角の和は
1795947秒、13秒の閉合差である。

  ちょっと悪いが、黙っておくことにした。





  三角形の角度のチェックの後は、高度角のチェックも行う。

  器械高、目標高が相違しているために、A高低角の偏心補正を行う。


  このAの図にしても、1年前からの街区基準点使用の為の研修を行っているとは

 いっても、理解が難しく基準点測量の勉強をする際には必ず拒否反応のおこる箇所

 である。



  しかし、誰も改めて説明を受ける訳でもなく、黙々と計算をしている。

  さすがに、公式を暗記している会員は少ないが、使用すべき数字が理解出来ている。


  過去の測量研修の成果の一つ、電卓で手計算を行うことに抵抗感が無い。


  そんな今治の会員さんを横目でみながら、私も計算をすると斜距離を観測した正の

 高度角と、高度角補正後の反の高度角の較差が
30秒から60秒近くある。


  「我ながら、下手糞だなぁ」と嘆きながら計算を進める。

  観測点@の位置の標高を0として、高低角の正・反の角度、そして器械高、目標高を

 利用して標高を計算していく。



  @からA、B、再び@の観測点の標高を順次計算していく、再び@に戻った標高は

 0.003mだった。


  これがそのまま高さの閉合差である。


  今度は、平均高低角と斜距離を利用してそれぞれの観測点を結ぶ辺長の水平距離を

 計算していく。



  C各測点から4までの距離の図に、観測したそれぞれの角度と辺長を記載すれば

 当然のように
4の位置を中心とするそれぞれの角度が三角形の内角の関係から判明

 する。



  判明した角度とそれに対応する辺長の関係、つまり正弦定理により、同一の三角形

 の中での
4からの距離が計算できる。


  三角形あ、い、うに含まれるそれぞれの同一辺をチェックすると23ミリ程度相違

 している。



  ここで、後ろから渡部氏が「出来たかな。」と声を掛けてくる。

  「ちょっと違うのよ。」

  先ほどの観測図の倍角差、観測差を見ながら「観測が粗いんよ。」一言。

  いつも、いつもの指摘である。

  反論出来ない、「この程度でええワイ。」といい加減さが顔を覗かせたのは事実。


  いつまでたっても上手にならない理由である。


  


  Cの図から、各観測点の標高が求められたので、角観測点からCに対する高低角と

 Cの図で計算されたCの位置への水平距離を使用してCの位置の標高をそれぞれに

 計算する。


  


  その結果、観測点Aから求めたCの標高は5.664m、観測点@から求めたCの

 標高は
5.663m、観測点Bから求めたCの標高は5.661mであった。

  較差3mmという精度であったが、やっぱり渡部氏からは「悪いね」の一言。



3.まとめ

  本日参加された会員さんは、各自再測量を行う基準を自ら定めている。


  調査測量実施要領等に定められた観測の制限値の範囲ということではなく

 自分が納得の出来ない値であれば、それが制限値の中にとどまっていても再測量を

 行っている。



  これは、街区基準点を実際に体験すれば、与点となる街区基準点がどの程度の

 精度で出来ているのか理解できれば、おのずと自分の観測もどの程度であるべきか

 理解出来る。


  また、決められた制限の中に入れば良いのではなく、自分の行う業務に責任を持つ

 ことは専門家として当たり前だろう。


  器械が良くなっているから対回観測が不要ではなく、器械が良くなっているからこそ

 対回観測を行う事で、より信頼の出来る観測が出来るのではないだろうか。



  今治支部では、街区基準点を与点とした調査士による新設基準点が既に200点以上

 が設置されているという。



  観測の制限についても、作業規定等に定められた制限値でなく、自らの体験から

 各自で、その制限値を自発的に定めている。



  それが専門家としての自覚であろう。



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