平成19年6月2日(土)松山地方法務局大洲支局で「街区基準点」を使用するため松山地方
法務局大洲支局と調査士会大洲支部協賛で基準点測量研修を行いました。
これは大洲市、八幡浜市でも街区基準点が設置されていることから街区基準点を使用する
にあたって最低限の知識を得ることを目的に研修したものです。
参加者は講師として松山支部から応援の大野達彦会員・野本邦彦会員のお二人、大洲支部
会員の調査士11名、各事務所の補助者5名そして法務局職員10名の総勢28名の参加となりま
した。
研修会は、当日観測した実際のデータを使用して厳密網計算を行うように計画しました。
観測を計画するにあたり、観測中の不慮の事故を避けるため、法務局および隣接の公務員
官舎の敷地内で与点4点、新点4点の単路線で実施することとしました。
研修会の目的からも最適の参加者は12名として計画しておりましたが、参加者が20名を越え
た為、計画していた路線についても急遽観測者人数に対応できるよう、研修会用に与点となる
点を4点作り、2つの路線を追加しました。
午前9時に松山地方法務局大洲支局の駐車場に集合し、あらかじめ班分けされた4人1組で
A,B,C,D,E,Fの6班に分かれて観測です。
4人1組の班といっても、実際には2人1組とし、その中で観測者と手簿者が入れ替わり観測
を進めて行き、後の二人は前視及び後視の目標設置の裏方に徹してもらい、一通り路線の観
測が終了すれば、班の中の裏方と観測者・手簿者が交代する方法で実施しました。
つまり1班が路線を2回観測する形になり、成果が二通り出来上がることになります。
更に効率を良くするために、1つの路線の前半から開始する班と、同一の路線の中盤から開
始する班を作り1つの路線に2班が観測できるように配慮しました。
観測方法は水平角2対回、鉛直角1対回、距離の測定は斜距離2回2セットです。
また、今回は街区基準点を使用するための研修なので、手簿のつけ方、対回観測の指導は
行ない旨の説明をしました。
午前9時30分いよいよ観測を開始しました。
ここで、じっと観測を見守っていると、2から3、3から2のフェンス越しの観測について、まるで
無頓着に観測をしていた班、何か邪魔をするものがあることを知りながら観測した班、金網を
避けるためにピンポールを70センチ以上に高くセットした班、1素子のミラーと三脚を使用して
1メートル以上にしてフェンスによる障害を避けた班いろいろありました。
本日は基準点を経験していただくことが大事と、いろいろ言いたい事もぐっと我慢して、黙っ
ておくことにしました。
「迷惑おっさん」がいたら、どんな事になったやら・・・。
(測量屋さんも同じ事を心配していたようです。)
観測場所の重複のないように、また隣接の場所に他の観測者がいないようにと配慮したつも
りだったのですが、いつの間にか隣の班に追いつかれてしまいます。
慌てない、慌てない。
早いだけが良い訳じゃない。
慌てて観測後の倍角差・観測差の制限のチェックを忘れている手簿者さんもちらほらと、観
測を終了して他の場所に移った後では駄目なんですよ。
急がば廻れと言うでしょう。
そんなこんなで早い班は午前11時には1回目の路線の観測が終了、観測・手簿者と裏方が
交代して2回目の観測を行っていきます。
このあたりで、1つの路線の中で前を行く班に追いついてしまい観測をお休みする姿も見られ
ましたが、遅れている班は、どうも観測を観測者と裏方で観測を行い、結局1箇所で2回ずつ観
測を行っている様子です。
1箇所で1回の観測と説明し、1路線終了後、裏方と交代してもう一回観測と説明したはずな
のですが・・。
こちらの説明が悪かったのでしょう。反省。
ピンポールの水準器が狂っている。斜めになっていると文句を言いながらそのまま観測して
いる者がいる。
さすがにこちらも「解っているならピンポールを真っ直ぐしてもらうように指示しなさい。」とつい
つい文句が出る。
午後1時、今度は本当に観測の遅れた班、早い班で混雑しだし1回お休みも仕方がない。
午後2時、4班が観測を終了する。
観測を終了した班は測量機械を整理し、本日観測した手簿の整理に入る。
午後2時30分、5班目が観測を終了する。
そのため午後2時30分には遅い昼食をとり、午後3時に講義開始とするのですが、まだまだ
観測している班があります。(午後3時10分最後の班の観測が終了しました。)
午後3時、講義開始にあたり手簿の整理を行い、水平角の中数、高度角、斜距離を整理して
下図に記載を行いました。
手簿の整理、図への記載が終了したところで、高度角の補正の講義を開始します。
基準点では、機械高、目標高を同一にしなさいといわれていますが、その理由は。
では、高さを同一に出来ない場合、基準点測量は出来ないのでしょうか。
いいえ、本日の観測のように高さが不統一である場合には高度角の補正を行うことにより基
準点の計算は可能であることを説明しました。
(でも計算は面倒なのですよ、だから今回エクセルで計算できるようにしたつもりです。)
機械高、目標高の高さの測定の丁寧さは大事です。
当然、計測もれなんて許しません。
使用与点のY座標、標高、ジオイド高を【手計算支援ソフト】の「わがまま娘」(エクセルシート)
に入力し、概算標高、距離補正を行い、平面距離を得た後、使用与点のX座標と水平角の観
測角を入力して下図の絵のとおり開放トラバース計算により近似座標計算をおこなう。
日ごろ、高さの観測はあまり行わないために、座標の閉合差ということには調査士さんは敏
感なのですが、高さの閉合差ということにはあまりピンとこないようです。
座標の閉合差が5000分の1であれば、「どこか間違っている」と頭をかかえているようなので
すが、高さの閉合差が2センチ程度なのは良いのやら、悪いのやら解らない様子。
そこで「与点の精度は良いですから、1センチ程度に収まるはずです。」というと、「何か、おか
しい。」と入力のチェックを入念にやり、参加者全員5ミリまでの閉合差になりました。
厳密網(水平・高低網)計算入力
休息の後、午後6時近似座標が得られたことから、図1の記載事項の距離をエクセルで計算
された球面距離に変更して図3に転記した後、厳密網計算へと説明は進みます。
今回の研修会は、「街区基準点」を実際に使用しなければならない状態で、まさに「尻に火の
ついた」状態での研修会でしたので、ご覧のとおり3人に2台以上のパソコン持参率となり参加
者全員が熱心にパソコンとにらめっことなりました。
単路線の新点4点という簡単な現場であったこともあり、おかげさまで参加者全員が何等か
の答えを得られたようです。
チラッと会議室を廻って参加者の計算の内容をみれば水平網の標準偏差が5秒、高低網が
10秒程度で成果的にも満足のゆくものでした。
最良の結果では、いずれも1秒、0.6秒という結果の班もあったようです。
何と、この手の研修で午後7時30分に終了できるなんて、夢のようです。
でも、これは研修です。
参加者の皆さん、ご自分の現場でも同様の計算時間と精度になるかどうかは私には保障で
きませんので、あしからず。
最後になりましたが、現場設営・研修の運営方法にご協力いいただきくました
「迷惑おっさん」・「測量屋さん」ありがとうございました。
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