道後基準点作業日誌(内業編)

土地家屋調査士 滝 上 洋 之

与点の成果

 今回の道後地区は街区基準点を使用した全国初の不動産登記法第14条地図作製作業で
ある。

 都市再生街区基本調査に伴う街区基準点は、街区三角点(2級相当)、街区多角点(3級相
当)がまず設置され、最終的には街区点測量のための4級相当の基準点も設置される。

 街区基準点の発注状況については、国土地理院のホームページの契約情報で知ることが出
来る、それによると全国に急ピッチで街区基準点が設置されていることが解る。

 ホームページによれば松山市を4つの区域に分けて平成16年11月1日に指名競争入札を行
っており道後地区は松山第2地区ということになっている。


 道後地区の不動産登記法第14条地図(この時点では第17条地図)のための3級基準点・4級
基準点は平成17年2月に観測が完了した。

 街区基準点成果は、当初3月末に国土地理院四国地方測量部に納品されることになってい
た。その成果を法務局より頂いてもらうようにしていた。

 順調にいけば4月には法務局に我々が作製した基準点成果を納めることが出来ると期待し
ていた。

 しかし国土地理院内で調整等がおこなわれ、法務局に成果(暫定成果)が届いたのは6月で
あった。


 街区基準点の精度がどの程度のものなのか。

 我々がつくった基準点との関連はうまくいくだろうか。

 じりじりとした思いが続いた。


平成17年6月17日、GPS測量の観測結果

 6月17日午前8時9分、渡部氏からメールが入ってきた。

 昨日、法務局から連絡があり、街区基準点の成果をとりに行ってきました。

 与点の計算の結果は、V△本谷を固定した仮定網平均計算より

  W△道後公園  ΔX=−0.018  ΔY= 0.006  ΔH= 0.046
  街三 2028A   ΔX=−0.006  ΔY= 0.007  ΔH= 0.047

 となりました。実用網平均計算でも良好な結果がでています。

 世界測地系で改測された三等三角点本谷、四等三角点道後公園そして今回新設された街
区三角点2028Aの成果と今回の道後地区基準点作成を行うため実施したGPS観測での比
較、確認の結果報告がある。

 更に、確認された与点を使用してGPS観測により新設した道後地区法14条地図の3級基準
点松法3−22、松法3−23、松法3−24、松法3−25の成果がシーマファイルで添付されてい
る。

 昨日、松山地方法務局からの連絡を受け、即座に今治市から松山に与点の成果を受け取と
りに行き、また今治市の自分の事務所に戻り、その日のうちに2月の観測データにより解析を
行っている。渡部氏にとっても本当に待ち遠しい与点の成果であり、3級基準点の解析結果で
あったに違いない。


平成17年6月20日、小野事務所に集合

 基準点設置に参加した方の報酬を6月24日の公共嘱託協会の支払日に間に合わせたい。

 その為には6月22日までには成果品を完成させたいとの渡部氏の強い意向から、4級基準点
の計算を松山市の小野事務所で6月20日朝9時から行うことになった。

 小野氏の事務所に西予市から高速道路を利用して20分前に到着。

 渡部氏はスーパーカブで今治から、大野氏は近所の中華料理屋さんの駐車場に車を置いて
300メートルほどを徒歩でやって来た。

 何故、中華料理屋さんの駐車場に車を置いたのかは後で知ることになる。

 小野事務所のパソコンには今回4級基準点の観測に使用した測量協会の検定済みの小野
氏、渡部氏、そして野本氏所有のTSからそれぞれに観測データを取り込んでおり、既に手簿
は印刷して机の上に置いてある。

 私と同じ測量ソフトを利用している大野氏、

 「小野さんとこの測量ソフトと自分の持っている測量ソフトでは動き方が違うので、戸惑いま
す。」

 確かにパソコンの画面を眺めても、表示されている画面の形式は全く相違している。

 入力する観測データや計算結果については同様なのだろうが、ファイルの管理方法、入力方
法が違っており、慣れた測量ソフトと相違することが多く戸惑うばかりである。

 前回の高浜地区でも小野氏所有の厳密網計算ソフトを使用しており、大野氏はソフトの操作
法には悩まされた事だろう。

 私は老眼で画面が見えにくいことを理由に今回はパソコンに触れないことにした。

 もっとも最初から戦力と思われていない・・。


観測手簿・観測記簿

 いよいよ作業に入った。

 机の上には、観測手簿と観測記簿がおいてある。

 二班に別れ作業をする。

 渡部・大野班と滝上・小野班である。

 私が観測記簿をチェックし小野氏が観測手簿をチェックする。

 観測記簿を受け持った私が、観測値の中数、機械高、目標高を読み上げ、小野氏が該当の
手簿を探し、チェックして行く。

 機械高、目標高については目標の方向からの反対側になる機械高、目標高を確認すること
となり、手簿めくりも忙しい。

 観測点は一つなのだが、視準点が3つ、4つになると手簿めくりで忙しくなる。

 効率的に手簿を見つけるためには、観測点の順番で10枚単位に並べておくことであるが、だ
んだん煩雑になってくる。

 お互いに観測データに間違いがなければ鉛筆で検符して行く。

 与点を使用している場合や、お互いの班で適当に分けた手簿と記簿の交差している場所
は、お互いが協力することになる。

 記簿のチェックをしていると小野氏が受け持っている手簿には無い。

 もうひとつの班の作業の1観測点の作業(1枚)が終わるのを待って、

 「そっちに何番ある。」

 「あるよ。」

 「じゃあ、行くよ。」

 「はいっ。」

 お互いのチェックの流れの間を待って、交互に確認していく。

 前回の高浜地区でもやった作業であり、全員が慣れているのでスムーズに作業は進むが手
簿と観測記簿のチェックが一段落したのは正午前。


昼 食

 渡部氏、「じゃあ、昼飯に行こうか。」

 大野氏、「いつもの処ですね。」

 小野事務所から徒歩で300メートルほどの場所にある中華料理屋に向かう、駐車場には大
野氏の車が朝方から停まっている。

 「張り紙されないでしょうか。」心配顔の大野氏。

 「どうせ、夜も飯を食いに来るから大丈夫よ。」と渡部氏。

 前回の高浜地区の基準点の計算では随分ここを利用したようであるが、夜という言葉に気が
つかなかった。

 中華料理店のメニューを見ながら、「夜のことも考えて注文しなくてはいけませんね。」という
小野氏に「そうやね。ボリュームがあるから」と気軽に返事をする。

 「気持ちだけ車の駐車場所を変えてきました。」と遅れて大野氏が入ってくる。

 ゆっくりした昼食をとり、小野事務所に帰る。


工夫(高低計算のために)

 高低計算のチェック用にと、渡部氏が4級基準点の観測者に渡し、観測の度に観測点の機
械高、視準点の目標高の記入を義務付けていたチェック表を取り出し、机の上に置いた。

 データコレクターやTS本体のメモリーに機械高、視準高をすべて入力しているのだが人間の
することだから操作ミスや勘違いもある。

 どこかに記録を残しておかないと、後日の計算でおかしいところについては記憶に頼るだけ
となり、正しいのか誤っているのか解らなくなる。

 いきおい再測量も多くなり、時間も労力も無駄が多くなる。

 前回の高浜地区では、高さを同一にして観測することが無理な地形であり、ばらばらの高さ
での観測が多く、また複雑な路線でもあったことから同一の観測点からでも機械高、目標高を
それぞれ異なる高さで観測を行った場所も多く、計算時に使用する高さが不明となった反省か
ら生まれたチェック表である。

 今回の道後地区では、前回の高浜地区を教訓にして、万全の準備をしている。

 観測の制限値についても、観測者であった大野、小野、野本の3氏は、倍角差、観測差、高
度定数差ともに20秒を超過すると自発的に再測していた。

 観測手簿をみても道後地区の観測の最大値はそれぞれに25秒、15秒、20秒であり、それも
やむを得ないと思われる状況の1、2の観測点であった。

 公共測量作業規規程では4級基準点については、倍角差60秒、観測差40秒、高度定数差60
秒の制限である。

 しかし現在の機械の性能を考慮し、その制限の大きさが現場ではどの程度のものであるか
皆体験しており、道後地区基準点では3氏だけでは無く、参加者全員が暗黙のうちに独自に厳
しい制限を設けて作業していた。


点検計算(高低計算・近似座標)

 4級基準点の観測のための後視点、前視点の水平角の観測点数、観測方向・距離の観測方
向をあらかじめ計画し、2月の観測時の観測状況により少し手直しされた点検路線図を基に、
高低計算と近似座標計算とのための点検路線ごとの計算が行われる。

 28本の結合路線、そして31本の環閉合、合計59本の点検路線である。

 点検路線毎に、後視点、観測点、前視点の順番で点名を出発点から到着点まで順次入力し
て行く。

 高低計算で標高の出合差をチェックした後、結合トラバース計算で近似座標計算を行う。

 1号路線から順次計算を行っていく、計算される標高差1センチ以内、座標の閉合差も1セン
チ以内で順調な滑り出しである。

 だが、2号路線の高さで10センチの出合差が生じた。

 高さの入力か、鉛直角の観測がおかしいのだろうか。

 路線の高さを手簿で確認して行くが、間違いはないようである。

 本当に間違いがないのか、4級基準点の観測時に観測者に義務付けをしていた機械点と視
準点の目標高のチェック表を取り出し、再度確認を行う。

 これも間違いが無い。

 おかしい、何かがあるはずだ。

 機械高、目標高のおかしいところを探っていく。

 同時に記簿で双方からの高低角の開きの大きい場所を見つけ、高低角の開きの大きい場
所で片方の角度だけが正しいとして計算をやり直すと標高の差が5センチ程度になる。

 「5センチか、このくらいなのかな。」

 「いや、他の路線の成果から考えても、もう少しいいんじゃない。」

 大体、おかしい場所の目安がついた。

 渡部氏が、観測記簿をもう一度じっくり確認していく。

 「あれっ。似たような距離が両方にあるぞ。」

 「ここは、渡部さんが店員さんに怒られた場所やね。」と小野氏。

 記簿を見ると、この観測点の前視点からの距離と後視点からの距離が全く同じ距離になって
いる。

 観測図からすると、実際の観測は後視点と前視点を反対にして観測している。

 そのため距離の観測も反対方向の距離を観測してしまった。

 その前の観測点とこの点の後の観測点については正しく観測図のとおり観測された為、実際
は同一区間の距離なのだがそれぞれが別の区間の距離として処理されていた。

 「私が観測した場所ですね。お昼前のバタバタした時だったので、間違えたのですね。すいま
せん。」と小野氏、当時のことを思い出したようである。

 2方向の観測で高低がほとんど無い水平な場所、水平角も180度に近い状態、おまけに距離
もほとんど同じであったことから、前視点と後視点が入れ替わっても目立った差にならず間違
いに気が付かなかったのだろう。


現場に行け

 「そうすると、この間の距離が無いことになる」

 「すぐ、現場に行こう」

 小野氏の作業用の車に、TS、ミラー、三脚を積み込み、全員で現場に向かう。

 現場の近くのコンビニに駐車して、それぞれが機械をかかえながら現場に向かう、先日の渡
部氏の対応が良かったのか、同じ店員さんが「おやっ、今日は何事」とにこやかに声をかけてく
る。

 「もう一度、確認のために測量するんですよ。」

 観測点には1.40メートルの高さで機械を据えつけ、小野氏が観測を行う。

 前視点、後視点も前回の観測状態に合わせた高さで設置。

 観測点と後視点の間にはおすし屋さんののぼりが風に揺られて視通の邪魔になっている。

 のぼりを手で押さえて視通の確保。

 お昼時だけになんともいいにおいが・・。

 前視点は先ほどの店員さんが勤めている男性にはうれしいお店。

 小野さんでなくともバタバタしたくなる場所である。

 それでも観測は素早く行われた。

 水平角、鉛直角、距離とも観測制限には十分入り、急いで小野事務所に戻る。

 出発から観測を終え、小野事務所到着まで所用時間は40分ほど。

 TSから観測データを取り出し、水平角、鉛直角、斜距離を改めて入力し、修正を行うと標高
差は1センチになった。

 大野氏思わず、「小野さんの観測すごいですね。前回の観測角と今回の観測角は補角にな
るので足してみたら360度0分2秒ですよ。2秒ですよ、すごいですね。」と感心している。


再び点検計算(高低計算・近似座標計算)

 その後、3号路線から28号路線まで順調に計算が進行し、高さ1センチ、座標の閉合差も1〜
2センチ以内の計算が続く。

 特に道後地区基準点のために今回作成した3級基準点同士を結ぶ路線になると、高さ、座
標の閉合差ともに2、3ミリの差で収まっている。

 今回新設した3級基準点は道後地区は観光地のためホテルや旅館の建物が密集し、山も近
くに迫り出しているため上空視界の条件の悪い場所であり、GPS観測の際には長脚とポール
を使用している。

 注意深く求心を行い、アンテナ中心が偏心していないか2台のトランシットを使用、あらかじめ
収集したカーテン情報により観測時間や観測時間帯についても十分配慮した結果が出てい
る。

 29号路線からは環閉合ということで、閉合トラバース計算を行う、出発点から最初の視準点
までの方向角の入力については、既に結合トラバース計算を行った1号から28号までの路線か
ら計算された方向角を入力しての閉合トラバース計算である。

 残った新点の近似座標値も順次求められていく。

 そしてこの環の閉合差もすべてが2ミリ以内に収まっている。

 観測者の観測技術、そして地道に三脚をきちんと据付した参加者全員の協力の賜物であ
る。

 1号から59号路線まで入力でいつのまにか2時間が経過しようとしている。

 パイプ椅子に座っている私のお尻が痛くなってきた。

 渡部氏と大野氏は黙々と観測データをパソコンに入力している。


厳密水平網計算の入力

 計算に使用する与点は街区三角点5点、街区多角点10点、節点9点の24点、新点数115点、
合計139点である。

 使用している測量ソフトは、新点については同一点の場合、最初に計算を行った値を採用
(括弧書)して、後から計算された値は採用しないことになっている。

 これを測量ソフトが自動的に判断して厳密水平網の新点の近似座標値として採用するはず
なのだが、計算をする点数が大量のため、自動的に括弧書きされた座標を新点の近似座標
値として受け渡しをしてくれないようだ。

 点検路線毎に印刷された計算書の中から括弧書された新点の近似座標を読み上げ、大野
氏がパソコンに入力して行く。

 渡部氏は自分で作成した点検路線図を見て、括弧書の処理が誤っていないかどうかチェック
している。


厳密水平網計算とチェック

 全部の入力が完了し、厳密水平網計算の実行のキーを押すと画面にデータ不足の表示がさ
れる。

 あわてて指示のあった不足分を入力し、もう一度計算の実行キーを押す。

 ウインドウズ特有の処理実行画面が10秒ほど表示され、計算結果の標準偏差をみると無限
大に近いものすごい数字。

 どこかに入力の誤りがある。

 パソコンの画面を見ながら、計算結果を示すCAD上で結線を調べる。

 形の相違する場所はないか、点検路線図と見比べながら慎重に調べる。

 渡部氏、「この環の形が全然違う、ひょろ長い南北に長い環なのに、ずんぐりむっくりの形に
なっている、どこか違っているぞ。ここ拡大してみて」

 大野氏が問題の環を拡大する。

 「手簿を見て」

 「観測記簿を見て」

 「合っている、ということは訂正したデータがそのまま残っていたんだね。削除しよう。」

 データを削除して、再計算を行うが標準偏差はまだ2500秒以上ある。

 「もう一度、CAD上で結線を」

 大野氏が再び、パソコンを操作して結線図を順次拡大しておかしい場所を探していく。

 先ほどの環については、南北に細長い形に訂正されている。

 CAD上で確認するのだが、点検路線図と見比べても形の変な場所は無い。

 拡大して、一つ一つチェックしてみるのだが原因がわからない。

 こうなると、土つぼにはまった状態となり訳がわからなくなる。

 「一度計算して計算書を印刷して、残差をみてみたら。」

 私が解析する時で、解析結果の悪いときの原因が不明のときに良く利用している方法であ
る、用紙の無駄遣いの方法でもある。

 「そうやね。」

 近似座標との差、残差が不自然に大きい観測点には何がしかの問題があるとして原因を追
究する方法で最後の方法でもある。

 計算書で残差の大きい観測点を探していく。

 「ここに、変なのがあるぞ。この点が怪しいな。」

 その近所の環をCAD上で拡大してみると、6角形の環なのに、新点を一つ飛び越える形で余
分な結線が一つ入っている。

 「手簿を見て」

 「観測記簿を見て」

 「合っている、ということはこれも訂正したデータがそのまま残っていたんだね。この結線を削
除しよう。」

 入力データを削除し、再び計算実行のキーを押すと10秒ほどして計算結果が出てきた。

 標準偏差 4.75秒。

 「よし、やった。」一同、安堵の声が上がる。

 4級基準点の制限20秒からしても非常に良い精度であり、ほぼ目指していた精度である。


厳密高低網計算の入力

 続けて、厳密高低網の計算を行う。

 厳密水平網の計算と同様に、点検路線毎の高低計算から括弧書の標高を読み上げ、小野
氏がその値をパソコンに入力する。そして渡部氏は点検路線図でチェックを行う。

 今回は、入力不足の指摘もなく、すんなりと計算結果が出てくる。

 「標準偏差22.82秒」

 「水平網の4.75秒からしたら、ちょっと悪いね。」

 今までの研修の経験からすれば12、3秒前後と予想していたのだが・・。

 「4級の高度角の制限は何秒だった。」

 「30秒よ。」

 「入ってはいるんよね。明日もう一度確認しようわい。」と渡部氏。

 高度角の観測が下手な私は、自分で作成する4級基準点の高度角の標準偏差はいつも20
秒程度あり、この程度の数値で納得しているのだが、渡部氏の目指す精度はこのようなもので
はない。

 まだ、何か原因があると思っているようである。


一応の終了は11時

 やっと本日の予定が終了した。

 だが道後の4級基準点の計算については本当には終了していない。

 厳密水平網、厳密高低網とも4級基準点の制限内に入り、観測漏れは無く、致命的なミスは
ありませんということでとりあえず一安心という区切りである。

 午後11時、なにやらバダバタして夕食を食べていない。

 おそい晩飯をとりに再び中華料理店に行く。

 ここで大野氏がこの中華料理店の駐車場に車を置いている意味が解った。

 道後の115点と違って、500点近い点数のあった高浜地区は1週間以上、このような日が繰り
返されたのだろう。

 点数が多ければ、点検路線の組み合わせも加速度的に多くなり、計算をしていても誤った場
所を探すことは困難を極めたであろうし、思いがけない場所での観測不足もあったであろう。

 たった1日参加しただけでも大変さが解る。

 おまけに、計算が完了した後は成果品の取りまとめがある。

 面倒くさがりで大雑把な私には到底出来ない作業である。


平成17年6月21日、会館にて

 昨日に続き、厳密高低網計算のため高低角のチェックを調査士会館で大野氏、渡部氏で続
けているはずである。

 本日は参加できないが、気になり昼食時に事務所から渡部氏の携帯に連絡する。

 「どんな様子。」

 「10個ほどおかしいところがあった。」

 「えっ、10個もおかしいところがあるのに、標準偏差が22秒でおさまっているの。」

 「環閉合のところがしっかりしているからだと思う。訂正すればもっとすごい精度になると思う
よ。今日は小野さんが出張で事務所にいないから計算出来ないので、後日計算してみます。」

 朝から大野氏と二人で延々とチェックを行っていたようである。


平成17年6月28日、最終計算そして終わりに

 平成17年6月28日、東京に出張していた小野氏が帰るのを待ち、小野事務所で厳密水平
網、厳密高低網の再計算を行った結果、厳密水平網の標準偏差は4.75秒から4.58秒に、厳密
高低網の標準偏差は22.82秒から22.24秒に改善されたとの報告が夕方大野氏からメールで入
る。

 計算結果である標準偏差は当然与点の精度に左右される。

 水平角はほぼTSでの自分の観測結果だが、鉛直角の観測は、TSの観測自体と観測高や目
標高を正確に測る丁寧さも要求されるため、なかなか標準偏差が水平角と同様にはならな
い。

 水平網の結果は満足の出来る数値なのだが、正直、高低網については高い目標を掲げて、
最大の努力をしてきた渡部氏や観測に携わった者からすればやや不満の残る数値である。


 努力と結果とは、なかなか比例しない。


 前回の高浜、今回の道後と技術に磨きをかけ、処理方法にも改良を繰り返してきたが、正
直、成果を伴って利益を上げることが出来る業務の域にまで達してない。

 測量の専門家としては基準点測量が行えることは当たり前である。土地家屋調査士が通常
の測量技術を身につけた時、業務としての基準点測量は可能になるだろう。

 今回、我々は専門家としての観測技術、業務としての作業方法いずれも大きな壁を実感する
ことが出来た。

 これから基準点設置作業をおこなう調査士にとって、この壁を乗り越える努力をすることが最
重要課題であろう。



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