調査士会 測量講習会現場準備(H19.8.11)

8月4日メールが入る

 8月4日19時、迷惑おっさんからメールが入る。
 測量講習会の準備を行う8月11日(土)の予定である。
 7月28日に現地を迷惑おっさんと測量屋さんで下見をして、8月18日の測量講習会の大体の構
想が出来上がったらしい。                  

                 ――――メールの内容―――――

@GPS観測

 短縮スタティック法で30点設置する。
 これによりA〜Jの9つの研修ステージができる。

セッション名 観測時間 受信機台数
223Aセッション 11:40〜12:00 7台
223Bセッション 12:10〜12:30 8台
223Cセッション 12:40〜13:00 8台
223Dセッション 13:10〜13:30 8台
223Eセッション 13:40〜14:00 8台

ATS観測

  代表ポイント、A1,B1,C1,D1,E1,F1,G1,H1,J1にTSを据えて各ステージのポイン
 トの点検測量をおこなう。
  GPSとTSの比較である。
 この作業はGPS観測の時間帯も併用しておこなえる。
 現地作業、15時終了予定。

BGPS測量計算

  会館に移動し、計算をおこなう。
  GPSとTSの比較を整理する。

          ――――――本日の作業終了――――――

※ 各ポイントは、テープで距離をとり、簡単に打つことができる。観測途中で可能。
※ 金属鋲は準備済み。
※ 観測手簿、GPS観測記録簿共に準備済み。
※ TSによる点検観測においては、器械高・目標高を1.400mに揃える。
※ ターゲットをお持ちの方は、ご持参願います。
※ コンベックス、手簿挟、鎌、鍬、箒、水分も忘れずにお願いします。


 このメールの後、迷惑おっさんといろいろ打ち合わせをしたのだが、詳しい内容については、迷
惑おっさんは「楽しみにしといて。」としか言わず、こちらももう聞かないことにしている。

 ただ、GPSの2周波の受信機1台と、TS、そして三脚と、日常の測量現場に必要な道具一式を
持参するようにとの指示である。


8月11日、新点の打設・準備作業

 8月11日朝9時10分西予市の事務所を出発、スピード違反しない程度に高速道路を走る。
途中の伊予サービスエリアで飲み物を購入。松山ICへと急ぐ。

 研修現場は松山インターチェンジの真下になる橋の下の重信川の河川敷。
 到着すると、既に12,3名が集まり、草刈やら、鋲打ちやらが始まってる。

 いつものように、迷惑おっさんが草刈機で河川敷の草刈をしている。

 手で挨拶をしながら河川敷の中に車を止めると、松山支部の野本さんが河川敷のコンクリート
部分に登記基準点の座をつけて鋲を打ち込んでいる。

 チョークで番号が書いてあるのだが、打ち込んだ調査士会の座に刻印した番号と相違したようだ。「C2じゃなかった。C3ですね。」

 いつものように、迷惑おっさんは調査士会のアルミベースにあらかじめ刻印を入れて準備して
いたようである。

 「刻印の上に、ポンチで打ち直したら。」

 変に、臨機応変さを身につけてしまった〇〇氏が指示をする。

 「そうですね。」と野本さん。

 上流の方では、測量屋さんが図面を持ち、コンクリート擁壁部分にチョークで印をしている。
先ほど野本さんが打ち込んでいた鋲の位置になっているようだ。

 測量屋さんも、1メートル幅のコンクリート擁壁の中に位置決めをしているのだが、単純に端か
ら何センチといった風に統一してはいないようだ。

 1箇所毎にコンベックスで距離を測って印をしている。

 「この位置を微妙にずらすことによって、当日大勢の人数が同時に観測出来るように配慮して
あるようです。」と、黙々と印をつけている。

 いつものように、迷惑おっさんの細かい指示はない。

 現場に行き、いきなり振り回されるパターンが今日も開始されている。

 集合時間の午前11時近くなり、続々と手伝いの人達が集まるのだが、現場の準備が思うように
すすんでいない。

 「みんな、急いで!! 走ってくれ。」

 迷惑おっさんが叫ぶ。

 「ドリル早よ来てくれ!! 鋲を打たんといけん。」

 これは自分の事だと、車からドリルを出し、刃先をセットして走っていく。

河川敷のコンクリート擁壁の部分に5箇所ほど穴を開ける。

             

 全部終了したのかと思うと、「早く、早く」と今度は堤防の方に

 「走って。走って。」

 これは忙しい。

 河川敷からコンクリート階段を上り、防波堤の河川管理道路に上がると赤いスプレーで印がし
てある。

 「路肩から、このくらいの位置で穴を開けて行って。」とアスファルト舗装の部分を指示される。
その穴の位置に12センチの土中鋲を叩き込むようである。

 「解った」

 赤スプレーの位置に穴を開け、次のスプレーを探して穴を開けていく。

 立ったり、座ったり、ドリルで穴を開ける、単純な作業だが、猛暑の中の作業、少しふらついてく
る。

 午前11時10分準備は終わった。

 全員集合。

 図面が渡され、本日の予定が簡単に、本当に簡単に説明される。


GPS観測開始

 現場に設置された先ほどの鋲の位置でGPS観測を行う。

 午前11時40分。GPS観測が開始された。

 防波堤の上の河川管理道路には2周波の機械が3台並び、河川敷のコンクリート部分には1周
波の公嘱協会の機械が5台並んだ。

      
            防波堤上の河川管理道路に並ぶ2周波GPS



           河川敷のコンクリート擁壁部分に並ぶ1周波GPS

 短縮スタティック測量により20分間の観測である。

 予定では223Aセッションから始まって223Dセッションまでの5セッションの開始時間と終了時間
が決まっていた。

 いつの間にか8台の機械を同時に電源投入し、20分の観測をして同時に電源を落とすという方
法になってしまった。

 そのために、あらかじめ次のセッションの観測位置にも三脚を据え、別の整準台を使用して設
置しておき、GPSの整準台の水平をあわせればすぐに観測出来る状態にしておけというお達しが
出る。


          
                  あらかじめ、据え付けられた三脚

 やっぱり、たこ部屋になってしまった。

 老眼おっさんも必死である。河川敷と比べ、防波堤組みは機械が3台で人手も3人である。

 開始の号令とともに電源を投入して観測を開始。

 終了の号令により観測を終了。

 急いで電源を落とし、機械をケースに収め、新たな三脚目指して走って移動する。

 近くに移動する場合、10分あれば余裕を持って移動できる。
 今回は、いつ観測開始になるかわからない。

 「ちょっと、待って」とは名誉にかけても言えない。とにかく走れ、走れ。

 体力勝負となり、頭が働かない。全くの思考停止状態。

 GPSの受信機と整準台を既に据え付けられた三脚の脚頭に据え付けたのだが、ここでちょいと
パニック。整準台を三脚に据え付けると、求心がずれている。

 整準台を水平にすると、それだけでほとんど据付が出来る状態になっているのだが、やっぱり
慌てている。

 「こりゃいけん」と、三脚の脚の長さを調整して水平にしてしまい余分な時間をとってしまう。
横から迷惑おっさんに

 「何しよん。脚は動かさんでもええやろ。据え付けはすぐ出来るはずよ。」

 「ああっ、そうじゃった。」と頭の中でせき止まっていたものが動きだす。

 炎天下、いきなりこんなことになると年寄りは慌てて当たり前なのだと自分の中で開き直る。
ボケの前兆ではありません。念のため。

 「用意はいいですか。入れますよ。」の号令で電源投入。

 前回の終了時間から5分もかかっていない。

 まだ、防波堤組は機械の操作に慣れているので、何とかなるのだが、河川敷の方は、3人一組
程度の人数となっているが、機械の操作にも観測にも慣れていない。

 アンテナ底面高の計測位置を間違えていた協力員もいたようですが、気がつきあわてて修正し
たため事なきを得たらしい。

やっぱり、かわいそう。

 おかげで観測20分間の予定が20分間以上観測出来ている。
 (実際は、20分の観測が出来なかったセッションもあるらしい。真夏の怪談)

 だが、トラブルはつきもの。

 「まだ、観測が出来ません。」

 「どうしたん。」

 「用意した整準台と三脚の穴の径が合いません。」
 急いで三脚の立て直しをする。

 こんな騒ぎが2回ほどあり、それでも予定通り14時に観測終了した。

 


TS観測

 再び、全員集合がかかる。

 「TSで観測して、GPS観測のチェックをしておきます。防波堤の上の河川管理道路のA1、B1、
C1、D1、E1、F1、G1、H1、J1から観測しますが、現場の点が多いのでE1を境にしてAからD、Eか
らJに分けて、AからDについては、たとえばA1であれば後視点をNo.2として右回りにA3、A2そして
No.1を観測します。EからJ については、E1であれば後視点をNo.5として右回りにE3、E2そして
No.4を観測します。2対回でも、1対回でもいいです。機械もターゲットも、今回はチェックですので
1m40に統一しといてください。」

 と、ぺらぺらとまくし立てられる。

 「TS持参している人は、防波堤の上の道路に持っていって。」

 すぐには、内容が理解出来ない。

 老眼おっさん、ボケてはいないが流れが解ってない。

 TSを持参しているので、とにかく道路の位置にTSを持って行く。

 コンクリート階段を上るとすぐそばに鋲がある。赤いスプレーでJ1と書いてある。

 まぁ、とにかく機械をこの場所に据ようと、1m40に据付をすると、近づいてきた迷惑おっさんに、

 「そこは、違う。E1とD1から開始せんと、後視点になる位置を観測者が邪魔するようになるので、
場所を変わって。」と怒られる。

 慌てて、まだTSの据付られていないC1の位置に移動する。

 大勢の参加者のあることを考慮して、現場を緻密に設営しているので、こちらの勝手で動くと、と
たんに流れを止めてしまう。

           
                  No.4から講習会現場を眺める

     
                   TSが防波堤の上に並ぶ。

     
                    ターゲットがずらりと並ぶ。

 TSを持参している者は、ある程度2対回観測には慣れているので、特に説明の必要も無く、観
測は開始された。

          
                      E1での観測風景


4方向の観測

 D1の位置の観測が終了し、私の観測となった。

 C1の位置からは、No.2を後視点にしてC3、C2そしてNo.1の4方向を観測することになる。
 C2、C3の位置には1m40の高さでターゲットが既に立っている。

 No.1とNo.2は、最初から据付けられている。手簿者は、補助者の井上君である。

 いつも、2対回観測をしているとはいえ、データコレクターを使用している。

 また、渡された観測手簿には3方向分の升目しか用意されていない。

 とにかく、開始してみたものの、水平角、斜距離、鉛直角の順番で読み上げてしまい。

 「水平角、鉛直角、斜距離の順番で読み上げてもらった方が記載しやすいんですが。」と井上君
に指摘される、不手際。

 「ごめん、ごめん」

 水平角、鉛直角、斜距離の読み上げを心がけ、観測をすすめるのだが、ほぼ同じ70メートル程
度の距離にあるNo.1とNo.2なのだが、No.2のターゲットのクモの巣は鮮明に見えるのだが、光線
の関係かNo.1のクモの巣が明確に見えない。

 よく目を凝らしても、クモの巣の一部が見えたかと思うと次の瞬間には全体が白く反射している。
反射板を挟み込み観測していく。

 だが、今度はC3を反転して観測してみると、クモの巣は明確なのだが、ターゲット板のマークと
鉛直の印が斜めに見える。先ほどの正の観測では、それほど気にならなかったのにおかしい。

 ターゲット板のねじをうまく締めていなかったようである。

 気を取り直して、観測を進める。

 2方向の観測なら、とっくに終わっている時間なのだが、さすがに4方向の水平角、鉛直角、そし
て4方向の距離を全部観測すると、かなりの時間がかかる。

 10分が経過。いつもの観測時間の感覚では、再測かなと思うほど、時間が経過してしまった。
「どうだった。」と覗き込むと

 「4方向なので、ちょっと手簿の方もチェックに時間がかかります。」

倍角差、観測差、高度定数順次、手差しで確認していく。

 「制限に入ってます。大丈夫です。」

 A1、J1での観測が終了した。


内 業

 土地家屋調査士会館に引き上げ、GPS観測とTS観測の結果を整理する。

 TS観測の手簿を手分けして、チェックする。

 観測差・倍角差・高度定数をチェックし、中数を計算する。

 計算をする関数電卓の調子が悪い。

 ディスプレー画面の数字の一定の場所の数字の表示がされず、鉛直角の計算(r-l)の計算をす
ると、数値の表示がされない。

 そこで、今治支部の日下支部長に確認の計算をお願いする。

 関数電卓を持っている意味がない。

 更に、先ほどからGPSの解析を行っている迷惑おっさんから、楕円体高の高さについて「これと
これ足すといくら」といきなり飛び込んでくる。

 関数電卓を叩き「××よ」と回答したのだが、「違おう。」

 「〇〇と△△で」

 「××よ」

 もう一度「違おう」

 たまりかねて、日下さんが自分の関数電卓を叩き「■■よ。」

 ディスプレー画面の数字の一定の場所の数字の表示がおかしいことがわかりながら電卓を変えようともせず答え続けている。

本日は、熱風に頭をやられてしまっています。


 更に

 「この観測図で基線が何個出来るんかいね。」
 「1、2 ・・36かいね。」
 「39個じゃないん。」
 「ほうかね。1、2 ・・36ああ重複しとるのがあるね。39じゃね。」

 いろいろ事件はありながらも、GPSの解析とTSの点検のチェックが終了した。

 迷惑おっさんがTS観測した状態と同様の組み合わせでGPS観測での成果表を打ち出し、その
成果表とTSで観測したデータを測量屋さんがチェックしている。

 若い調査士が
  「成果表に表示されているのは球面距離なんですか。」
  「そうです。成果表に記載されている距離は球面距離です。」
  「実測距離との比較では、縮尺係数を掛けたら、いいんですか。」
  「いえ、ここの場合は標高もほとんどないので、TSとターゲットの高さを1m40に合わせたという
  ことで、実測水平距離との比較で大丈夫です。縮尺係数を掛けてしまうと平面距離になってし
  まうので違ってきます。」

  「測量屋さん、チェック出来た。」

  「はい、全部2、3oできました。高さも大丈夫です。」
  「それじゃあ、18日の観測前に各ブロックの4、5、6を逆打ちしたらええね。」

  「その逆打ちは講師がするん。」
  「いや、参加者に全部やってもらう。講師は見といてください。」
  「参加者、みんなTSを持参してくれるやろうか。」

  「松山支部で研修をやった時は、機械が足らなかったですよ。」
  「講師も機械持参しておいた方がいいかな。」
  「自分がやらなければならないことなんだから、機械持ってくらい。
  講師は持ってきたら、いけん。」

 午後7時30分、本日の予定が終了した。

 



18日の講習会用の現場(A班、B班、C班、D班用)




おわりに

 かくして、講習会準備という名目の、講師いじめの一日がやっと終了した。

 「今回の講習会は、研修ではない。講師も講師ではない。」と迷惑おっさんは言い続けている。
測量屋さんも、私もそう思っている。

 8月18日の本番の講習会で、参加者達がどのような事を感じるのだろうか。

 「この程度の事で、研修なんかするな。」というお叱りを受けるのか。

 「自分の業務には必要なんかないよ。」とあっさり否定されるのか。

 じっくりと、自分の業務を見つめ直ささなければならなくなるのか。

 8月18日になってみないとわからない。

 そして、講師も研修会の参加者であるという自覚を持って参加してほしい。

 そうすれば、自分の業務に対する見方もまた、違がってくるだろう。

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