平成19年10月13日大洲支部研修(第31回勉強会)報告 研修計画 (この観側計画図は本説明のために3つの路線全部を概略で表示したものです) A路線は、街区三角点1004Aから方向角の取り付け用に今回座標を付け直したMH1-2を観測 して街区多角点10A14に至り1004Aを取り付け点とする1号路線、そして出発点は同じMH3-1に 至りMH1-2を取り付け点として観測する2号路線からなるY型の定型網です。 点間距離も50メートル以上あり、街区基準点を使用した最も実務的な路線であり網の形状と してもわかりやすいものです。 B路線は、街区三角点1004Aから方向角の取り付け用のMH1-2を観測して出発し、MH3-3 に至り方向角の取り付けでMH1-2を観測する1号路線。 出発点は同様でMH1-3に至り方向角の取り付けでMH1-2を観測する2号路線からなるY型 の定型網ですが、点間距離が30メートル間隔と短いため高度角の観測が難しい路線といえ ます。 C路線は、MH1-3からMH1-2を取り付け点として出発して、既存の四級基準点4-7に至り取り 付け点も既存の四級基準点4-8を観測する1号路線。 出発点は同様でMH3-1に至り、方向角の取り付けでMH1-2を観測する2号路線からなるY型 の定型網です。 途中に高いフェンスが存在し、TSを高く設置して観測しなくてはなりません。また、点間距離が 比較的短いので高低角観測が難しいと思われます。 研修当日 1時間前から準備にとりかかり、各班の観測の共通の方向角の取り付け点となるMH1-2の位 置に三脚を据え付け、整準台の上にGPS用の1メートルポールを設置。 本日の各班の観測点に間違いのないように、地面にペンキで測点名を表示しておいた。 30分前には測量屋さんが、15分前には参加者のほとんどが揃ったのですが、いつもなら1時 間以上前に準備をしている迷惑おっさんがいない。 「周りの三角点を確認してるんだろう。」 本日の研修の役割分担で、迷惑おっさんが手簿を用意してくるとの事であった、本日の観測 の前に事前に手簿を渡し各自で準備をしてもらわなければならない。 前回の研修の残部とコピーを失敗した分しか私の車には積んでいない。とりあえず手簿を参 加者に配布する必要があり、不足分を法務局にコピーをお願いすることにした。 コピーが出来上がっても、迷惑おっさんがまだ来ない。 とりあえず出来上がった手簿を参加者に配布する。 (この時、あわてて参加者に配布したため、水平角観測手簿と距離観測手簿のコピーが左右 反対になっているものが混じってしまいました。参加者の皆様すいません。) 参加者に用意していた観測計画図を渡し、これから自分の観測する路線の下見を行ってもら う。 迷惑おっさんの習性を知っている講師達は気にも止めていなかったが、さすがに5分前になる と、心配になり携帯電話に連絡を入れても通じない。 「何か、あったんと違うか。」と心配になった時 「あっ、こられました」と測量屋さんの声。 集合場所の大洲支局の駐車場に迷惑おっさんの車がやってくる。 「ずっと前を60キロの車が走っていて。」 今治からの高速道路が思うように走れなかったらしいのだが、実は1時間寝過ごしてしまった らしい。 観測前に 実務の路線に最も近いと思われるAコースを観測する地元の調査士4人をA班。 基準点測量に目覚め、ずっと研修に参加していただいている宇都宮さんと補助者の二宮さん と、私の補助者そして迷惑おっさんのB班。 法務局敷地内を観測するが、フェンス越しに観測する必要から、TSを高く設置しなければなら ず観測に技術を要する法務局から参加の3人に西さんと野本さんをC班にと班分けを行った。 観測場所の重複を避けるためA班は街区三角点1004Aから、B班はMH3-3から、C班は MH1-3から観測を開始することとした。 気象補正として気温25度、気圧1013ヘクトパスカルを入力するように指示する。 観測については、倍角差30秒、観測差20秒、高度定数の較差30秒を制限として、これを越え る場合は再測量すること。 距離観測については観測計画図に記載の方向からの1方向からの距離観測とする。 手簿への記載はボールペンで行うこと。 観測者と手簿者については各自交代しながら1点1観測で観測を進め、全路線の往路の観測 が出来れば、今度は逆向きに観測者・手簿者を交代して復路の観測を行うこと、各班の実際の 観測データにより、計算を行うので12時までには最低でも往路の観測を終了させること。 観測開始 午前9時、各班は観測開始点に別れて観測を開始する。 A班スタート 街区三角点1004Aから観測を開始するA班。 交差する道路に渡る小さな川のコンクリート橋のコンクリート基礎部分に街区三角点1004Aが ある。 見慣れたキノコ型をした真鍮鋲ではなく、頭の部分が平坦になっている。 キノコ型の真鍮鋲では十字の刻印が削り取られているようになっているものが多かったが、こ の形であればそのような事は少ないだろう。 亡失せず、いつまでも良好な状態のままであってほしい。 さて、観測しているA班の二宮氏は、本日のために器械をわざわざ点検に出したそうだ。
B班スタート MH3-3もMH1-3と同様に、今回の研修のためにGPS観測により再計算を行っています。 B班はここからMH1-2を取り付け点として観測を開始しますが、MH3-3からMH1-2は中間にあ る電線が邪魔をしている。 迷惑おっさんが器械の高さを調整して、MH1-2に立てたポールがみえるようにして観測してい ます。 三脚はガードレールをまたいで据え付けることになり、このような場所での器械の据付には慣 れが必要です。 慣れてしまうと、案外安全で好んでこのような場所に選点したりしますが、ガードレールをまた いでの観測となるため股下の長さに自信がない方は選点しない方が・・。 C班スタート 法務局職員主体のC班はMH1-3から観測開始です。 MH1-3は、以前測量研修のため松山法務局大洲支局内に電子基準点を使用して設置しまし た。 設置当時は1級基準点相当ということにしていましたが、今回は街区基準点を与点として再計 算を行ったので、3級基準点相当に格落ちになってしまいました。 座標値と標高の成果とも1センチ以内の変更だったのですが、これが後で問題になるとは誰 も知らない。 地面に三脚を思い切り踏み込むのですが、なかなか求心が合いません。 三脚の脚頭から器械がはみ出しています。 それじゃあ、もう一回。 「う〜んっ。」 どうやら、求心して踏み込んだ後、円形気泡管の気泡により三脚の脚を伸縮させて調整して いるのですが、その時3本全部を動かしているためなかなか定まらないようです。 最初に三脚の長さを揃えた後、微動ねじの位置を真ん中の状態で求心して踏み込み、その 後、三脚の脚二つを使用して調節すれば、そんなに移動しないのですが・・。 C1の位置からは3方向の観測です。 しかも、フェンス越しの観測のため足元にブロックを置き、それに乗って観測することになりま す。どうしても高度角補正計算が必要になる場所です。 観測もいつもの高さと相違するだけで、ずいぶんと勝手が違い難しく感じます。 もう少しだ、頑張れ 気温は観測を開始した9時に25度あり、昼前には30度近くとなり、陽炎の影響もかなりのもの になっています。 正午丁度の観測となったMH3-1の地点の観測、MH1-2への観測は建物の屋根の上を視通す ることになり、かなり陽炎の影響を受けます。 足場も悪い。 実は、この10分前までワゴン車が止まっており、背伸びをして観測しなければ不可能と思われ ましたが、運良く車が移動してくれ観測を開始することが出来るようになりました。 B班が帰ってこない 同じ頃、観測が順調に進んでいるB班が最終地点の大洲支局敷地内にあるMH1-3に帰って こない。 先ほど見回った時には、1つ前のB3地点で観測を行っていた。 12時前にすべての観測が終了するだろうと思っていたのだが、帰ってこない。 そこへ、井上君が「1つ点を間違えて観測したので遅くなりました。」と言いながらMH1-3に反 射板を据付始めた。 選点の時に、B3とMH1-3の間に、コンクリート舗装の位置に調査士会と表示された真新しい 座にステンレス鋲が打ち込まれ、白いスプレーで1と表示されていた。 選点した時に冗談で「この鋲を使用しようか、間違うかもしれないね。」と言いつつ、民地への 侵入路の位置であったので、10mほど横の位置の道路にプラスチック杭を打ち、その上に鋲を 設置してB3として表示していた。 どうやら、迷惑おっさんが、朝ぎりぎりの参加だったため満足に下見をすることが出来ず、次 の観測点を探した時に近くにあった鋲の位置をC3と間違えて立てたらしい。 そのため1つ余分に観測することになり、遅くなってしまったらしい。 これが幸いしたのか、B班の観測の終了も12時10分頃となり、1つ観測点が少なかった路線も 新点4点となり他の班と同一の条件となった。 各班とも2、3回再測量を実施したようですが、12時30分にはA、C班とも1通りの観測がすべて 終了しました。 残念ながら復路まで観測が終了した班は無かったようです。 観測結果 午後1時30分、昼食後 会議室をお借りして手簿の整理を行う。 各自手分けをして一つ班の観測点全部を網羅し、計算が出来るように整理し、チェックを行い ます。 観測差・倍角差そして高度定数の較差のチェック、中数、高度角を関数電卓で計算し、チェッ クを入れていきます。 ここでも慣れている班と慣れていない班の差が出てきます。 今のところ、手簿のチェックで必要になった再測量はありません。 2時過ぎ、基準点測量研修にいつも参加しているB班のメンバーはチェックを完了したようです。 計算要素図の作成 手簿のチェックが完了したところで、各班に配布したA3判の観測計画図を利用して、計算要 素図を作成していきます。 「えっ、全部書き込むんですか。最初から作らんといかんの。ありゃ下絵を全部準備してもらっ て数字だけ入れたらいいと思ってたのに。」 研修会参加2度目のA氏の悲鳴にも似た声が上がる。 確かに前回の研修は、計算要素図の矢印等を記載した下絵を配布し、手簿から数字だけを 書き込めば良いようにしていた。 だが、この研修会は実務に利用するために開催している。 順次進歩しているのです。 前回は参加者にも全く知識が無いので、そのような下準備をしていたが、実務ではゼロから 作成する必要があり、計算要素図を自分自身で作成出来なければ実務に使用することは出 来ない。 各班、観測路線が相違しているので、今回はお隣の班を参考にする事が出来ない。 班内の自分達だけで考えながら、観測計画図に矢印を入れ、器械高、目標高、斜距離、高度 角、観測水平角を記入していく。 やはり、慣れているB班はどんどん先に進んでいく。30分ほどで完成してしまった。 (観測要素図については、今回は記載例を示しません) 徐々に各班の進行状態に差が生じ始める。 高度角補正計算・概算標高計算 計算要素図への記入が終了し、高度角補正計算・概算標高計算、そして距離の補正計算を 行うこととなる。 迷惑おっさん、下記の手作りの1枚の用紙を渡す。 (迷惑おっさんから3、4級の基準点測量については標高を使用することになるので本研修会 は、この様式にした。 (機械高+目標高)/2の高さについては今回考慮していないと説明してくれとの伝言です。) @からCまで手簿から、路線の順番で記載を行った後、Dの高度角補正計算を行っていく。 高度角の補正計算に先立ち、迷惑おっさんが本日の観測条件の絵解きをして、その計算方 法について説明がありました。 いろいろの説明方法がありますので、少し迷惑おっさんの説明と相違しますが、ここで下記の ように絵で説明しておきます。 求める直角三角形(水色の三角形)を2の位置の器械高の位置に移動してみると。 三角形を移動した距離@と、もともと2から違った位置を観測していたズレの距離と、実際に 高度を測っていたα'2 が測っていた位置との関係が下図のようになります。 上の絵の白矢印の角度を知るためには。 正弦定理を利用して 三角形の内角を計算する時は、α'2の値は正の値として計算してください。 しかし、dα2との組み合わせで計算する時には、もともとの符号をそのまま利用します。 これは、高度角の平均角度を求める式でも同様ですので注意してください。 高度角補正計算に使用する式 距離補正計算 高度角補正計算を終了した後、迷惑おっさんお手製の距離計算簿を使用して、水平距離 平面距離そして球面距離を計算していく。 実は、観測計画について事前の打ち合わせが充分でなかったために、迷惑おっさんと老眼お っさん(私)の思惑の相違の為、参加者に迷惑を掛けてしまった。 概算標高の計算の方法で、比高から標高を求める方法で老眼おっさんは路線の観測方向と 比高の算出方向が逆になるよう、わざと反対方向を作っていたのですが、迷惑おっさんは実務 仕様で、観測計画が完全であるとして一気に計算してしまえるように計画していました。 そのため、迷惑おっさんの作成してくれていた距離計算簿の記載順・計算順に不都合が生じ てしまいました。 これは研修会企画者のミスです、参加者の皆様申し訳ありませんでした。 念のため、下図のような事を老眼おっさんは説明したかったのですが、今回はいらぬお世話 になってしまいました。 それにもかかわらず、参加者は説明を受け、黙々と誤りなく計算していきます。 近似座標計算・厳密水平網計算・高低網計算 時間の制約がある為、ここからはエクセルの計算ソフトを使用しての計算となりました。 (エクセルの高度角補正計算・概算標高・点検計算ソフトについては今回改めて説明しません) 点検計算終了後、改めて厳密水平網・高低網のフリーソフトで計算。 その結果。 A班の点検計算の結果 1号路線の高さの閉合差10ミリ、座標値の閉合差30ミリ、閉合比1/7093。 2号路線の高さの閉合差16ミリ。座標値の閉合差36ミリ、閉合比1/8124厳密水平網の標準偏 差7.71秒、高低網17.48秒であった。 B班の点検計算の結果 1号路線の高さの閉合差13ミリ。座標値の閉合差3ミリ、閉合比1/64651。 2号路線の高さの閉合差8ミリ。座標値の閉合差6ミリ、閉合比1/16956厳密水平網の標準偏 差3.68秒、高低網19.86秒であった。 C班の点検計算の結果 1号路線の高さの閉合差2ミリ、座標値の閉合差1ミリ、閉合比1/114283。 2号路線の高さの閉合差2ミリ、座標値の閉合差3ミリ、閉合比1/32046厳密水平網の標準偏 差2.08秒、高低網8.09秒であった。 いずれの計算も4級基準点測量の制限内であった。 16時30分、B班がすべての計算が終了。 19時30分、A班、C班とも計算が終了した。 |